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価格.comマガジン自動車版”2023年の1台”を5人のジャーナリストが選出!

2023年も大詰めを迎えていますが、本記事では弊サイトに寄稿いただく自動車ジャーナリストの皆さまに、“今年の1台”を選んでいただきました。

クルマのキャラクターやメーカーの姿勢を評価する人もいれば、軽い気持ちで試乗したら心底驚いた人、個人的に欲しい1台に巡り合った人、人生で最も感銘したクルマに乗った人などさまざま。クルマ選びの箸休めに(?)ご笑覧ください。

スバル「インプレッサ」

穏やかなフロントマスクに好感

スバル「インプレッサ」

スバル「インプレッサ」

2023年はコロナ禍が終息に向かう一方で、ロシアのウクライナ侵攻は止まらず、パレスチナ・イスラエル戦争も勃発した。国内では痛ましい交通事故も続くなど、殺伐とした暗いニュースが流れている。この世相と、人やクルマを蹴散らすような威圧的デザインのフロントマスクを持つSUVやミニバンとの親和性は低いと思う。クルマは移動するための機械で、その功罪は運転する人によって決まるが、クルマのデザインや視線の高さが、それに乗る人の運転の仕方に与える影響も小さくないだろう。

あるクルマの開発者は、「それを、数値で客観的に示す定量化も可能だろう」と言う。クルマの安全性を試験評価する自動車アセスメントで、外観や内装のデザイン、視線の高さや周囲の見え方、シートの座り心地、エンジン特性などが、ドライバーの運転の仕方に与える影響をランク付けすべきかも知れない。

このような視点から選んだ2023年のベスト車は、4月に価格を発表したスバル「インプレッサ」だ。以前に比べるとフロントマスクが存在感を強めたが、それでも今のクルマのなかでは、外観から受ける印象が穏やかだ。運転席に座ると、前方については視界もすぐれ、死角に入りやすい車両の左側に立つ歩行者も見つけやすい。動力性能は適度で、ドライバーにアクセルペダルを踏み込むことを挑発する印象はない。乗り心地も柔軟で、リラックスしたやさしい気分で運転できる。

ベーシックな「ST」の価格は229万9000円に抑えてある。それでも安全装備は十分に備わり、快適装備のオプションも豊富だ。安価でも選ぶ価値の高いグレードである。

2024年は、人が心身ともにキズ付かない1年であってほしい。クルマは、それをやさしく支える存在でありたいと願う。

選出:渡辺陽一郎

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2023/10/03 13:00

マツダ「MX-30 Rotary-EV」

再びともった“ロータリーの灯”

マツダ「MX-30 Rotary-EV」

マツダ「MX-30 Rotary-EV」

2023年はコロナ禍が明け、各メーカーやインポーターは積極的に新車を投入した1年だった。試乗会や広報車借用などを合わせると、筆者は100台弱のクルマに触れてきた。そのなかで、今年の1台にはマツダ「MX-30 Rotary-EV」を挙げたい。スバル「クロストレック」も考えたのだが、「MX-30 Rotary-EV」では、何よりもロータリーエンジンを発電機として利用するという、マツダにしかできない技術を活用した点を高く評価したい。

ロータリーエンジンは通常、エンジンの振動を打ち消すために2ローター以上で作られるのだが、今回は各部の精度向上などによって1ローターで搭載される。「MX-30」は、BEVやマイルドハイブリッド、そして「Rotary-EV」という3つのパワートレインを持っているが、その違いをエクステリアで見分ける術はエンブレムとホイール程度である。すなわち、ユーザーの使用状況に応じてパワートレインを選べばいいという考えであり、この点には好感が持てる。「EVだから独自性のあるデザインを」というのではなく、マツダは今のクルマの延長線上にEVを見据えているのだ。

実際に乗ってみると「すべてが自然」という言葉に集約できる。アクセルペダルの踏み込み量に対してのトルクの出方、ブレーキペダルを踏み込んだときの減速Gの加減などがドライバーの意のままであり、ストレスをまったく感じない。さらに付け加えるならば、乗り心地もマツダ車のなかでは「MAZDA6」と並ぶほど上質なもので、「MX-30」のなかではベストと言ってよい。車両価格は500万円弱だが、総支払額ではさまざまな免税や減税などもあるので、見積もりを取ったうえで他車との比較をおすすめする。いずれにせよ、2023年にロータリーの灯が再び点ったことを素直によろこびたい。

選出:内田俊一

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2023/09/19 17:00

三菱「デリカミニ」

デザインだけでしょ? さにあらず!

三菱「デリカミニ」

三菱「デリカミニ」

今年の流行語大賞は「ウェイ!」でいいんじゃない? と思うほど、私の周辺でバズっていた三菱「デリカミニ」を2023年の1台に推したいと思います。ここ数年、軽スーパーハイトワゴンのSUV風デザインが続々と登場していたので、この「デリカミニ」もデザインだけなのかなと、それほど期待もせずに試乗会へ行ったのですが……。

ところが開発チームの皆さんによくよく聞いてみれば、「デリカ」という名に恥じない、タフでおおらかな走りを実現するために、4WDモデルはわざわざタイヤ径を大きくしたと言うではないですか。日産との共同開発車なので、本来なら日産のテストコースで開発を進めるところを、4WDモデルだけは三菱のテストコースに持ち込み、オフロードも含めて、本家デリカ「D:5」の開発者たちまで加わって煮詰めていったと言うから、さらに驚き!

