特別企画
出荷台数の減少、老舗メーカーの撤退などバッドニュースが続く

今後どうなる? コロナ禍で激震が走るカメラ業界の未来

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行はさまざまな分野に影響を及ぼしているが、カメラ業界も例外ではない。イベントの中止、新製品の発売の延期、出荷台数の大幅な前年割れ、老舗カメラ誌の休刊、老舗カメラメーカーの撤退など、ここ数か月の間に信じられないようなニュースが続いている。ここでは、コロナ禍で激震が走るカメラ業界の最新動向を紹介した後に、業界の未来像を考察し、業界が抱えている課題について意見を述べたい。

※2020年7月2日更新:デジタルカメラの出荷台数(2020年5月分)の情報を追加しました。

毎年恒例のイベント「CP+」が中止。新製品の発売も延期に

新型コロナウイルス感染症拡大が最初にカメラ業界に影響を与えたのは、一般社団法人カメラ映像機器工業会(CIPA)が主催するイベント「CP+」が中止になったことだ。

CP+は、数万人の来場者を集めるカメラ・写真関連では国内最大となるイベントで、毎年2〜3月にかけての開催が恒例となっている。春から夏にかけて発売になる新製品がお披露目になることもあり、多くのカメラファンが注目する場だ。今年の「CP+2020」は2月27日から4日間の開催が予定されていたが、新型コロナウイルス感染症拡大の危機感が高まる中、CIPAは2月14日に開催中止を発表。2月6日の時点では「状況を注視しながら開催に向けた準備を進め、計画通りに開催する予定」と発表していたので急転直下の中止決定であった。CP+は2014年に大雪の影響で1日開催が中止になったことはあったものの、イベントそのものが中止になったのは2010年の開催以来初だ。

毎年2〜3月にかけての開催されているCP+。カメラファンにとっては毎年恒例となっているイベントだが、今年は新型コロナウイルス感染症の影響を受けて中止となった(画像は2018年に開催された「CP+2018」の会場の様子)

2月下旬になると、新型コロナウイルス感染症はアジアだけでなく欧州や米国などにも広がり、世界中で企業活動が低下。国内カメラメーカーも製品リリースのスケジュールの見直しを迫られ、ニコンのフラッグシップ一眼レフ「D6」、キヤノンのエントリー向けの一眼レフ「EOS Kiss X10i」などの新製品が発売延期となった。本来であればCP+にあわせて新製品が続々と発表されるところ今年はリリースが少なく、春の新シーズンなのに「カメラの新製品が発表されない」「新製品の情報が出ない」という状況になった。

前年同月比で3月は47.8%、4月は36.3%、5月は27.4%にまで出荷台数が減少

新型コロナウイルス感染症の影響によって景気は急速に悪化し、パソコンなど一部を除いてモノがまったく売れない状況になった。カメラ市場は特に落ち込みが大きく、4月24日にCIPAが公開した3月のデジタルカメラの出荷台数(全世界)は、前年同月比でレンズ交換式が42.6%、レンズ一体型が53.3%、全体で47.8%と50%を切る結果となった。

その後、4月と5月の統計も発表されているが、4月のデジタルカメラ全体の出荷台数は前年同月比で36.3%、5月はさらに下がって27.4%という衝撃的な数字になっている。カメラ市場の中で比較的ニーズの高いミラーレスを見ても、3月の出荷台数は前年同月比で53.8%、4月は33.0%、5月は26.1%にまで下がっている。

CIPAの発表によるとデジタルカメラ全体の出荷台数は3月以降大きく減少した。前年同月比で3月は47.8%、4月は36.3%、5月は27.4%となっている(出典:一般社団法人カメラ映像機器工業会)

レンズ交換式の総出荷台数は前年同月比で3月が42.6%、4月が36.3%、5月が28.5%(出典:一般社団法人カメラ映像機器工業会)

レンズ一体型の総出荷台数は前年同月比で3月が53.3%、4月が36.3%、5月が26.1%(出典:一般社団法人カメラ映像機器工業会)

CIPAの出荷見通しでは2020年は前年比約80%と予想されていたので、1月と2月はほぼその予想通りに推移したと言えるが、3〜5月は新型コロナウイルス感染症の影響をモロに受ける結果となっている。今後はここまでの減少幅ではないと期待したいが、苦しい状況が続くことは変わらないだろう。

