続いて、キヤノン、ニコン、リコー(ペンタックスブランド)のエントリー向け一眼レフの比較レビューをお届けします。レビュー用としてピックアップしたのは、キヤノンがEOS Kiss X7、ニコンがD3400、リコーがK-70。いずれも2017年3月現時点での現行モデルで、はじめての一眼レフに適したカメラです。
左からEOS Kiss X7、D3400、K-70。作例の撮影で使用したレンズはレンズキット付属の標準ズームレンズもしくは高倍率ズームレンズになります
EOS Kiss X7は2013年発売の古い製品ですが、発売から4年経った現在でもキヤノンの現行モデルとしてラインアップされているロングセラーモデル。1ページ目でも紹介したように、価格.comの「デジタル一眼カメラ」カテゴリーの売れ筋ランキングで1位(2017年3月14日時点)に位置する人気モデルです。APS-C一眼レフとして世界最小・最軽量を実現したコンパクトボディと、4万円を切る価格で標準ズームレンズキットが手に入る低価格が人気の理由で、はじめての一眼レフとして押さえておきたいモデルです。
D3400は、2016年発売の新モデルで、ニコンのラインアップの中ではもっとも下に位置する一眼レフになります。コンパクトボディとコストパフォーマンスをウリにしており、EOS Kiss X7とはライバル関係にあると言っていいでしょう。EOS Kiss X7よりも3年以上後に発売されているので、特に画質がどのくらい進化しているかに注目です。
K-70は、ペンタックスの現行ラインアップの中では唯一となるエントリー向けモデルであるためピックアップしました。中級機に近い位置付けで、今回の3モデルの中では機能がもっとも充実しており、価格も高くなっています。ランク的にはEOS Kiss X7とD3400の上位に位置するモデルになりますので、低価格なエントリーモデルとどう違うのかに注目していただければと思います。
なお、使用するレンズは、レンズキット付属のズームレンズでそろえました。EOS Kiss X7とD3400は標準ズームレンズ。K-70は、用意されているレンズキットが高倍率ズームレンズキットのみとなるので高倍率ズームレンズとなります。
このページでは3モデルの画質(色再現、解像感、高感度)をレビューします。
最初に3モデルの画質に関する基本スペックをチェックしておきましょう。
・撮像素子の有効画素数(大きさ)/感度/エンジン
EOS Kiss X7:約1800万画素(APS-Cサイズ)/ISO100〜12800(拡張ISO25600相当)/DIGIC 5
D3400:2416万画素(APS-Cサイズ、ローパスフィルターレス)/ISO100〜25600/EXPEED 4
K-70:約2424万画素(APS-Cサイズ、ローパスフィルターレス)/ISO100〜102400/PRIME M II
※ローパスフィルターレスとは、モアレや偽色の発生を防ぐ「ローパスフィルター」を省略することで解像感を高める構造のこと。
K-70とD3400は撮像素子の有効画素数がおよそ2400万画素となっており、より高解像度な画像が得られます。ただし、画像をトリミングする際には高画素のほうが有利ではありますが、必ずしも高画素=高画質というわけではありません。同じサイズの撮像素子で画素数が多くなると1画素あたりの受光面積(画素ピッチ)が狭くなり、ハードウェアとしては階調表現や高感度ノイズで不利なところも出てきます。テレビやモニターに写真データを表示して閲覧する分にはEOS Kiss X7の約1800万画素でも十分すぎるスペックです。1800万画素と2400万画素で違いが出るとしたら、A3ノビ以上の大判プリントをする場合でしょうか。それでも、プリント用紙に近い距離で細かくチェックするような見方をして気がつく程度で、実用的には1800万画素あればまったく問題ありません。
感度についてはK-70が最高ISO102400の高感度撮影が可能で、スペック上は頭ひとつ抜けています。ただ、一般的にISO6400を超えると画質の劣化が大きくなり、高画質で撮ることはできません。どのモデルもだいたいISO6400程度までが実用に耐えうる上限になりますので、最高感度のスペックにはあまりこだわらず、ISO1600〜6400あたりの高感度の画質をチェックしておいたほうがいいでしょう。
以上、3モデルの画質の基本スペックを簡単に紹介しましたが、基本スペックで特に優位なモデルはありません。次項目以降に掲載する作例を見て、色再現や高感度の画質をチェックしてみてください。
