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デジタルカメラの「付属のUSBケーブルをご使用ください」にはちゃんとしたワケがある!?

USB Type-C端子を採用するデジタルカメラが増えていますが、その使い方には意外な落とし穴があります

USB Type-C端子を採用するデジタルカメラが増えていますが、その使い方には意外な落とし穴があります

最新のデジタルカメラは、そのほとんどが搭載するUSB端子に「USB Type-C」を採用しています。USB Type-Cが便利なのは、カメラのUSB 端子にUSBケーブルを接続するだけで、撮影データの転送やバッテリーの充電ができてしまうこと。実際に使っている人にはわかってもらえると思いますが、これは本当に便利で、「もうUSB Type-C端子以外は使いたくない」と思うほどです。

ところが、巷では「カメラからPCへのデータ転送がやたらと遅い!」とか「USB充電だとやたらに時間がかかる!」といった問題がメーカーに寄せられているそうです。そして、メーカーに問い合わせをすると「付属のUSBケーブルをご使用ください」と回答されることが多いとか。せっかく便利になったUSB Type-C接続だというのに、これは一体どうしたことでしょうか?

結論から言えば、やっぱり付属のUSBケーブルを使ったほうがよいのです。その理由をご説明しましょう。時間のない人は最後のまとめだけでも、ぜひご一読ください。

カメラのUSB対応状況を確認しよう

先にも述べたように、最新のデジタルカメラの多くはUSB Type-C端子を採用しています。上下どちらの向きでも接続できますし、デジタルカメラ以外の機器も最近はUSB Type-C端子を採用していますので、互換性が高くて非常に便利です。ただ、端子の形状が、(USB マイクロ端子などから)変わっただけではないことには、注意が必要です。

最新のデジタルカメラの多くはUSB Type-C端子を採用しています。写真は富士フイルム「X-H2」のUSB端子部

最新のデジタルカメラの多くはUSB Type-C端子を採用しています。写真は富士フイルム「X-H2」のUSB端子部

たとえば、筆者所有の最新デジタルカメラでいうと、ソニーの「α7 IV」や富士フイルムの「X-H2」などは、いずれもUSB Type-C端子を採用しており、同時にUSB 3.2 Gen2とUSB Power Delivery(USB PD)という規格にも対応しています。

富士フイルム「X-H2」の付属USBケーブル。両端がUSB Type-C端子で、ノイズ対策用のフェライトコアもある結構立派なUSBケーブルです

富士フイルム「X-H2」の付属USBケーブル。両端がUSB Type-C端子で、ノイズ対策用のフェライトコアもある結構立派なUSBケーブルです

同じUSB Type-C端子でも、USB 2.0、USB 3.2 Gen1(USB 3.0)、USB 3.2 Gen2(USB 3.1)と規格の違い(リビジョン)があり、転送速度はUSB 2.0が480Mbps、USB 3.2 Gen1が5Gbps、USB 3.2 Gen2が10Gbpsという違いがあります。同じUSB Type-C端子でも、USB 2.0とUSB 3.2 Gen2では、転送速度に20倍以上もの差があるのです。

ソニー「α7 IV」の付属USBケーブル。片方がUSB Type-C端子で、もう片方はUSB Type-A端子です

ソニー「α7 IV」の付属USBケーブル。片方がUSB Type-C端子で、もう片方はUSB Type-A端子です

また、さらに、同じUSB Type-C端子のケーブルでも、供給できる電力の大きさに違いがあります。最新のデジタルカメラはUSB PDに対応した製品が増えていますが、これに対応しているかどうかで、USB充電にかかる時間は何倍も変わってきます。

USB Type-Cケーブルにも種類がある

「USBの規格にもいろいろあるんだなあ」ということがわかったところで、USBケーブルの種類に話を移しましょう。実はUSBケーブルにも種類があって、対応する規格が異なります。それらが同じUSB Type-C端子の形状だから話がややこしいんです。

先に説明したように、USB Type-Cには、USB 2.0、USB 3.2 Gen1(USB 3.0)、USB 3.2 Gen2(USB 3.1)があって(もっと上の規格もありますが、現状ではデジタルカメラが非対応ですので、今回は省略します)、それぞれに対してケーブルの対応も異なるのです。

USB 3.2 Gen2(USB 3.1)のケーブル(カメラ付属のケーブルではありません)。「SS」の表記は「SuperSpeed」の略で、一般的には「USB 3.0」以上を表します。また、「10」の表記から転送速度が10Gbpsであることがわかります

