バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂
法定速度内なのに気分はレーシングライダー

公道で存分に楽しめる4気筒スーパースポーツ! カワサキ「Ninja ZX-25R」がおもしろい!!

2019年に開催された「東京モーターショー」で大きな話題となったカワサキ「Ninja ZX-25R」が、2020年9月に発売された。250ccクラスとしては久々の4気筒マシンでありながら、本格的なスーパースポーツとして作り込まれている点が人気を集め、予想を大きく超える販売を記録している。そんなNinja ZX-25Rの上級グレード「Ninja ZX-25R SE KRT EDITION」に試乗し、その実力を体感してみた。

20年の時を超えて復活した4気筒スーパースポーツ

カワサキの250ccの4気筒エンジンを搭載したマシンというと、1989年に発売された「ZXR250」が思い出される。19,000回転まで回る超高回転型のエンジンを搭載したZXR250は、当時の250ccクラスの上限値である45PSの最高出力を発揮。盛んだったSPレース仕様のバリエーションモデル「ZXR250R」もラインアップされ、本格的なレーサーレプリカマシンとして話題となった。以降、1991年にフルモデルチェンジされるも、1999年に生産が終了。ただし、この高回転型のエンジンは同社のネイキッドモデル「バリオス」に受け継がれ、2007年まで生産された。

1989年に発売されたZXR250は、250ccクラスとしては初採用となる倒立式フロントフォークを装備。レーサーレプリカブーム末期の人気モデルとなった

1989年に発売されたZXR250は、250ccクラスとしては初採用となる倒立式フロントフォークを装備。レーサーレプリカブーム末期の人気モデルとなった

レーサーレプリカブームが巻き起こった1980年代には高性能なスポーツマシンが毎年のようにモデルチェンジされ、メーカー各社が250ccクラスに4気筒モデルをラインアップしていたが、このブームが終わり、さらにその後、次第にバイク自体のブームが下火になっていくと、250ccクラスは2気筒もしくは単気筒が主流となり、4気筒モデルは姿を消していった。そんな中、2019年夏頃にカワサキが250ccの4気筒モデルを作っているというウワサが! 正直なところ、この時代に本気で4気筒モデルを発売するのか!? と思ったのだが、「東京モーターショー2019」に参考出展された「Ninja ZX-25R」はあきらかに市販を前提とした完成度。カワサキの本気度を実感した。

「東京モーターショー2019」に参考出品された「Ninja ZX-25R」は、2020年8月に発売された市販車とほぼ同じ姿だった

「東京モーターショー2019」に参考出品された「Ninja ZX-25R」は、2020年8月に発売された市販車とほぼ同じ姿だった

フレームもエンジンも完全新設計の本気のスペック

ここからは、新型「Ninja ZX-25R」の車体を見ていこう。もっとも注目すべきは、完全新設計の4気筒エンジン。ボア×ストローク値が50.0×31.8mmのショートストローク設計とされたエンジンは17,000回転以上まで回り、45PS(ラムエア加圧時は46PS)を15,500回転で発揮する。ZXR250(1989年発売)が発売された時代よりも格段に厳しくなった排気ガス規制に対応しながら、限られた排気量で当時と同じスペックを達成したのは驚異的だ。また、スロットルには大排気量のスーパースポーツでは一般的な装備になりつつある電子制御を採用し、緻密なコントロールを実現。排気音にもサウンドチューニングが施され、高回転での官能的な音を堪能できるようになっているという。

今回試乗したのは、ライムグリーン×エボニーのカラーをまとった「Ninja ZX-25R SE KRT EDITION」。サイズは1,980(全長)×750(全幅)×1,110(全高)mmで、車両重量は184kg

今回試乗したのは、ライムグリーン×エボニーのカラーをまとった「Ninja ZX-25R SE KRT EDITION」。サイズは1,980(全長)×750(全幅)×1,110(全高)mmで、車両重量は184kg

