レビュー

小型・軽量で実売3万円台、キヤノン「RF16mm F2.8 STM」は“超広角入門”にピッタリ

より広い範囲を写せる超広角レンズは、特に風景やスナップの撮影で“あると便利”な1本だ。「景色をワイドに写す」「大きな建築物を画面に収める」「狭い空間を広く撮る」「遠近感を強調する」といった使い方が可能で、撮影の幅を広げてくれるレンズである。今回取り上げる、キヤノンの「RF16mm F2.8 STM」は、ミラーレスカメラ「EOS Rシステム」の交換レンズ「RFレンズ」としては初となる超広角・単焦点レンズ。手のひらサイズのコンパクトな鏡筒と手ごろな価格が魅力の1本だ。その詳細な特徴と画質をレビューしよう。

「RFレンズ」初の超広角・単焦点レンズとして2021年10月下旬に発売になった「RF16mm F2.8 STM」(カメラボディは「EOS R5」)

「RFレンズ」初の超広角・単焦点レンズとして2021年10月下旬に発売になった「RF16mm F2.8 STM」(カメラボディは「EOS R5」)

電子補正を前提にした設計で圧倒的なコンパクトサイズを実現

ミラーレスは、一眼レフと比べてバックフォーカス(レンズ最後端から撮像面までの距離)を短くできるため、レンズの設計自由度が高く、光学性能的には特に広角側で有利になると言われている。事実、ミラーレス用の最新の超広角レンズは、基本的に一眼レフ用よりもコンパクトで高画質だ。なかには、従来を大きく上回る性能向上を実現しているものもある。

とはいえ、そうした高性能なレンズは、たとえミラーレス用といっても、それなりのサイズ・重量で価格も高い。特に、20mm未満の焦点距離に対応する、ミラーレス用の超広角AFレンズは、各メーカーが光学性能の高さを競い合っているようなところがあり、本格的なものが中心のラインアップになっている。そんな中、普及型の超広角レンズとして登場したのが、キヤノンの「RF16mm F2.8 STM」なのである。

「RF16mm F2.8 STM」の主な特徴
・RFマウント用の、焦点距離16mm/開放F2.8の超広角・単焦点レンズ
・約69.2(最大径)×40.2(全長)mm/約165gの小型・軽量設計
・最短撮影距離:0.13m、最大撮影倍率:0.26倍
・7群9枚のレンズ構成(非球面レンズ1枚)
・絞り羽根枚数:7枚(円形絞り)
・STM(ステッピングモーター)による快適なAF
・フォーカスリング兼コントロールリングを搭載、フルタイムMFに対応
・フィルター径:43mm
・別売オプションとしてフード「EW-65C」を用意
・価格.com最安価格37,620円(税込、2022年3月1日時点)

「RF16mm F2.8 STM」の最大の特徴は、カメラ側での電子的な補正を前提にした設計を採用することで、焦点距離16mm/開放F2.8の超広角レンズながら、非常に小さくて軽い鏡筒を実現していること。レンズ収納時のサイズは約69.2(最大径)×40.2(全長)mmで、重量は約165g。ミラーレス用、フルサイズ対応、焦点距離20mm未満、AF対応といった条件を満たす超広角レンズとして重量が200gを切るのは、2022年2月22日時点では、本レンズとサムヤンのEマウント用「AF 18mm F2.8 FE」(約145g)のみ。カメラメーカー純正の超広角レンズとしては、ほかに類を見ないほどのコンパクトなサイズ感に収まっている。

さらに、価格が抑えられているのもうれしい点だ。2022年3月1日時点での価格.com最安価格は37,620円(税込)で、「RFレンズ」の中では「RF50mm F1.8 STM」に次いで安い。小型・軽量でリーズナブルな超広角レンズとして、「RFレンズ」の中でも人気を集める1本となっている。

全長40.2mmで重量約165gの小型・軽量な鏡筒を実現。鏡筒にはフォーカスリング、もしくはコントロールリング(※シャッター速度や絞り値の設定などをカメラ側のメニューで割り当てられる)として機能するリングが備わっている。リングの機能の切り替えは左手側のスイッチで行う

