レビュー
発売直後に新型ジムニーを手に入れて、1年所有したその感想は!?

スズキ 新型「ジムニー」即買いから1年経ったオーナーが語る「いいところ、悪いところ」

2018年7月にフルモデルチェンジして、4代目となったスズキ「ジムニー」。

右のクルマが、今回インタビューしたオーナーS氏の愛車である新型「ジムニー」。左は、比較のために今回スズキからお借りしたノーマルのジムニーだ

今回、発売直後にジムニーを購入したユーザーへ、1年を経過して満足したところや不満な点、そしてちょっと手を入れた話などをうかがってみた。

軽い四駆。維持費の点でも「軽」がベスト

これまで新車から中古車、ヒストリックカーなど幅広くクルマ趣味を楽しんでいる50代後半になるS氏は自営業を営む方。現在東京都内にお住まいだ。普段の足はホンダインサイト(初代)とトヨタアルファードハイブリッドだが、サーキットを走るためのバイクやヒストリックカー等も所有する。そんなS氏は、なぜ新型ジムニーを購入したのだろうか。ちなみに、S氏が購入したジムニーのグレードは「XC」、トランスミッションはATである。

S氏の愛車であるスズキ「ジムニー」。ブラックのフェンダーが装着されていて、一見すると普通車の「ジムニーシエラ」にも見えるが、軽自動車のジムニーだ

「四駆で走破性の高いクルマ、いわゆるクロカン四駆がもともと欲しくて、いろいろ考えていたんです。そうしたときに、ジムニーがフルモデルチェンジをするというので購入に踏み切りました」と購入のきっかけを話すS氏。なぜ、ほかのクルマではなくジムニーだったのか。

「もちろんランクルなども考えましたが、サイズや重量などで抵抗があったのです。たとえば、スタックしたときとかに困りますよね。長野や岐阜などの冬山に行ったときに、現地で使われていたのがジムニーなどの軽い四駆で、そのイメージが強かったのもあります。そこで購入しようと思ったら新型が出ると聞いて即(笑)。デザインも四角くなって、格好いいですしね」と、かなりのお気に入りの様子だ。

ジムニーには登録車のシエラもあるが、「軽ではないから選びません。やはり維持費が安いですし、走破性はそれほど変わりません。単に排気量が少し大きいだけなので、それであれば軽のジムニーのほうに魅力を感じます」と言う。

「もったいなくて」使い倒せない

さて、購入してほぼ1年。その印象は「よくできていますよね。真剣に、まじめに作った印象です。そして、対価満足度がとても高い。安っぽさがまったくないんですよ。軽自動車だと、どうしても安っぽく感じるクルマが多いでしょう。でも、このクルマにはそれがない。値段のわりに、本当によくできていますね」とのこと。

気に入らないところは、「もったいなくて、大切にしすぎてしまうところ」というほど、ジムニーを絶賛するS氏

もう少し、具体的に教えてもらうべく聞いてみたが「全部いいと思いますよ。どこを見ても手抜きがないし、真面目に作っている。スズキを代表するクルマだと思います」と絶賛だ。

では、逆に気に入らないところを聞いてみよう。「ない、といってもいいくらいです。もちろん、好みで自分なりによくしたいと思うところは手を入れていきました」という。そのとき、ふと思いついたようで、「新型ジムニーは、よすぎてしまうのでもったいないんです。なので、悪路をガンガン走ることができない。古い“11”とか“22”だと、たとえ転んでもボディアッセンブリー交換で、当時20万円前後だったと思います。でも新型は、結構お金がかかりそうでしょう。そこが使いにくいんです。ガンガン使い倒して、多少傷ついたり、ぶつけたりしても気にしないぐらいの使い方で、使い倒すことができないのが残念です」と話す。また、燃費ももう少し伸びてほしい様子だった。

好みに合わないところは、みずから手を入れる

ここからは、かなりS氏の主観が入るパートだ。相当気に入っているジムニーだが、S氏の好みには合わない部分も散見された。そこで、自身でもエンジンを組むことができるくらいの腕と知識を生かして、改良に取りかかった。具体的にはサスペンション、シート、そしてエンジンパワーだ。いずれも車検対応の改良ではあるが、あくまでも自己責任において手を下していることを付け加えておく。

S氏のジムニーには、横揺れを抑えるために特注の「ビルシュタインダンパー」が装着されている

S氏のジムニーには、横揺れを抑えるために特注の「ビルシュタインダンパー」が装着されている

サスペンションに関しては走行安定性、特に悪路はもとより、一般道でも荒れた路面などでの横揺れがひどく、長時間乗ることができなかったそうだ。特にS氏は、腰や首を痛めた経験があることからなおさらだ。そこで、この横揺れを抑えるためにショックアブソーバーの交換に取りかかるのだが、なかなか思った通りの商品とセッティングに巡り合えない。さまざまな情報を収集、分析し、最終的にたどり着いたのがビルシュタインをベースに中身を改めて作り直すことだった。たまたま知人の工場でノウハウがあったことから、外側はそのままに中身を入れ替えて組み直してもらいながら調整し仕上げていった。およそ8万円の工賃だったようだ。

