オートフォーカスは従来と比べて被写体への食いつきが非常によくなっており、初動が速い。300mm(35mm判換算600mm)の望遠域とは思えないようなレスポンスでスピーディーにピントが合う。さらに追従性も大幅に改善されており、上下左右に移動する被写体だけでなく、手前から奥(奥から手前)に移動する被写体に対してもしっかりと追従してくれる。オートフォーカスでピントを合わせ続けるのが難しい、近づいてきて遠ざかる被写体でも試してみたが、高い確率で狙った位置にピントが合い続けてくれた。背景が明るいとピントが抜けやすいのが少し気になったが、従来モデルと比べてオートフォーカスは大幅に進化している。オリンパスのミラーレスの中でもっともすぐれたオートフォーカスなのはもちろんのこと、最新の高性能ミラーレスの中でもトップクラスの性能だと感じた。
さらに、オートフォーカスの設定を細かく調整ができるのもポイントが高い。被写体距離の変化に対する追従性を調整できるC-AF追従感度が用意されているほか、オートフォーカス開始時のAFスキャンの動作設定や、オートフォーカスの動作範囲を制限できるAFリミッターなども用意。機能を割り当てたボタンを押すと、あらかじめ登録しておいたホームポジションにAF設定(AFモード、AFターゲットモード、AFターゲット位置)を切り替えられる「Home登録」という便利な機能も用意されている。
C-AF追従感度については+2(俊敏)から-2(粘る)まで5段階の設定が可能。小動物など止まっている状態から急に動き出す被写体や、向かってくる電車など画面の前後に動く被写体に対しては、感度を上げることでレスポンスがよくなり、追従しやすくなる。いっぽう、飛んでいる鳥や航空機など画面の上下左右の移動が比較的多い被写体で、AFのターゲットエリアから被写体が外れてしまうことが多くなる場合は、感度を下げることでエリアから外れた際のAF駆動が少なくなり、撮影がしやすくなる。設定の仕方は人それぞれだが、個人的には、AFターゲットモードに9点グループや新設された5点グループを選択して狭いエリアで被写体を追いかけるのであれば、主要被写体の動き方やほかの被写体の横切りの有無にもよるが、感度を高めてレスポンスをよくしたほうが撮りやすくなるように感じた。
C-AF追従感度の設定画面。+2/+1/0(初期設定)/-1/-2の5段階で調整が可能。プラス側にすると感度が高くなり、より反応よく被写体を追従する。マイナス側にすると感度が低くなり、被写体の動きに対する反応がゆっくりになる
AFスキャン(被写体にピントが大きく合っていないときやコントラストが低いときに、至近〜∞まで全域にわたってピント位置を探す動作)の設定画面。AFスキャンを行わない「mode1」、AFスキャンを1回だけ行う「mode2」(初期設定)、AFスキャンを行う「mode3」の3つのモードを選択できる。シーンや被写体にもよるが、青空を飛ぶ鳥や飛行機など背景が均一で余計な被写体がない場合は、mode1を選択することで大ボケ状態を防いで撮ることができる
オートフォーカスの動作範囲を制限できるAFリミッターも便利な機能だ。距離範囲は3つ登録しておける。レリーズ優先をオンにしておくと、AFリミッター動作中にピントが合わなくてもシャッターを切ることができる
Home登録の設定画面。好みのAF方式、AFターゲットモード、AFターゲット位置をホームポジションとして登録しておける。登録したホームポジションは、Home登録の機能を割り当てたボタンを押すことで呼び出せる
18コマ/秒でのAF/AE追従連写は圧倒的なスピードで、これまでに経験したことのないようなフィーリングで動体撮影が行えた。18コマ/秒時は電子シャッターでの撮影になるのため、ローリングシャッター歪みが気になるところだが、撮像素子の読み出し速度が約3倍に高速化されていることもあって、動物や電車を撮った限りではほとんど気にならなかった。カメラを急に振ったりしてすばやく動かすと歪みが発生することがあったが、狙いを定めた被写体を追い続けて撮る分には気になるような歪みはほぼ発生しなかった。
また、EVFのレスポンスがいいのも特徴だ。表示フレームレートを「高速」に設定すると120fpsの高速表示になり、非常になめらかな映像になる。表示タイムラグは最短0.005秒で遅延が少なく、連写時の像消失時間もかなり短くなっている。ソニーや富士フイルムなどからもハイレスポンスなEVFを搭載するミラーレスが登場しているが、それらと比べてもそん色のない、動体撮影でも被写体を追いかけやすいEVFに仕上がっている。