以下に掲載する比較作例は、3モデルで同じ被写体を撮影したもので、撮影後にレタッチをしていない撮って出しの画像になります。いずれもレンズキットに付属するズームレンズを使用(※EOS Kiss X7とD3400は標準ズームレンズ。K-70は高倍率ズームレンズ)。絞り優先モードで絞り値をF8に固定し、記録画質をJPEGの最高品質に変えた以外、画質に関する設定は初期設定のまま撮っています。また、仕上がりの違いを比較したいため、明るさを段階的に変えながら複数枚撮影し、その中から3モデルで見た目の露出感がそろったものをピックアップして比較しています。わかりにくい説明になってしまいましたが、「できる限り明るさに違いが出ないように調整して撮影した」と認識していただければと思います。
細かい設定については触れませんが、写真の色合いを左右する「仕上がり設定」の初期設定には注目してください。EOS Kiss X7の「ピクチャースタイル」はオート、D3400の「ピクチャーコントロール」はスタンダード、K-70の「カスタムイメージ」は鮮やかが初期設定になっています。
EOS Kiss X7
レンズ:EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS STM、焦点距離:18mm(35mm判換算29mm)、絞り値:F8、シャッタースピード:1/320秒、感度:ISO100、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:オート
撮影写真(5184×3456、9.4MB)
D3400
レンズ:AF-P DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR、焦点距離:18mm(35mm判換算27mm)、絞り値:F8、シャッタースピード:1/400秒、感度:ISO100、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(6000×4000、10.9MB)
K-70
レンズ:smc PENTAX-DA 18-135mm F3.5-5.6ED AL[IF] DC WR、焦点距離:18mm(35mm判換算27mm)、絞り値:F8、シャッタースピード:1/200秒、感度:ISO100、ホワイトバランス:オート、カスタムイメージ:鮮やか
撮影写真(6000×4000、13.2MB)
この比較作例は、太陽を背にして晴天の順光下で撮影したものになります。ビルと木々を挟むようにして補色の関係にある青空(青色)と菜の花(黄色)があるので、色再現や解像感の違いを見るのにちょうどいい作例ではないでしょうか。
仕上がりを見ると、EOS Kiss X7とD3400で大きく違っているのがわかります。EOS Kiss X7はクリアで青や黄色がしっかりと出た、キヤノンらしい色再現です。やや派手な感じを嫌う方もいるかもしれませんが、パッと見てきれいな色の写真に仕上がっていると思います。D3400もクリアで抜けがいいですが、色を抑え気味にしてナチュラルな仕上がりになっているのがポイント。こちらもニコンらしい自然な感じの色だと思います。K-70は黄色から緑にかけてやや強く出ており、青空が少しシアンっぽくなっているのが気になりますが、バランスのよい色の写真になりました。仕上がり設定の初期設定は「鮮やか」になりますが、それほど彩度は高く出ていません。
解像感については以下の切り出し画像をご確認ください。作例の中央付近を切り出したものになりますが、どのモデルもシャープな仕上がりになっています。レンズの性能の違いもあるので、切り出し画像をチェックすることはあまり実用的な検証ではないですが、見比べるとD3400が細かいところの再現性が高いように感じます。EOS Kiss X7は少々線が太くなっているようです。
EOS Kiss X7
レンズ:EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS STM、焦点距離:55mm(35mm判換算88mm)、絞り値:F8、シャッタースピード:4秒、感度:ISO100、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:オート
撮影写真(5184×3456、5.3MB)
D3400
レンズ:AF-P DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR、焦点距離:55mm(35mm判換算82.5mm)、絞り値:F8、シャッタースピード:4秒、感度:ISO100、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(6000×4000、11.1MB)
K-70
レンズ:smc PENTAX-DA 18-135mm F3.5-5.6ED AL[IF] DC WR、焦点距離:60mm(35mm判換算90mm)、絞り値:F8、シャッタースピード:5秒、感度:ISO100、ホワイトバランス:オート、カスタムイメージ:鮮やか
撮影写真(6000×4000、12.4MB)
