特別企画
その年のカメラ業界を振り返る、年末恒例のコラム

一眼カメラ&コンデジ「2020年の振り返り」と「2021年への期待」

2020年はカメラ業界として非常に厳しい年になったが、それでも、魅力的なカメラ製品は数多く登場した。本記事では、国内メーカーから登場した注目度の高い一眼カメラとコンパクトデジタルカメラを紹介しながら、2020年のカメラ業界を振り返ろう。最後に、2021年の展望や期待したい点についてまとめて締めくくりたい。

2020年はユーザーのニーズをしっかりと拾ったカメラが人気を集めた

2020年はユーザーのニーズをしっかりと拾ったカメラが人気を集めた

コロナ禍で業界全体が甚大な影響を受けた1年

2020年のカメラ業界を振り返るうえで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行によって業界全体が甚大な影響を受けたことは、紹介しておかなければいけないトピックだ。毎年2〜3月にかけての開催される国内最大級のカメライベント「CP+」が中止になったことを皮切りに、春先に登場する予定だった新製品の発売も続々と延期に。製品の出荷台数は大幅に落ち込み、「カメラマン」「アサヒカメラ」という老舗カメラ誌が相次いで休刊になったのも衝撃的だった。加えて、6月24日には、オリンパスが映像事業の譲渡を発表。新型コロナウイルスの影響が決定打になったわけではないだろうが、老舗メーカーのオリンパスがカメラ市場から撤退するのは、業界全体の低迷が続いていることを象徴するニュースであった。

ただ、2020年の後半にかけてカメラの販売台数は少しずつではあるが上向いており、一時期は前年同月比で30%を切る状況だったのが、10月は80%近くまで回復している。注目度の高い新製品が登場したレンズ交換式については前年同月比で90%近くまで回復しており、5月前後の悲観的な感じは脱しつつある。厳しいことに変わりはないが、ある程度希望が持てる形で2021年を迎える状況となっている。

CIPAが公開しているデジタルカメラの出荷台数(全世界)の推移。2020年5月は前年同月比で27.4%まで落ち込んだが、6月以降は上向いており、直近の10月は77.2%となっている(出典:一般社団法人カメラ映像機器工業会)

CIPAが公開しているデジタルカメラの出荷台数(全世界)の推移。2020年5月は前年同月比で27.4%まで落ち込んだが、6月以降は上向いており、直近の10月は77.2%となっている(出典:一般社団法人カメラ映像機器工業会)

レンズ交換式の出荷台数(全世界)については、10月に前年同月比86.4%にまで回復している(出典:一般社団法人カメラ映像機器工業会)

レンズ交換式の出荷台数(全世界)については、10月に前年同月比86.4%にまで回復している(出典:一般社団法人カメラ映像機器工業会)

圧倒的な高性能で注目を集めたキヤノンのフルサイズミラーレス「EOS R5/R6」

販売台数的には厳しい1年になった2020年だが、キラリと光るすばらしいカメラはいくつも登場した。その中でも、特に2020年を代表するカメラとして存在感を放ったのが、2020年7〜8月に登場した、キヤノンのフルサイズミラーレス第2世代モデル「EOS R5」「EOS R6」の2機種だ。

EOS R5/R6は基幹デバイスを刷新し、新世代の「デュアルピクセルCMOS AF II」や最高約20コマ/秒の高速連写、世界最高8.0段分の補正効果を持つボディ内5軸手ブレ補正といった驚きの高性能を実現。有効約4500万画素の上位モデルEOS R5については、デジタル一眼カメラとしては世界初となる8K/30p動画の記録にも対応している。

EOS R5/R6のいいところは、そうした突き抜けた高性能が新しい撮影体験につながっていることだ。特にAFは、一眼レフを含めて「EOSシリーズ」として最高と言っても過言ではない、非常に高性能な被写体検出・追従性能を実現。画面全域で被写体を高精度に追従し続けるのがこれまでにはなかった点で、動体や人物などの撮影においては「このカメラを使えば撮り方が変わる」といっても決して大げさではない、革新的なAFとなっている。フルサイズミラーレス市場に参入して約2年で、ここまでエポックメイキングなカメラを作れるのはキヤノンの開発力の高さを感じるところだ。