USB 3.2 Gen2(USB 3.1)のケーブル(カメラ付属のケーブルではありません)。「SS」の表記は「SuperSpeed」の略で、一般的には「USB 3.0」以上を表します。また、「10」の表記から転送速度が10Gbpsであることがわかります

つまり、USB 2.0にはUSB 2.0対応ケーブルが、USB 3.2 Gen1(USB 3.0)にはUSB 3.2 Gen1(USB 3.0)対応ケーブルが、USB 3.2 Gen2(USB 3.1)にはUSB 3.2 Gen2(USB 3.1)対応ケーブルがあるということです。上位のUSB規格は基本的に下位のUSB規格をサポートしていますので、そこは問題ありませんが、たちの悪いことにUSB Type-Cケーブルの規格対応は、製品に表示されている場合もあったり、されていない場合もあったりです。というより、されていない場合が結構多いです。

富士フイルム「X-H2」の付属USBケーブルの端子部ですが、仕様は何も表記されていません。表記のないUSBケーブルは珍しくなく混乱してしまいます

富士フイルム「X-H2」の付属USBケーブルの端子部ですが、仕様は何も表記されていません。表記のないUSBケーブルは珍しくなく混乱してしまいます

また、ややこしい話になってしまいましたが、ここでは「USB Type-Cケーブルは対応する規格ごとに違いがあって、下位互換は可能でも上位互換は不可能」と考えてもらえればオッケーです。

こちらは何かの家電に付いていたUSB2.0のケーブル。便利なので使いまわしていますが、これをデジタルカメラで使うと……

こちらは何かの家電に付いていたUSB2.0のケーブル。便利なので使いまわしていますが、これをデジタルカメラで使うと……

カメラからの画像/映像転送が異常に遅い! そのワケは?

ここまでくると、かなり理由が見えてきたのではないかと思います。

同じUSB Type-CでもUSB 2.0対応やUSB 3.2 Gen1(USB 3.0)対応のUSBケーブルだと、転送速度は遅くなってしまいます。カメラやPCの端子がUSB 3.2 Gen2(USB 3.1)対応でも、USBケーブルがUSB 2.0だと、それがボトルネックとなってUSB 2.0の速度しかでないというわけです。

・USB 3.2 Gen2(USB 3.1)の理論上の最大転送速度は10Gbps(10000Mbps)
・USB 3.2 Gen1(USB 3.0)の理論上の最大転送速度は5Gbps(5000Mbps)
・USB 2.0の理論上の最大転送速度は480Mbps

最新のデジタルカメラの多くが対応するUSB 3.2 Gen2(USB 3.1)に対して、USB 3.2 Gen1(USB 3.0)だと転送速度は半分に、USB 2.0だと1/20以下にまで遅くなってしまいます。

試しに、手持ちのミラーレスカメラ、ソニー「α7 IV」をPCのUSBポートに接続し、USBケーブルのタイプだけを変えながら、JPEG画像500枚+RAWデータ500枚の計1000枚を転送するテストを行ってみました。もちろん、カメラもPCもUSB 3.2 Gen2(USB 3.1)対応しており、カメラで使用しているメモリーカードはCFexpress Type Aです。

・USB 3.2 Gen2(USB 3.1)ケーブル(付属のケーブル) 46秒
・USB 3.2 Gen1(USB 3.0)ケーブル 52秒
・USB 2.0ケーブル 8分24秒

計1000枚のデータを使っての転送テストの結果

計1000枚のデータを使っての転送テストの結果

USBケーブルを変えただけで、どのくらい転送速度に違いがあるのかを視覚化してみました。転送速度はUSB ケーブル以外の要因も影響するため、さすがに理論値どおりにはいきませんが、それでも、それぞれの間には転送速度に違いがあることがわかると思います。特にUSB 2.0ケーブルとほかのUSBケーブルとの差は圧倒的です。

付属のUSBケーブルを使えば、難しいことを考えなくても、高速な転送速度を得られます。

充電が異常に遅い! できない! そのワケは?

USBは元々電力供給ができる規格なのですが、その電力供給量もUSBのタイプによって異なります。

USB 2.0は最大2.5W(5V/500mA)で、USB 3.2 Gen1(USB 3.0)とUSB 3.2 Gen2(USB 3.1)は最大4.5W(5V/900mA)です。ただ、この供給量ではデジタルカメラのバッテリーを充電するには少ないので、充電完了までにかなりの時間がかかります。

富士フイルム「X-H2」の付属USBケーブル。両端がUSB Type-C端子で、なおかつUSB PDに対応しています

富士フイルム「X-H2」の付属USBケーブル。両端がUSB Type-C端子で、なおかつUSB PDに対応しています

そこで最近のデジタルカメラでは、USB PDという規格に対応する製品が増えています。USB PDはケーブルの両端がUSB Type-C端子に対応した給電規格のひとつで、最大で240W(48V/5A)もの大電力を供給できるというもの。これならデジタルカメラの充電も、早く完了することが可能です。