「Ninja ZX」シリーズの上位モデルと同じ造形のフロントフェイス。中央には、エアを吸入口へ導くラムエアシステムの導入口がある。ライトはLED

「Ninja ZX」シリーズの上位モデルと同じ造形のフロントフェイス。中央には、エアを吸入口へ導くラムエアシステムの導入口がある。ライトはLED

4気筒エンジンらしく、横に張り出したフォルムを実現。フレームは鉄製の軽量なトレリス構造となっている

4気筒エンジンらしく、横に張り出したフォルムを実現。フレームは鉄製の軽量なトレリス構造となっている

カウルの前方から見える4本のエキゾーストパイプが4気筒エンジンの証だ

カウルの前方から見える4本のエキゾーストパイプが4気筒エンジンの証だ

足回りも、近年の大排気量スーパースポーツに見劣りしない設計だ。フロントフォークは倒立式で、ブレーキにはラジアルマウントのモノブロックキャリパーを採用。そして、スポーツバイクに必須となっているグリップの高いラジアルタイヤを装着するため、ホイールはフロントが3.5×17、リアが4.25×17インチで、タイヤサイズは前110、後150となっている。250ccクラスで150サイズのリアタイヤを履けるモデルはめずらしい。

フロントブレーキはシングルディスクだが、ラジアルマウントのキャリパーで制動力は十分

フロントブレーキはシングルディスクだが、ラジアルマウントのキャリパーで制動力は十分

フロントフォークには、作動性のよさに定評があるショーワ製のSFF-BP(セパレートファンクションフロントフォーク−ビッグピストン)を採用

フロントフォークには、作動性のよさに定評があるショーワ製のSFF-BP(セパレートファンクションフロントフォーク−ビッグピストン)を採用

リアのスイングアームは湾曲タイプ。タイヤは、グリップ力の高いダンロップ製「GPR300」を装着している

リアのスイングアームは湾曲タイプ。タイヤは、グリップ力の高いダンロップ製「GPR300」を装着している

リアサスペンションは、近年の250ccクラスでは少数派となったリンク式

リアサスペンションは、近年の250ccクラスでは少数派となったリンク式

Ninja ZX-25Rにはスタンダードの「Ninja ZX-25R」と、装備を充実させた「Ninja ZX-25R SE」の2つのグレードを用意。「SE」には、KQS(カワサキクイックシフター)やリアシート下のUSB電源ソケット、フレームスライダーが備えられているほか、ウインドシールドがスモークになっていたり、ホイールにリムテープが装備されている。なお、今回試乗する「Ninja ZX-25R SE KRT EDITION」は、「SE」をベースにスーパーバイク世界選手権仕様のカラーを採用したモデルだ。

Ninja ZX-25R SEとNinja ZX-25R SE KRT EDITIONには、クラッチ操作なしでシフトアップ/ダウンができるクイックシフターが装備されている。シフトダウン時には空ぶかしでエンジン回転をあわせるオートブリッパー機能も完備

Ninja ZX-25R SEとNinja ZX-25R SE KRT EDITIONには、クラッチ操作なしでシフトアップ/ダウンができるクイックシフターが装備されている。シフトダウン時には空ぶかしでエンジン回転をあわせるオートブリッパー機能も完備

転倒時のダメージを低減するフレームスライダーも、Ninja ZX-25R SEとNinja ZX-25R SE KRT EDITIONには備えられている

転倒時のダメージを低減するフレームスライダーも、Ninja ZX-25R SEとNinja ZX-25R SE KRT EDITIONには備えられている

公道でおいしいところを満喫できる走行性能を完備

カワサキはNinja ZX-25Rシリーズを使ったワンメイクレースの開催を予定しているというが、たしかに、250ccマシンにここまでの機能が必要なのか? と思えるほどのハイスペックな仕上がりだ。だが、レースで活躍できそうなスペックであっても、250ccクラスであるNinja ZX-25Rシリーズなら、公道でその性能は存分に味わうことができるはず。そんな部分を検証すべく、街中や高速道路、そしてワインディングに出かけてみた。

