いいモノ調査隊
レース用も市販車用も、変わらぬクオリティ

あの「BBSホイール」は富山製だった! 超絶“鍛造”技術にビックリ!!

BBSホイールは、全然高くない!

自動車ライターのマリオ高野です。

クルマ好き諸兄は、高性能・高品質の鍛造(たんぞう)アルミホイールがもたらす走行性能の向上効果をよくご存じのことでしょう。愛車のアルミホイールは、デザインも大事ながら、なるべくいいモノを選びたい。とはいえ、いいアルミホイールは値段も高くなるので、なかなか手が出なかったりするのもまた現実です。その代表的な例の1つが、高性能・高品質なアルミホイールとして広く知られる「BBS」ではないでしょうか。

「BBSのアルミホイールは、モノがいいのはわかるけど値段が高い……」などと思っている人も多いことかと思います。かくいう私もその一人でした。しかし、BBSのアルミホイールの製造工程を目の当たりにし、驚愕(きょうがく)の最先端技術と、壮絶な手間ひまのかかりっぷりを知ってからは一転して、「BBSホイールは全然高くない!」と思うようになったのです。

富山県高岡市にあるBBSジャパンの本社工場。富山県は水力資源が豊富なため、工場の電気代が比較的やすいことから、膨大な電力を要するアルミ工業が栄えました

BBSは元々ドイツのホイールブランドで、1970年にバウムガルトナーとブラントいう2人のドイツ人技師によって作られました。シルタッハという町で起業したことから、2人の名前と地名“Baumgartner Brand Schiltach”の頭文字から「BBS」とネーミング。社名の由来は、人と土地の名前からきているのですね。ちなみに、メルセデス・ベンツのハイパフォーマンスブランド「メルセデスAMG」も同様です。

アルミ製品の製造が盛んな富山県の会社と提携した

BBS社は最初からレース用のパーツを手がけ、強化プラスチック製のエアロパーツやホイールなどを開発していました。30年以上前に日本の高品質な鍛造アルミ製品の製造技術に目をつけ、鍛造アルミ製品の製造が盛んな富山県でも随一の技術を誇った「ワシマイヤー株式会社」と提携を開始します。

1983年にBBSジャパンが誕生し、クルマ用のホイールは鋳造(ちゅうぞう)が当たり前だった時代に市販車用の鍛造ホイールを発売。1985年には日産スカイラインのオプションパーツとして設定され、これが今に続く自動車メーカー純正採用の始まりでした。

その後は市販の乗用車向けからF1やル・マン24時間、WRCなど、日本製のBBS鍛造ホイールは世界のモータースポーツのトップカテゴリで採用され、レース用パーツのサプライヤーとしても輝かしい名声を獲得しています。

BBSホイールは軽くて強いことで定評がありますが、ただ軽くて強いだけでは世界のトップカテゴリの競技で勝てません。極限的な領域で「強いながらもしなやかにたわむ」というBBSホイールならではの性能を発揮することでマシンの走りを支えて安全性を確保し、トップチームから絶大な信頼を受けているのです。

そんなBBSホイールの高性能と高品質の理由を、富山県高岡市にあるBBSの鍛造ホイール工場の見学で実感できたので、BBSの鍛造ホイールがどのような工程で作られ、またすごさのポイントはどこにあるのかを簡単に紹介します。

3次鍛造までの工程を経て作られる

まず、アルミホイールの材料となるのは、ビレットと呼ばれるアルミの塊です。円錐(えんすい)状の大きな金属の棒を輪切りにしたもので、これを4分の1の体積になるまで圧力をかける工程が「鍛造」です。

ホイールの材料となる、アルミの塊であるビレット。軽自動車用からF1レース用まで、同じ工場で作られます。現在は1日約400本のホイールを製造しています

1次鍛造ではビレットと呼ばれるアルミ合金の塊を約500度の高温にさらして柔らかくし、最大9,000トンの圧力を1秒間に12mmの速度でゆっくりと加圧。その後、金型を替えてホイールデザインの原型を型取りながら3次鍛造まで繰り返します。

金型の隙間に加圧されたアルミ合金がところ天のように押し上げられるのですが、20インチ前後のデザインが複雑なものは表面積が広いため、9,000トン級の高圧が必要となるようです。

圧巻の油圧プレス機。BBSでは5000〜9000トンまで6台のプレス機を稼働させています

圧巻の油圧プレス機。BBSでは5,000〜9,000トンまで6台のプレス機を稼働させています

大径ホイールの場合はビレットも長くて大きなものになりますが、この円錐状の素材を4分の1の体積まで圧縮します

白い煙は金型とビレットが固着しないための剥離剤(はくりざい)と呼ばれる液体。もちろん厳密な計算のもとに適量が吹きかけられます

ビレットは約500度に熱して4分の1の大きさまで押しつぶします。鍛造の工程はロボットによる全自動で行われ、レーザーで距離などを計測して素材と金型にズレがないかをチェック。熟練した工員が常に監視する中で行われます

