レビュー

待望の“手が届く”超望遠ズーム「NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR」レビュー

「NIKKOR Zレンズ」の新しい超望遠ズーム「NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR」の画質や操作性などをチェックしました

「NIKKOR Zレンズ」の新しい超望遠ズーム「NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR」の画質や操作性などをチェックしました

「NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR」はZマウント用の新しい超望遠ズームレンズ。現時点で「NIKKOR Zレンズ」のズームレンズとして最も長い焦点距離に対応する注目モデルです。発売日は2023年8月17日頃に発表される予定とのこと。
※2023年8月17日追記:本レンズが2023年8月31日に発売されることが決定しました。

ニコンのミラーレスカメラ「Zシリーズ」といえば、2021年12月に「Z 9」、2023年5月に「Z 8」と、非常にすぐれたAF性能と連写性能を持つモデルが登場しています。こうした高性能カメラと組み合わせて動物や鳥、乗り物などの動体を撮影したい人にとって、本レンズはまさに待望の製品と言ってよいのではないでしょうか。

バランスのよい軽量設計で手持ち撮影も可能

今回は、ニコンの最新フルサイズミラーレス「Z 8」と組み合わせて試用しました

今回は、ニコンの最新フルサイズミラーレス「Z 8」と組み合わせて試用しました

本レンズのサイズは約110(最大径)×315.5(全長)mmで、重量は約2140g(三脚座を含む)です。これは、よく似たスペックのソニー「FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS」やシグマ「150-600mm F5-6.3 DG DN OS | Sports」とそれほど大きな違いはありません。最新の超望遠ズームレンズとしては標準的なサイズと重さだと思います。

ただ、本レンズはカメラに装着したときの重量バランスがとてもよいため、手もちでの撮影でもそれほど大きさ・重さは苦になりません。実際に、齢を重ねて体力の衰えを切々と感じる筆者でも、今回の試写では、多くの作例を手持ちで撮ることができました。

シンプルで使いやすい操作系

本レンズはインターナルズームを採用しているため、ズーミングしても全長が変わりません。インターナルズームが万能というわけではありませんが、本レンズのような超望遠ズームだととてもありがたいです。重心の変化がほとんどないため安定してカメラを構えられますし、自重落下もないので上向きでの撮影時や移動時の勝手な伸縮も心配いりません。

インターナルズームを採用しているのでズーム時の全長変化はありません

インターナルズームを採用しているのでズーム時の全長変化はありません

ズームリングは幅広で回しやすく、回転角度は70度。広角端から望遠端まで一気にズーミングできるうえ、微調整もしやすいです。その先には、フォーカスロックなど好みの機能を割り当てられる「L-Fnボタン」(レンズファンクションボタン)が上下左右に4個装備されています。どのようにカメラを構えでもボタンにアクセスしやすくなっています。

良好な操作性のズームリングを採用。「L-Fnボタン」は計4つ備わっています

良好な操作性のズームリングを採用。「L-Fnボタン」は計4つ備わっています

鏡筒に装備されるスイッチ類は、「フォーカスモード切り換えスイッチ」と「フォーカス制限切り換えスイッチ」の2つ。「NIKKOR Zレンズ」の望遠系ズームでは標準的な仕様で、シンプルな分、操作に迷うことが少なく使いやすいと感じました。

スイッチ類は「フォーカスモード切り換えスイッチ」と「フォーカス制限切り換えスイッチ」の2つ

スイッチ類は「フォーカスモード切り換えスイッチ」と「フォーカス制限切り換えスイッチ」の2つ

レンズフード「HB-109」が同梱されています

レンズフード「HB-109」が同梱されています

広角端と望遠端で解像性能をチェック

それでは、いつもどおり、絞り開放時の解像性能を見ていきたいと思います。

広角端180mm/絞り値F5.6で撮影

まず中心部の解像感にほれぼれとさせられるのですが、それが周辺部、さらには四隅に及んでも、ほとんど劣化することなく維持されています。結果的に、画面全体にスッキリと心地よい安定感が広がっており、広角端における解像性能に関しては絞り開放から非常に高いと言って問題ないと思います。

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、180mm、F5.6、1/100秒、ISO64、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード撮影写真(8256×5504、38.2MB)

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、180mm、F5.6、1/100秒、ISO64、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(8256×5504、38.2MB)

