扱いやすい5ナンバーのボディサイズに、「プリウス」譲りのハイブリッドシステムが搭載された、人気のコンパクトハイブリッドカーが、トヨタ「アクア」だ。
トヨタで人気のコンパクトハイブリッドカー「アクア」は、初代モデルと現行型の2代目モデルがあるが、中古車を購入するなら初代モデルがおすすめだ
2011年に初代モデルが登場したアクアは、2代目以降のプリウスが3ナンバーサイズとなったことで空白となってしまった「5ナンバーサイズのハイブリッドカー」というポジションを埋めるため、そして3代目プリウスが1.8Lエンジンとなったことで、1.5L以下の排気量を持つコンパクトハイブリッドカーとして誕生した。
アクアの基本的なハイブリッドシステムは、2代目プリウスに搭載されていた1.5Lガソリンエンジンが組み合わせられた「THS-II」がベースとなっているが、プリウスよりも小型で軽量なものが搭載され、デビュー当時のカタログ燃費は40.0km/L(10・15モード燃費)と驚異的な数値をマークしていた。それでありながら、最上級グレードでも185万円(税込)と、200万円を切る低価格であったことも相まって、アクアは一躍人気車となったのである。
その後も、改良を重ねて販売が続けられた初代アクアは、2021年7月に2代目モデルへとバトンタッチするまでのおよそ10年にわたって販売され、モデル末期であっても新車販売台数ランキングの上位にランクインするほどに安定した人気を誇る1台であった。
トヨタ「アクア」の2代目モデル
そして、2021年7月に登場した2代目モデルは、スタイルやボディサイズこそキープコンセプトであったものの、プラットフォームはTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)に基づいた新規のものとなり、エンジンや駆動用モーターなども一新。駆動用バッテリーも、(一部グレードを除いて)小型高出力のバイポーラ型ニッケル水素電池を世界で初めて搭載するなど、ハード面が大きく進化しているほか、先代モデルには設定されなかった4WDが用意された点なども、初代と大きく異なっている。
アクアを中古車で購入しようとした場合、買い得感が高いのはやはり初代モデルだ。2代目となる現行モデルも、比較的多くの中古車が流通しており、現在新車の納期が半年前後かかっていることを考えると、即納できる現行型を探している人には悪くない選択肢ではあるが、そこまでの買い得感はないというのが正直なところ。いっぽう、初代モデルについては、安いものでは20万円台から流通しており、価格.comでトヨタ「アクア」初代モデルの中古車一覧を見ると、掲載台数は7,000台オーバー(記事公開時点)とまさに選びたい放題という状態になっているのである。
トヨタ「アクア」の中古車相場情報[価格.com] ※2022年6月9日付
トヨタ 初代「アクア」の前期モデル
トヨタ 初代「アクア」の中期モデル
トヨタ 初代「アクア」の後期モデル
そんな初代アクアは、大きく分けて前期、中期、後期に分けられており、デビューから2014年12月までが前期型、そこから2017年6月までが中期型、そして2代目が登場する2021年7月までが後期型で、それぞれエクステリアのデザインを中心に小変更がなされている。
また、2015年11月に実施された一部改良では、衝突回避支援パッケージである「Toyota Safety Sense C」が設定され、2018年4月の一部改良では「Toyota Safety Sense」へと改名するとともに、衝突被害軽減ブレーキの検知対象に昼間の歩行者を追加する進化がなされた。
グレード体系は大きく分けて4つで、下から「L」、「S」、「G」の3つの基本グレードと、2014年12月の改良で追加されたクロスオーバーSUVスタイルの「X-URBAN」(2017年7月に「クロスオーバー」へ改名)がラインアップされる。
最もベーシックな「L」グレードは、主にビジネスユーザー向けの仕様となっており、加飾が省かれた簡素な内装に加え、リアワイパーやリアのパワーウィンドウすら省かれているため、安価であっても注意が必要だ。
「S」グレードは最量販グレードとなっており、必要な装備はひと通り揃っているため、実用的なコンパクトなハイブリッドカーを探しているのであれば、もっともおすすめできるグレードと言える。