フレームレートを「高速」に設定すると120fpsの高速表示になる。ちなみに、従来モデルと同様、ピクチャーモードにi-Finishを選択した際などいくつかの条件で高速フレームレートを利用できない場合がある
続いて、E-M1 Mark IIで動体撮影をしてみて気になった点をいくつかレポートしよう。
18コマ/秒の高速連写は、E-M1 Mark IIで動体撮影をする際には積極的に利用したい機能だが、連写の持続性が少し気になった。18コマ/秒時の最大撮影コマ数はRAWが約77コマ、JPEG(Large/Normal)が約105コマ。実際に試してみてもこのスペックどおりといったところで、UHS-IIカード(Lexar Professional 2000x SDXC UHS-II LSD64GCRBJPR2000R)を使った限りでは、実連写速度にもよるが18コマ/秒時はRAW+JPEGで3〜4秒、RAWで4〜5秒程度、JPEGで6〜8秒程度連写が持続する。バッファーの容量がいっぱい(バッファーフル)になって連写が止まってからカードへの書き込みが終わるまでの時間は、RAW+JPEGが18〜22秒程度(JPEGのクオリティをNormalにすると少し短くなる)、RAWが8〜9秒程度、JPEGが7〜8秒程度だった。ハイエンドモデルらしい十分な持続性とレスポンスではあるが、バッファーフルの状態になると、1〜2秒待ってから連写を再開しても連写が続かなかったり、速度が遅くなったりする(特にRAW+JPEGだと連写再開時に詰まりやすい)。使いにくいというわけではないのだが、動体撮影を絶え間なく連続して行いたいときには、18コマ/秒連写はバッファーフルにならないように使いどころを考慮したほうがいい。10コマ/秒のメカシャッター連写ではRAWで約148コマ、JEPG(Large/Normal)でカード容量いっぱいまで連写ができるので、10コマ/秒をメイン、18コマ/秒をサブにして、状況にあわせて使い分けたいところ。連写のコマ速を18コマ/秒から15コマ/秒に落として持続性を上げるのもいいだろう。
連写速度の設定が可能で、電子シャッター時の連写は15コマ/秒以下に落とすことができる。枚数リミッターも用意されている
ダブルスロット仕様のSDメモリーカードスロットを採用。2つのスロットが縦に並ぶレイアウトで、スロット1はUHS-IIに対応する(スロット2はUHS-I対応)
バッテリーの持ちにも注意が必要だ。バッテリーには容量が1720mAhに増えた新開発の「BLH-1」を採用し、撮影可能コマ数は約440枚と従来よりも多くなっているが、一眼レフと比べるとバッテリー性能はもの足りない。表示フレームレートを高速に設定し、高速連写やプロキャプチャーモードを多用しているとバッテリーの減りは早くなる。本格的な動体撮影を行うのであれば予備バッテリーは必須だ。
このほか、AFターゲットモードとして、121点のオールターゲット、1点のシングルターゲット、新設された十字型の5点グループターゲット、9点グループターゲットを選択できるが、AFエリアが画面を広くカバーしているので、4×4の16点や5×5の25点などのゾーン設定があってもいいように感じた。もう少し広いエリア設定があれば被写体を面で追いかけやすくなるし、C-AF追従感度の設定もより効果的になるのではないだろうか。
新たに追加された、十字型の5点グループターゲット
従来モデルもけっしてレスポンスの遅いカメラではなかったが、動体の追従性はもうひとつというのが正直なところであった。その点、E-M1 Mark IIは飛躍的な進化を遂げており、オリンパスが自信を見せるのもうなずける動体撮影能力だと感じた。上下左右に動く被写体だけでなく、前後の動きに対しても十分な追従性能を持っている。EVFのレスポンスがいいのもポイントで、控えめに言っても、動体を撮ることに関して一眼レフのフラッグシップや高速機と比べても見劣りはしない。
レンズを含めてコンパクトなシステムを実現しているのがオリンパスのミラーレスの特徴だが、コンパクトで持ち運びやすいうえに、動きものに対しても一眼レフと肩を並べるところまできたのは大きい。2016年12月22日の発売から在庫が少ない状況が続いているが、2017年も引き続き話題を集めるモデルになることだろう。