望遠端600mm/絞り値F6.3で撮影

次は望遠端での撮影ですが、こちらも画面の中心部から周辺部に至るまで、非常に高い解像感を見せてくれています。被写体を画面の中心でなく周辺部に配置する構図はよくあることですが、そうした場合でも本レンズの高い解像性能は安心感をもたらしてくれます。

ただ、周辺部ではピント位置が少し外れたところ(つまりボケ始めたところ)の像が、やや目立って乱れる傾向が見られました。細やかなことではありますが、気になる場合は絞り値の設定などで調整したほうがよいかもしれません。

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、600mm、F6.3、1/125秒、ISO64、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード撮影写真(8256×5504、33.1MB)

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、600mm、F6.3、1/125秒、ISO64、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(8256×5504、33.1MB)

広角端、望遠端とも諸収差や色収差などはほとんど見られず、画面全体でシャープな画を楽しめることは間違いありません。スペック的には絞り開放で撮影する機会が多くなると思いますので、この安定した高画質は心強い限りです。また、設計段階から周辺光量の低下に配慮しているとのことで、画面中心だけが明るい写真にならないところも秀逸です。

最新ミラーレスに追従するすぐれたAF性能

本レンズは超望遠ズームですので、動物や鳥など素早く動く遠くの被写体を撮影する機会が多くなることでしょう。そうした素早い動きの被写体に対して重要なのがAF性能です。鳥の撮影で本レンズのAFをチェックしてみました。なお、この項目での撮影はすべて手持ち撮影で行い、フリーな状態で鳥の動きを追っています。

作例1

飛翔をしていない、とまっている鳥などは、何の問題もなく素早く正確に合焦しました。今回使用した「Z 8」は、被写体検出で鳥およびその瞳を自動的にとらえてくれます。

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、600mm、F6.3、1/1600秒、ISO500、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード、[C60]連写のプリキャプチャー機能で撮影撮影写真(5392×3592、5.6MB)

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、600mm、F6.3、1/1600秒、ISO500、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード、[C60]連写のプリキャプチャー機能で撮影
撮影写真(5392×3592、5.6MB)

作例2

水浴びをしながらジャンプして上下に動く鳥なども素早く正確に合焦し続けてくれました。

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、600mm、F6.3、1/1600秒、ISO360、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード、[C60](約60コマ/秒連写、DXフォーマット)のプリキャプチャー機能で撮影撮影写真(5392×3592、6.0MB)

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、600mm、F6.3、1/1600秒、ISO360、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード、[C60](約60コマ/秒連写、DXフォーマット)のプリキャプチャー機能で撮影
撮影写真(5392×3592、6.0MB)

作例3

こちらに向かって飛翔中の鳥でも、撮り始めてから1〜3コマ以内で完全に合焦を完了し、その後安定して捕捉を続けてくれました。

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、570mm、F6.3、1/2000秒、ISO360、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード、[C60](約60コマ/秒連写、DXフォーマット)のプリキャプチャー機能で撮影撮影写真(5392×3592、2.5MB)

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、570mm、F6.3、1/2000秒、ISO360、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード、[C60](約60コマ/秒連写、DXフォーマット)のプリキャプチャー機能で撮影
撮影写真(5392×3592、2.5MB)

作例4

止まっている状態から飛び立つような急激な動きの変化でも、飛翔中と同じように1〜3コマ以内で完全に合焦を完了してくれます。「Z 8」は連写速度が非常に高速ですので、最初の1〜3コマで起こる微妙なピントのズレなどはほとんど問題になりません。

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、600mm、F6.3、1/1600秒、ISO640、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード、[C60](約60コマ/秒連写、DXフォーマット)のプリキャプチャー機能で撮影撮影写真(5392×3592、6.0MB)

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、600mm、F6.3、1/1600秒、ISO640、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード、[C60](約60コマ/秒連写、DXフォーマット)のプリキャプチャー機能で撮影
撮影写真(5392×3592、6.0MB)

本レンズはステッピングモーターを採用した最新レンズということもあって、AFの素早さとレスポンスのよさ、さらに静粛性についても、万全の性能があると言って問題ないでしょう。「Z 8」のAF性能が際だってすぐれているということもあると思いますが、その「Z 8」と連携しながら性能を発揮しているところが、“純正”である本レンズのよさだと思いました。