走らせてみるとなるほど、ストロークが深めでオンロードでは少しやわらかめに感じる乗り味です。カーブでも、沈み込みつつ最後はガシッとしっかり踏ん張ってくれるところなどは、ちょっとフランス車っぽいかもしれません。そして砂利道に入ると、ハンドル操作がとても自然な感じで挙動にも安定感があり、これなら雪道などでも頼もしく走れるだろうなと、“デリカファミリー”であることを感じさせてくれたのでした。

もちろん、デザインは超好み。歴代「デリカ」のデザイン要素を少しずつ注入しつつ、ミリ単位でヘッドライトの曲線を調整しながら、「やんちゃ坊主」のイメージで仕上げていったというフロントマスクは、かわいいけどかわいいだけじゃない、絶妙なデザインに仕上がっていると思います。

デリカミニの“化身”だというキャラクター「デリ丸。」の愛らしさと相まって、ずっと一緒にいたくなるようなクルマは、人々をハッピーに豊かにしてくれるはず。今の時代に必要な1台だと思います。

選出:まるも亜希子

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2023/07/13 13:00

トヨタ「プリウス」

ハイブリッドの4WDモデルを”買いたい”

トヨタ「プリウス」

トヨタ「プリウス」

コレですよ、コレ! 5代目「プリウス」には驚きました。一歩間違うとタクシー専用車になるかもしれなかったところ、「プリウス」として進むべき道をみずから最高の形で見つけてくれたように思います。

個人的にはひとつ前の4代目も、みんなが言うほど悪くないと思っていたのですが、販売的にも実際パッとしなかったですよね。それで次はどうなるんだろうと思っていたら、こんなにカッコよくなって、走りもよくなったことに驚いています。

これまでの「プリウス」も、燃費のいい実用車として家に1台あったら便利だな、くらいに思っていたのですが、5代目は本当に「欲しい!」という気持ちでいっぱいです。このデザインになったことで、視認性や乗降性が低下したことは多方面で指摘されているとおりだし、エンジンがひんぱんにかかって意外と騒々しいことも認識しています。でも、それを補ってあまりある魅力を感じています。

ゆくゆく街にあふれるようになって見慣れてきたらあまりなんとも思わなくなるかなと感じていたのですが、今のところそんなこともありません。よい意味でちょっと「異様」な存在感を放っているように見えます。
 
HEVの2WDと4WD、PHEVの2WDと、ざっくり3とおりがラインアップされていますが、お気に入りはHEVの4WDです。とっても走りがいいんですよ。速さではモーター出力の高いPHEVが上回りますが、発進直後は4WDモデルなら後輪も駆動するので瞬発力があります。それに、後輪が駆動するのでハンドリングがよくて、2WDよりも回頭性が俊敏なんです。おかげでどこでも気持ちよく走れます。

とにかく5代目「プリウス」は、よくぞこうなって出てきてくれました! 大いに歓迎したいと思います。

選出:岡本幸一郎

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2023/04/11 17:00

ポルシェ「718ケイマンGT4 RS」

人生で、最もシビれた1台

ポルシェ「718ケイマンGT4 RS」

ポルシェ「718ケイマンGT4 RS」

“人生 Fun to Drive”の旗印を掲げ、 自動車の試乗においては何よりも「走りの気持ちよさ」を重視する自動車ライター、マリオ高野です。価格.comマガジンの記事や動画でも「走らせて気持ちいいか否か」のみを評価させていただき、エンジンやMTシフトフィーリングやハンドリングを重点的にチェックしてきました。

そんな私が2023年に、いや、この世に生を受けてからの50年において、最もシビレた試乗となったのは、ポルシェ「718ケイマンGT4 RS」であります。

同車は、超簡単に言うと、ほぼノーマルの状態で本格的なレースに出られるだけの性能と装備を備え、ただひたすら「速さ」のみを追求した特殊なモデルです。言うなれば、レーシングカーにナンバーを付けたようなクルマ。一般道での走行は、乗員に苦痛を強いるものになると思われがちです。

しかし、速さだけをひたすら追求した自動車は、同時にドライバーが得られる快楽が増すという事実を、「718ケイマンGT4 RS」は思い知らせてくれるのでありました。9,000回転まで回る人類史上最高レベルの内燃機関技術を集約したエンジンと、そのエンジンが発生する途方もない出力をしっかり路面に伝えてくれる車体、どんな速度からでも瞬時に止まってくれると思わせてくれるブレーキ、物理的に最適な運動性能を発揮できるレイアウトなど、このクルマから得られる感触のすべてが、官能と快楽の極みでしかありません。

筆者の人生においても、おそらくステアリングを握る機会は2度と訪れないでしょうが、わずかな時間でも試乗できて本当に幸せでした。この世に生まれてきてよかったと思える試乗経験が得られたことを、ただひたすら感謝します。合掌。

選出:マリオ高野

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2023/03/25 07:00
桜庭智之(編集部)
Writer
桜庭智之(編集部)
自動車専門メディアで編集者として10年間勤務した後「価格.comマガジン」へ。これまで、国産を中心とした数百の新型車に試乗しており、自動車のほかカーナビやドラレコ、タイヤなどのカー用品関連も担当する。
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芝崎 瞬(編集部)
Editor
芝崎 瞬(編集部)
自動車専門媒体からゴルフ専門メディアを経由し、価格.comマガジンへ。クルマは左ハンドルMTに限る! と思って乗り継いでいたが翻意して今は右AT。得意クラブは、強いて言えばミドルアイアン。
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