価格.comのドライブレコーダーにおける人気売れ筋ランキングで、常に上位をキープ(2023年3月28日時点で2位)しているのが、2022年7月に発売されたカロッツェリアの「VREC-DH301D」だ。今回は、実機を用いて「VREC-DH301D」がなぜ人気なのか、その理由を探ってみた。
「VREC-DH301D」は、本体実勢価格が22,000円前後(税込、設置費別)と手に入れやすい価格なうえ、値段以上の性能の高さが売れている大きな理由となっている
2022年6月、パイオニアのカロッツェリアブランドから、ドライブレコーダーの新型モデルである「VREC-DH301D」と「VREC-DZ800DC」という、2機種のドライブレコーダーが発表された。
あおり運転検知機能や、24時間365日の駐車監視機能を搭載したカロッツェリアの前後2カメラドライブレコーダー「VREC-DZ800DC」
フロントに370万画素の高画質カメラを備え、前後カメラにSONY製CMOSセンサーを搭載、さらに3.0インチの大型液晶を備えたカロッツェリアの前後2カメラドライブレコーダー「VREC-DH301D」
現在のドラレコ市場におけるトレンドはいくつかあるが、まず何よりも重要なのが「基本性能の高さ」であることは、多くの人が理解しているはずだ。基本性能というのは、記録画質(解像度)やゆがみの少ない映像、夜間における映像の明るさ、前後撮影が可能なこと、そして昨今、問題視されている駐車時における車上荒らしへの対応などである。
ドラレコが、これほどまでに市民権を得てきている中、価格面においては「前後2カメラタイプで3万円未満」を希望する声が多い。ちなみに、ドラレコの価格は本体だけでなく、さらに設置費用が掛かるわけだが、筆者はドラレコの設置に関してはプロ、つまりカーショップなどに任せるべきという考えだ。確かに「腕に覚えのある」人ならば、自分で配線も含めてできるだろうが、最も重要なのは確実な録画のためのキャリブレーション作業は、車種ごとに異なるということだ。つまり、ドラレコが適正に取り付けられないと、本来の能力を引き出すことができなくなる場合もあるからだ。
前述した、「VREC-DZ800DC」と「VREC-DH301D」の2機種は、コンセプトや機能に大きな違いがある。「VREC-DZ800DC」はハイグレードモデルであり、Wi-Fi機能や「あおり運転検知機能」などの新機能が搭載されている。パイオニア自身も、「この商品は、ある程度ドライブレコーダーについて知識がある、買い替え層をターゲットにしている」と述べている。
いっぽう、「VREC-DH301D」はエントリーモデルという位置付けで、「あまりドライブレコーダーについての知識がない初心者層」を明確なターゲットとしている。ドライブレコーダーは求められる画質などを含め、日々起こりうる危険やリスクに対して「映像の証拠能力を得ることができるか」が最も重要だ。この点において、「VREC-DH301D」は高い基本性能を備えていると言えるだろう。
まず、「VREC-DH301D」のデザインからだが、フロントカメラが搭載されている本体はやや横長のフォルムで、昨今のドラレコにありがちな“箱”といったイメージではなく、レンズ部分が少し前に出っ張った、超小型のコンデジのようなデザインとなっている。
本体左側にはmicroSDメモリーカードスロットを配置。対応規格はSDHC/SDXCで、対応容量は16〜128GBになる
また、カメラ部までの奥行きは36mmあるが、ケース部の厚みはわずか17mm。スリムでスタイリッシュなデザインだが、搭載されているモニターサイズは3インチと大きく、録画された映像が見やすい。そして、何よりも装着した際のケーブルがうまくまとめられるようになっており、ゴチャゴチャしていないのがいい。単調なデザインになりがちなドラレコが多い中、「VREC-DH301D」は機能面を含めてデザイナーのこだわりが感じられるものだ。
室内側から見て、左側には「microSDメモリーカードスロット」、右側には4つのハードキーが本体側面に配置されている。モニター部にタッチして操作するモデルも多いが、「VREC-DH301D」は画面右脇に表示される各機能と連動したキーを押すことで確実に操作ができる点がいい。階層自体はそれなりにあるのだが、これは「慣れ」の問題であり、いったん設定してしまえば、それほどひんぱんに画面を開くこともないと思うので、これで十分とも言えそうだ。
本体右側には、各種操作キーが縦に4つ配置されている。押している感覚がしっかりとあって、操作性は良好だ
画面を見ながら、右側のボタンを押すことで各種項目を設定できる。画像は、画質関連の設定画面で、記録解像度や露出補正、衝撃感度など細かに設定ができる点がいい
いっぽう、リアカメラは横長のコンパクトな設計。車種にもよるのだが、リアデフォッガーの線と線の間に装着することも可能で、レンズ部が可動するので、車種ごとに角度調整することによって、ベストな後方視界の確保が可能となっている。
