バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂
オフロードだけでなく、街乗りでも楽しさが炸裂

めちゃくちゃ楽しいオフロードマシン! ホンダの新型「CRF250L<s>」に興奮が止まらない!!

2012年の登場以来、長くホンダのオフロード車の中核を担ってきた「CRF250L」が初のフルモデルチェンジ。エンジンだけでなくフレームや足回りも一新し、どちらかというとオンロード寄りだった性格から本格的なオフロードモデルへと生まれ変わった。今回は、そんな新型に追加された、標準モデルよりもサスペンションストロークが長い「CRF250L<s>」に試乗。すでにレビューしている兄弟車の「CRF250 RALLY<s>」との乗り味の違いもお伝えする。

<関連記事>これぞ真のアドベンチャーモデル! オフロードでも積極的に楽しめるホンダ「CRF250 RALLY<s>」

オンロード寄りモデルというイメージが強かった「CRF250L」

2012年に発売された「CRF250L」の初代モデルは、ホンダの競技用4ストロークモトクロッサーに付けられていたシリーズ名「CRF」を与えられた初めての公道向けマシン。モトクロッサーでは走行できない公道を合法的に走れるマシンという意味を持つ、「Legal(合法)」の頭文字「L」が車名末尾に付けられた。そんなモトクロッサー直系を思わせる車名を冠した車体も、モトクロッサースタイリング。水冷のDOHCエンジンを搭載したその造形に、多くのオフロードファンが心を躍らせた。

オンロードでも乗りやすい特性で長く支持を集めた「CRF250L」の初代モデル(2012年発売)

オンロードでも乗りやすい特性で長く支持を集めた「CRF250L」の初代モデル(2012年発売)

だが、そのいっぽうで、本気でオフロードを走り込むライダーの一部からは残念がる声が聞かれた。それは、CRF250Lがオフロードマシンとしては最低地上高が210mmと低く、どちらかというとオンロードでの安定性に照準を合わせたような設計だったからだ。もちろん、オフロードでの走破性が著しく劣っていたわけではない。“どちらかというとオンロード寄り”というものだったのだが、そのイメージは定着してしまうほど強く、2017年に追加された、車高をよりローダウンさせ、足付き性を向上させた「CRF250L Type LD」が、さらに「CRF250L=オンロード寄りモデル」というイメージに拍車をかけてしまった。

車体をローダウンした「CRF250L Type LD」の登場により、さらにオンロード寄りのマシンであると印象が強くなっていった

車体をローダウンした「CRF250L Type LD」の登場により、さらにオンロード寄りのマシンであると印象が強くなっていった

しかし、オンロードで乗ることのほうが多い日本国内のライダーにとって、“オンロード寄り”というイメージは一概にマイナスに作用することはなく、CRF250Lは10年近く大きなモデルチェンジが行われないロングセラーモデルとなった。

オフロードのイメージを強調したバイクになった新型「CRF250L」

初代モデルから多くの人に抱かれている“オフロード寄りのモデル”というイメージを、ホンダがどのように思っていたかはわからないが、今回紹介する新型「CRF250L」は、かなりオフロード走行にフォーカスした進化を遂げている。骨格であるフレームは従来モデルと同じスチール製ながら、設計を一新。フレーム単体で約2kgの軽量化を果たし、形状もオフロードで扱いやすいスリムな仕上がりとされた。さらに、エンジンの搭載位置を従来モデルより20mm高くし、エンジンの形状も改めることで従来モデルと比べて最低地上高が30mmアップ。こうした点を見るだけでも、オフロード性能を本気で追求していることが感じられる。このほか、フロントサスペンションを支えるボトムブリッジをスチール製からアルミ鍛造製に変更するなど、細かい部分の軽量化を徹底することにより、総重量も従来モデルより約4kg軽い140kgを実現。ABSを装備し、排出ガス規制にも対応するといった重量がかさむ変更を加えながら、ここまで軽量化したことに驚かされる。

2020年11月に発売された新型「CRF250L」。競技用モトクロスマシン「CRF450R」のデザインを踏襲した車体は軽量化が図られ、よりオフロード走行の性能が向上した。サイズは2,210(全長)×820(全幅)×1,160(全高)mm

