レビュー

日産「オーラ」4WDモデルと2WDモデルを氷上で比較! ノートオーテックやNISMOモデルにも試乗

近年、多くの日産車に搭載されてきているハイブリッドシステム、「e-POWER」。e-POWERの仕組みは、ガソリンエンジンによって発電し、その電力を使って駆動用モーターを動かすというものだ。e-POWERは、タイヤをモーターで駆動する(エンジン直結モードはなし)ことから、電気自動車のような滑らかな走りが味わえるというメリットがある。

e-POWERが初めて搭載されたのは、2016年にコンパクトカー「ノート」のラインアップへ追加された「ノート e-POWER」からだ。ノート e-POWERは、発売後にノート全体のおよそ7割を占めるほどの人気となった。そして、2020年にフルモデルチェンジされた3代目の現行ノートでは、全車がe-POWER搭載車となった。さらに2021年には、ノートの内外装を上質化させ、e-POWERの出力やトルクを向上させた「オーラ」が発売され、人気を博している。

今回は、女神湖の氷上コースにおいて、「オーラ」(中央)や「ノート」(右)、「オーラNISMO」(左)などのe-POWER搭載車に試乗した

今回は、女神湖の氷上コースにおいて、「オーラ」(中央)や「ノート」(右)、「オーラNISMO」(左)などのe-POWER搭載車に試乗した

オーラの製品画像
日産
4.33
(レビュー84人・クチコミ3751件)
新車価格:265〜299万円 (中古車:247〜409万円
ノートの製品画像
日産
3.79
(レビュー301人・クチコミ8671件)
新車価格:124〜268万円 (中古車:6〜378万円

今回、長野県にある女神湖の湖上へ敷設された氷上テストコースにおいて、オーラの4WDモデルや2WDモデルを中心に、「オーラNISMO」や「ノートオーテッククロスオーバー」などを試乗することができたので、それぞれの印象についてお伝えしよう。

リアモーターの刷新などによって、低ミュー路の走行性能が向上

まず、現行のノートやオーラの4WDモデルの仕組みについて、簡単に振り返っておこう。キーワードは、“緻密かつ力強いモーター制御”だ。現行ノートとオーラの4WDモデルには、前後独立制御のモーターが搭載されている。前後それぞれのモーターが緻密にトルクコントロールされることによって、滑りやすい路面などにおいてスムーズかつ力強く発進することができる。

3代目の現行「ノート」4WDモデルでは、リアモーターの出力アップや、先代のような低速域だけでなく、全車速域において4輪駆動が作動するなどの改良が施されている

3代目の現行「ノート」4WDモデルでは、リアモーターの出力アップや、先代のような低速域だけでなく、全車速域において4輪駆動が作動するなどの改良が施されている

先代ノートの4WDモデルにも前後モーターは採用されていたのだが、リアモーターの出力が3.5kWと少々パワー不足で、さらに発進などの低速域にのみ作動する簡易タイプであった。だが、現行ノートやオーラの4WDモデルには、50kWのリアモーターが新たに採用されており、全車速域で作動するように改良されている。それによって、たとえば雪上路におけるコーナーリングなどにおいては、先代モデルでは40km/hほどの速度域でコーナーリングすると、前輪駆動のため車体がコーナーの外側へとふくらんでしまっていたのだが、現行ノートやオーラは4輪駆動を保つため、理想的な前後トルク配分によってコーナーを安定して走ることができるようになったという。さらに、コーナーで旋回しながら加速することも可能とのことで、圧雪路などであればハイレベルでの制御を実現できていると開発者は自信を見せる。

もうひとつ特徴的なのが、減速性能の向上だ。先代ノートも、フロントモーターの緻密なコントロールによって短距離で止まるように制御されていたのだが、現行ノートやオーラの4WDモデルでは、リアモーターも回生を効かせて減速させることによって、制動距離を先代から40%短縮させているという。

このような制御そのものは、内燃機関でも可能だろう。だが、氷雪路においてはわずかな応答の遅れがスリップやスピンにつながる可能性を考えると、e-POWERのモーター駆動による緻密な制御は、低ミュー路における力強い味方になることがよくわかった。