作例5

プリキャプチャー機能を使わない通常の連写撮影でも、AF性能は高速かつ高精度に動作してくれました。

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、600mm、F7.1、1/2500秒、ISO640、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード、20コマ/秒連写で撮影撮影写真(8356×5504、10.8MB)

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、600mm、F7.1、1/2500秒、ISO640、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード、20コマ/秒連写で撮影
撮影写真(8356×5504、10.8MB)

テレコンバーター使用で最大1200mmでの撮影が可能

本レンズは、「Z TELECONVERTER TC-1.4x」および「Z TELECONVERTER TC-2.0x」のテレコンバーターに対応しています。テレコンバーターはレンズ単体の像を光学的に拡大するもの。元の画像にアラがあると、そのアラまで拡大されてしまうのですが、本レンズの光学性能は優秀ですので、拡大したとしても問題はないということでの対応というわけです。

「Z TELECONVERTER TC-1.4x」(左)、「Z TELECONVERTER TC-2.0x」(右)を装着して焦点距離を伸ばすことが可能

「Z TELECONVERTER TC-1.4x」(左)、「Z TELECONVERTER TC-2.0x」(右)を装着して焦点距離を伸ばすことが可能

レンズ単体で撮影(焦点距離600mm)

テレコンバーターを使用せず、レンズ単体で撮るとシラサギのサイズが中途半端で、いまひとつ画にならないところ。

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、600mm、F9、1/1600秒、ISO640、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード撮影写真(8356×5504、19.4MB)

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、600mm、F9、1/1600秒、ISO640、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(8356×5504、19.4MB)

「Z TELECONVERTER TC-1.4x」を使って撮影(焦点距離840mm)

「Z TELECONVERTER TC-1.4x」を装着すると最大で焦点距離840mmまでの撮影ができるようになります。主要被写体をより大きく写すことができ、この条件下においては、少なくとも何を撮りたかったかを主張できる写真にはなったと思います。

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、840mm、F9、1/1600秒、ISO900、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード、Z TELECONVERTER TC-1.4xを使用撮影写真(8356×5504、19.7MB)

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、840mm、F9、1/1600秒、ISO900、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード、Z TELECONVERTER TC-1.4xを使用
撮影写真(8356×5504、19.7MB)

「Z TELECONVERTER TC-2.0x」を使って撮影(焦点距離1200mm)

さらに「Z TELECONVERTER TC-2.0x」を装着すると最大で1200mmまで焦点距離が拡大します。目的の被写体を十分なサイズで写すことができ、文句なく「シラサギを大きく撮りました」と言えるようになりました。

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、1200mm、F13、1/1600秒、ISO1600、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード、Z TELECONVERTER TC-2.0xを使用撮影写真(8356×5504、19.8MB)

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、1200mm、F13、1/1600秒、ISO1600、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード、Z TELECONVERTER TC-2.0xを使用
撮影写真(8356×5504、19.8MB)

500〜600mmの焦点距離が標準といわれる野鳥撮影ですが、さらにもっと大きく撮りたいと思ったときに、テレコンバーター対応はありがたいことだと思います。

「Z TELECONVERTER TC-2.0x」を使って撮影(焦点距離1200mm)

警戒心が強くなかなか近寄らせてくれないミヤコドリという鳥ですが、「Z TELECONVERTER TC-2.0x」装着時の焦点距離1200mmのおかげで大きく撮ることができました。

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、1200mm、F13、1/1600秒、ISO2500、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード、Z TELECONVERTER TC-2.0xを使用撮影写真(8356×5504、19.2MB)

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、1200mm、F13、1/1600秒、ISO2500、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード、Z TELECONVERTER TC-2.0xを使用
撮影写真(8356×5504、19.2MB)

そのほかの作例からレンズの特徴を紹介

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、600mm、F6.3、1/20秒、ISO6400、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード撮影写真(8356×5504、20.9MB)

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、600mm、F6.3、1/20秒、ISO6400、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(8356×5504、20.9MB)

本レンズの最大撮影倍率は0.25倍。いわゆる1/4倍マクロということになりますので、超望遠ズームとしてはかなり優秀な近接撮影性能です。ネイチャー撮影などではさまざまなシーンで重宝しますし、望遠端での最短撮影距離(2.4m)をクリアすれば屋内撮影でも活躍すると思います。また「Z TELECONVERTER TC-2.0x」を装着した場合、最大撮影倍率0.5倍のハーフマクロ撮影が可能です。