屋内のLED電球(電球色)下でオートホワイトバランスの再現性をチェックしてみました。それほど強い光があるところではなく、色再現が難しい状況で撮っています(※そのため全体的に抜けのよくない感じになっています)。EOS Kiss X7とD3400は似たような傾向で、すっきりとした仕上がりになりました。ただ、実際の光の感じと比べると、少々補正している感じが強いかなと思います。いっぽうのK-70は少し赤味が強い感じですが、LED電球下の雰囲気がうまく再現できています。好みが分かれるところですが、色の自然さという点ではK-70に軍配が上がります。
EOS Kiss X7(ISO6400)
レンズ:EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS STM、焦点距離:18mm(35mm判換算29mm)、絞り値:F8、シャッタースピード:1/4秒、感度:ISO6400、ホワイトバランス:オート、ピクチャースタイル:オート
撮影写真(5184×3456、8.5MB)
D3400(ISO6400)
レンズ:AF-P DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR、焦点距離:18mm(35mm判換算27mm)、絞り値:F8、シャッタースピード:1/5秒、感度:ISO6400、ホワイトバランス:オート、ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影写真(6000×4000、10.1MB)
K-70(ISO6400)
レンズ:smc PENTAX-DA 18-135mm F3.5-5.6ED AL[IF] DC WR、焦点距離:18mm(35mm判換算27mm)、絞り値:F8、シャッタースピード:1/4秒、感度:ISO100、ホワイトバランス:オート、カスタムイメージ:鮮やか
撮影写真(6000×4000、11.7MB)
夜景を被写体にして高感度の画質をチェックしました。ISO1600、ISO3200、ISO6400で撮り比べて、ISO6400のサムネイル画像と、ISO1600/3200/6400の切り出し画像(作例の中央付近)を掲載しています。
色再現を見ると、D3400は色かぶりが少なく、すっきりとした夜景写真に仕上がっています。少し青味がかった空がいい感じで、画像処理の巧みさを感じます。EOS Kiss X7はD3400と比べるとわずかに色が乗っていますが、自然な感じの色合いです。K-70は緑かぶりがやや強く、色もやや強めに出ています。
ノイズの量については、D3400がもっとも少ない結果となりました。ISO1600とISO3200では3モデルでそれほど大きな違いはありませんが、ISO6400になるとサムネイル画像でもわかるくらい差が出ています。D3400はISO6400でも色の付いたノイズが少なく解像感も高いです。D3400は2016年発売で、EOS Kiss X7は2013年発売ですので、さすがに高感度ノイズの少なさについてはD3400に分があります。K-70は、ノイズを無理に潰さずに解像感をキープする傾向にあるようです。ノイズをどこまで許容できるかは個人差がありますが、写真の仕上がりにこだわる場合、D3400はISO3200〜6400程度まで、EOS Kiss X7とK70はISO3200程度まであれば画質の劣化をそれほど気にせずに使えると判断できるのではないでしょうか。
同じ被写体でEOS Kiss X7、D3400、K-70を撮り比べてみましたが、それぞれ画質に違いが出ました。EOS Kiss X7はキヤノンらしい色再現で、シーンや被写体にあまり左右されずに安定した画質が得られます。より多くの人がきれいと感じる写真に仕上がる感じで、カメラの使い方に慣れてない初心者の方でも高画質な撮影が可能だと思います。D3400はナチュラルな色再現と精細感の高い画質が好印象。ひと昔前のニコンの一眼レフは黄色かぶりする傾向がありましたが、画像処理エンジンが「EXPEED 4」になってからはオートホワイトバランスの安定感が増し、色かぶりがかなり少なくなりました。高感度のノイズが少ないのもポイントが高いです。K-70はシーンや被写体によって印象が変わるところがありますが、どちらかというと鮮やかな仕上がりになります。ニコンやキヤノンとは異なる傾向にあり、その場の雰囲気の再現性を重視したような写真が撮れます。
ただ、色再現や解像感については仕上がり設定やホワイトバランスの設定によって大きく変わります。今回は初期設定で撮っていますが、設定を変えることで鮮やかな感じにもナチュラルな感じにも変えられます。今回の検証のようにカメラまかせで撮るのも面白いですが、被写体やシーンにあわせて設定を変えることで表現の幅が広がるので、一眼レフを購入したら、ぜひ画質関連の設定をあれこれと試していただければと思います。