上級グレードとなる「G」になると、内装の加飾部分が増え、シート表皮も上級なスエード調となるほか、年式によってはToyota Safety Senseが標準装備となるなど、充実した装備が特徴。また「G」をベースとした「ソフトレザーセレクション」も設定されていたが、実はシート表皮は本革ではなく合成皮革となる点は注意したいところ。
トヨタ「アクアX-URVAN」
「X-URVAN」は「G」に近い装備にクロスオーバーSUV風のエクステリアをプラスしたもので、専用サスペンションによって最低地上高が20mm高められている。X-URVANの後を継いで登場した「クロスオーバー」は、よりクロスオーバーSUVらしいテイストを強め、フェンダーアーチモールを装着したことで3ナンバー登録となっている。
トヨタ「アクアG’s」
そのほかのグレードとしては、2013年11月に「G」をベースとしたスポーツコンバージョンモデルの「G’s」がある。専用エアロパーツや専用サスペンションが装着され、ボディ補強などもなされる本格的なものとなっていたが、そのいっぽうでエンジンやモーターといったパワートレインには一切手が加えられていない。このG’sは、2017年6月のマイナーチェンジのタイミングで廃止となり、同年9月に新たに「GR SPORT」として復活。基本的な変更点はG'sに準ずるが、エクステリアデザインはほかのGRモデルと共通の新デザインに改められている。
価格.comでトヨタ「アクア」初代(2011年)モデルの中古車一覧を見る
およそ10年にもわたって販売が続けられてきたアクアだけに、求める仕様によって価格帯が大きく変わってくる。とにかく安価で購入したいというのであれば、初期型の過走行車が支払総額40万円前後で多く流通しているのだが、ここで注意したいのが駆動用バッテリーの状態だ。
ハイブリッドシステムの駆動用バッテリーは、充放電を繰り返していくうちに徐々に劣化が進んでいき、最終的には異常を感知して警告灯が点灯することになる。そうなると、駆動用バッテリーの交換が必要になるのだが、ディーラーで新品へ交換をすると20万円前後(年式などによって変わる)の出費となるため、いくら車両価格が安いものを狙ってもトータルの出費は大きくなってしまうのだ。
ただ、リビルド品(リサイクル品)を使えば、モノによっては10万円弱に抑えることもできるので、交換を前提に格安車を狙うか、すでにリビルドバッテリーに交換済みの中古車を狙うというのもひとつの手だろう。
続いて、先進安全装備である「Toyota Safety Sense」を装着したモデルを狙うとなると、支払総額は70万円台〜という価格帯となってくる。基本的に2015年11月以降のモデルとなるため、必然的に中期型以降となって価格も上がってきてしまうが、ディーラー系中古車店の保証付きの車両も存在するため、安心感は高い。
なお、クロスオーバースタイルの「X-URVAN」や「クロスオーバー」については、アクアを求めるユーザーからの需要がそこまで高くないのか、「X-URVAN」では総額70万円台からと意外にも安価。高年式の「クロスオーバー」はさすがに120万円〜となっているが、装備を考えるとお買い得と言えるかもしれない。
最後は、スポーツコンバージョンモデルの「G’s」と「GR SPORT」だが、G’sはシリーズの中で最量販車種となったアクアだけに、この手のモデルとしては異例と言えるほどタマ数が豊富となっており、価格も総額80万円台〜と、意外にも手ごろな車両が多い。
いっぽうの「GR SPORT」は、2017年9月以降の高年式車となるためにまだまだ安価とは言えないが、ディーラー系中古車店でも総額150万円台の車両を見つけることができるなど、新車時の価格が230万円超だったことを考えると、比較的買いやすい価格となりつつあるとも言えそうだ。
このように、ロングセラーかつワイドバリエーションだった初代アクアだけにタマ数も豊富であるため、まずは自分がどんな仕様のアクアが欲しいのか?を考え、ある程度モデルを絞ってから中古車探しをスタートするのが、最良の1台を探す近道となるハズだ。
※当記事に掲載されている中古車の価格や相場、台数、推奨モデルなどは、記事掲載時点の情報になります。
某大手自動車関連企業を退社後にフリーランスライターへ。かつて中古車販売店に勤務していた経験を生かし、中古車系の媒体などで執筆。国産旧車の記事を得意とするが、現行車の情報収集も欠かさない。