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、600mm、F6.3、1/60秒、ISO400、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード撮影写真(8356×5504、17.4MB)

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、600mm、F6.3、1/60秒、ISO400、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(8356×5504、17.4MB)

レンズ名称に「VR」が含まれているとおり、本レンズは光学式の手ブレ補正機能を搭載しています。手ブレ補正効果は最大5.5段となかなかに強力で、手ブレとの闘いになる超望遠撮影の心強い味方となってくれます。ローアングルでの手持ち撮影でシャッター速度1/60秒と、厳しい条件ではありましたが見事に手ブレを抑えてくれました。

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、480mm、F10、1/4000秒、ISO3200、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード、[C60](約60コマ/秒連写、DXフォーマット)のプリキャプチャー機能で撮影撮影写真(5392×3592、6.2MB)

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、480mm、F10、1/4000秒、ISO3200、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード、[C60](約60コマ/秒連写、DXフォーマット)のプリキャプチャー機能で撮影
撮影写真(5392×3592、6.2MB)

[C60](約60コマ/秒連写、DXフォーマット)のプリキャプチャー機能を使ってトンボの飛び立つ瞬間をとらえました。「Z 9」や「Z 8」のような高機能なカメラとの相性がすこぶるよいレンズですので、今まで撮っていなかったようなジャンルの撮影にも挑戦したくなる、そんな魔力を秘めたレンズと言えるのではないでしょうか。

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、600mm、F6.3、1/200秒、ISO400、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード撮影写真(8356×5504、17.4MB)

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、600mm、F6.3、1/200秒、ISO400、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(8356×5504、17.4MB)

羽がボロボロになった蝶が風に負けまいと頑張っていましたので、むしろその強さを美しく撮りたいと思い撮影しました。手持ち撮影ですが、手前に杭があったのでその上にレンズの三脚座をのせて仮置きで安定させています。

超望遠という大柄なレンズではありますが、バランスのよさも手伝って、思ったよりアクティブに撮影できるのが本レンズの魅力のひとつでもあります。

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、270mm、F6.3、1/60秒、ISO400、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード撮影写真(8356×5504、23.4MB)

Z 8、NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR、270mm、F6.3、1/60秒、ISO400、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(8356×5504、23.4MB)

初夏に穂を出すクサヨシも盛夏の暑さで終わりを迎えようとしていました。こんなときこそ望遠レンズの圧縮効果と大きなボケ味が効果的に働いてくれます。

先に望遠端の特定条件でボケが乱れることがあるのを指摘させてもらいましたが、ほとんどの場合、本レンズにとってはささいなことだと実感しました。実際には実に表現力の豊かなレンズだと思いました。

まとめ ニコンらしい実直さを感じる1本。頑張れば手が届く価格もうれしい

本レンズは高度な光学性能を追求した「S-Line」のレンズというわけではありませんが、それでも「さすがはニコン」と思わせてくれるだけのすぐれた描写力を持っています。本レンズに限らず、「NIKKOR Zレンズ」は全般的に同じことを言えるのが、ユーザーとしてはうれしいところではないでしょうか。

同クラスのレンズとして先発と言えるものではありませんが、ミラーレスカメラ用の超望遠ズームレンズとしてのよいところは素直に取り込み、それでいて可能な限りの最新技術を盛り込もうという、ニコンらしい実直さを感じるレンズでもあります。描写性能だけでなく、操作性のよさ、AF性能の高さなどが、それらをよく表しているのではないでしょうか。

本レンズは、すぐれた性能を持ちながら市場想定価格が20万円台前半(税込)という、決して安くはないものの頑張れば手が届くところに設定なのもよいところです。仮に高額な超望遠・単焦点レンズを所有していたとしても、使い勝手のよさから手に入れたくなるレンズだと思います。

曽根原 昇

曽根原 昇

信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌などで執筆もしている。写真展に「エイレホンメ 白夜に直ぐ」(リコーイメージングスクエア新宿)、「冬に紡ぎき −On the Baltic Small Island−」(ソニーイメージングギャラリー銀座)、「バルトの小島とコーカサスの南」(MONO GRAPHY Camera & Art)など。

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