有効約4500万画素の上位モデルEOS R5。高画素ながら最高約20コマ/秒の高速連写を実現したほか、8K/30p動画撮影にも対応した超高性能モデルだ

有効約4500万画素の上位モデルEOS R5。高画素ながら最高約20コマ/秒の高速連写を実現したほか、8K/30p動画撮影にも対応した超高性能モデルだ

キヤノンのラインアップの中ではスタンダードモデルに位置するEOS R6。EOS R5と同等のAFや連写速度、ボディ内手ブレ補正を実現し、クラスを超える性能を持つカメラとなっている

キヤノンのラインアップの中ではスタンダードモデルに位置するEOS R6。EOS R5と同等のAFや連写速度、ボディ内手ブレ補正を実現し、クラスを超える性能を持つカメラとなっている

フルサイズミラーレスではソニー「α7S III」も話題に。ニコンからは待望の新モデル「Z 7II/Z6II」が登場

フルサイズミラーレスの先駆者として市場を活性化してきたソニーは、2020年10月に、フルサイズミラーレス「α7S III」をリリースした。高感度・広ダイナミックレンジが特徴の「α7Sシリーズ」の第3世代となるモデルで、撮像素子と画像処理エンジンを一新することで性能が大きく向上。同シリーズの魅力でもある動画撮影は、4:2:2 10bit 対応の4K/120p記録や16bit RAW出力に対応するほか、動画専用の手ブレ補正「アクティブモード」なども新たに搭載するなど、本格的な映像制作を行う動画ユーザーが必要とする機能を数多く搭載。約944万ドット/倍率0.90倍の高性能な電子ビューファインダー(EVF)など操作性にこだわっているのも特徴で、2020年を代表するカメラのひとつとなった。

新開発の撮像素子と画像処理エンジンを搭載し、非常に充実した動画撮影機能を実現したα7S III。本格的な映像制作を行う動画ユーザーから支持されているフルサイズミラーレスだ

新開発の撮像素子と画像処理エンジンを搭載し、非常に充実した動画撮影機能を実現したα7S III。本格的な映像制作を行う動画ユーザーから支持されているフルサイズミラーレスだ

ニコンからはフルサイズミラーレスの新モデルとして「Z 7II」「Z 6II」の2機種が2020年11〜12月に登場した。画像処理エンジン「EXPEED 6」を2基搭載する「デュアルEXPEED 6」を採用して性能の向上を図ったうえ、待望のダブルスロット(CFexpress/XQDカードとSDカード)も搭載。2018年発売の「Z 7/Z 6」をベースにしているためスペックのインパクトはそれほど高くないものの、ユーザーから要望の高かった機能を多数搭載し、より使いやすいカメラに進化している。AFの被写体追従性にさらなる進歩があればなおよかったが、「Zマウントシステム」の高画質をより快適に楽しめるカメラとして注目を集めている。

従来モデルから多くの点が改善された新モデルZ 7II。待望のダブルスロットも搭載した

従来モデルから多くの点が改善された新モデルZ 7II。待望のダブルスロットも搭載した

Z 7IIと同等の改善が施されたZ 6II。連写性能は約14コマ/秒にまで向上している

Z 7IIと同等の改善が施されたZ 6II。連写性能は約14コマ/秒にまで向上している

富士フイルム「X-T4」、オリンパス「OM-D E-M1 Mark III」といった高性能ミラーレスも登場

最近は「高性能なデジタル一眼カメラ=フルサイズ」という認識が高まっているが、2020年は、フルサイズよりも小さいサイズの撮像素子を搭載するカテゴリーでも、注目度の高いハイエンド向けモデルがいくつか登場した。