2020年11月に発売された新型「CRF250L」。競技用モトクロスマシン「CRF450R」のデザインを踏襲した車体は軽量化が図られ、よりオフロード走行の性能が向上した。サイズは2,210(全長)×820(全幅)×1,160(全高)mm

ラインアップは、標準モデルの「CRF250L」と、前後のサスペンションストロークが長い「CRF250L<s>」の2モデル。今回は、よりオフロード志向が高いCRF250L<s>を中心に紹介していく。

「CRF250L<s>」のサイズは2,230(全長)×820(全幅)×1,200(全高)mm。重量は標準タイプと同じ140kgだ

「CRF250L<s>」のサイズは2,230(全長)×820(全幅)×1,200(全高)mm。重量は標準タイプと同じ140kgだ

フレームの設計を見直してエンジンの搭載位置を高めることにより、オフロードモデルとして重要な最低地上高を30mmアップ

フレームの設計を見直してエンジンの搭載位置を高めることにより、オフロードモデルとして重要な最低地上高を30mmアップ

サスペンションストロークは、従来モデルよりもフロントが10mm、リアが20mm伸長した前後260mmに。荒れた道での走破性が向上した。なお、新型の標準モデルと比較するとフロントが25mm、リアが30mm長い

サスペンションストロークは、従来モデルよりもフロントが10mm、リアが20mm伸長した前後260mmに。荒れた道での走破性が向上した。なお、新型の標準モデルと比較するとフロントが25mm、リアが30mm長い

軽量・高剛性なアルミ鍛造製となったアンダーザブリッジ。重心位置より高い位置にあり、ハンドルを切った際に動く部分でもあるので、数値以上にハンドリングの軽快さに寄与する

軽量・高剛性なアルミ鍛造製となったアンダーザブリッジ。重心位置より高い位置にあり、ハンドルを切った際に動く部分でもあるので、数値以上にハンドリングの軽快さに寄与する

リアタイヤを支えるスイングアームも軽量化を実現。バネ下と呼ばれる可動部分なので軽量された効果は大きい

リアタイヤを支えるスイングアームも軽量化を実現。バネ下と呼ばれる可動部分なので軽量された効果は大きい

フレーム形状がスリムな仕上がりとなったと前述したが、スタイリングもシャープさを増している。その大きな要因がフロントライトだ。LED製とすることで小型・薄型、そして軽量化を実現。さらに、シートの前面もスリム化され、新型は軽快なイメージがより強くなった。

LEDとなったフロントライトは従来モデルよりもサイズは小さくなったものの、広い範囲を均一に照射可能。ウインカーもLED化されている

LEDとなったフロントライトは従来モデルよりもサイズは小さくなったものの、広い範囲を均一に照射可能。ウインカーもLED化されている

リアのウインカーもLEDを採用。細身でシャープな印象で統一されているが、転倒時に折れにくいようにステーは柔軟性を持たせた構造となっている(フロントも同様)

リアのウインカーもLEDを採用。細身でシャープな印象で統一されているが、転倒時に折れにくいようにステーは柔軟性を持たせた構造となっている(フロントも同様)

シートからタンクにつながるラインもスリムになっている。兄弟車の「CRF250 RALLY」と比べると、スリムさが際立つ

シートからタンクにつながるラインもスリムになっている。兄弟車の「CRF250 RALLY」と比べると、スリムさが際立つ

エンジンは、従来モデルと同じ249ccの水冷249ccDOHC単気筒を搭載。基本設計を継承しつつ、吸排気系を中心にチューニングが施されている。吸気のバルブタイミングも、市街地やオフロード走行で多用する低中回転域での力強さを重視した出力特性に変更。シフトダウン時の後輪ホッピングを低減し、操作を軽くするアシストスリッパークラッチを新たに採用したり、前後のブレーキにABSを装備するなど細かい部分も進化している。