油圧プレス機も定期的なメンテナンスを受けます。工場内は意外と騒音は少なく、夏場でも暑さは想定内にて、自動車工場などの重工業作業の勤務経験を持つマリオ高野的には、とても働きやすそうだと思えました

5000〜9000トンもの圧力で3度にもわたりプレスしてホイールの形状を成型。1〜3次鍛造のいずれも1秒間に12mmの速度でプレスされます。ホイールのタイプによって、プレスの段階でデザインが施されるもの、削りだしてデザインが形成されるものがあります

ビレットをプレスするための金型は、高温高圧に耐える特殊な金属製。大量生産すると摩耗などの消耗が進むので、1か月ほど使うと熟練工員の手によって新しく作り変えられます

ホイールの幅を広げてリムを形成する「スピニング」

次の「スピニング」加工という工程では、陶器を作るときのロクロを逆さにしたような感じで圧縮した鍛造素材を回転させ、水溶性の切削液をかけつつ、上の金型で挟むようにして回しながら幅を広げて特殊なローターで伸ばし、ホイールのリム部分を形成します。リムとは、タイヤが装着される部分のことで、平べったく鍛造された素材が空洞の筒のような形状に引き伸ばされるのです。
ちなみに、最近は鋳造のホイールでもリム部分は鍛造と同じようなスピニング工程で成形する製品が増えているとのこと。

鍛造が完了した素材は柔軟に伸ばすことができるので、ロクロを逆さにしたような状態で1分間に約400回、回しながらインナーリムを成型(スピニング工程)。通常のアルミホイールは常温、超々ジュラルミンは約300度など素材により温度が異なります

レーシングカーはタイヤの幅が広いので、リム部分も大きくなり、より強い強度やしなやかさが求められます

レーシングカーはタイヤの幅が広いので、リム部分も大きくなり、より強い強度やしなやかさが求められます

製品によっては、この段階で完成形に近づいたようにも見えますが、まだまだここから磨きの工程が続きます

製品によっては、この段階で完成形に近づいたようにも見えますが、まだまだここから磨きの工程が続きます

熱して冷まして“硬度”を測定

スピニング加工が完了したら、「熱処理」と「脱膜」を実施します。

ホイール用のアルミ合金は、アルミ以外にもさまざまな素材が混じり合っており、この時点ではまだ本来のアルミ合金としての機能を100%発揮しません。そこで金属分子同士の結びつきを強くするため、約520度に再び加熱してから180度まで急激に冷却することで内部の分子同士の溶け込みを促進させます。企業秘密の冷却水を使うことで、本来は半年ほどもかかる熱処理が7時間ほどで済むといいます。
 
熱処理が終わったら、硬度を測定。10mmの玉状のパーツを500kgの力で押すことでできたエクボの大きさで硬度をチェック。硬さを計測し、合格したら「脱膜」作業に移ります。

「脱膜」とは、「鍛造」の工程でビレット素材と金型の固着を防ぐために吹き付けられた「離型剤(りけいざい)」(主に油と黒いカーボンでできている)を除去する作業で、酸とアルカリを使って除去します。これが済んだら素材を削って、ホイールのデザインを整える「機械加工」の作業に入ります。

スピニング加工が完了したら、「熱処理」と「脱膜」を実施。1本ずつ硬度の計測が行われるなど、徹底した品質管理のもとに工程は進んでいきます

機械と職人が研磨する

「機械加工」では、穴あけ加工や表面のデザイン成形、バリ取りなどをロボットが実施して削った後、人間の手で1本あたり15〜20分かけて磨き、100分の1mm単位の傷を取り除いていきます。

荒仕上げが終わった段階でも十分な光沢が出ており、すでに高級ホイールとして完成しているかのように見えますが、まだまだここから多くの工程を経て塗装ラインへ運ばれます。

手作業の工程では、熟練した工員が1本1本ていねいに全体をなめ回すようにしてチェックしたり研磨したりする作業が続き、鍛造されてからも完成までは果てしなく長い道のりでした。

人間の手で磨かれた後は、「ショットピーニング」という工程で、ビーズと呼ばれる0.3mm以下の粉状のステンレスを吹き付けてホイールの表面を強化。ここでもホイールを鍛え、強くすることで金属疲労の亀裂が入りにくいものにしていきます。仕上げにブラストと呼ばれる表面の微細な凹凸を取る作業を行うと、塗装のノリがいいきれいな地肌が完成。塗装ラインへ行くまでに、こんなにも入念に磨き尽くしながら素材を鍛えている事実には本当に驚愕しました。これにて、ようやく塗装前の段階が完了します。

このように、鍛造後も地道に磨きながら鍛えることで、最高の品質を生み出すワケですね!