APS-Cミラーレスのハイエンドモデルの中で特に話題を集めたのが、2020年2月に登場した富士フイルムの「X-T4」だ。富士フイルムファンからニーズの高かったボディ内5軸手ブレ補正(最大6.5段分の補正効果)を搭載したほか、「Xシリーズ」として最高性能となるAFや、メカシャッターで最高約15コマ/秒の高速連写、4K/60p記録なども実現。APS-Cミラーレスとして最高性能を誇る、見どころの多いカメラとなっている。また、従来モデルとは異なり、バリアングル液晶モニターを搭載したのも話題で、動画撮影にも配慮したモデルとなっている。

ボディ内5軸手ブレ補正を搭載したX-T4。最高約15コマ/秒の高速連写が可能なほか、充実した動画撮影機能も備わっている

ボディ内5軸手ブレ補正を搭載したX-T4。最高約15コマ/秒の高速連写が可能なほか、充実した動画撮影機能も備わっている

マイクロフォーサーズでは、オリンパスが「OM-D E-M1シリーズ」の新モデル「E-M1 Mark III」をリリース。縦位置グリップ一体型の「E-M1X」と並んでプロフェッショナル向けに位置するモデルで、新しい画像処理エンジン「TruePic IX」を搭載し、補正効果が最大7.5段分にまで向上したボディ内5軸手ブレ補正を実現。手持ちで約5000万画素の画像を生成する「手持ちハイレゾショット」や、ライブビューで減光効果を確認して撮れる「ライブND」、天体撮影用の「星空AF」といったユニークな機能も搭載している。

より小型・軽量なボディを採用するオリンパスのプロフェッショナルモデルOM-D E-M1 Mark III。新エンジン搭載で機能性が大きく向上した

より小型・軽量なボディを採用するオリンパスのプロフェッショナルモデルOM-D E-M1 Mark III。新エンジン搭載で機能性が大きく向上した

小型・軽量なフルサイズミラーレスが登場したのも2020年のトピック。Vlog撮影を意識したモデルにも注目が集まった

2020年に登場したミラーレスを見ると、高性能・高機能を追求したモデルだけでなく、小型・軽量化を徹底したモデルや、個性的なスタイルのモデルが話題を集めたのもハイライトのひとつと言える。

フルサイズミラーレスでは、小型・軽量を特徴とする下位モデルとして、パナソニック「LUMIX S5」が9月に、ソニー「α7C」が10月に発売になった。

LUMIX S5は、上位モデル「LUMIX S1」の基本性能をコンパクトボディに凝縮したモデルで、1/8000秒の高速シャッタースピードや4K/60p動画撮影に対応し、性能を犠牲にせずに小型・軽量化を実現したのが特徴。重量はLUMIX S1の約1017gに対して約714g(いずれもバッテリー、メモリーカードを含む)にまで軽量化している。

α7Cは、ボディ内手ブレ補正を搭載したフルサイズ一眼カメラとして世界最小・最軽量となる重量約509g(バッテリー、メモリーカードを含む)のコンパクトボディを実現して話題をさらった。性能面では、ロングセラーのスタンダードモデル「α7 III」の基本性能をベースに、AFの被写体追尾性や連写の持続性などが強化されている。

両モデルで共通しているのは、横開きのバリアングル液晶モニターを採用し、静止画撮影だけでなく、動画撮影にも配慮した設計になっていること。Vlogを含めて動画撮影を重視するユーザーから注目される存在となっている。

小型・軽量なフルサイズミラーレスとして登場したLUMIX S5。4K/60p動画に対応するなど上位モデルに匹敵する性能を搭載している

小型・軽量なフルサイズミラーレスとして登場したLUMIX S5。4K/60p動画に対応するなど上位モデルに匹敵する性能を搭載している

APS-Cミラーレスに匹敵するコンパクトボディのα7C。キットレンズとして用意されている新しい標準ズームレンズ「FE 28-60mm F4-5.6」を装着した際の重量は約676gと非常に軽い