身長175cmの筆者がまたがると、かかとまでベッタリと接地するほど足つき性がいい。小柄なライダーや初心者はもちろん、ベテランライダーにもこの足つき性は安心感につながるはずだ

身長175cmの筆者がまたがると、かかとまでベッタリと接地するほど足つき性がいい。小柄なライダーや初心者はもちろん、ベテランライダーにもこの足つき性は安心感につながるはずだ

シートカウルの形状はシャープで、着座した歳の感触もスーパースポーツにふさわしいもの

シートカウルの形状はシャープで、着座した歳の感触もスーパースポーツにふさわしいもの

コックピットはスポーティーに見えるが、ハンドル位置が少し高められているので前傾姿勢はあまりきつくない

コックピットはスポーティーに見えるが、ハンドル位置が少し高められているので前傾姿勢はあまりきつくない

エンジンをかけると4気筒らしい澄んだ排気音が耳に届く。空ぶかしをすると10,000回転を超えたあたりから甲高い音に変わり、一気にレッドゾーンまでフケ上がる。聞いているだけでゾクゾクしてくるような官能的な音だ。迫力あるエキゾーストノートだが、音質は澄んでいて聞いている人にも不快感を与えにくいはず。好きな人ならぐっと来るポイントだろう。

昨今流行りのショートタイプのマフラーから、官能的なサウンドが響く(下の動画参照)

昨今流行りのショートタイプのマフラーから、官能的なサウンドが響く(下の動画参照)


そして、そのままクラッチをつないで走り出す。この際にも、感心させられたことがある。一般的に250ccの4気筒エンジンは、高回転は気持ちよく回るものの低回転のトルクは薄くなりがちで、特にスタート時は、単気筒や2気筒の同クラス車に比べるとエンジンを高回転まで回してからクラッチをつながないとエンストしやすい。しかし、Ninja ZX-25R SE KRT EDITIONは、1速でクラッチをつなごうとすると自動でエンストしない程度まで回転数を高めてくれるのだ。「回してからクラッチをつながないと」と意識していたので、うれしいかたちで予想を裏切られた。

クラッチの操作も驚くほど軽い。信号待ちなどで握りっぱなしにしていてもまったく苦にならないほどだ

クラッチの操作も驚くほど軽い。信号待ちなどで握りっぱなしにしていてもまったく苦にならないほどだ

走り出すと、低回転域でも思った以上にトルクがある。筆者はZXR250Rのエンジンを継承した「バリオス」に乗ったことがあるが、その際には「10,000回転以下はトルクがなくて使い物にならない」という印象だった。だが、Ninja ZX-25R SE KRT EDITIONは低回転でのトルク感もそこまで薄くない。もちろん、加速するにはある程度回転を上げる必要があるが、そうすると官能的な排気音が響く。公道でも、こんな4気筒サウンドを味わえるとは!

一般道の速度域でも排気音は十分に官能的。結構スピードが出ているのでは? とメーターに目を落としても、そこまで速度は上がっていない

一般道の速度域でも排気音は十分に官能的。結構スピードが出ているのでは? とメーターに目を落としても、そこまで速度は上がっていない

アナログの回転計とデジタル表示を組み合わせたメーターは視認性が高い。10,000回転以上が見やすい位置に配置されており、シフトアップインジケーターも装備。パワーモードやKTRC(トラクションコントロール機能)もメーター表示で確認できる

アナログの回転計とデジタル表示を組み合わせたメーターは視認性が高い。10,000回転以上が見やすい位置に配置されており、シフトアップインジケーターも装備。パワーモードやKTRC(トラクションコントロール機能)もメーター表示で確認できる

