レビュー
最初は違和感があるものの……

デジタルアウターミラーは使える?使えない?レクサスES 800km徹底試乗!

静粛性が高く、広々とした室内

レクサス「ES」のインテリアは、ウィンドウの開閉音など細かな点も含めて質感が高い

レクサス「ES」のインテリアは、ウィンドウの開閉音など細かな点も含めて質感が高い

ここからは、ESについての印象を述べていこう。ドアを開けて室内に乗り込むと、その広々とした室内は、まさしくESのDNAを受け継いでいるという印象を受ける。様々なスイッチ類の質感(除くタッチパッドレイアウト、これは後述する)は非常に高く、たとえばパワーウインドウの作動音も静かなことなど、いたるところに気を使っていることがうかがえた。

また静粛性も高く、これらは700万円という車格に相応しいものだ。実は、テスト期間中に現行レクサスLS600hオーナーを乗せる機会があったのだが、所有するLSよりもエンジン音の侵入もはるかに少なく、ESのほうがリアシートに座るにはふさわしいのではと感想を漏らしていたほどだ。

レクサス「ES」の走行フィールは、高級車ならではのしっとりとした感覚で好感が持てる

レクサス「ES」の走行フィールは、高級車ならではのしっとりとした感覚で好感が持てる

走らせてみると、ステアリングフィールは若干キャスターアクションに不自然さが残るものの、それ以外はしっとりとした手ごたえで好感が持てた。乗り心地は、街中では可もなく不可もなくといった印象で、世界初採用となるボディの微小な動きで減衰力を発生させる「スウィングバルブショックアブソーバー」や、車両の前後に「パフォーマンスダンパー」を設定して走行中に生じるボディのねじれや微振動を速やかに吸収するようになっているが、これらの効果が発揮されていると思われる。

また、ブレーキに関しては、じわっとブレーキを踏んでいくと、あるところから踏力が変わることがあったり、食いついてきたりすることがあるので、意外と乗りにくく感じることがあった。

画像の赤丸が「ブレーキホールドボタン」。ブレーキホールドは、停止してから作動するまでのタイミングがやや長く感じる

ブレーキといえば、ブレーキホールドボタンを押すことで、信号停車時に自動的にブレーキがかかったままになる機能が装備されている。欧州車などにも多く採用されているこの機能だが、その反応がESは鈍く、ブレーキを踏んで停止した後、ひと呼吸おいたくらいで反応するのだ。メーター内に反応したことを示すランプが点灯するが、いちいちそんなものは確認しないので、ブレーキペダルを離した際、たまにまだ作動しておらず、クリープで走りだしそうになり慌ててブレーキを踏みなおすシーンがあった。

スイッチ類の使い勝手は再考の余地あり

デザイン重視なのか、エアコンなどのボタンは小さく、同じようなボタンが並んでいるので使いづらい

デザイン重視なのか、エアコンなどのボタンは小さく、同じようなボタンが並んでいるので使いづらい

スイッチ類の使いやすさに関しては、合格点は与えられない。特にセンタークラスターのスイッチは非常に小さく、使いにくいうえに表示も小さいので、なぜこうなったのか理解に苦しむ。特に温度設定などは比較的使う機会が多いようにも思うが、それも小さな突起がある小さなダイヤルで、使いやすさを考えているとは思えなかった。

ステアリングスイッチも数多く埋め込まれており、もう少し整理してほしい。さらに言うなら、オーディオ関係のものは基本的に左側に集められているが、チャンネル変更のスイッチは右側にあるなど統一性に欠けている。

ウインカーは上下にわずかに動かすことで、3回点滅などが行えないのも不便だ。今時、軽自動車もついている機能なので、そろそろ採用してもいいのではないだろうか。

室内のドアのアシストグリップの位置は適切で、ドアの開閉がしやすいのは評価できる。近年、ドア前方に縦方向のアシストグリップが多いのだが、ESの場合は中央あたりに水平についているので、背が低い女性でもそれほど無理なくドアを閉めることができるだろう。