APS-Cミラーレスに匹敵するコンパクトボディのα7C。キットレンズとして用意されている新しい標準ズームレンズ「FE 28-60mm F4-5.6」を装着した際の重量は約676gと非常に軽い

ニコンも小型・軽量をウリにするフルサイズミラーレスとして「Z 5」を2020年8月に発売した。カメラ自体は上位モデルと比べてコンパクトなわけではないが、沈胴式の新しい標準ズームレンズ「Z 24-50mm f/4-6.3」と組み合わせた場合に高い携帯性を発揮することをアピールしたモデルだ。パナソニックとソニーの小型・軽量モデルとは異なり、液晶モニターは静止画撮影時に扱いやすい上下方向に動くチルト式。2020年12月時点のラインアップでは、ニコンのミラーレスは全6モデルがチルト式になっており、現状では静止画撮影により重きを置いて製品を展開していることが読み取れる。

キットレンズZ 24-50mm f/4-6.3と組み合わせることで、すぐれた携帯性を発揮するZ 5

キットレンズZ 24-50mm f/4-6.3と組み合わせることで、すぐれた携帯性を発揮するZ 5

APS-Cミラーレスでは、2020年11月に登場した富士フイルムの「X-S10」も面白い存在だ。約465g(バッテリー、 メモリーカードを含む)の小型・軽量ボディながら、最大6.0段分の補正効果を発揮するボディ内5軸手ブレ補正を搭載するなどスペックの高さもさることながら、一般的な一眼カメラのようなオーソドックスな操作性を採用したのも注目点。富士フイルムのミラーレスとしては新しいタイプで、ユーザー層の拡大を狙って開発された戦略的なカメラとなっている。

ボディ内5軸手ブレ補正など充実した機能を持つX-S10。いい意味で富士フイルムのミラーレスらしくないオーソドックスな操作性も特徴だ

ボディ内5軸手ブレ補正など充実した機能を持つX-S10。いい意味で富士フイルムのミラーレスらしくないオーソドックスな操作性も特徴だ

これまでにはなかったスタイルのミラーレスとして話題を集めたのが、パナソニックのマイクロフォーサーズ機「LUMIX G100」だ。Vlog撮影を強く意識した小型・軽量モデルで、Nokia社製のOZO Audioを採用した高音質な内蔵マイクや、顔・瞳認識AFに連動して自動で収音範囲を調整する内蔵マイクモード、自分撮り時にピントや露出を自動調整する自撮りモード、スロー&クイック撮影専用モードといった動画撮影に特化した豊富な機能を搭載。トライポッドグリップが付属するキットも用意されている。

LUMIX G100は小型・軽量なマイクロフォーサーズ機で、Vlogなどの動画が撮影しやすい機能を重視したモデルだ

LUMIX G100は小型・軽量なマイクロフォーサーズ機で、Vlogなどの動画が撮影しやすい機能を重視したモデルだ

パナソニックのマイクロフォーサーズでは、2020年11月発売の「LUMIX BGH1」もユニークなカメラだ。動画撮影に特化したボックススタイルのボディに、パナソニックのマイクロフォーサーズとしては初のCinema4K 60p 10 bit記録など充実の動画撮影機能を搭載している

パナソニックのマイクロフォーサーズでは、2020年11月発売の「LUMIX BGH1」もユニークなカメラだ。動画撮影に特化したボックススタイルのボディに、パナソニックのマイクロフォーサーズとしては初のCinema4K 60p 10 bit記録など充実の動画撮影機能を搭載している

エントリー向けミラーレスカメラとしては、キヤノン「EOS Kiss M2」(左、2020年11月発売)、オリンパス「OM-D E-M10 Mark IV」(右、2020年 9月発売)といった後継モデルも登場した