全長40.2mmで重量約165gの小型・軽量な鏡筒を実現。鏡筒にはフォーカスリング、もしくはコントロールリング(※シャッター速度や絞り値の設定などをカメラ側のメニューで割り当てられる)として機能するリングが備わっている。リングの機能の切り替えは左手側のスイッチで行う

カメラの電源をオンにするとレンズが4mmほど繰り出す(画像左)。最短撮影距離時の繰り出し量は約12mm(画像右)

カメラの電源をオンにするとレンズが4mmほど繰り出す(画像左)。最短撮影距離時の繰り出し量は約12mm(画像右)

左が「RF16mm F2.8 STM」で、右が「RFレンズ」の標準レンズ「RF50mm F1.8 STM」(2020年12月発売)。レンズのサイズ感は両者でほぼ同じだ。フィルター径も43mmで共通

左が「RF16mm F2.8 STM」で、右が「RFレンズ」の標準レンズ「RF50mm F1.8 STM」(2020年12月発売)。レンズのサイズ感は両者でほぼ同じだ。フィルター径も43mmで共通

「RFレンズ」の中では低価格な製品だが作りはしっかりしている。マウント部は金属製

「RFレンズ」の中では低価格な製品だが作りはしっかりしている。マウント部は金属製

レンズ構成は、後玉に大口径レンズ、そのひとつ手前に非球面レンズを配置した7群9枚。最短撮影距離0.13m、最大撮影倍率0.26倍のすぐれた近接撮影性能を実現しており、被写体に近づいて、超広角レンズならではの遠近感を強調した写真が撮りやすくなっている。

なお、本レンズは電子的な補正が前提になっており、カメラにレンズを装着すると歪曲収差補正が自動的にオンになる。カメラ内RAW現像時を含めてユーザーが補正のオン・オフを選択することはできない。キヤノン純正のRAW現像ソフト「Digital Photo Professional 4」も、歪曲収差補正については自動的に(補正をオフにした状態でも強制的に)適用される。これは、同じく電子補正を前提とする超広角ズームレンズ「RF14-35mm F4 L IS USM」や標準ズームレンズ「RF24-105mm F4-7.1 IS STM」、高倍率ズームレンズ「RF24-240mm F4-6.3 IS USM」などでも同様だ。また、これらのレンズと同じく、本レンズも基本的に多重露出撮影には非対応となっている(※「EOS R3」は対応)。

歪曲収差補正は自動的に適用される。ユーザーが補正のオン・オフを選択することはできない

歪曲収差補正は自動的に適用される。ユーザーが補正のオン・オフを選択することはできない

別売オプションのレンズフード「EW-65C」を装着したイメージ

別売オプションのレンズフード「EW-65C」を装着したイメージ

実写作例&レビュー

以下に掲載する作例は、「EOS R5」に「RF16mm F2.8 STM」を組み合わせてJPEG形式の最高画質で撮影したもの(JPEG撮って出し)になる。すべての作例で、周辺光量補正:する、歪曲収差補正:する(自動)、デジタルレンズオプティマイザ:する(標準)、の設定にしている。

※サムネイル画像をクリックすると、撮影写真を長辺900ピクセルに縮小した画像が開きます。リサイズを行っていない撮影写真は、サムネイル画像下のテキストリンクをクリックすると開きます。なお、撮影写真は開くのに時間がかかる場合があります。

EOS R5、RF16mm F2.8 STM、F8、1/1000秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG

EOS R5、RF16mm F2.8 STM、F8、1/1000秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG
撮影写真(8192×5464、8.2MB)

EOS R5、RF16mm F2.8 STM、F13、1/320秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG

EOS R5、RF16mm F2.8 STM、F13、1/320秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG
撮影写真(8192×5464、19.5MB)

EOS R5、RF16mm F2.8 STM、F2.8、1/30秒、 ISO100、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG

