DJIが、ミッドレンジの空撮用ドローン最新モデル「DJI Air 2S」を2021年4月15日に発表しました。公式サイトの直販価格はスタンダード版が119,900円(税込)、予備バッテリーなどがセットになったFly More コンボ版が165,000円(税込)と比較的手頃です。また、1インチ2000万画素のイメージセンサーを搭載し、高精細な5.4K解像度で動画が撮れるなどスペックも高くなっており、高コスパな1台に仕上がっています。
ここではその実機をDJIから借り、テスト飛行を行ったファーストインプレッションをお届けします。
DJIの最新ドローン「DJI Air 2S」速攻インプレ
今回チェックするのは「DJI Air 2S」のFly Moreコンボ版です。レビュー動画は以下からご覧ください。
主なセット内容は、ドローン本体、コントローラー、バッテリー×3、充電ハブなどです。このほかにも、ショルダーバッグやケーブル、ローター(プロペラ)、説明書なども同梱されており、製品保証プログラムである「DJI Care Refresh(1年間)」も含まれています。
「DJI Air 2S」のFly moreコンボ版
Fly Moreコンボ版にはNDフィルターもセットになっているので、明るい場所での撮影でもシャッターアングル(シャッタースピード)が上がりすぎてパラパラとした映像になるのを防げます。
Fly moreコンボ版にはNDフィルターが付属
従来のMavicシリーズなどと同様に、折りたたみができるので収納時はコンパクトなサイズになります。本体重量は595gで、1バッテリーあたりの飛行可能時間は最長31分です(いずれも公称値)。
Mavicシリーズなどと同様に折りたたみ機構を採用。コンパクトで持ち運びも楽ちんです
4方向への障害物検知機能を備えており、前方、後方、上方、下方にあるデュアル・ビジョン・センサーで障害物を検知して回避したり、自動で飛行できます。また、ドローンの付近を飛ぶ飛行機や、ヘリコプターが発するADS-B(放送型自動位置情報伝送)情報をキャッチし、ドローンのオペレーターに警告を発する「AirSense」システムも備えています。
前方・後方・下方・上方に障害物を検知するデュアル・ビジョン・センサーを搭載します
開封していた時に好印象だったのは、ローターの袋に「A」と「B」と書かれていて、それぞれどこに取り付ければよいか図解されていることです。ローターをつける場所を間違えるとドローンが飛ばないので、そういったトラブルを防ぐ工夫がパッケージに施されているのはありがたい気配りですね。
ローターのパッケージにはそれぞれA、Bと書かれていて、付け間違いがないように工夫されています
ローターをセットして飛行状態に展開。写真右にあるのは、サイズを比較するための「iPhone 12 Pro Max」です
今回のテスト飛行は、福島県にある「ルネサンス棚倉」の協力を得て行いました。同社はDID(人口集中地区)外にある広大な私有地の上空でドローンの飛行や撮影ができる宿泊施設です。趣味の飛行やYouTube動画撮影から映画・ドラマのロケや、企業の実証実験などでの利用に対応しています。
テスト飛行は広大な私有地でドローンのテスト飛行が行える「ルネサンス棚倉」で実施
実際に飛行させてみると、サワサワと揺れる程度の風にはビクともせず非常に安定した飛行が行えました
大きめのローターを搭載しているので、飛行音はそこそこ大きめです。今回は、幸い周囲に人がいない環境だったので問題はありませんでしたが、低空だとかなり迫力のある音がして、50mくらいの高度からでも明らかにドローンが飛んでいることがわかるレベルのブーンという音が聞こえてきます。
ローターの動作音は、50mくらい離れていても聞こえるレベルです
「DJI Air 2S」で撮影した、補正なしの写真は以下の通りです。早朝、逆光気味で明るい空と暗い森が混在する状況ですが、白飛びや黒つぶれが少ない写真で、色味も自然に撮れました。まさに、空飛ぶコンデジといった感じで、シャッターを押すだけで問題のない仕上がりの写真を撮影できる手軽さは魅力です。
DJI「DJI Air 2S」で撮影した写真(補正なし)
また、DJI「DJI Air 2S」には、「マスターショット」と呼ばれる自動飛行、自動撮影モードが搭載されています。スマートフォンの画面上で撮影したい被写体をドラッグ・アンド・ドロップして選択するだけでOKで、後はドローンが自動で被写体を認識、距離や角度を調節しながら2分ほど飛び回り全自動で撮影が行われます。
「マスターショット」には、被写体の自動追尾やひとつの動きだけでの撮影ではなく、複数の動きや距離を組み合わせて撮影を行い、その後アプリが自動で音楽にあわせて編集してくれる機能まであります
実際に全自動で編集と撮影を行なった映像は以下でご覧ください。
空撮の安定感と動きの正確性は驚くほど高いです。これだけのバリエーションのカットをわずか数分で正確にこなせる人は少ないので「人間超えの空撮能力を持つドローン」と言っても過言ではないでしょう。臨機応変な撮影やトリッキーな動きはできませんが、ひらけた場所でテンプレートに沿って素早く空撮を行うには十分です。
実際に撮影した動画(未補正)のスクリーンショットは以下の通りです。
センサーサイズがこのサイズのドローンに搭載されるものとしては大型の1インチとなっており、撮像素子のピッチも 2.4μm と大きめなので、諧調表現がなめらかです。ミラーレスカメラを使って地上で撮影した映像などと組み合わせて使用する場合でも、違和感なく使用できるクオリティとなっています。
今回、実際に「DJI Air 2S」を飛行させて感じたのは「とにかく、頼れる1台だな」ということです。
従来のMavicシリーズから受け継がれ、改良が続けられていたモデルだけに飛行の安定性はピカイチで、4方向の衝突回避センサーも備えていることから、クラッシュのリスクはかなり低くなったと言えるしょう。
プロポからの操作に対する反応が速すぎず、遅すぎずで、ピーキーな挙動ではなく、意図した動きから遅れを感じさせないさじ加減になっているのもよいところ。操作可能距離も最大12 km(日本国内では8kmに制限)と広く、今回のテストでは目視できるギリギリの遠さまで距離を離してみましたが、電波ロストの警告が1度も出ることなく安定した接続が保たれていました。
極め付けは自動で撮影を行う「マスターショット」で、これには「便利だな」と思うと同時に「仕事を奪われる」と不安にさせられるほどでした(笑)。
なにせ、ボタンを押せばあとはすべて自動で撮影が行われるので、地上にいる人間(私)がすることといえば周囲に危険がないか見ている程度。まぁ、はた目からみればボーッと立っているだけです。しかも、実際に撮影できた映像は、ダイナミックなドローンの飛行とジンバルの動作(アングル操作)が組み合わされたものとなっているのです。これには正直、脱帽です。テンプレート的な動きの撮影においては、悔しいけれど「マスターショット」のほうが私が手動で撮影するよりいい動画が撮影できました。
というわけで、「DJI Air 2S」はとても優秀な頼れるドローンで、約12万円という価格を考えればコスパも極めて高いと言えるでしょう。「8K撮影がしたい」「レース用ドローンのような挙動で飛ばしたい」といった特別なニーズを除けば、「DJI Air 2S」は買って間違いなしの空撮ドローンの決定版です。
世界50か国以上を旅したバックパッカー。週刊アスキー編集部などを経て、AppBankに入社。「バイヤーたてさん」として仕入れとYouTubeを活用したコンテンツコマースに取り組み、上場時は広報として企業PRを担当。現在はフリーランスで活動中。