レビュー

強靱な四駆で雪上を走れ! スバル「クロストレック」でウィンタードライブ

“人生 Fun to Drive”の旗印を掲げ、 雪道ドライブにおいても「走りの楽しさ」を重視する自動車ライター、マリオ高野です。

今回はスバルの人気SUV「クロストレック(グレード:Limited)」で東北の雪上路を走った印象を報告します。スバル車がAWD(四輪駆動)の性能の高さで定評のある理由、AWDが得意なメーカーになった理由などについては、こちらの記事で詳しく紹介しているのでご参照ください。

関連記事
電気自動車でも効果を発揮! スバル自慢の「AWDシステム」4種類を知る
電気自動車でも効果を発揮! スバル自慢の「AWDシステム」4種類を知る
乗用車AWDの先駆者として定評のあるスバル。グレードやパワートレーンごとに、ユーザーの嗜好や駆動力に応じて多様性に富んだ駆動システムを展開してきました。
2022/02/09 07:01
「クロストレック」で雪原を走破。シンメトリカルAWDが本領発揮するシチュエーションです

「クロストレック」で雪原を走破。スバル自慢の「シンメトリカルAWD」が本領発揮するシチュエーションです

半世紀以上の歴史を持つスバルの四輪駆動

繰り返しになりますが、スバルは50年以上も前から乗用車向けのAWD車を作ってきました。東北電力から宮城スバルへの依頼が契機となって乗用車向けAWDを作り始めて以来、乗用車に悪路走破性の高さを求める市場に活路を見出し、余裕のある最低地上高や確かな駆動力を重視したクルマづくりに取り組んできたのです。

東北電力からの依頼によって宮城スバルが制作した「ff-1 1300G 4WD バン」。四輪駆動乗用車の礎となった、大変重要なクルマです

東北電力からの依頼によって宮城スバルが制作した「ff-1 1300G 4WD バン」。四輪駆動乗用車の礎となった、大変重要なクルマです

車高の高いSUVが主流となった現在、世界中の自動車メーカーからさまざまなSUVが販売されていますが、スバルは昭和40年頃から車高の高い乗用車の四輪駆動車を作ってきました。同時に、悪路に強いクルマに求められるユーティリティー性能も追求。乗用車ベースのSUV作りのパイオニアとなり、この歴史の長さが最近のブームに乗っかってSUV作りを始めたメーカーに対するアドバンテージになっているのは間違いありません。

「クロストレック」はお買い得だ!

今回試乗した「クロストレック」は、スバルの最新鋭プラットフォームを採用するモデルの中でもっとも軽量コンパクトかつ低価格ながら、AWDの性能は上級車種とまったく変わらないので、猛烈にお買い得であると言えます。一般的には、小型で低価格なモデルはAWDの性能をやや落としたりするものですが、スバルはそこに上位車種との差別化を図りません。

そもそもスバルは、それまでジープタイプのクルマでしか走れなかった東北の林道でも走れるよう、最初からヘビーデューティな悪路走破性能を求められたので、いきなりガチな走破性能の開発からスタートしています。本気の性能を深く追求することで活路を見出し、定評を得るようになったという経緯から、今もAWD性能に妥協がないのです。

結果として「クロストレック」は、スバルのSUVの中ではベーシックモデルに位置付けられながら、同社が50年以上かけて培ってきた雪上路走破性能のすべてが集約されていると言えるのです。

その屈強な走りをベースに、軽量コンパクトであることがスポーティーさをもたらし、雪上でもっともFun to DriveなSUVのひとつであると実感できました。

雪の質や状況にもよりますが、フロントバンパーが路面に当たると抵抗が大きくなって進めなくなるので、注意しましょう

雪の質や状況にもよりますが、フロントバンパーが路面に当たると抵抗が大きくなって進めなくなるので、注意しましょう

最低地上高が200mm確保されていると、雪上での余裕はかなり大きいと言えます

最低地上高が200mm確保されていると、雪上での余裕はかなり大きいと言えます。雪の質や状況にもよりますが、アルミホイールの半分を超えて積もっていなければ、深めの積雪路でも走行可能です

また、「クロストレック」は最新鋭モデルゆえにパワートレーンの洗練度が高いのも注目ポイントです。エンジンとミッションの制御の改良により、発進、加速時の振動の少なさが印象的で、駆動輪への駆動力が滑らかに伝わることにより、アクセルの加減速時の安定感と安心感、リニアな操作感の向上につながっていると感じました。

「e-BOXER」と呼ばれるハイブリッドシステム。出力は控えめながら、滑りやすい路面での扱いやすさは「フォレスター」や「アウトバック」に積まれる純ガソリンターボエンジンを超えると感じます

「e-BOXER」と呼ばれるハイブリッドシステム。出力は控えめながら、滑りやすい路面での扱いやすさは「フォレスター」や「アウトバック」に積まれる純ガソリンターボエンジンを超えると感じます

ハイブリッドシステムの電気アシスト量はかなり控えめながら、それが滑りやすい路面では扱いやすさにつながるので、「急」のつく操作が厳禁な雪上路向きのシステムと言えます。EV走行からエンジン走行に切り替わったときの振動の少なさも、滑りやすい路面では安心感につながりました。

雪道と好相性のCVT

さらに、「クロストレック」のCVTは、エンジン回転数に沿った加速ができるので、超低μ(ミュー)路での発進加速に楽しさや気持ちよさが得られます。

ATがCVTであることを嫌う意見は今も聞かれるものの、超低μ路での発進加速性能を重視すると、シームレスで滑らかな加速が特徴のCVTは相性がよく、VDC(横滑り防止装置)との協調制御がしやすいメリットもあります。クロストレックで雪上路を走っていると、スバルがCVTを使い続けている理由も実感できたのでありました。

超低μ路でスタックしても、各車輪の理想車輪速からスリップ量を算出し、スリップ状態に応じて後輪トルク配分を制御してトラクション性能をアップしていますので、転舵状態から出られやすい制御を実現。そこからさらに「X-MODE」と呼ばれる電子制御システムを作動させれば、スタックしそうな状況下での発進性能にはかなり余裕があると言えます。

本気の走破性を備えたAWDシステムと、200mmという余裕のある最低地上高、そして軽快な車体により、雪上路での「クロストレック」は、Fun to Drive性を大いに備えたSUVなのでありました。

この試乗の模様は動画でもご覧いただけます。




取材協力:株式会社SUBARU

マリオ高野
Writer
マリオ高野
1973年大阪生まれの自動車ライター。免許取得後に偶然買ったスバル車によりクルマの楽しさに目覚め、新車セールスマンや輸入車ディーラーでの車両回送員、自動車工場での期間工、自動車雑誌の編集部員などを経てフリーライターに。3台の愛車はいずれもスバルのMT車。
記事一覧へ
芝崎 瞬(編集部)
Editor
芝崎 瞬(編集部)
自動車専門媒体からゴルフ専門メディアを経由し、価格.comマガジンへ。クルマは左ハンドルMTに限る! と思って乗り継いでいたが翻意して今は右AT。得意クラブは、強いて言えばミドルアイアン。
記事一覧へ
記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
SPECIAL
ページトップへ戻る
×