画像のリアカメラは、LEDハイマウントストップランプが映り込んでいるが、実際にドラレコで記録した映像はまったく問題がなかった。横長でコンパクトな形状なので、運転していても視界が妨げられない
肝心の画質に関しては、2万円台のドラレコとはとても思えないほどに、高画質な録画性能を備えている。実は、筆者は冒頭で触れた「VREC-DZ800DC」のほうを所有しているのだが、「VREC-DH301D」のフロントカメラの画質の高さに関しては、「VREC-DZ800DC」を超えるのではないかと思えるほどである。
さらに、「VREC-DH301D」はスペックを見ても高く、フロントカメラは約370万画素、2,560×1,440pの「WQHD画質」だ。ちなみに、「VREC-DZ800DC」のフロントカメラは約200万画素、1,920×1,080pの「フルHD画質」となる。これは、決して負け惜しみ(?)などではなく、フルHDでも十分過ぎるくらいの性能なのだが・・・・・・。さらに、「VREC-DH301D」のフロントレンズはF1.4と、明るいレンズが採用されているのも大きなセールスポイントだ(VREC-DZ800DCはF2.0)。
いっぽう、記録画角について「VREC-DH301D」と「VREC-DZ800DC」を比較すると、
■「VREC-DH301D」/「VREC-DZ800DC」
水平112度/130度
垂直60度/68度
対角128度/137度
と、こちらは「VREC-DZ800DC」のほうがより広角で撮影できる。また、露出補正機能については、「VREC-DZ800DC」はフロントのみで7段階なのに対して、「VREC-DH301D」はフロント、リアともに9段階の調整が可能となっている。どちらが上というよりは、前述したように昼夜を問わず、あらゆるシチュエーションにおいて映像をしっかりと記録するためのチューニング自体が、両機ともすぐれているのだ。
両機とも、夜間に強いことで定評のあるソニー製のCMOSセンサーである「STARVIS(スタービス)」を搭載しているが、実はSTARVISにもさまざまな種類がある。その中でも、カロッツェリアが採用しているものは特に低照度性能が高く、広いダイナミックレンジを持つものをセレクトして搭載しているという。カロッツェリアのドラレコに搭載される高感度録画機能は「ナイトサイト」と呼ばれ、従来から性能の高さには定評があるので、これに関しては十分な性能と言える。また、露出補正機能に関しては前述したとおり、前後独立で9段階の調整が可能だ。つまり、リアウィンドウなどがスモークガラスの場合でも、これを補正することで夜間でもしっかりと記録できるわけだ。
そして今後、さらに重要となるであろう機能が「駐車監視機能」だ。駐車中など、クルマから離れていた時のいたずらや接触事故などの際に、衝撃を感知すると自動録画を開始。衝撃の感知から、前後約20秒間の映像を記録してくれるという機能だ。衝撃感度は8段階から、そして4種類の時間から最大12時間までのタイマーオフ設定が可能となっている。
重要なのは、「VREC-DH301D」で駐車監視機能を使う場合には、オプションの「RD-DR001」が必要となること。理想は、標準装備にしてほしかったが(VREC-DZ800DCは標準装備)、実際のセキュリティ面だけではなく、何よりも「監視してくれている」という安心感はかなり高い。「VREC-DH301D」を購入する際には、「RD-DR001」も一緒に購入してほしいと思う。
駐車監視機能はオプション。バッテリー保護機能を持つユニット「RD-DR001」は6600円だが、昨今の駐車事情を考慮すると同時に装着することをおすすめしたい
そのほか、万が一の際にmicroSDメモリーカードに記録されていなかったといったことを極力防ぐ「SDメモリーカードフォーマットフリー機能」なども、地味(失礼)ながら非常に重要だ。最大の記録性能を発揮するためには、パイオニア製のカードが推奨されるが、価格はやや高め。だが、そのぶん安心感が担保されるので、最初は付属の32GBのmicroSDメモリーカードを利用してみて、ドラレコの使い方に応じて後から追加購入するのもいいだろう(最大128GBを用意)。
最後に、「VREC-DH301D」は褒め言葉で「これで十分」と言える性能を持っている。これまで、筆者は10台以上ものドラレコを購入したのだが、価格の安さに釣られて後悔したこともある身から言わせてもらうと、ドラレコは「命に関わる重要なアイテム」であることに間違いない。だからこそ、コスパを重視しつつもしっかりとドライブをサポートしてくれる「VREC-DH301D」のようなドラレコの存在が非常に重要なのである。
ITS Evangelist(カーナビ伝道師)/カーコメンテーター/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。1959年生まれ。リクルートで中古車情報誌「カーセンサー」の新車&カーAV記事を担当しフリーランスへ。ITSや先進技術、そしてカーナビ伝道師として純正/市販/スマホアプリなどを日々テストし布教(普及)活動を続ける。