エンジンの基本設計は従来モデルと同じだが、よりオフロードで扱いやすい特性になったほか、ギア比も改められている

エンジンの基本設計は従来モデルと同じだが、よりオフロードで扱いやすい特性になったほか、ギア比も改められている

マフラーのデザインも大きく変わっていないが、従来モデルよりパルス感を強調した元気のよい排気音となった

マフラーのデザインも大きく変わっていないが、従来モデルよりパルス感を強調した元気のよい排気音となった

ブレーキにはABSを装備。ディスクのデザインを兄弟車の「CRF250 RALLY」と変えているのも、手が込んでいる

ブレーキにはABSを装備。ディスクのデザインを兄弟車の「CRF250 RALLY」と変えているのも、手が込んでいる

ハンドル形状は、従来モデルより絞りがアップ。より自然な肘の位置でライディングできるという

ハンドル形状は、従来モデルより絞りがアップ。より自然な肘の位置でライディングできるという

メーターにシフトポジションや燃費なども表示されるようになり、利便性が向上

メーターにシフトポジションや燃費なども表示されるようになり、利便性が向上

リアをすべらせてターンすることもあるオフロードマシンらしく、リアのABSをオフにするスイッチがメーター横に装備されている

リアをすべらせてターンすることもあるオフロードマシンらしく、リアのABSをオフにするスイッチがメーター横に装備されている

ステップとペダルもオフロードマシンらしいもの。兄弟車の「CRF250 RALLY」とは異なり、ステップとペダルにラバーは装着されていない

ステップとペダルもオフロードマシンらしいもの。兄弟車の「CRF250 RALLY」とは異なり、ステップとペダルにラバーは装着されていない

リアフェンダーには、ツーリング時に荷物をくくりつけるためのフックやヘルメットホルダーを完備

リアフェンダーには、ツーリング時に荷物をくくりつけるためのフックやヘルメットホルダーを完備

鍵付きの小物入れも、リアの左側に装備されている

鍵付きの小物入れも、リアの左側に装備されている

乗っていてワクワクが止まらない機敏な走り

いよいよ新型「CRF250L<s>」に試乗! オフロードはもちろん、街中や高速道路も走行し、冒頭で記したとおり、兄弟車の「CRF250 RALLY<s>」との走行感の違いも織り交ぜながら、インプレッションをお伝えする。ちなみに、CRF250 RALLY<s>は、CRF250Lをベースにラリーマシンの要素を加えた「CRF250 RALLY」のサスペンションが長いタイプ。CRF250 RALLY<s>について詳しく知りたい人は、レビュー記事(これぞ真のアドベンチャーモデル! オフロードでも積極的に楽しめるホンダ「CRF250 RALLY<s>」)をチェックしてみてほしい。

身長175cmの筆者がまたがると、両足の拇指球までしっかりと接地する。兄弟車「CRF250 RALLY<s>」よりシート幅が絞られているので、足付き性はCRF250L<s>のほうがいい。シート高は880mmと高めだが、細身で支えやすいこともあって不安感はまったくなく、これならオフロードでも安心して走れそうだ

身長175cmの筆者がまたがると、両足の拇指球までしっかりと接地する。兄弟車「CRF250 RALLY<s>」よりシート幅が絞られているので、足付き性はCRF250L<s>のほうがいい。シート高は880mmと高めだが、細身で支えやすいこともあって不安感はまったくなく、これならオフロードでも安心して走れそうだ

エンジンをかけると、歯切れのいい排気音が耳に届く。水冷のDOHCエンジンだが、空冷エンジンを搭載していた時代の「XR250」シリーズを思い出す音質で、走り出す前からワクワクしてくる。新たに採用されたアシストスリッパークラッチの効果でクラッチレバーの操作は非常に軽く、低回転域のトルクもアップしているため、走り出しもスムーズ。出だしから軽快だ。そして、そのまま街中を走行。街乗りでよく使う回転域(3,000〜5,000回転くらい)が力強くなっているので、街中でも扱いやすく、楽しい。軽くアクセルをひねると、元気のいい排気音を響かせながら車体をグッと押し出してくれる。大排気量車のようなびっくりするほどの加速感ではないが、少し大きめにアクセルを開ければ、幹線道路でも余裕を持って交通の流れをリードすることが可能。手の内でコントロールできるパワー感なので、扱い切れる感覚が持てるのも楽しさの理由だ。