ステアリングヒーターは、ウッド部分が暖かくならないのは残念だ

ステアリングヒーターは、ウッド部分が暖かくならないのは残念だ

また、ステアリングヒーターやシートヒーターは自動的に稼働するのはかなり便利だが、ステアリングヒーターに関しては革巻きの部分のみ暖かく、ウッド部分は冷たいのが残念だ。

センターパネル上段中央のエアアウトレットは、左右それぞれで開閉ができるのは高評価だ。運転席と助手席で好みが違うこともあるので、別々に調整したいことが多いからだ。ただ、突然冷たい風が出たりなどあまり制御が緻密ではない印象もあった。

相変わらずレクサスのナビは使いにくい

レクサス「ES」ナビ画面は大きくて見やすいが、タッチパッドを使った「リモートタッチ」は最新のESでも使いにくい

ナビ画面は大きく見やすいが、音声ガイドは3世代前のような機械の音声を組み合わせたたどたどしいイントネーションで非常に聞き取りにくい。また、他のレクサス同様、タッチパッドレイアウトによりモニター画面にカーソルを走らせて操作するのだが、これが本当に使いにくいのだ。コツコツとタッチパッドに反応があり、いまどのメニューを選択できるのかを知らせてくれるのだが、反応があるだけで、クリック感はないのでほぼ間違いなくカーソルは行き過ぎてしまう。さらに、その操作を左手で行わなければいけないのでなおさら使いにくさは倍増する。

なぜ、これをいつまでも使い続けるのか。それは日本市場、あるいは右ハンドル市場よりも、左ハンドル市場のほうが大きいことからそちらを優先しているとしか思えない。ただし、そうだとしても操作のしにくさは大きくは変わらない。実はいま、当執筆と並行してトヨタ「カムリWS」をテストしているのだが、画面をタッチして操作するタイプなので、こちらのほうがはるかにスムーズかつ確実で、間違いなく使いやすい。

「ハンズフリーパワートランクリッド」は注意して操作を

トランクのヒンジがむき出しなので、この下に荷物を置かないように注意したい

トランクのヒンジがむき出しなので、この下に荷物を置かないように注意したい

トランクは広大で、十分なスペースが確保されている。しかし、ヒンジが室内側にむき出しで、それに気づかずにモノを置いてしまうと傷をつけてしまうか破壊してしまいかねない。今回のテスト車には「ハンズフリーパワートランクリッド」が装備されており、足をバンパー下に入れることで開閉が可能で、とても便利な機能だ。しかし、反応したかどうかがわかりにくいので、例えばウインカーが点滅するとか視覚上で判断できるようにしてほしい。

もうひとつ、この機能で注意をしなければいけないのは、閉まるときの力の強さだ。一度前述のヒンジの下にものを置いてしまい、ヒンジがかかってしまいかけたので、慌ててトランクリッドの開口部に手を入れて持ち上げようとしたのだが、かなりの力を入れないと開く方向にはならず、そのまま閉まり続けるのだ。一度、本を開口部において閉めてみたのだが、トランクリッドがそこまで到達した後、モーターのガガガという異音がしたあとにやっと開き始めた。もし子供が手を置いていたりした場合には確実に挟み込み怪我をしてしまうだろう。パワーウインドウなどと同じように、少しでも力が加わればすぐに開く、あるいは停止する対応が必要だと感じた。また、トランク内の照明も少々暗く、夜間は不便であった。

高速道路では驚くほどの静かさ

高速道路に乗り出してみると、やはり静粛性が秀でていることに驚いた。荒れた路面ではロードノイズを拾いがちだが、十分に許容範囲で、ESよりもうるさい上級モデルはたくさんある。風切り音もそれほど高くはないので、助手席や後席に乗せてもらって粛々と移動するクルマとしては最適だ。