エントリー向けミラーレスカメラとしては、キヤノン「EOS Kiss M2」(左、2020年11月発売)、オリンパス「OM-D E-M10 Mark IV」(右、2020年 9月発売)といった後継モデルも登場した

一眼レフはキヤノンとニコンのフラッグシップがお目見え。ニコン「D780」はユーザー評価の高い1台となった

一眼レフカメラでは、キヤノンとニコンから新しいフラッグシップモデルが登場したのが2020年最大のトピックだった。キヤノンは「EOS-1D X Mark III」を2月に、ニコンは「D6」を6月に発売している。両モデルとも同社一眼レフとして最高となる性能を実現しており、フラッグシップらしい完成度の高さでプロやハイアマチュアユーザーから注目を集めた。また、両モデルとも最後のフラッグシップ一眼レフになる可能性がある点でも話題となった。

EOS-1D X Mark IIIは、光学ファインダー撮影で最高約16コマ/秒、ライブビュー撮影で最高約20コマ/秒(いずれもAF・AE追従)の高速連写を実現したほか、191点の測距点を持つ新開発のAFセンサーも搭載。ライブビュー撮影のAFシステムも高速化しており、全方位で最高性能を実現した一眼レフとして話題となった。動画も4K/60p 4:2:2 10bit動画や、5.5K/60p 12bit RAW動画の本体内記録を実現している。

D6は、AF・AE追従で最高約14コマ/秒の高速連写を実現したほか、105点のAFシステムを新たに採用。各測距点を縦横3列ずつのトリプルセンサー配列にすることで、AFセンサーの密度が従来から約1.6倍高まった高密度なAFシステムなのが特徴で、より確実なピント合わせが可能となっている。

キヤノンの新しいフラッグシップ一眼レフEOS-1D X Mark III。高速連写と高速AFを実現して話題となった

キヤノンの新しいフラッグシップ一眼レフEOS-1D X Mark III。高速連写と高速AFを実現して話題となった

ニコンのフラッグシップ一眼レフとして着実な進化を遂げたD6。従来以上に充実したAF性能を実現したのが特徴だ

ニコンのフラッグシップ一眼レフとして着実な進化を遂げたD6。従来モデル以上に充実したAF性能を実現したのが特徴だ

カメラとしての完成度の高さでは、ニコンのフルサイズ一眼レフ「D780」(2020年1月発売)も2020年を代表するカメラのひとつだ。ユーザーレビューの評価をベースにその年に最も支持された製品を選出する「価格.comプロダクトアワード2020」のカメラ部門で大賞を受賞しており、実際に購入したユーザーから高く評価されている。その理由は、光学ファインダーのAF(D5と同等)とライブビューのAF(Z 6と同等)の両方がハイレベルなことが大きい。ミラーレスから性能をフィードバックするこのタイプの一眼レフは一定の需要があり、来年以降も登場する可能性がある。

光学ファインダーとライブビューの両方で使いやすいAFシステムを持つD780

光学ファインダーとライブビューの両方で使いやすいAFシステムを持つD780

このほかの一眼レフでは、キヤノンのエントリー向けモデル「EOS Kiss X10i」が2020年6月に登場した。2020年に発売になった一眼レフはフラッグシップの2機種を含めて4機種のみで、一眼カメラの市場がミラーレスに完全に移行したことを印象付ける1年となった。

キヤノンのエントリー向け一眼レフEOS Kiss X10i。エントリー向けとしては高いAF性能と使いやすい操作性を持つモデルだ

キヤノンのエントリー向け一眼レフEOS Kiss X10i。エントリー向けとしては高いAF性能と使いやすい操作性を持つモデルだ

コンデジでは人気・高級コンデジの後継、Vlog向けモデル、新コンセプトモデルなどが登場

コンパクトデジカメの市場は縮小しており、2020年の新製品の数は数えるほどしかなかった。それでも個性的なモデルがいくつか登場して話題となった。

富士フイルムは高級コンデジ「X100シリーズ」の新モデル「X100V」を2020年2〜3月に発売した。最新世代の撮像素子と画像処理エンジンを搭載したほか、新開発の23mm/F2レンズや、APS-Cミラーレス「X-Pro3」と同じスペックの「アドバンスト・ハイブリッドビューファインダー」も採用。同シリーズ初となるチルト液晶モニターや防塵・防滴構造なども見どころで、スナップシューターとしての完成度が高く、写真愛好家から高い支持を集めている。

