レビュー
「e-SKYACTIV X」「SKYACTIV-D1.8」エンジンの出力を向上

マツダ「MAZDA3」改良エンジンを比較試乗! ベストバイはどれ!?

2020年11月、マツダは「MAZDA 3」に初の商品改良を施した。その主な内容だが、「e-SKYACTIV X」と「SKYACTIV-D1.8」の2つのエンジンに出力アップなどの改良が施されたほか、トランスミッションを制御するソフトウェアのアップデートや、サスペンションに関しても手が加えられるなど、走行性能を中心として商品力を向上させた。また、安全面においても、「CTS」(クルージング&トラフィック・サポート)の作動上限速度の拡大などが図られている。

今回、商品改良が施されたマツダ「MAZDA3」の「e-SKYACTIV X」エンジン搭載車(上画像のセダン)と、「SKYACTIV-D1.8」エンジン搭載車(下画像のファストバック)の新旧モデルを、それぞれ比較試乗した

今回、商品改良が施されたマツダ「MAZDA3」の「e-SKYACTIV X」エンジン搭載車(上画像のセダン)と、「SKYACTIV-D1.8」エンジン搭載車(下画像のファストバック)の新旧モデルを、それぞれ比較試乗した

MAZDA3 セダンの製品画像
マツダ
4.37
(レビュー44人・クチコミ586件)
新車価格:222〜361万円 (中古車:165〜321万円
MAZDA3 ファストバックの製品画像
マツダ
4.24
(レビュー174人・クチコミ6777件)
新車価格:222〜368万円 (中古車:164〜338万円

今回、MAZDA3のe-SKYACTIV XとSKYACTIV-D1.8エンジン搭載車の試乗会が開催された。同試乗会では、2種類のエンジンの改良前後の車両を比較試乗することができたので、その違いを中心にレポートしよう。また、試乗会とは別に「SKYACTIV-G1.5」の6速MT車にも試乗することができたので、そのレビューもあわせてお伝えしたい。

思いどおりに扱える“自在感”を目指した

まず、e-SKYACTIV Xエンジンの改良について、マツダ商品本部主査の谷本智弘氏は「理想の内燃機関の進化に向けて技術を磨き上げ、e-SKYACTIV Xの価値である環境貢献と走りの両輪の進化を遂げていきます。今回は、ソフトウェア制御技術のアップデートによる、e-SKYACTIV Xの進化の第一弾です」と話す。

そのポイントのひとつめは “自在感”、思いどおりに扱えることだ。目指したのは、「思いどおりに、意志が通じ合う相棒です」と谷本氏。「クルマが、ドライバーの体の一部になったかのような、思いどおりに扱える楽しみ方を発見できれば、その後のカーライフや人生に彩りを与えてくれると考えています」。

続いて、ポイントの2つめは “瞬発力”、瞬時に出せる力だ。今回、瞬発力を兼ね備えたことで、「自由自在なコントロール性が備わる、e-SKYACTIV Xに飛躍させました」と言う。たとえば、市街地などでゆるやかに走行するシーンでは、アクセルをゆっくり踏み込めば滑らかに思ったとおりのラインで、素直にトレースする。いっぽう、アクセルを素早く踏み込むような、高速道路の追い越しなどのシーンでは、すみやかに瞬発力を発揮して、ねらったときにねらった方向へと素早く操ることができる。こういった、さまざまなシーンで思ったとおりに操れる、気持ちのいい走りを実現したとのことだ。なお、このようにストレスなく自在に操れることはむだなアクセルワークを減らすので、燃費にも貢献する。実は、そこも大きな狙いのひとつと言えそうだ。

では、これらを実現するために、具体的にどのような改良が施されたのだろうか。まず、空気、燃料、混合比の状態を予測することで、より細やかな気筒内の状態を確認し、燃焼をコントロールするようにした。さらに、アクセルペダルの踏み方でドライバーの意図を把握し、出力をコントロールするようなセッティングが施された。ドライバーの意図をクルマが理解して、狙ったときに狙った方向に向かえるように、きめ細かに操ることができる「コントロール性」にこだわったと言う。その結果、最高出力は180psから190psへアップし、最大トルクは224 Nmから240Nmへと向上した。「すみやかに操るために、燃焼と出力をより発揮させる制御を行い、素早いアクセル操作に対する応答性やコントロール性を高めています」と述べる。

「アクティブエアシャッター」の動きとGVCとを協調制御

MAZDA3のe-SKYACTIV X搭載車には、従来から空気抵抗の低減とエンジンの熱マネージメントを両立するため、グリル内に「アクティブエアシャッター」が装備されている。このアクティブエアシャッターは、エンジンルームのクーリングが必要なときにはシャッターを開け、必要のないときにはシャッターを閉じて空気抵抗を低減し、燃費改善に貢献するものだ。だが、この開閉において、フロントのリフト特性が微少ながら変化するという。このちょっとしたリフト変化によって、フロントのタイヤ荷重が変わるため、ハンドリングも影響を受けるというのだ。そこで、今回の改良では「GVC」(ドライバーのハンドル操作に応じて、エンジンの駆動トルクを変化させ、コーナーリングをしやすくする機構)と協調制御させることで、ハンドリングへの影響を少なくして直進安定性を向上させている。