今回は、長野県にある女神湖の湖上へ敷設された氷上コースにて試乗を行った

今回は、長野県にある女神湖の湖上へ敷設された氷上コースにて試乗を行った

では、ここからは現行ノートシリーズを氷上で試乗して、どのような動きを示すのかを試してみよう。凍った湖の上に敷設されたテストコースは、普通の靴では気を抜くとすぐに滑って転んでしまいそうなほどにツルツルで、クルマの乗り降りすらも慎重になるほど滑りやすい路面だった。ちなみに、今回装着されていたスタッドレスタイヤは、ブリヂストンの「ブリザックVRX3」と「ブリザックVRX2」の2種類であった。

「オーラ」2WDモデルの試乗イメージ

「オーラ」2WDモデルの試乗イメージ

始めにステアリングを握ったのは、オーラの2WDモデルだ。前述したコンディションにも関わらず、直線路では路面への食いつきが抜群にいい。ついつい、調子に乗ってアクセルを踏んでしまうと、スピードがどんどん上がってしまう。これは、ブリザックの性能が非常に高いこととともに、オーラのトラクションコントロールがうまく制御していることが大きそうだ。

「オーラ」2WDモデルにて、パイロンスラロームを走行

「オーラ」2WDモデルにて、パイロンスラロームを走行

スラロームなども、アクセルコントロールのみですいすいと抜けられる。たとえば、ドライブモードを回生力が高まる「ECOモード」にして、アクセルを戻すと減速する。その後、少し強めにアクセルを踏み込んで、軽くリアを流しながらパイロンを抜けるといったことも可能であった。また、アイスバーンの直線路において一気に加速してみても、左右に乱れたりいつまでもスリップして加速しないなどといったことはなく、しっかりと行きたい方向に加速していってくれるので、安心して運転することができた。

「オーラ」4WDモデルの走行イメージ

「オーラ」4WDモデルの走行イメージ

続いては、オーラの4WDモデルだ。2WDモデルの印象がよかったため、4WDモデルではどこまで変わるのだろうかという思いを抱きつつ乗り換えたが、その安定感の圧倒的な違いに驚いた。それは、まるで雪道から砂利道に変わったと感じるほどで、先ほどまではわずかに感じていた滑る感覚がほとんどないのだ。特に発進時は、乾いた路面のようにスタートダッシュが可能なほどだ。

「オーラ」4WDモデルのコーナーリングイメージ

「オーラ」4WDモデルのコーナーリングイメージ

また、コーナーリングでも4WDモデルと2WDモデルの違いが顕著に表れた。アンダーステア(フロントがアウト側に滑ること)に見舞われるタイミングが、はるかに2WDモデルのほうが早いのだ。いっぽう、4WDモデルではコーナーリングでアクセルを徐々に踏み込んでいってもリアにトルクがかかっていき、滑ってアウト側に逃げようとしているのを抑え込んでいるのがよくわかった。そこで、あえてコーナーリング中にステアリングをこじったり、ブレーキペダルを一瞬踏んだりと姿勢をわざと崩してみたりしたのだが、少しだけリアが滑るものの、それでも軽くカウンターを当てればコーナーを軽々と走り抜けることができた。駆動による走りの違いが手に取るようにわかるのは、4WDのトルク配分が非常にうまく行っていることにほかならないだろう。

氷雪路などにおいて、e-POWERなどのモーター駆動車を安全に走らせる方法のひとつが、ECOモードなどにして回生ブレーキ力を高めることだ。ノートは、ECOモードにすることで、アクセルのオン・オフだけで加減速できる「ワンペダル」になり、ブレーキペダルを踏んで車体が不安定に陥ることなく、必要なだけの減速を手に入れられる。回生ブレーキによって、緻密な減速制御で安定した制動力が得られ、かつ姿勢変化もほとんどないので、とても安心してステアリングを握ることができるのだ。

「ノート」4WDモデルの走行イメージ

「ノート」4WDモデルの走行イメージ

ここで、ノートの4WDモデルへと乗り換えてみた。オーラよりもトレッドが狭くなることで、どの程度変化がみられるかに興味がわいた。結果からいうと、少し轍に取られやすくなり、進路を乱される機会は少し増えた。だが、感じられた差異はその程度で、あとは車重が軽い影響からか、アクセルレスポンスはノートのほうが良好という印象であった。