老舗カメラ誌の相次ぐ休刊

出荷台数の大幅な減少とあわせてカメラ業界に衝撃を与えたのが、老舗カメラ誌の相次ぐ休刊だ。

まず、4月22日、モーターマガジン社がカメラ写真専門誌「カメラマン」の休刊を発表した。4月20日に2020年5月号が発売された直後の発表で、まさに寝耳に水。5月号には来月号の予告が掲載されており、突然の決定だったことが想像できる。年末恒例の座談会「間違いだらけのカメラ選び」などユニークな企画で42年もの長きにわたって読者をひきつけた、人気カメラ誌の突然の休刊発表は驚きだった。なお、モーターマガジン社は今後、「Webカメラマン」にてカメラ・写真の情報を発信していくとしている。

次に、6月1日、朝日新聞出版が2020年7月号(6月20日発売)をもって月刊誌「アサヒカメラ」の休刊を発表した。カメラ・写真文化とともに歩んできた日本最古の総合カメラ誌で、アマチュア写真家にとっては機関紙的な媒体であった。近年は著作権や肖像権についての攻めた企画でも話題を集めていたが、94年という長い歴史に幕を閉じた。歴史が長い分、写真愛好家にとって喪失感のある休刊である。今後、カメラ・写真に関する情報は朝日新聞出版のニュースサイト「AERA dot.」内で配信し、増刊やムックについては引き続き刊行する予定とのことだ。

雑誌の休刊は突然やってくるものではあるが、それにしても両誌とも急な決定・発表であった。カメラ市場が縮小している中、ギリギリのところで発行を続けてきたところ、新型コロナウイルス感染症の影響で出稿が減少したことが痛手となったのだろう。カメラ誌は毎月20日に店頭に並ぶのが恒例だが、そこからこの2誌が姿を消すのは残念だ。

オリンパスが映像事業の譲渡を発表

6月下旬、カメラ業界にさらなる激震が走る。6月24日に、オリンパスがカメラ・双眼鏡・ICレコーダーなどのコンシューマー向け製品を手がける映像事業の譲渡を発表したのだ。譲渡先は投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)で、映像事業を新会社として分社化した後に、2020年9月30日までに譲渡を締結するとしている。

オリンパスの映像事業は1936 年に写真レンズ「ズイコー(瑞光)」を用いた写真機の製造・販売を開始したのがスタートで、カメラ製品を主力に80年以上の長い歴史を持つ。フィルムカメラ時代には、カメラの大衆化の先駆けとして一世を風靡したハーフサイズカメラ「オリンパス・ペン」、それまでにはなかった小型・軽量な一眼レフとして人気を集めた「OM-1」など、カメラ史に名を残す名機を数多く製品化してきた。近年では、マイクロフォーサーズ規格のミラーレスを展開し、「OM-D E-M1シリーズ」においてミラーレスの高性能化にいち早く取り組んで市場を活性化した。フィルムカメラ時代から小型・軽量で機動力にすぐれるカメラ作りにこだわり、写真家やファンからの支持も厚い老舗メーカーだ。

JIPは、事業再編にともなうカーブアウト(分社化)を主な手法として、国内企業の事業活性化を支援する独立系の投資ファンド。2014年にソニーのパソコン事業を買収し、VAIO株式会社として再建させたことでも有名だ。オリンパスの映像事業をどういった形で引き継ぐのかはまだわからないが、オリンパスのリリースには「新会社はOM-DやPEN、ZUIKOなどをはじめとしたブランドを継承する事業体として製品・サービスを提供する」と書かれており、これを額面通りに受け取ると、オリンパスというカメラブランドが残るのは難しいかもしれないが、少なくともOM-Dなどの製品ブランドは残る形になりそうだ。