力強くも扱いやすいエンジン特性と軽量化された車体のおかげで、街中でもバイクを操るおもしろさが味わえる

力強くも扱いやすいエンジン特性と軽量化された車体のおかげで、街中でもバイクを操るおもしろさが味わえる

従来モデルより4kg軽量化されている車体は、実際に乗ってみると数値以上に軽く感じる。重心位置から遠い位置に配置されているアンダーザブリッジやスイングアーム、ライトカウルなどを軽く仕上げていることの効果に加え、フレームをスリムに仕上げて下半身でコントロールしやすくしていることも効いているのかもしれない。サスペンションの動きも上質で、ストローク量は多いもののフワフワと動いてしまう感覚はなく、しっとりとダンピングが効いている挙動だ。兄弟車「CRF250 RALLY<s>」では街乗りでのピッチングの動きが大きいように感じたが、CRF250L<s>ではそうした感じはない。コーナーリングでもサスペンションがタイヤを路面に押し付けてくれている感覚があるので、安心して車体を傾けることができた。

シートが細身なこともあって、オフロード車らしいリーンアウトで車体を傾けるのが一番しっくりくる

シートが細身なこともあって、オフロード車らしいリーンアウトで車体を傾けるのが一番しっくりくる

兄弟車「CRF250 RALLY<s>」より20mmシート幅が狭いので、左右のポジション移動がしやすい。それでいて座り心地はいいので、長時間乗っていてもお尻は痛くなりにくそう

兄弟車「CRF250 RALLY<s>」より20mmシート幅が狭いので、左右のポジション移動がしやすい。それでいて座り心地はいいので、長時間乗っていてもお尻は痛くなりにくそう

続いて高速道路に入ると、カウルがないため走行風がモロに上体に当たる。この点は、カウルを装備した兄弟車「CRF250 RALLY<s>」とは異なる部分だ。それでも車体の安定性が高く、安心して走ることはできる。だが、長距離移動するなら「CRF250 RALLY<s>」のほうが疲れにくいだろう。

そして、郊外の林道に到着。兄弟車「CRF250 RALLY<s>」を試乗した時と同じコースを走行したが、車重がCRF250 RALLY<s>より約12kg軽いCRF250L<s>は軽快感が段違い! 扱いやすく、たとえタイヤがすべったとしても「何とかなる」というマインドも働いているので、安心してアクセルを開けることができる。さらに、低中回転でのトルク感を増したエンジンは反応もよく、コントロールのしやすさもバツグン。オフロードでも自分の意図した通りにマシンが動いてくれる感覚が得られるのは安心感が強く、なによりも楽しい。

オフロードでも操作しやすくて、気付くと思った以上にスピードが出ていることも

オフロードでも操作しやすくて、気付くと思った以上にスピードが出ていることも

砂利道だけでは飽き足らず、少し奥の林道まで足を伸ばしてみた。険しい道にも入って行きたくなるような乗り味で、探検気分を楽しめる

砂利道だけでは飽き足らず、少し奥の林道まで足を伸ばしてみた。険しい道にも入って行きたくなるような乗り味で、探検気分を楽しめる

試乗を終えて

先に試乗した兄弟車「CRF250 RALLY<s>」よりも車体がコンパクトで軽いCRF250L<s>のほうが、オフロード走行を楽しみやすいだろうと乗る前から確信していたが、実際に試乗してみると、その楽しさは予想以上だった。軽快で意図した通りに動いてくれるのはもちろん、サスペンションの動きも上質でコントロールしやすい。しっかりとバイクを操っている感覚が得られるので、普通に街中や幹線道路を走るだけでも十分楽しめる。

バイクのおもしろさはいろいろあるが、個人的には“操る楽しさ”が占める割合は大きいと思う。大きなマシンをテクニックで思い通りに操るのも楽しいが、CRF250L<s>のように軽量で、意識しなくても意図した通りに動いてくれるマシンにも別格の楽しさがある。正直に言うと、CRF250L<s>は最近試乗したバイクの中で一番楽しいと感じた。そして、欲しくなったモデルでもある。このおもしろさは、多くの人に味わってみてほしい。

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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