OMデジタルソリューションズは、マイクロフォーサーズ規格のミラーレスカメラ「OLYMPUS PEN E-P7」(以下、PEN E-P7)を2021年6月25日に発売します。OMデジタルソリューションズがオリンパスの映像事業を継承してから初となる製品で、「PENシリーズ」としては2019年11月発売の「PEN E-PL10」から約1年半ぶり、「PEN E-Pシリーズ」としては2013年6月発売の「PEN E-P5」から約8年ぶりとなる新モデル。今回、発売前のPEN E-P7の実機に触れることができたので、デザインや操作性の特徴をいち早くレポートします。
PENシリーズの新モデルPEN E-P7のホワイトカラーモデル(レンズは14-42mm EZレンズキットに付属する「M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ」)。カラーバリエーションとしてシルバーとホワイトの2色が用意されています
PENシリーズは、高品位なフィルムカメラを思わせるような、クラシカルな雰囲気のデザインが特徴のコンパクトなミラーレス。2009年7月に初代モデル「PEN E-P1」が登場して以降、一貫して「シンプルで上質なデザイン」を追求してきましたが、シリーズ最新作のPEN E-P7ではそのデザイン性にさらに磨きがかかっています。ニュースリリースの商品画像を見るだけでも「魅力的なデザインのカメラ」と感じましたが、実機は想像以上の仕上がりです。無駄のないシンプルなフォルムに作り込み度の高いディテールは、PENシリーズだからこそのデザインで、「持つ喜び、撮る喜びを感じるカメラ」に仕上がっていると思います。
PENシリーズらしい、シンプルで上質なデザインを採用。重量は約337g(バッテリー・メモリーカード含む)と軽量です
コンパクトなうえ軽量なのも特徴。ボディサイズは118.3(幅)×68.5(高さ)×38.1(奥行)mmで、重量は337g(バッテリー・メモリーカード含む、以下同)。OMデジタルソリューションズの現行ラインアップの中では最軽量で、エントリーモデルのPEN E-PL10と比べて43g軽くなっています。旧モデルを含めてPENシリーズ全体を見ても、約313gの「PEN Lite E-PL3」、約325gの「PEN Lite E-PL5」「PEN Lite E-PL6」に次ぐ軽量ボディです。14-42mm EZレンズキットに付属する標準ズームレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ」を装着しても総重量は430gに収まります。
PEN E-P7の操作性では、コンパクトなボディながらフロント/リアの2ダイヤルを搭載し、絞り値やシャッタースピード、露出補正などをダイヤルで操作きるようになっています。PEN E-PL10などエントリー向けのE-PLシリーズと比べると、より直感的な操作が可能です。
上面のダイヤルはフロント/リアの2ダイヤル仕様。アルミ削り出しで作られています
さらに、2016年2月発売の高品位モデル「PEN-F」が搭載していた画作り機能「プロファイルコントロール」を継承し、ボディ前面に専用の切り替えスイッチが備わっているのも、この新モデルの特徴。「カラープロファイルコントロール」を使えば、彩度やシェーディング、トーンを調整して仕上がりを追い込むことが可能。「モノクロプロファイルコントロール」は、カラーフィルターや粒状フィルムなどモノクロ表現に欠かせない効果を設定できます。また、PEN-Fでは両プロファイルでそれぞれ3つのプリセットが用意されていましたが、PEN E-P7では4つ目のプリセットとしてカラープロファイル4(クラシックフィルム ソフトトーン)とモノクロプロファイル4(クラシックフィルム ローコントラスト)が追加になりました。
前面に、通常撮影とプロファイルコントロールでの撮影を切り替える専用スイッチを搭載。デザインのアクセントにもなっています
プロファイルコントロールは、彩度(モノクロプロファイルコントロールはカラーフィルター)、シェーディング、明暗などを細かく設定して画作りを追い込めます。彩度は、効果を確認しながら12色それぞれを-5〜+5の11段階で調整できます
トーンは、ハイライト&シャドウコントロール機能を使って明部、暗部、中間部を-7〜+7の15段階で調整できます
カラープロファイルコントロールには、淡くやわらかい色調が得られるカラープロファイル4(クラシックフィルム ソフトトーン)が追加されました
