レビュー
前後独立モーターや「S-AWC」による、独特な走りの楽しさを体感!

三菱「エクリプスクロスPHEV」の走りの楽しさは、熟成の域に達した!

三菱自動車のクロスオーバーSUV、「エクリプスクロス」に大幅な改良が施され、新たにPHEV(プラグインハイブリッド)モデルが加わった。

2020年12月4日に発売された、三菱 新型「エクリプスクロス」。新型エクリプスクロスには、新たにPHEVモデルが加わったほか、フロントやリアのデザインに変更が施されている

2020年12月4日に発売された、三菱 新型「エクリプスクロス」。新型エクリプスクロスには、新たにPHEVモデルが加わったほか、フロントやリアのデザインに変更が施されている

エクリプス クロス PHEVの製品画像
三菱
4.63
(レビュー18人・クチコミ291件)
新車価格:384〜447万円 (中古車:388〜439万円
三菱が販売するクロスオーバーSUVのPHEVモデル

エクリプスクロスPHEVの基本的なメカニズムは、「アウトランダーPHEV」に搭載されているPHEVシステムを移植したものだ。2.4L直列4気筒エンジンが主に発電機を作動させ、前後輪にそれぞれ配置された高出力モーターによって、タイヤを駆動させる。駆動方式は、4WDのみだ。エクリプスクロスPHEVに搭載されている、駆動用リチウムイオン電池の総電力量は13.8kWhで、1回の充電によって57.3km(WLTCモード)を電気だけで走行することができる。

なお、これまでのエクリプスクロスには、1.5Lガソリンエンジン搭載車と2.2Lクリーンディーゼルターボエンジン搭載車がラインアップされていた。だが、今回のPHEVの追加と引き替えに、クリーンディーゼルターボは廃止されている。クリーンディーゼルターボの販売台数は、2019年に追加された直後こそエクリプスクロス全体の約35%を占めていたのだが、最近では約20%にまで販売台数が下がっていた。エンジンの種類が多いとコストが高くなるため、クリーンディーゼルターボは廃止されてPHEVと1.5Lガソリンエンジンのラインアップとなった。

「エクリプスクロスPHEV」のフロントエクステリアとリアエクステリア

「エクリプスクロスPHEV」のフロントエクステリアとリアエクステリア

開発者によると、エクリプスクロスへプラグインハイブリッドシステムを新たに搭載するには、困難がともなったという。従来のエクリプスクロスの全長は4,405mmと短く、そのままではプラグインハイブリッドシステムが収まらない。そこで、ホイールベースを変えずに、前輪よりも前側を35mm、後輪よりもうしろ側を105mm伸ばした。この時の課題は、前後ピラーやドアパネルが変えられないことだったという。

「エクリプスクロスPHEV」(上画像)と、改良前の「エクリプスクロス」(下画像)のリアデザイン

「エクリプスクロスPHEV」(上画像)と、改良前の「エクリプスクロス」(下画像)のリアデザイン

特に、ボディ後部はリアゲートの変更だけで105mmも拡大させなければならなかった。従来型は、ボディの後部を短くカットしたような形状で、リアウィンドウは上下に二分割されていた。それを、新型のリアウィンドウは一般的な1枚形状のものに変えて、リアゲートをさらに後方に張り出させた。リアのデザインが大きく変わっているのは、PHEVシステムを搭載させるためだった。

改良前の「エクリプスクロス」(ガソリンエンジン搭載車)のフロントイメージとリアイメージ

改良前の「エクリプスクロス」(ガソリンエンジン搭載車)のフロントイメージとリアイメージ

さらに難しかったのは、車両全体の造形バランスだったという。従来型は、サイドウィンドウの下端がうしろへと持ち上げられており、ボディ前後のオーバーハングは短く抑えられることで、躍動感と塊感が演出されていた。そこが、アウトランダーとの明確な違いでもあったのだ。ところが、新型はPHEVシステムを搭載するために、オーバーハングを前後で140mmも伸ばしたことで、サイドウィンドウをうしろに向けて持ち上げる造形とボディの長さとのバランスが崩れてしまった。そこで、新型はボンネットの傾斜を抑えて、水平に近づけた。さらに、テールランプも横長の一般的な形状に変えることで、全長の拡大とのバランスを取った。

「エクリプスクロスPHEV」のフロントフェイス

「エクリプスクロスPHEV」のフロントフェイス

新型では、フロントフェイスにも変更が施されている。改良前は、ヘッドランプがフロントフェイスの最も上の部分に装着されていたが、新型はこの部分にポジションランプとデイタイムランニングランプが収まっている。ヘッドランプは下側に装着され、フォグランプと上下に並べられている。

「エクリプスクロスPHEV」のインパネとリアシート

「エクリプスクロスPHEV」のインパネとリアシート

車内は基本的に従来型と同じだが、床下にリチウムイオン電池が搭載されているために、後席は床が45mm高くなっている。そのため、後席に座ると従来に比べて膝が少し持ち上がる格好になる。窮屈とまでは言えないのだが、購入時には後席も念のため確認しておきたい。

「エクリプスクロスPHEV」の走行イメージ

「エクリプスクロスPHEV」の走行イメージ

それでは、エクリプスクロスPHEVに乗り込み、試乗を開始しよう。試乗車は、リチウムイオン電池がしっかりと充電されていたので、エンジンはかからずにモーターのみで走行を始めた。すると、走りだしてすぐに、動力性能に余裕があることが感じられる。モーターの反応は素早く、アクセルペダルを少し踏み増すと即座に力強い加速が始まる。ガソリンエンジンに換算すると3Lに匹敵する加速感で、ノイズは小さく、走りは滑らかだ。そして、さらにアクセルペダルを深く踏み込むと、エンジンが始動する。エンジンが発電を行うことで、リチウムイオン電池を補ってくれるのだ。