ディーゼルの力強さを持続させて、より操りやすく

次に、SKYACTIV-D1.8についてだが、改良のメインは出力とトルクの向上にある。最高出力は、116psから130psへとアップされた。トルクは、最大値の変更はないのだが、3,000〜4,500rpmの全開トルクを向上させており、ディーゼルの力強さの「持続性」が実感できるようなエンジン特性となった。「高速道路での合流や追い越し、アクセルを踏み込んで加速するシーンなどで、力強さが持続することを実感してもらえるだろう」とのことだ。

また、頻度の高い中速域での加速についても、アクセルの踏み始めの応答性が高められているという。

サスペンションのバランス見直しによって、フラット感を向上

また、MAZDA3の全車において、サスペンションも進化している。その狙いは、フラット感の向上だ。ポイントは、主に2つ。ひとつは、サスペンションのスプリングとバンプストッパー特性の変更。そして2つめは、フロントとリアのダンパーの減衰特性の変更だ。前後のバネバランスの見直しによってフラット感を向上させ、小さな路面の凹凸でバネ上(ボディ)が揺すられることを低減させる。そして、減衰特性のチューニングによって、バネ上の動きを穏やかにすることが目的となっている。

発進時から高回転域まで、全域でディーゼルの力強さが感じられる「SKYACTIV-D1.8」

冒頭で述べたとおり、今回の試乗では新旧モデルを乗り比べることができたので、何がどのように進化したのかをより明確に感じ取ることができた。まず、試乗したのはMAZDA3 ファストバックのSKYACTIV-D1.8(AWD)搭載車だ。今回の改良では、内外装に変更はなくドライバビリティに関しての変更のみなので、さっそく走り出してみよう。

MAZDA3 ファストバックの製品画像
マツダ
4.24
(レビュー174人・クチコミ6777件)
新車価格:222〜368万円 (中古車:164〜338万円

旧型へ試乗した後、新型へと乗り換えて最初に気付いたのは、アクセルに対するエンジンレスポンスがよくなっていることだった。特に、旧型では信号待ちからのスタートダッシュで一瞬の遅れを感じることがあったのだが、それが解消されたのは喜ばしい。また、中速域からの加速もスムーズで、エンジンはきれいにトップエンドまで回ることから、これまで以上にドライバーの意志に沿ったセッティングになったと言えるだろう。

これは高回転域、特に3,000〜 4,000rpmの出力やトルクを向上させていることが大きく影響しているように思える。SKYACTIV-D1.8のレッドゾーンは5,600rpmで、旧型ではトルクが4,000rpmぐらいから下降気味になり、加速の落ちを感じていた。それが、今回は出力、トルクアップによって4,500rpmあたりまで実用域として使えるようになったので、これまでよりも気持ちよく加速が伸びるようになった。

また、乗り心地に関しても旧型ではサスペンションが突っ張るような印象がともない、しなやかさはあまり感じられなかった。だが、新型へ乗り換えると、マンホールなどの凸凹を乗り越えるシーンなどでも角が取れ、しなやかな乗り心地になっていることがわかる。これにともない、ステアリング周りの取り付け剛性の低さから来きていたであろう、段差などでブルブルと震えていたステアリングもわずかだが軽減されていた。しかし、これは新旧比較をしてわかる程度の差で、やはり足は少々突っ張り気味であることに変わりはない。特に、高速道路では結構な突き上げを感じたので、乗り心地は期待していたほど大きく改善されたとまでは言えなさそうだ。

この、突っ張った乗り心地の最大のネックとなっているのは、ステアリングの取り付けを含む、フロント周りのボディ剛性の低さが起因しているように思える。つまり、ボディ剛性が低いので、ボディがそのショックを受け止めきれず、そのためにサスペンションを硬くせざるを得ないのだ。たとえば、ボディがしっかりしていれば、そこでショックを受け止められるので、サスペンションは十分にしなやかに、かつたっぷりとしたストロークを確保できる。したがって、最終的には元となるボディ剛性を解決しなければ、乗り心地の根本的な改善は難しいかもしれない。

乗り心地については少々厳しめの評価となってしまったものの、今回のSKYACTIV-D1.8の改良内容は、すべてにおいて改善傾向にはあるのは間違いない。特に、エンジンの出力とトルク特性の見直しは、大いに評価したい。その結果、どの速度域においてもドライバーの意志どおりのエンジンレスポンスが手に入るようになったからだ。