モノクロプロファイルコントロールに追加されたモノクロプロファイル4(クラシックフィルム ローコントラスト)は、コントラストを抑え、やわらかい印象に仕上げるプリセットです
実機に触れてみて、「使う側のことをよく考えている」と感じたのがグリップです。決して深く握れるグリップではないものの縦に長い形状なので薬指の指がかりがよく、また背面に親指を引っかけられるサムグリップもあるので、片手でホールドしながらの持ち運びでもカメラが指から抜けるような感覚が少ないのがいいところ。高品位なデザインとあわせて、このあたりの操作感のよさも「いいカメラ」だと感じさせる点です。
小型カメラとしては比較的縦に長い形状のグリップを採用。背面にはサムグリップもあって、しっくりくるホールド感を実現しています
液晶モニターは上向きに80度、下向きに180度まで動かせる3.0型チルト液晶(約104万ドット)。タッチ操作にも対応しています
モニターを下向きに180度動かすことで自分撮りが可能。自動的に自分撮りモードに切り替わる機能も備わっています
最後にPEN E-P7の主な性能・機能をまとめておきます。
PEN E-P7の基本スペック
・撮像素子:有効約2030万画素 4/3型Live MOSセンサー
・画像処理エンジン:TruePic VIII
・感度:ISO200〜25600(ISO100相当のISO LOW対応)
・手ブレ補正:5軸補正対応、補正効果最大4.5段分
・モニター:3.0型チルト液晶(約 104万ドット、タッチパネル対応)
・記録メディア:SD/SDHC/SDXCカード(UHS-II対応)
・AFシステム:121点(コントラストAF)
・最速シャッタースピード:メカシャッター時1/4000秒、電子シャッター時1/16000秒
・内蔵フラッシュ:ガイドナンバー5.4(ISO100・m)
・動画撮影:4K/30p記録対応
エントリーモデルのPEN E-PL10と比べると、PEN E-P7は、撮像素子の画素数が有効約約1605万画素から有効約2030万画素に向上し、さらに、ボディ内手ブレ補正は5軸補正に対応するようになりました。ボディ内5軸手ブレ補正は最大4.5段分の補正効果を発揮します。
また、SDメモリーカードスロットがUHS-II対応になり、よりレスポンスよく撮影できるようになったのも押さえておきたい点です。AF/AE追従なしでの連写は、メカシャッター時で最高約8.7コマ/秒、電子シャッター時で最高約15コマ/秒に対応。連写の持続性も高く、メカシャッターの8.7コマ/秒連写時はRAW記録でカード容量いっぱいまで、電子シャッターの15コマ/秒連写時は約42コマまで連写を続けられます。
SDメモリーカードスロットは、より高速な書き込みが可能なUHS-IIに対応。対応バッテリーはPEN E-PL10などと同じ「BLS-50」で、撮影可能コマ数は約360枚
このほかの機能性もアップデートされており、大きなところではUSB充電に対応。OM-Dシリーズの上位モデルと同様、撮影モードにBモード(バルブ撮影、タイム撮影)が追加されたほか、カメラ内RAW編集機能は 2通りの設定を編集・記憶できるようになりました。
右側面にUSB Micro-B端子とHDMIマイクロ端子(Type D)を搭載。USB充電にも対応しています
付属のショルダーストラップを取り付けたイメージ。ホワイトカラーモデルにはホワイトのストラップが付属します
※以下に掲載する作例は、PEN E-P7にM.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZを組み合わせてJPEG形式の最高画質で撮影したもの(JPEG撮って出し)になります。一部作例はボディ内RAW現像機能を使い、撮影時からピクチャーモードなどを変更して出力しています。
※サムネイル画像をクリックすると、撮影写真を長辺900ピクセルに縮小した画像が開きます。リサイズを行っていない撮影写真は、サムネイル画像下のテキストリンクをクリックすると開きます。なお、撮影写真は開くのに時間がかかる場合があります。
PEN E-P7、M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ、42mm(35mm判換算84mm)、ISO200、F5.6、1/4000秒、ホワイトバランス:オート、カラープロファイルコントロール:カラープロファイル4(クラシックフィルム ソフトトーン)、JPEG
撮影写真(5184×3888、7.2MB)