エクリプスクロスPHEVには、「ターマック」「グラベル」「スノー」「ノーマル」「エコ」といった走行モードが用意されている。今回、峠道を走る機会があったのでターマック(舗装された峠道などを走る時に使うモード)を選んで走行してみると、エクリプスクロスPHEVの素性がよくわかった。前後に搭載されたモーターの最高出力と最大トルクは、前輪が82馬力・14kgf-m、後輪は95馬力・19.9kgf-mと、後輪モーターのほうが強力だ。そのため、コーナーの手前で的確に減速して、回り込みながらアクセルペダルを踏み増すと、旋回軌跡を拡大させずに加速していく。ステアリングの操舵角に対して、忠実に回っていく感覚だ。

「エクリプスクロスPHEV」の走行イメージ

「エクリプスクロスPHEV」の走行イメージ

エクリプス クロス PHEVの製品画像
三菱
4.63
(レビュー18人・クチコミ291件)
新車価格:384〜447万円 (中古車:388〜439万円
三菱が販売するクロスオーバーSUVのPHEVモデル

こういった挙動の背景には、ブレーキを使った4輪制御「S-AWC」の存在がある。たとえば、コーナーでアクセルペダルを踏み増した時など、走行状態に応じて内側のホイールにブレーキを作動させることで、車両を内側へと積極的に回り込ませる。そのため、高重心のSUVにもかかわらず操舵に対する反応は機敏でよく曲がるが、下り坂のカーブでブレーキを作動させた時などは、後輪が踏ん張ってくれる。曲がりやすさと、後輪の高い接地性をうまく両立させているのだ。

このことについて、開発者は「前後独立したモーターの制御によって、従来に比べて安定性を高めるセッティングを施した」と言う。この開発者の言葉は、昨今の三菱が手がけたSUVを振り返ってみると、よくわかる。三菱のSUVに採用されているプラットフォームは、2005年に初代(先代)アウトランダーが採用した時から、実は変わっていない。ホイールベースも2,670mmと、全車共通だ。

このプラットフォームの素性は、当時の三菱が業績の回復をねらって走りのよさを重視したこともあって、よく曲がる方向に味付けされていた。だが、その味付けによって、後輪の接地性には不満が生じていた。そのため、2012年に登場した現行アウトランダーは曲がりやすさを抑えて、後輪の接地性が高められた。それによってバランスはよくなったものの、今度は機敏に曲がる初代の面白さが薄れてしまった。そこで、2018年に登場したエクリプスクロスは、改めてよく曲がる設定に回帰したのだ。前述のとおり、発売時点のエクリプスクロスは全長とオーバーハングが短く、曲がるときに慣性の影響を受けにくい。エクリプスクロスのガソリン車は、走りのバランスがとてもいいクルマだった。

しかし、2019年に追加されたエクリプスクロスのクリーンディーゼルターボは、車重が増えてバランスが変わったため、後輪の接地性が下がってしまった。これを受けて、今回のPHEVは「前後独立したモーターの制御により、安定性を高めるセッティングを施した」わけだ。

このように、三菱は初代アウトランダーから「RVR」なども含めて、プラットフォームとホイールベースは変えずに、個性的とも言える走行感覚を生みだしてきた。その洗練度を最も高めて、熟成させたのがエクリプスクロスPHEVだ。

「エクリプスクロスPHEV」の試乗イメージ

「エクリプスクロスPHEV」の試乗イメージ

したがって、乗り心地も実に良好だ。若干、体に伝わってくる粗さにプラットフォームの古さを感じるものの、足まわりの伸縮性はすぐれている。機敏に曲がるスポーティーな感覚、危険回避時を含めた安定性の高さ、そして快適性がうまくバランスされていると言える。ライバル車のトヨタ「RAV4 PHV」は、動力性能が高くリチウムイオン電池も大容量でモーター駆動によって走れる距離も長いが、運転の楽しさはエクリプスクロスPHEVのほうが勝っているだろう。

■三菱「エクリプスクロスPHEV」のグレードラインアップと価格
※価格はすべて税込

M:3,848,900円
G:4,152,500円
P:4,477,000円

エクリプスクロスPHEVの推奨グレードは、「P」(4,477,000円)だ。ガソリン車の「Gプラスパッケージ 4WD」(3,346,200円)に比べて1,130,800円高いが、装飾類や装備が充実しており、実質的な価格差は約100万円に縮まる。加えて、PHEVのPグレードは、購入時の税額が約8万円安く、経済産業省による補助金も2020年度実績で22万円交付される。前述した差額の100万円から、合計30万円を差し引くと、実質差額は約70万円に収まる。

エクリプスクロスPHEVは、一見すると少々魅力がわかりにくいところもあるかもしれないが、PHEVという利便性の高さに加えて、奥の深い運転感覚を味わえるスポーティーなSUVに仕上げられている。これまでの述べた通り、素性がとてもいいクルマなので、さらにパワーアップが施されたエクリプスクロスPHEVエボリューションのようなスポーツバージョンなども十分に成立するはずだ。同車の今後の発展にも、期待したいところだ。

渡辺陽一郎

渡辺陽一郎

「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト

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