パワーモードの切り替えなどは左手側のボタンで行う。大排気量のスーパースポーツでは一般的な機能が、250ccクラスに装備されたのはうれしい

パワーモードの切り替えなどは左手側のボタンで行う。大排気量のスーパースポーツでは一般的な機能が、250ccクラスに装備されたのはうれしい

もっと高回転の排気音を堪能したくて早々に高速道路に上がり、合流のところでアクセルを全開! そのままシフト操作をすれば、排気音が途切れることなくシフトアップして行けるのは感動的だ。10,000回転オーバーでの排気音はまさしくレーシングマシンそのもの。気分はまさに、ジョナサン・レイ(スーパーバイク世界選手権にカワサキチームとして参戦しているレーシングライダー。同レースにて5連覇中)だ。大排気量マシンでこのような走り方をすれば、法定速度を軽く超え、目が付いていかないほどの速度域になってしまうが、Ninja ZX-25R SE KRT EDITION は3速くらいまでなら法定速度内で収まる。それでいて、レーシングマシンのようなサウンドが楽しめるところが素晴らしい。このように書くと、Ninja ZX-25R SE KRT EDITIONが遅いように思われるかもしれないが、当然ながら、そのようなことはない。ギアをきちんと合わせて回転数を保っておけば、追い越し加速などでは胸のすくようなダッシュができ、交通の流れをリードできる。

コーナーリング性能も近年のスーパースポーツらしいもの。ハイグリップラジアルを履いていることもあり、ピタっと路面に吸い付くように安定している。それでいて、250ccらしく操作感は軽いので、コーナーリング中のライン変更なども自由度が高い。

スーパースポーツらしいキレと安定感、そして250ccクラスらしい軽快感をあわせ持ったハンドリングが楽しくないはずがない

スーパースポーツらしいキレと安定感、そして250ccクラスらしい軽快感をあわせ持ったハンドリングが楽しくないはずがない

さらに、そのハンドリングを味わうため、ワインディングに足を伸ばす。コーナーの手前でシフトダウンをすると、オートブリッパーが空ぶかしをしてくれるので、気分がさらに高まる。ブリッピング操作もレーシングマシンのようで、またしても脳内はレーシングライダー気分に。回転数を自動で合わせてくれる機能と、アシストスリッパークラッチが装備されているため、コーナーに入るのもスムーズ。そして、フロントに荷重をかけたまま、少し速めのスピードで車体をバンクさせると、かなりクイックに向きが変わる。こうした挙動を大排気量のスーパースポーツで味わうにはサーキットに持ち込まなければならないが、Ninja ZX-25R SE KRT EDITIONなら公道で(法定速度内で)キレのあるハンドリングを味わうことが可能だ。

試乗を終えて

カワサキが250ccでスーパースポーツを作っているというウサワが広まり、「東京モーターショー2019」でその姿を目にした時、多くの人が100万円を超える価格になるだろうと予想していた。現在の技術でエンジンからフレームまで完全新設計のスーパースポーツを作るには、そのくらいコストがかかるからだ。しかし、実際に発売された価格は、Ninja ZX-25Rは825,000円(税込)、Ninja ZX-25R SEとNinja ZX-25R SE KRT EDITIONは913,000円(税込)と予想を大きく下回るものであった。発売当初に2021年3月までの販売目標として掲げられた5,000台を、発売後1か月で売り上げてしまうほどの人気となるも納得できる。

そして、その価格設定以上に、250ccの4気筒エンジンを搭載したマシンには価値がある。近年のスーパースポーツマシンの進化は目覚ましいものの、その性能の多くを公道では味わえないレベルになっており、4気筒エンジンの魅力である高回転まで回した時のパワー感とサウンドを味わうには、サーキットに行くしかなかった。しかし、250ccクラスであれば法定速度内でも、その魅力がたっぷり楽しめる。かつてのレプリカブームを知る世代は筆者と同じく中年になり、反応速度も鈍って無茶なスピードは出せなくなっているはず。そんな世代でも、250ccクラスのスピード域ならキレのあるハンドリングやレーシングサウンドを堪能できる。Ninja ZX-25Rは、そんな人たちにとっては夢のようなマシンかもしれない。

気分はレーシングマシン! でも、スピードは法定速度、なんてマシンはNinja ZX-25R以外にないだろう。できれば、サーキットでも走ってみたい

気分はレーシングマシン! でも、スピードは法定速度、なんてマシンはNinja ZX-25R以外にないだろう。できれば、サーキットでも走ってみたい

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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