新開発レンズやチルト液晶モニターを搭載するなど、幅広い点で進化を遂げたX100V

新開発レンズやチルト液晶モニターを搭載するなど、幅広い点で進化を遂げたX100V

ソニーからはVlog撮影に特化した1インチコンデジ「VLOGCAM ZV-1」が2020年6月に登場した。「サイバーショット RX100シリーズ」の基本スペックをベースに、バリアングル液晶モニターを採用したほか、自撮り時の背景のぼけ具合を調整できる「背景ボケ切り換え」や、顔の前に置いた商品にスピーディーにピントを合わせる「商品レビュー用設定」といったVlog撮影に便利な機能を搭載。シューティンググリップが付属するキットが用意されるなど、本気度の高いVlog用カメラとして話題を集めた。

商品レビュー動画を撮影する際に便利な機能など、Vlog向けに特化した機能を持つVLOGCAM ZV-1

商品レビュー動画を撮影する際に便利な機能など、Vlog向けに特化した機能を持つVLOGCAM ZV-1

キヤノンが2020年12月に発売した「PowerShot ZOOM」も非常にユニークな製品として話題になった。同社が「望遠鏡型カメラ」と呼ぶ、見ることと撮ることを一体化した新しいコンセプトの超小型カメラで、片目で覗きながら100mm/400mm/800mm(※800mmはデジタルズーム)の焦点距離をワンタッチで切り替えられるという斬新なスタイルを採用している。

PowerShot ZOOMは、元々はクラウドファンディングサイト「Makuake」で台数限定にて販売した製品。人気の高さを受け、2020年12月から一般販売が始まっている

PowerShot ZOOMは、元々はクラウドファンディングサイト「Makuake」で台数限定にて販売した製品。人気の高さを受け、2020年12月から一般販売が始まっている

光学83倍ズームレンズを搭載するニコン「COOLPIX P950」(左、2020年2月発売)と、顕微鏡モードを搭載する防水仕様のリコーイメージング「RICOH WG-70」(右、2020年3月発売)も2020年に登場した新モデルだ

光学83倍ズームレンズを搭載するニコン「COOLPIX P950」(左、2020年2月発売)と、顕微鏡モードを搭載する防水仕様のリコーイメージング「RICOH WG-70」(右、2020年3月発売)も2020年に登場した新モデルだ

まとめ 新時代を印象付けるカメラが登場した2020年。厳しい状況は続くが2021年はさらなる飛躍に期待したい

2020年のカメラ業界はコロナ禍の影響を受けた1年で、業界全体の衰退を印象付けるようなニュースも多かった。いっぽうで、今後の方向性を象徴するようなカメラがいくつか登場し、新しい潮流を感じる1年でもあった。

市場を引っ張る存在のフルサイズミラーレスでは、キヤノンからEOS R5/R6という突き抜けた性能を持つカメラが登場した。2020年の年末時点では頭ひとつ抜け出た存在で、今後、フルサイズミラーレスの高性能モデルはこの2機種を基準に展開していくことになるだろう。ソニー、ニコン、パナソニックといったメーカーがどういったカメラで対抗していくか興味深い。特にニコンはこのまま黙っているはずがなく、2021年はニコンファンが歓喜するようなカメラの登場に期待したいところだ。

フルサイズミラーレスのそう遠くない未来像としては、高性能レンズの光学性能が本領を発揮する6000万画素以上のモデル、本格的な8K撮影に対応する4000万画素台のモデル、より高速な連写が可能な2000〜3000万画素台のモデルといったカテゴリーに分けられていくのではないだろうか。スペック競争として画素数があるのではなく、それぞれの撮影に必要な機能をもとに画素数が決められるようになるはずで、使い方によって最適なカメラが選べる面白い展開になりそうだ。