EOS R5、RF16mm F2.8 STM、F2.8、1/30秒、 ISO100、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG
撮影写真(8192×5464、11.5MB)

EOS R5、RF16mm F2.8 STM、F6.3、1/30秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG

EOS R5、RF16mm F2.8 STM、F6.3、1/30秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG
撮影写真(8192×5464、14.2MB)

EOS R5、RF16mm F2.8 STM、F2.8、1/200秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG

EOS R5、RF16mm F2.8 STM、F2.8、1/200秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG
撮影写真(8192×5464、7.9MB)

EOS R5、RF16mm F2.8 STM、F5、1/13秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG

EOS R5、RF16mm F2.8 STM、F5、1/13秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG
撮影写真(8192×5464、8.6MB)

EOS R5、RF16mm F2.8 STM、F2.8、1/80秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG

EOS R5、RF16mm F2.8 STM、F2.8、1/80秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG
撮影写真(8192×5464、8.4MB)

EOS R5、RF16mm F2.8 STM、F11、1/60秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:ディテール重視、オートライティングオプティマイザ:しない、JPEG

EOS R5、RF16mm F2.8 STM、F11、1/60秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:ディテール重視、オートライティングオプティマイザ:しない、JPEG
撮影写真(8192×5464、10.8MB)

EOS R5、RF16mm F2.8 STM、F2.8、1/4000秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG

EOS R5、RF16mm F2.8 STM、F2.8、1/4000秒、ISO100、ホワイトバランス:オート(雰囲気優先)、ピクチャースタイル:スタンダード、オートライティングオプティマイザ:標準、JPEG
撮影写真(8192×5464、12.4MB)

今回は「EOS R5」との組み合わせで「RF16mm F2.8 STM」を使用してみたが、JPEG撮って出しでは十分に満足できる結果となった。

強い光が当たる場合はピント位置前後で軸上色収差による色付きがわずかに見られるものの、比較的抑えられており、中央付近では絞り開放からシャープな描写が得られる。カメラ側で大幅な歪曲収差補正を行っているため(※レンズ単体の収差は次項目をご覧いただきたい)、さすがに四隅付近では解像感が失われ、流れるような描写になることがある。ただ、カメラ側でうまく処理している印象で、極端に気になるレベルではない。

ボケは、玉ボケの輪郭に色付きがあって少し硬い感じがする場合があるが、思った以上に自然なボケ方なのが好印象。逆光耐性も悪くなく、強い光源を画面に入れてもフレア・ゴーストは出にくかった。補正をオンにしてある程度絞っても周辺光量落ちが残る場合があるなど、画面全体の均一性という点では気になるところはあるが、コンパクトなサイズを考慮すると「これで十分」と思える画質ではないだろうか。

AFについては、使用したカメラボディ「EOS R5」の性能の高さもあって、ストレスのないピント合わせが行えた。ギアタイプのSTM(ステッピングモーター)なのでわずかに駆動音が出るし、フォーカスブリージング(フォーカシングによる画角変化)もやや目立つが、ワンショットAFの静止画撮影で使う分には申し分ない性能だ。

参考 レンズ単体の歪曲収差・周辺光量落ちをチェック

ここでは、「RF16mm F2.8 STM」単体での収差具合がわかる比較画像を参考までにいくつか掲載しよう。各画像の左は、電子的な補正(歪曲収差補正+周辺光量補正)が入ったJPEG撮って出しの写真で、右は、「Adobe Photoshop」の「Camera Raw」プラグインを使用して、補正のない(レンズプロファイル未適用の)RAWデータをそのまま現像したものになる。

絞り値F2.8の比較画像。左は電子補正あり(JPEG撮影)、右は電子補正なし(レンズプロファイル未適用)

絞り値F2.8の比較画像。左は電子補正あり(JPEG撮影)、右は電子補正なし(レンズプロファイル未適用)

絞り値F5.6の比較画像。左は電子補正あり(JPEG撮影)、右は電子補正なし(レンズプロファイル未適用)

