特別企画
大きな問題を抱える2台の新型車

トヨタ「クラウン」と「カローラ」の“若返り”は果たして成功するのか?

歴史あるブランドならではの苦悩を抱える2台の新型車

2018年6月、トヨタを代表する2車種の新型モデルが発売開始となった。その2台とは「クラウン」と「カローラ ハッチバック」だ。

トヨタ 新型「クラウン」

トヨタ 新型「クラウン」

トヨタ 新型「カローラスポーツ」

トヨタ 新型「カローラスポーツ」

クラウンは、トヨタ初の純国産セダンとして生まれ、日本の高級車の象徴として君臨してきた。いっぽう、カローラは1960年代からのクルマの大衆化に大きく貢献した。どちらも、日本自動車史上に燦然と輝く名車と言えるだろう。

しかし、現状は2台ともに大きな問題を抱えている。「オーナーの高齢化」だ。クラウンオーナーの平均年齢は70歳を超えており、カローラオーナーの平均年齢も60代以上。セダンタイプの「カローラアクシオ」にいたってはクラウンと同様に70代という。

当然、顧客の若返りを行わなければ先細りは必至。そのため、今回の新型モデルは、どちらも“若返り”を志向した内容となっていた。

まず、新型「カローラ」に関しては、今回の発売はハッチバックモデルということもあり、当初は「カローラハッチバック」と命名されると思われていた。しかし、フタを開けてみれば「カローラスポーツ」に。“スポーツ”という車名に込められた願いはもちろん、“若返り”以外にはあり得ない。

また、新型「クラウン」は“ニュルブルクリンクで鍛えた”と欧州車のような走りのよさをアピールする。デザイン面でも、これまでとは異なるフォルムを採用するなどして、新鮮味を生み出している。

さらに特徴的なのは、2台とも通信機器を標準装備して「コネクテッドカー」を売りにしている。“スポーティーな走り”に“コネクテッド”というキーワードは、従来の70代以上のユーザー像ではなく、明確に新しく若い世代をターゲットにするという姿勢そのものと言っていいだろう。

クラウンとカローラスポーツの若返りが“成功する”理由

では、実際に若返りは成功するのか? 個人的な予想で言えば“成功する”と思う。その理由は、2台の製品としての出来のよさがあるからだ。ただし、トヨタの狙いが100%達成できるとは思えない。それは、トヨタの計画が大胆すぎるというか、希望が高すぎるように見えるからだ。

トヨタ新型「カローラスポーツ」

トヨタ新型「カローラスポーツ」

「カローラスポーツ」でいえば、トヨタの狙いは20〜30代の顧客層獲得だ。コネクテッド機能は確かに魅力的だし、クルマのデザインも欧州テイストで悪くない。さらに、走らせてみればしなやかで、ハンドリングも正確。欧州車のような走りのよさを感じとれて、クルマとしての実力が非常に高いことに驚いた。

ただし、“スポーツ”か、というと微妙だ。よくできているけれど、エキサイティングではない。また、213万円〜という価格は、若者世代にとって辛いのではないだろうか。上級グレードが高いのは仕方ないとしても、200万円を下回るグレードが存在しないのは残念だ。しかし、20代は難しいけれど、30〜40代には、単純に「よいクルマ」として人気を集めそうだ。これまでの60代以上のユーザーと比べれば一気に若返るのは間違いないだろう。

トヨタ新型「クラウン」走行イメージ

トヨタ新型「クラウン」走行イメージ

一方、「クラウン」はどうか。こちらの狙いは「これまでドイツ・プレミアムなどを買っていた40〜50代を新規獲得したい」という。そのために新しい「クラウン」は、プラットフォームもレクサスなどに使われている新しいものを採用しているし、ドイツのニュルブルクリンク・サーキットをはじめ欧州でも開発の走り込みを随分と行ったという。

トヨタ新型「クラウン」走行イメージ

トヨタ新型「クラウン」走行イメージ

実際にハンドルを握ってみれば、欧州車のようなしっかりとした手ごたえがある。ハンドリングに関していえば、「クラウン史上最高」だろう。しかし、そのハンドリング実現のために、歴代「クラウン」の美点であった“空飛ぶカーペット”のようなふんわりとした乗り心地は消えてしまった。これは、けっこう微妙なところだ。

ただし、全幅1,800mmというコンパクトさ(「カローラスポーツ」より10mm広いだけ)は守られているし、インテリアも伝統を踏襲している。また、加速のスムーズさも「クラウン」らしさが濃厚だ。つまり、基本的には「クラウン」の伝統を踏まえつつ、欧州のハンドリングと“コネクテッド”をプラスしたような内容であった。

2003年の「ゼロ・クラウン」とイメージが重なる

そんな新型「クラウン」を走らせていて思い出したのは、2003年に発売された通称「ゼロ・クラウン」だ。走りのよさは評価されたが、いっぽうで乗り心地の硬さが問題となった。しかし、「ゼロ・クラウン」はヒットモデルとなり、走りのよさから「クラウン」の当時のイメージを若返らせた。

今度の新しい「クラウン」は、その「ゼロ・クラウン」とイメージが重なる。そういう意味で、「若返り」&「ヒット」の気配は濃厚だと思う。しかし、当初の目的であった「ドイツ・プレミアム購買層の新規獲得」はどうであろうか。こちらは厳しいのではないか。そもそもレクサスという存在がある。ドイツ・プレミアムを買おうという人に、レクサスを通り越えて、「クラウン」にまで惹きつける魅力があるのかといえば疑問だ。また、「クラウン」らしいウルトラ・スムーズな加速感や、車幅1,800mmといったコンパクトさは、ドイツ・プレミアム購買層の望みとは異なるはず。「若返り」は成功するが、「本来の狙い」は難しいのではないだろうか。

トヨタ新型「クラウン」走行イメージ

トヨタ新型「クラウン」走行イメージ

しかし、トヨタも初めから希望がすべてかなうとは考えていないだろう。逆に、目標は少々高めに設定しておかないと、本来の希望に届かないと考えているのではないだろうか。2013年暮れにデビューした先代クラウンも、若返りを狙ってデザインには相当の変化を施した。しかし、結果としてそれほどの若返りが成功したわけではない。だからこそ、今度の新型クラウンでは、より思い切った目標が必要だったのだろう。どちらにせよ、若返りは、一定の成功をおさめると予想する。

鈴木ケンイチ

鈴木ケンイチ

新車のレビューからEVなどの最先端技術、開発者インタビュー、ユーザー取材まで幅広く行うAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

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