富士フイルム「X-H2」の付属のUSB ACアダプター。USB PD対応で15W(5V/3A)と高出力。USB充電でも早く充電することができます

富士フイルム「X-H2」の付属のUSB ACアダプター。USB PD対応で15W(5V/3A)と高出力。USB充電でも早く充電することができます

USB PDで充電する際に問題となるのが、またもやUSBケーブルです。USB PDはあくまで給電規格なので、USB Type-C端子であればUSB 2.0でもUSB 3.2 Gen1(USB 3.0)でも対応可能ですが、対応していないUSBケーブルだと前述のわずかな電力しか供給できなくなってしまいます。モノによっては供給電力が低すぎるのか、まったく充電できない場合もあります。

ソニー「α7 IV」の付属USBケーブル。片方がUSB Type-C端子で、もう片方はUSB Type-A端子です

ソニー「α7 IV」の付属USBケーブル。片方がUSB Type-C端子で、もう片方はUSB Type-A端子です

ソニー「α7 IV」の付属USB ケーブルは、片方がUSB Type-C端子で、もう片方はUSB Type-A端子になっています。これだとUSB PDに対応できないわけですが、これは付属のACアダプターの出力が7.5W(5.0V/1.5A)のため。USB PDには対応していませんが、USB Battery Charging specification 1.2(USB BC 1.2)という、USB3.Xに採用される別の規格に対応しているため、通常の4.5W(5V/900mA)よりも電力量の多い7.5W(5V/1500mA)で充電できます。

ソニー「α7 IV」の付属のUSB ACアダプター。USB PDに対応していませんが、USB BC 1.2対応で7.5W(5V/1.5A)の充電が可能です

ソニー「α7 IV」の付属のUSB ACアダプター。USB PDに対応していませんが、USB BC 1.2対応で7.5W(5V/1.5A)の充電が可能です

「α7 IV」本体はUSB PDに対応していますので、ACアダプターとUSBケーブルもUSB PDに対応してほしかったというのが本音ではありますが、付属のACアダプターを最大限生かすという意味では、付属USBケーブルは十分な用途を足していると言えます。ちなみに、USB PD対応で高出力なACアダプターやモバイルバッテリー、USBケーブルを別途用意すれば付属品より早く充電できますが、その話はまた別の機会に。

USB Type-C端子だからといって、テキトーなケーブルを使うと、充電完了までに非常に時間がかかることがあります

USB Type-C端子だからといって、テキトーなケーブルを使うと、充電完了までに非常に時間がかかることがあります

USB PDに対応する最新のデジタルカメラを買ったのに、USB充電にやたら時間がかかる、もしくはできないという場合は、使用しているUSBケーブルがUSB PDに対応しているかどうか確認してみましょう。というより、付属のUSBケーブルを使えば何も問題ありません。

カメラによっては充電だけでなく給電も可能なものもありますが、給電の場合も状況は同じです。

まとめ 困ったら迷ったら付属のUSBケーブルを使いましょう

というわけで、「カメラからPCへのデータ転送がやたらと遅い!」とか「USB充電だとやたらに時間がかかる!」といった問題は、同じUSB Type-C端子のケーブルでも、種類(リビジョン)や給電規格の違いが原因となっている可能性がある、という話でした。

とは言っても、同じ形をしたUSBケーブルの違いを理解するのは、なかなか大変なことです。USBケーブルの中には規格などの表記が何もないものも珍しくありません。ではどうすればいいのかというと「付属のUSBケーブルをご使用ください」となるわけです。

そもそも付属のUSBケーブルは、決してオマケで同梱されているわけではありません。メーカーが自社のデジタルカメラの性能を滞りなく生かせるように、しっかり動作確認されたものです。

それでも、もっと長いケーブルが必要になったり、ケーブルを破損してしまったりなど、別途USBケーブルを用意しなければならないこともあるかと思います。そうした場合は、USBケーブルの規格などをよく理解したうえで、正しい製品を選択できるようにするとよいと思います。

曽根原 昇

曽根原 昇

信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌などで執筆もしている。写真展に「エイレホンメ 白夜に直ぐ」(リコーイメージングスクエア新宿)、「冬に紡ぎき −On the Baltic Small Island−」(ソニーイメージングギャラリー銀座)、「バルトの小島とコーカサスの南」(MONO GRAPHY Camera & Art)など。

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