なぜ、運転席ではないのか。それは直進安定性が決して高くはないからだ。結構修正舵が求められるとともに、足回りは硬い割には安定せずフラットライドな印象はない。段差などでもハーシュネスは確実に体に伝わってくるので、リラックスして運転を楽しめないのだ。思っている速度よりも2割ほど低い速度で走っていることでもそれは証明されていると思う。

レクサス「ES」の走行イメージ

レクサス「ES」の走行イメージ

そこで、アダプティブクルーズコントロールを利用してみると、レーンの左寄りを走る傾向にあった。ドライバーが車線の中央にいるイメージで、追い越し車線を走る際は気を使う。さらに、その状態では左側のクルマに反応し警告音やブレーキングをすることがままあった。また、直進安定性があまり高くないので、若干蛇行することもあった。さらに、緩い左コーナーなどでは左に寄りすぎてセンターラインに反応し、そこから右に寄ってみたりと、蛇行を繰り返すこともある。もしかしたらと、「センタートレース」という機能のみをオフにしステアリングアシストのみにしてみたところ、この傾向は減ったが、根本的な解決にまでは至らなかった。

また、ぎりぎりで車線変更したクルマが前方に入ってくると反応しないことがあったり、前方のクルマを全く捉えられずに勢いよく追いつきギリギリで警告音とともにブレーキがかかることが多々あったことを付け加えておこう。つまり、単眼カメラであることも含めて制御そのもののレベルはそれほど高くないということだ。

高速道路の移動においては、この直進安定性以外にシート形状が気になった。30分以上座り続けると背中やお尻が痛くなってきて、1時間を経過する頃には腰全体がだるくなってしまった。せめて、2時間は座り続けることができるシートを望みたい。

もう少し伸びてほしい高速道路の燃費

最後に、燃費に触れておこう。市街地は15.6km/L、郊外路では21.0km/L、そして高速道路では17.9km/Lであった。WLTCモード値では、同じ順番で16.6km/L、22.7km/L、21.4km/Lと少々差がついた結果だった。4気筒2.5リッターとモーターが組み合わされたハイブリッドなので、もう少し市街地の燃費は伸びてほしいと思う反面、郊外路では期待値以上に伸びた。高速道路の燃費が郊外路より下回ったのは、その多くの時間でエンジンが稼働しているからだと判断される。もう少し高速域でもEV走行ができるようになれば、より燃費は伸びることだろう。

デジタルアウターミラーを採用したことは評価できるが

デジタルアウターミラーを採用するなど、最新技術で注目を集めたES。たしかにデジタルアウターミラーは、これまでの鏡面のミラーでは見られなかった広い範囲が見えるなど、大いに安全性に貢献しそうだ。もちろん、それにはまだ慣れが必要だし、法規制に関してもまだまだ現実に即していない部分もある。そのため、むやみに勧めることはできないし、購入する際にも目新しさだけで購入してはいけない。それでも、新たな1歩として踏み出したことは評価に値したい。

レクサス「ES」のフロントフェイス

レクサス「ES」のフロントフェイス

いっぽう、ESというクルマそのものを見たときには、果たして700万円もする(もっとも安い300hでも580万円)価値があるのかと問われると、疑問を挟まざるを得ない。たしかに、カムリと比べるとはるかに上質で静粛性も高い。走行フィールもなめらかで、すべてにおいて洗練されている。では、カムリはダメかというと決してそんなことはない。現在テスト中のカムリWSは360万円なので、およそ200万〜340万円を上乗せする価値がESにあるのか、また、この価格帯であればメルセデス「C200」や「C220d」あたりは十分射程範囲だ。そこであえてESを選ぶという魅力は、前述した静粛性や室内の広さ、スイッチ類の操作“感”(操作“性”ではない)などであり、ドライバーズカーとしての魅力は大きくはない。したがって、やはり「乗せてもらうクルマ」としてであればお勧めしたいと思う。特に後席は驚くほど広く、快適な空間が広がっているからだ。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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