また、2020年はミラーレス用として魅力的な交換レンズが数多く登場したことも報告しておきたい。特にキヤノンとニコンからは、それぞれの新しいマウントシステムの本領を発揮するフルサイズ用の高性能レンズが続々とリリースされた。サードパーティーでも、タムロンのソニーEマウント用のコンパクトなズームレンズ群や、コシナの「フォクトレンダー」ブランドのMFレンズなどがユーザーから高く評価された。今後ミラーレスについては、「このレンズを使いたいからこのメーカー(このマウント)のカメラを選ぶ」という、カメラ本来の選び方・楽しみ方がさらに広がるような印象を受けた1年だった。

新しい潮流という点では、ソニーとパナソニックから流行りのVlogを意識した機能を搭載した新機軸のカメラが登場したことも記憶に新しい。最近はシネマティックな技法を用いた本格的な映像制作であったり、日常を記録するVlogであったりと動画撮影を楽しむ人が増えてきており、動画特化型の一眼カメラ・コンデジに対するニーズはますます高まっていくと予想される。

いっぽうで、動画撮影にはさほど興味がなく、静止画撮影を重視する(極端にいえば静止画しか撮影しない)というユーザーが多いことも事実。静止画撮影と動画撮影をどう差別化するのかはメーカーの課題だ。2020年を代表するカメラのひとつである、ソニーのα7S IIIは動画ユーザーのニーズをうまく取り込んだことで人気を得たが、今後は静止画ユーザー/動画ユーザーそれぞれのニーズを見極めたカメラ作りが大事になるだろう。特に動画撮影機能については、ユーザーの目が肥えてきていることもあって、スチールカメラの1機能としてアピールする程度の中途半端な機能性では興味を持たれなくなってきており、作り込みが難しいところがある。理想は静止画と動画のハイブリッドだが、静止画撮影と動画撮影はユーザーから求められているものが異なっており、高いレベルで両方を融合するのはなかなか難しいように思う。

あくまでも個人的な印象になるが、都内近郊では、秋ごろからカメラを持ち歩いて気軽に写真撮影を楽しんでいる人が増えているように感じる。一時期は閑散としていた量販店のカメラ売場も、年末にかけて少しずつカメラを求める人が戻ってきているようだ。そうした人々の動きからは、カメラは生活に絶対に必要なものではないかもしれないが、嗜好品としての価値は決して低くなく、「潜在的なニーズは間違いなくある」と感じる次第だ。

ただし、コロナ禍において顧客は製品の価値をシビアに見極めるようになっている。来年以降もデジカメの高性能化・高画質化が進んでいくのは間違いないが、ここまでカメラの性能が高まっている今、より多くの人に「所有したい」「使ってみたい」と思わせるのに重要なのは、やはり「体験」になるのではないだろうか。2020年に人気を集めたカメラを見ても、「新しい撮影体験ができる」と感じさせるものがほとんど。これからのカメラは、いくらすぐれた性能・機能を持っていたとしても、それが新しい体験をもたらさなければ「価値がない」と思われるようになるだろう。

2020年はカメラ業界としては厳しい年になったが、登場したカメラはすばらしい出来栄えのものが多く、新しい時代を感じる年でもあった。需要がある程度戻るであろう2021年は、これまで以上に、多くの人の心に響くカメラの登場に期待できるはずだ。

真柄利行

真柄利行

カメラとAV家電が大好物のライター/レビュアー。雑誌編集や価格.comマガジン編集部デスクを経てフリーランスに。価格.comではこれまでに1000製品以上をレビュー。現在、自宅リビングに移動式の撮影スタジオを構築中です。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
価格.comマガジン プレゼントマンデー
ページトップへ戻る