「ノートオーテッククロスオーバー」4WDモデルの走行イメージ

「ノートオーテッククロスオーバー」4WDモデルの走行イメージ

今回は、「ノートオーテッククロスオーバー」の4WDモデルと、「オーラNISMO」の2WDモデルにも乗ることができた。個人的には、クロスオーバーの完成度の高さとさらなる乗りやすさが印象的であった。全高が20mmほど高くなり、かつ最低地上高が25mm上がっていることからくる安心感とともに、アイポイントが上がった分、視界もいいので、運転のしやすさにもつながっているように感じたのだ。これまでのオーテックバージョンは、実際の走りに関わる部分での変更は少なかったのだが、ノートオーテッククロスオーバーでは、車高の変更など大きな部分で手が入れられたことは大きい。

氷上などの極限的なコンディションにおいては、無理な仕様変更などはネガが露呈しやすいことも多いのだが、ノートオーテッククロスオーバーではまったくそのようなことを見られず、ほかのノートやオーラなどと同様か、もしくはそれ以上に乗りやすく感じられた。

「ノートNISMO」2WDモデルの走行イメージ

「ノートNISMO」2WDモデルの走行イメージ

もう1台のオーラNISMOは、2WDの設定のみだ。こちらは、よりハードなセッティングにも関わらず、氷上でも荒々しさは感じられない。これは、ベースとなるオーラのボディ剛性が高いうえに、NISMOによってリアバンパーの内側に補強材などが追加されていることが大きそうだ。また、前後のサスペンションが独自にチューニングされているほか、リアショックアブソーバーがモノチューブ式に変更されることなどによって、路面への追従性が高められている。これらが非常に効果的で、荒れた路面でも決して跳ねることなくしっかりと路面をとらえ、かつ、ハードな乗り心地を感じさせず、しっかりとサスペンションが動いてショックを吸収していることが伝わってきた。

NISMOのエンジニアに話を聞くと、その設計思想は「ニュルブルクリンクのサーキットを走ってタイムを出せるクルマは、バリバリのスポーツカーではなく、追従性をちゃんと持った、しなやかなクルマが速いのです。そこを目指して、クルマの足回りをチューニングしています」とコメントした。ちなみに、4WDモデルの導入は考えなかったのかを聞いてみたところ、「電気のクルマで、俊敏な加速を市街地で味わってもらうことを考えると、まずは2WDで、となりました。その理由は、4WDモデルでは車体が重くなるからです。オーラで4WDモデルを作ると、2WDモデルよりも110kg重くなるんです。そこが走りをスポイルするのではないかということがありますので、まずは2WDモデルをきちんと開発しました。そのあと、4WDモデルをどのようにNISMOとして適応させていくかは我々の今後の課題ですね」とのことだった。

今回、オーラやノートなどで氷上を走行した全体の印象としては、モーター駆動車は雪や氷に対して、本当に強いということだった。試乗が終了し、ガソリンエンジン車で帰路に着いたとき、雪上でのレスポンスの遅さに唖然としたほどで、それほどすばやいトルク制御ができていたことを改めて実感した。さらに、低ミュー路における回生ブレーキの有効性も見逃せなかった。別の日に、あるBEVで同じように雪道を走らせる機会があったのだが、やはり思った通りの減速をスムーズに行うことができた。回生ブレーキは、雪道における大きな強みと言えるだろう。

また、最後にひとつだけ気になった点があるのでお伝えしたい。それは、ワンペダルなどの回生ブレーキ以外の制御は、基本的にアクセルペダルを踏んでいなければトルク配分が行われないということだ。どういうことかと言うと、今回は安全が確保されているクローズドコースで走らせていたためにアクセルを思いきり踏んでいけたのだが、たとえば一般道などで、いきなり現れたアイスバーンやきついコーナーが現れた際に、慌てずにアクセルの加減速によって安定性を手に入れられるのだろうかということが、少々疑問だったのだ。普通なら、ついブレーキペダルを踏んでしまうのではないのだろうかと。そのあたりは、現在の制御ではABSなどでしかフォローされないため、そのまま滑ってしまえばあとは運を天に任せるのみになってしまう。ぜひ、次の開発においては、たとえばスピンしそうになった時などに、何らかの制御が入ることによって安全が確保できないかなどについても今後検討してほしいと思う。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
オーラの製品画像
日産
4.33
(レビュー84人・クチコミ3751件)
新車価格:265〜299万円 (中古車:247〜409万円
ノートの製品画像
日産
3.79
(レビュー301人・クチコミ8671件)
新車価格:124〜268万円 (中古車:6〜378万円
関連記事
プレゼント
価格.comマガジン プレゼントマンデー
SPECIAL
ページトップへ戻る