よりパワフルになった「e-SKYACTIV X」

さて、それではMAZDA3のe-SKYACTIV X搭載車に乗り換えてみよう。こちらは、セダンの2WDであった。

MAZDA3 セダンの製品画像
マツダ
4.37
(レビュー44人・クチコミ586件)
新車価格:222〜361万円 (中古車:165〜321万円

これは、ファストバックとセダンというボディタイプの違いのほうが大きく影響しているのだが、前述のSKYACTIV-D1.8のときに試乗したファストバックより、今回のセダンのほうが乗り心地がよく、速度を上げていくとよりいっそうのしなやかさが感じられた。この理由は、ファストバックよりも開口部が少ないため、ボディ剛性を確保しやすいからだと思われるが、それでもやはり全体のボディ剛性の弱さからか、路面からのショックは伝わりやすく感じた。

では、e-SKYACTIV Xの新旧比較をお伝えしよう。2,500rpmくらいからのパワーやトルクの出方は、新型のほうがドラマチックとまでは言えないものの、よりパワフルな印象だ。特に、高速道路においては気持ちのいい加速が手に入る。

さて、今回採用されたアクティブエアシャッターとGベクタコントロールとの協調制御だが、これについてはオン/オフができないこともあって、短時間の試乗では明確な差は感じられなかった。しかし、走っているうちに新型のほうが交差点などでの右左折時や高速道路におけるレーンチェンジなどの際に、わずかにステアリングがしっかりとした印象をともなっていることに気付いた。これが、フロントタイヤの接地性が増して、しっかりと路面をとらえている効果なのかもしれない。

必要にして十分なパワーを発揮する「SKYACTIV-G1.5」

最後に、今回の改良ではサスペンション周りをのぞいて大きくは変わっていないのだが、別日に試乗したMAZDA3 ファストバックの「15S」 6速MTモデルの印象も少しだけレポートしたい。

前述した、2リッターエンジンのe-SKYACTIV X(最高出力:190ps/6,000rpm、最大トルク:240Nm/4,500rpm)や、1.8リッターディーゼルエンジンのSKYACTIV-D(最高出力:130ps/4,000rpm、最大トルク:270Nm/1,600-2,600rpm)と比較すると、1.5リッターガソリンエンジンのSKYACTIV-G(111ps/6,000rpm、146Nm/3,500rpm)の最高出力や最大トルクは、少々見劣りするかもしれない。しかし、市街地や高速道路など、さまざまなシーンを走らせた結果からすると、SKYACTIV-G1.5の性能は必要にして十分以上と言える。たしかに、高速道路の追い越しや一般道での上り坂などでトルク不足を感じることもあるのだが、そういうときは適切なギアにシフトダウンすればいいだけのことだ。

そして、6速MTのシフトフィーリングは少しゴリっとしているがしっかりとしたもので、的確にそれぞれのギアを選ぶことができる。ペダルの位置も適切で、スポーティーに走らせるときにも違和感なく操作できるだろう。

乗り心地は、ほかのモデルに比べると小径かつ扁平率が高い205/60R16タイヤ(ほかのモデルは214/45R18が標準)であるために、やわらかい。とは言っても基本的なところ、つまりボディ剛性の低さは変わらないので、速度域が上がるにつれて最終的にはバタつくことになった。また、最も気になったのが直進安定性の低さだ。これも、ボディ剛性の低さから来るのだが、ステアリングが落ち着かず、40km/hから上の速度域、つまり、市街地から高速道路まで常に修正舵が求められた。また、標準のクロスシートも座面後端に少々腰がなく、長時間座っていると尻から腰にかけて疲れがたまってしまった。

今回、300kmほど走らせることができたので、その燃費をお伝えしよう。

市街地:13.9km/L (14.1km/L)
郊外路:14.6km/L (17.6km/L)
高速道路:21.9km/L (19.2km/L)
()内はWLTCモード燃費

郊外路で差が付いたのは、長く渋滞に巻き込まれた結果なので、通常であればWLTCモードに近い燃費が記録できるだろう。いずれにせよ、6速MTであることを除いても、非常に燃費のいい、効率的なエンジンであることが窺える。特に、高速道路において20km/Lオーバーを記録したのは優秀だ。これだけを見ても、ボディに対して十分なエンジン性能が備わっていることがわかる。

さて、今回は3つのパワートレインを中心にお伝えした。この中から、ひとつ選ぶとすると、SKYACTIV-G 1.5になるだろう。SKYACTIV-D 1.8 は、今回の改良においてよりのびやかさが加わったのは大きな向上なのだが、乗り味においてどうしてもバタついた感じがぬぐえなかった。そして、e-SKYACTIV Xはたしかに進化したものの、その差はわずかであり、値段も含めてまだ積極的にすすめたくなるような魅力には少々足りない。しかも、ガソリンがハイオク指定であることもネックだ。しかし、今後はまだまだ改良が施されていくだろうから、さらなる魅力をまとってくれることに期待したい。そして、SKYACTIV-G 1.5はバランスの取れたエンジンと、タイヤ径において乗り心地はわずかだが優位に立つ。直進安定性などのネガティブな面も残していたものの、総合的に判断するとMAZDA 3のラインアップではSKYACTIV-G 1.5がベストバイという結果となった。

[Photo:内田俊一、価格.comマガジン編集部]

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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