絞り値F5.6の比較画像。左は電子補正あり(JPEG撮影)、右は電子補正なし(レンズプロファイル未適用)

絞り値F8の比較画像。左は電子補正あり(JPEG撮影)、右は電子補正なし(レンズプロファイル未適用)

絞り値F8の比較画像。左は電子補正あり(JPEG撮影)、右は電子補正なし(レンズプロファイル未適用)

上の画像を見ると、レンズ単体では、かなり大きな歪曲収差が発生することがわかる。広角レンズ特有のタル型の収差で、撮影距離によっては四隅がケラレるほどの歪みになることもある。電子補正なしでは成立しないレベルであり、カメラ側では画像を大きく引き伸ばすような処理を行っているようだ。また、レンズ単体では周辺光量落ちも目立つ。撮影距離によって落ち方も変わるようでクセがある。

ここまでの大きな歪曲収差と周辺光量落ちは、「RFレンズ」では「RF24-105mm F4-7.1 IS STM」や「RF24-240mm F4-6.3 IS USM」の広角端で見られるし、他メーカーのミラーレス用レンズでも近いレベルのものはある。ただ、キヤノンのフルサイズ対応の単焦点レンズとしては、ここまで割り切った設計なのは本レンズが初めてではないだろうか。

このレベルの歪曲収差と周辺光量落ちを手動で適切に処理するのはなかなか難しい(逆の見方をすれば、カメラ側の画像処理でうまく補正していると言える)。サードパーティー製ソフトでRAW現像を行うのなら、本レンズ用のレンズプロファイルを用意しているものを選びたいところだ。2022年2月22日時点では、「Adobe Photoshop Lightroom」「Adobe Photoshop」(Camera Rawプラグイン)や「DxO PhotoLab 5」などには対応のプロファイルが用意されている。

ちなみに、Adobeの「RFレンズ」用のレンズプロファイルは、画像の引き伸ばしを極力抑える補正になっているものが多い。本レンズのプロファイルもそういう設定になっていて、引き伸ばしが少ない分、RAW現像時には、撮って出しのJPEG写真よりひと回り広い画角の画像になる。フレーミングの外側が含まれるようになるため、撮影時のイメージにするにはトリミングが必要になるが、自力で周辺部の画質を追い込む場合に画像を広く使えるのはありがたい。

左は撮って出しのJPEG写真で、右は「Adobe Photoshop」の「Camera Raw」プラグインを使用して、RAWデータにレンズプロファイルを適用したものになる。右のほうが画角の広い画像になっている

左は撮って出しのJPEG写真で、右は「Adobe Photoshop」の「Camera Raw」プラグインを使用して、RAWデータにレンズプロファイルを適用したものになる。右のほうが画角の広い画像になっている

まとめ 手軽に超広角の世界を楽しめる1本。画質は実用的に十分なレベル

「RF16mm F2.8 STM」は、カメラメーカー純正のフルサイズ対応・超広角レンズとしては、これまでにはなかった小型・軽量化と、実売3万円台という低価格を実現しているのが魅力。「小さくて安い超広角レンズが欲しい」という声に応える、「はじめての超広角レンズ」にピッタリの製品だ。

もちろん、最新の高額かつ高性能なレンズと比べると画質や機能で追い付いていない部分はある。画質は電子的な補正が前提になっているし、フォーカスブリージングも目立つ。だが、本レンズは、そうしたネガティブな点を補って余りある魅力がある。特に、焦点距離16mmの超広角ながら、カメラバッグの中に入れて持ち運んでも負担にならないサイズ感なのがいい。画質についても実用的には十分なレベルだ。

「EOS Rシステム」のユーザーで、超広角域をカバーするレンズを持っていないのであれば、手に入れて損はない。気軽に持ち出せるので「超広角の世界」を存分に楽しめるはずだ。

真柄利行(編集部)

真柄利行(編集部)

フリーランスから価格.comマガジン編集部に舞い戻った、カメラが大好物のライター/編集者。夜、眠りに落ちる瞬間までカメラやレンズのことを考えながら生きています。

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