PEN E-P7、M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ、14mm(35mm判換算28mm)、ISO200、F6.3、1/640秒、ホワイトバランス:オート、ピクチャーモード:Natural、階調:標準、JPEG
撮影写真(5184×3888、13.5MB)
PEN E-P7、M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ、20mm(35mm判換算40mm)、ISO200、F8、1/60秒、ホワイトバランス:オート、ピクチャーモード:i-Finish、階調:標準、JPEG
撮影写真(5184×3888、14.3MB)
PEN E-P7、M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ、29mm(35mm判換算58mm)、ISO200、F5、1/500秒、ホワイトバランス:オート、ピクチャーモード:Natural、階調:標準、JPEG
撮影写真(5184×3888、10.3MB)
PEN E-P7、M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ、14mm(35mm判換算28mm)、ISO200、F6.3、1/30秒、ホワイトバランス:オート、ピクチャーモード:Flat、階調:標準、JPEG
撮影写真(5184×3888、7.1MB)</small>
PEN E-P7、M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ、14mm(35mm判換算28mm)、ISO200、F8、1/640秒、ホワイトバランス:オート、モノクロプロファイルコントロール:モノクロプロファイル2(クラシックフィルム モノクロ、ハイライト&シャドウコントロール 明部+4 中間部-2 暗部-4)、JPEG
撮影写真(5184×3888、7.1MB)
PEN E-P7、M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ、14mm(35mm判換算28mm)、ISO200、F8、1/1000秒、ホワイトバランス:オート、モノクロプロファイルコントロール:モノクロプロファイル3(クラシックフィルム IR)、JPEG
撮影写真(5184×3888、12.6MB)
PEN E-P7、M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ、14mm(35mm判換算28mm)、ISO200、F3.5、1/2500秒、ホワイトバランス:オート、モノクロプロファイルコントロール:モノクロプロファイル4(クラシックフィルム ローコントラスト)、JPEG
撮影写真(5184×3888、12.0MB)
PEN E-P7、M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ、24mm(35mm判換算48mm)、ISO200、F6.3、1/30秒、ホワイトバランス:オート、アートフィルター:ラフモノクロームI、JPEG
撮影写真(5184×3888、12.9MB)
電子ビューファインダー非搭載でデザイン性にすぐれた軽量ボディ。2ダイヤル仕様の扱いやすい操作性。PEN-Fで好評を得たプロファイルコントロール。最新のマイクロフォーサーズ機として十分な性能・機能。こうした特徴を持つPEN E-P7は、一眼カメラをはじめて使う人からカメラに精通した人まで、幅広い層に響く魅力を持つカメラだと思います。操作性を犠牲にせずに、必要な性能・機能をコンパクトなボディに凝縮したのはPENシリーズの面目躍如と言えるのではないでしょうか。
PENシリーズはここ数年、PEN-Fという特別なモデルは別にして、エントリー向けの「PEN E-PLシリーズ」の展開が続いていました。PEN E-PLシリーズに魅力がないわけではないのですが、OLYMPUSファン、ならびにPENシリーズのファンにとっては、もうワンランク上のモデルを望んでいた人も少なくないはず。PEN E-P7は、そうしたファンにとって待望の新モデルで、高い期待に応えられる仕上がりになっています。
PEN E-P7の市場想定価格(税込)は、ボディ単体が94,000円前後、14-42mm EZレンズキットが108,000円前後。発売前の段階ですが、6月18日時点での価格.com最安価格(税込)はボディ単体が84,150円、14-42mm EZレンズキットが97,020円。この価格に見合う価値があるのは間違いなく、購入後の満足度が高いカメラだと思います。