S氏のジムニーのシートには、レカロのセミバケットシートが装着されている

S氏のジムニーのシートには、レカロのセミバケットシートが装着されている

次にシートだが、レカロの「トレンド」と呼ばれるセミバケットシートが装備されている。「元々、ヘッドレストが前側に出ているのがすごく嫌だったのです。それと腰痛持ちなのですが、ジムニーのシートヒーターはももの部分だけしか温めてくれない。そこで腰も温めてくれるレカロ『トレンド』にしました。このシートはショルダーの部分がないので、街中で運転するときに肩周りが楽で非常にすぐれています」とのこと。

最後のエンジンは、サブコンとスロットルコントロールを装着。サブコンとは、サブコンピューターの略称で、メインECU(エンジンコントロールユニット)の制御を生かしつつ、各種信号を補正するコンピューターのことを指す。S氏は、「走り出しのときに、パワーが足りないのです。これが一番疲れるし、ストレスもたまります。特に速いことを望んでいるわけではなく、踏み出しだけ力が欲しかったことと、燃費も改善されるでしょう。車体が重たいのでなかなか流れに乗れず、ずっとアクセルを踏んでいなければならないですから」。そこでS氏は同じエンジンを搭載するケータハムSeven160のデータを参考に、サブコンを介することで64psから80psに向上させた。

同時に、スロットルコントロールも採用。ジムニーはもともと、悪路を走ることを想定しているために、アクセル開度の設定はゆっくり開いてゆっくり閉まるようになっている。この場合、街中などで信号からの発進時はより深くアクセルを踏み込まなければならないので、初期応答性を高くするために装備した。調整が可能なので、悪路を走る際には標準に戻して楽しんでいるという。

ブラックのフェンダーを装着すると、どうしてもジムニーシエラに見えてしまう

ブラックのフェンダーを装着すると、どうしてもジムニーシエラに見えてしまう

そのほか、エクステリアパーツでは悪路を走る場合にもっとも傷つきやすいフェンダーを守るため、また車高が上がっているように見せたいことから、フェンダー周りをジムニーシエラのように黒くしている。また、ノーマルのグリルがあまり好きではなかったことから、オプション品に交換。エンブレムの文字も、古いタイプのジムニーの純正部品にして、白い部分をメッキ加工している。また、リア周りのエンブレムはブラックで塗装されていた。

上質な乗り心地に「ここまで変わるのか」と驚き

短時間ではあるが、S氏のジムニーに試乗させてもらえたので、その印象を述べておこう。筆者は先代ジムニー、新型ジムニーとジムニーシエラにかなりの距離を試乗しているので、その記憶を踏まえながら走り出してみると、タイヤの最初のひと転がりで大きく印象が異なっていることに気付かされた。

ノーマルのジムニーとは異なる、乗り心地がよくて重厚感のあるS氏のジムニーの走りに驚きを隠せない

ノーマルのジムニーとは異なる、乗り心地がよくて重厚感のあるS氏のジムニーの走りに驚きを隠せない

まず、乗り心地が非常に上質なのだ。どちらかというとジムニーは足がバタつくことがあり、それは新型でも軽減されてはいるものの残っていた。しかし、S氏のジムニーにはまったくそれが感じられず、ショックがしなやかに吸収され、はるかに重量のあるクルマに乗っている印象なのだ。当然、S氏が目標とした横揺れもほとんど感じられず、フラット感が強調されていた。

また、音が静かになったことも上質さに影響している。これはエンジンパワーが上がったと同時に、スロットルコントロールが影響しているようで、アクセル開度が減り、その分エンジン回転が長く高回転にとどまらなくなったからだ。同時に、出足も若干鋭くなった。今回、広報車の同仕様を持ち込んだのだが、ノーマルのジムニーは、前述の理由からあえて出足がもっさりしているのに対し、S氏のクルマはマニュアルに近い印象で、スッと思ったとおりに近い加速を手に入れられる。したがって、街中でもストレスなく走ることが可能だ。もちろん、オフロード走行も考慮に入れたセッティングのため段階的に変更が可能など、抜かりはない。

今回、新型ジムニーを購入して1年が経ったユーザーに対して、新型ジムニーのいい面と悪い面を浮き彫りにしようという企画だったのだが、あにはからんや、よりディープな内容になってしまった。多くの読者は、ノーマルのまま乗り続ける方がほとんどだろう。しかし、ジムニーというクルマは自分好みの仕様に仕上げられる余地が残されているクルマでもある。今は、インターネットでも情報収集は容易だ。ぜひ、そういったものも活用してジムニーを楽しんでほしいし、思った通りに仕上がったときの喜びは、また格別なものだ。

今回、S氏のジムニーに接して改めてジムニーの素性のよさとともに、ユーザーそれぞれが求めるジムニー像があることに気づかされた。メーカーでは多くの人たちに合わせるべく、あるところは妥協しながら作り上げていく。それを、それぞれのユーザーの好みに応じて改良できる懐の深さを、ジムニーは備えていることを改めて感じた。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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