オリンパスの映像事業はここ数年、生産拠点を再編したり、収益性の高い高性能な一眼カメラ・交換レンズ製品を強化するなどの構造改善を図ったものの、直近の3期連続で営業損失を計上した。価格.com「デジタル一眼カメラ」カテゴリーでのメーカー別のシェアも、最近では富士フイルムに次ぐ5番手に甘んじるようになり、撤退の噂はこれまでに何度もあった。海外のメディアで昨年末に、「映像事業を見直し、医療事業に経営資源を集中させる」というオリンパス・竹内康雄社長の発言が取り上げられたことなどもあり、「Xデーはそう遠くない」と思っていた方も少なくないはずだ。

そうした直近の状況からすると、今回の譲渡の発表は、新型コロナウイルスの影響は少なからずあったかもしれないが、決定打になったわけではないと思われる。オリンパスとJIPの両社で協議を重ねた結果、タイミングが重なったと見るべきだろう。とはいえ、老舗メーカーのオリンパスがカメラ市場から撤退するのは驚きであり、業界全体の低迷が続いていることを印象付ける大きなニュースとなった。

事業譲渡ということでオリンパスのカメラは人気がない(なくなった)と思うかもしれないが、それは違う。映像事業の譲渡が発表された6月24日時点の、価格.com「デジタル一眼カメラ」カテゴリーでの売れ筋ランキングでは、「OM-D E-M10 Mark III EZダブルズームキット」が1位になっている

今後も市場の縮小は進む。総出荷金額が3000億円台にまで下がる可能性も

ここまでは新型コロナウイルス感染症の影響を受けたカメラ業界の最新動向を紹介したが、ここからは業界の未来像を考察して、業界が抱える課題について意見をまとめたい。

まずは、カメラ市場の規模についてもう少し掘り下げる。カメラ市場は2008年頃をピークに下降の一途をたどっている。ご存じの方も多いだろうが、デジタルカメラの登場によって2000年代に一気に大きくなった市場は、直近の約10年は右肩下がりだ。2008年と2019年のCIPAの統計を比較すると、年間の総出荷台数(全世界)は1億1975万台から1521万台に、総出荷金額(全世界)は2兆1640億円台から5871億円台にまで落ち込んでいる。金額ベースで見ると現在の市場規模はピーク時の30%程度だ。ちなみに、2019年の総出荷金額5871億円台という数字は、まだフィルムカメラが主流だった1999年の5867億円と同等で、デジタルカメラの出荷金額がフィルムカメラを抜いた2000年の7399億円台よりも少ない。新型コロナウイルス感染症の影響がいつまで続くのかは予想できないが、今年中に景気が急速に回復するとは考えにくく、2020年は2019年の数字(1521万台/5871億円台)を大きく下回るのは確実だ。

CIPAが公開している、1977年からのフィルムカメラとデジタルカメラの総出荷金額をグラフでまとめてみた(青がフィルムカメラ、オレンジがデジタルカメラ)。デジタルカメラの登場によって金額は2008年にピークを迎え、そこから右肩下がりで落ち込んでいる

中期的に見ると市場規模がどのあたりで下げ止まるのかが焦点になる。2021年以降はやや回復して総出荷金額5000億円程度の規模で下げ止まりすることを期待したいが、実際はもっと落ち込むかもしれない。フィルムカメラ時代の1980年代から1990年代前半のカメラ市場は総出荷金額が3000億円台で推移していたが、この程度の規模までの下落もありうる。そうなるとメーカーの生存競争はさらに激しくなり、業界の再編が加速する可能性もある。

業界の再編が進むと、将来的には、資本力のある海外メーカーがカメラ市場に参入して、シェアを奪っていくということも起こりえない絵空事ではなくなる。国内カメラメーカーの技術力は高く、一長一短で追いつけるものではないが、国内メーカーのカメラ事業が売却される形で海外メーカーが台頭してくることは十分に考えられる。

カメラメーカーとメディアの課題

新型コロナウイルス感染症の影響で短期的にカメラ市場が落ち込んでいるだけでなく、長期的に見ても明るい見通しが立たない状況だ。ここまで市場規模が縮小した最大の要因はスマートフォンの台頭で、スマートフォンがレンズ一体型デジカメのシェアを奪った形になっている。