とにかくBBSホイールは「削る」と「磨く」工程が多いのが印象的です。熱処理が終わったホイールを回して削る工程の旋盤でも、バリ取りをはじめとする磨き作業が入念に実施されます

荒仕上げが終わった段階でも十分に光沢が出ており、すでに高級ホイールとして完成しているかのように見えますが、まだまだそこから多くの工程を経て塗装ラインへ運ばれるBBSホイール

手作業によるチェックや作業を行うのは熟練した工員たちで、1本あたり最長で20分ほどの時間を費やして作業を行います

このように丹念に削られて作られたBBSホイールですが、リムをガリったりするのは本当に工員の皆さんに申し訳ないことだと実感しました。BBSホイールを購入すると加入できる「TANZO CLUB」に入ると、ホイールを傷付けてしまったときに半額で買い直せる(交換)制度があるので、ぜひ加入しておきましょう。BBSホイールユーザーだけが参加できるイベント(https://tc.bbs-japan.co.jp/jp/)なども実施されています。

塗装のラインへ移ってからも、前処理としてまずアルカリ洗浄で脱脂。そこからパウダーブースで粉状の塗装を施して、それを熱でゲル状にして、表面を研磨しながら洗浄していきます。

アルミ本来の色を出す鏡面仕上げの次はダイヤモンドで切削し、部分バフ掛けを行ってからようやく塗装へ。塗装ラインへ移ってからもなお、BBSホイールはこれでもか! といわんばかりに磨きまくっていきます。

塗装の前にはアポロチョコのような粒状の研磨剤など、さまざまな方法でさらに磨かれていきます。削る量はわずかなので、もちろんデザインが崩れたりすることはありませんが、ここまできてまだ磨いたり削ったりするのですね!

2ピースホイールの製造工程はさらに手間ひまがかかっています。1本あたりの軽量化にこだわったピアスボルト、ディスク面、リムの順ではめ込み、ナットを対角になるよう締めていくのも実に緻密な作業でした。2ピースの人気製品「RG-R」では、一般的なボルトに比べて数分の1の重量である軽量なチタン製のボルトを採用。コストも十分にかけられます

入念な下地処理をされたのち、最終的な塗装はスプレーガンで行われ、静電気を利用した方法で効率よくホイールの回転方向に合わせて均一に吹き付けます。粉体塗料の吹き付け後は製品ごとの仕様によって異なる工程で塗装されます

多くの工程で人の目によるチェックがされてきましたが、もちろん完成後の最終チェックはより入念、かつ厳しく行われます。完成品は素手で触るのが憚れる(はばかれる)ほど美しく、魂が込められた工芸品の誕生という感じでした。

タイヤがはめられクルマに装着された状態になるとユーザーには見えない部分ですが、BBSホイールではクオリティにも決して妥協は許されません

多くの工程で人の目によるチェックがされていますが、もちろん完成後の最終チェックはより入念、かつ厳しく行われます。熟練した職人の手による「入魂の工芸品の誕生」を目の当たりにして、BBSホイールの価格は適正なものだと実感!

世界の名だたる自動車メーカーに採用される

ミニバンからスーパースポーツカーまで、幅広い車種のホイールをOEM生産しています

ミニバンからスーパースポーツカーまで、幅広い車種のホイールをOEM生産しています
■左上から時計回りに
「レクサスLS」
「スバル インプレッサWRX」
「トヨタ ノア/ヴォクシー HYBRID Si」
「ポルシェ 911GT2 RS」
「ベントレー コンチネンタルGT」
「ベントレー ベンテイガ」

筆者もBBSのホイールを装着しております

筆者もBBSのホイールを装着しております

このようにして作られる軽くて強靭(きょうじん)、かつしなやかなBBSの鍛造ホイールを履くと、タイヤとサスペンションの性能をしっかり使いきれるようになるので、クルマの走りが変わります。

筆者の愛車には2台ともBBSホイールを装着していますが、1台は25年目の老骨車、もう1台は廉価な実用車でありながら、BBSホイールのおかげで操縦安定性が高く、見た目の古臭さや安っぽさを低減させる効果があるところも気に入っているポイントです。タイヤサイズに変更はない場合でも、ホイールを交換した際は4輪のアライメントを取り直すのがオススメとのこと。

スーパーGTやニュルブルクリンク24時間耐久レースなど、モータースポーツ競技でも重要なパーツとして絶対に欠かせない存在となっているBBSホイール。井口卓人選手や山内英輝選手らレーシングドライバーもプライベートカーでBBSホイールを愛用しています。市販車でも最大の魅力は「操縦性がよくなること」と断言できます!

マリオ高野

マリオ高野

1973年大阪生まれの自動車ライター。免許取得後に偶然買ったスバル車によりクルマの楽しさに目覚め、新車セールスマンや輸入車ディーラーでの車両回送員、自動車工場での期間工、自動車雑誌の編集部員などを経てフリーライターに。2台の愛車はいずれもスバル・インプレッサのMT車。

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