ただ、ここ数年のカメラ離れの加速については、スマートフォンの台頭だけが原因ではないだろう。今後のカメラ市場の鍵を握る存在であるはずのミラーレスが、ライトなカメラユーザー(※一眼レフやミラーレスを所有していて、主に旅行やイベントでカメラを使用するユーザー)に対してうまくリーチできていないことも少なからず影響していると思う。2012年は1252億円台だったミラーレスの総出荷金額は、フルサイズミラーレスの盛り上がりもあって2019年はその倍以上の2823億円台にまで堅調に伸びている。だが、景気の悪化などの外部要因はあるとはいえ、同じ2012年から2019年の間で総出荷金額が6279億円台から1746億円台に落ち込んだ一眼レフの減り幅をカバーできているわけではない(※総出荷金額はCIPA公表の統計データに基づく)。

ミラーレスはここ数年で一気に高性能化が進んだ。一眼レフのミラー構造から解き放たれたことで内部構造がシンプルになり、デジタルデバイスの進化でAFや連写の性能は著しく向上している。スペック競争は激しさを増し、新モデルが出るたびに性能は上書きされていく。そもそもデジタルカメラは性能の進化によってユーザーを引き付けてきた面があり、スペック競争は決して悪いことではない。性能向上によってカメラを使う楽しさが増すのであれば大歓迎だ。

だが、最新のミラーレスの多くは、メディアの伝え方も単調でよくないところがあると思うが、AFの測距点数だったり、連写速度だったりと、数字で表現できるわかりやすいスペックを伝えることを重視しすぎていて個性を感じにくく、ライト層に対してカメラの魅力を訴求できていない面がある。市場規模が徐々に小さくなっていく中で、性能で勝負できないカメラはコアなカメラファンから注目を集めにくいところがあり、どうしてもスペック訴求重視になってしまうのはわかる。だが、ライト層にとっては2世代くらい前から一眼カメラはすでに十分な性能を持つようになっていて、メーカーが期待するほどスペックに価値を感じなくなっているように思う。製品のプロモーションを含めて、スペック以外のところでライト層の買い替え需要を喚起するような取り組みはもっとあっていいはずだ。

製品については、性能はそこそこでデザインや操作フィーリングを磨き上げたモデルであったり、携帯性を徹底的に追求した小型・軽量モデルとレンズの組み合わせであったり、あっと驚くような低価格モデルであったりと、特にスタンダードからエントリークラスの製品で既存にはない個性を持つモデルを展開することで、需要を掘り起こせるのではないだろうか。メーカーの製品企画担当者からは「そんな努力はこれまでもしてきた」という声が聞こえてきそうだが、今の状況を少しでも改善するには、しっかりとしたコンセプトのもとで作られた、思い切った特徴を持つ製品の展開が必要だと思う。

2019年10月に発売になった、シグマのフルサイズミラーレス「SIGMA fp」。完全電子シャッターという思い切った仕様で小型・軽量化を実現した。製品のコンセプトがはっきりしており、新しい体験ができることを感じさせるカメラとして人気を集めている

2019年11月に登場した、富士フイルムのAPS-Cミラーレス「X-Pro3」も非常に個性的なカメラだ。液晶を裏側に配置するという斬新なチルト式モニター「Hidden LCD」を採用し、モニターではなくファインダーでの撮影に集中できる仕様になっている

しかも、これからは新型コロナウイルス感染症と共存しながら生きていく「withコロナ時代」が本格的に始まると言われている。「withコロナ時代」では生活スタイルが大きく変化し、生活必需品に対するニーズが高まるいっぽうで、カメラのような嗜好品に対してはその価値がさらにシビアに評価されることになるだろう。さまざまな分野で価値観が変わりつつある中で、カメラメーカーもメディアも、生活を豊かにするツールであるカメラの価値を、コアなカメラファンだけでなく、もっと幅広い層に伝えていく努力をすべきだと思う。

カメラ業界で仕事をしている身としても、カメラファン・写真愛好家としても、業界の未来像に対しての危機感は筆舌に尽くしがたいものがある。業界は今後も厳しい状況が続いていくが、微力ではあるもののカメラのよさを伝えていけるように活動していきたい。

真柄利行

真柄利行

カメラとAV家電が大好物のライター/レビュアー。雑誌編集や価格.comマガジン編集部デスクを経てフリーランスに。価格.comではこれまでに1000製品以上をレビュー。現在、自宅リビングに移動式の撮影スタジオを構築中です。

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