レビュー

四駆も視界もハンドリングも“雪上”に最適! スバル「フォレスター」に改めて試乗

雪道での走りに定評のあるスバル車。なかでも「フォレスター」で得られる雪上路での安心感は別格なものがあり、今シーズンの冬も、何度もそれを再確認してきました。

雪道での走りといえば四輪駆動システムに注目されがちですが、「フォレスター」はAWDシステムの性能の高さもさることながら、車体構造やサスペンション、エクステリアデザインにも雪上ドライブで有利となる設計が施されています。

2018年にデビューした現行「フォレスター」。モデル末期ならではの熟成感が味わえます

2018年にデビューした現行「フォレスター」。モデル末期ならではの熟成感が味わえます

強くしなやかなボディ構造

まずは、車体構造やサスペンション。雪上などの滑りやすい路面での運転で厳禁とされるのが「急」の付く操作。急加速や急ハンドルなどがそれに当たります。スバルの場合、10年ほど前までは一部のグレードにステアリングギヤ比をスロー(低い)にした仕様があり、豪雪地域では地味に重宝されていました。

今のスバル車は、路面の状況を問わず、操舵応答性の鋭さと挙動の安定性の両立をうまくはかれるようになったので、ステアリングギヤ比をクイックとする傾向にあります。「フォレスター」のステアリングギヤ比も13.5:1と比較的クイックなのですが、だからと言って急ハンドル的な挙動になるわけでありません。雪上路などの滑りやすい路面でも穏やかで滑らかなハンドル操作がしやすくなっています。その秘訣は、強くてしなやかなボディ構造にあり!

「フォレスター」は「SGP」と呼ばれるプラットフォームを採用。現行型のほかのスバル車はこれの進化形態と言える「インナーフレーム構造」が採用されており、「フォレスター」は相対的に少し古い世代に当たると言えますが、乗り味や性能に古臭さを感じることはありません。

今回試乗したのは「X-BREAK」という、ややカジュアルでアウトドアにピッタリのグレード

今回試乗したのは「X-BREAK」という、ややカジュアルでアウトドアにピッタリのグレード

対先代モデルで見ると、車体の曲げ剛性で2倍、ねじり剛性で1.4倍も上がっているので、振動・騒音に強くなり、走り味と快適性が大幅に底上げされました。そのおかげで、路面からの入力に対して素直に動きやすいサスペンションに仕立てやすくなったことも大きなポイント。車体が強くなると足を抑え込む必要がなくなるので、チューニングの幅が大幅に広がります。サスペンションのストローク量も拡大できました。

車体からの情報量が多い

「フォレスター」の車体は、ドライバーによるステアリング操作をクルマが曲がる働きに作用させる力が高いと言えるいっぽう、路面から車体側へ入る入力をドライバーに伝える力もしっかりしています。

雪道で「フォレスター」を走らせると、今、クルマが路面の上でどんな状況にあるのか? どのくらい滑りやすいのか? という、最も大事な情報がよく伝わってくるので、タイヤと路面の接地面の様子がイメージしやすく、それが大きな安心感につながるのです。

さらに、「フォレスター」は「VGR」という可変ギヤレシオのステアリング機構を採用しているので、カタログでわかる数値としてはクイックなギヤ比であっても、実際の手応えとしてはそう感じさせないところも強みになります。感覚的には、ステアリングの切り始めはスロー、切り足すにつれてクイック化するというもの。これは、どちらかというと車庫入れの際にメリットを発揮するものですが、雪上などの滑りやすい路面で初期操舵を穏やかにする効果も得られます。

荷室の幅は1,300mmとクラス最大級。次期モデルでは荷室は少し小さくなると言われており、大きな荷室を求める向きには現行型は買いだと断言できます

荷室の幅は1,300mmとクラス最大級。次期モデルでは荷室は少し小さくなると言われており、大きな荷室を求める向きには現行型は買いだと断言できます

スバル独自の安全思想

また、ウィンタードライブで切実に感じられる「フォレスター」の強みとして、良好な視界があげられます。スバルは「0次安全」と呼ばれる独自の安全思想に基づいたクルマづくりを全車に採用。「フォレスター」はモデルチェンジをするたびに車体が大きくなってきましたが、視界のよさを損なう変更は極力避けることを重視して開発されてきました。

世界的大人気ジャンルのSUVは多様化も進み、エクステリアのデザインも多種多様。見た目の美しさを訴求力とするモデルも少なくありません。なかには、デザイン性を重視して室内からの視界を犠牲にしたケースも見られ、視界が悪化した分はカメラ映像で補う考えを示すメーカーもあります。そういうクルマでも、都市部で乗る分には問題がないように感じられますが、豪雪などの悪天候下ではカメラ映像があてにならなくなる場合が多々あり、そんなときは、視界のよさが安全性の確保やドライバーの精神的な疲労軽減に大きく貢献します。

「フォレスター」に乗ると、前や横方向の視界の広がる範囲が大きいことを実感。テールゲートの窓の面積が同クラスのSUVの中でもっとも大きく、かつ最下部のラインが低いため、後方視界もしっかり確保されていることがわかります。

積雪路では、ドライバーが自分の目で確認したい要素は通常時よりも多くなり、かつ判断が難しくなるので、走行中はもちろん、バックする際や車庫入れ、停車しているときも周囲の様子が確認しやすいことが大変重要となるのです。

試乗車は、北米専売グレードに装着される「ウィルダネスホイール」装着個体。入手方法はディーラーによって異なるので、お近くの販売店に問い合わせを!

試乗車は、北米専売グレードに装着される「ウィルダネスホイール」装着個体。入手方法はディーラーによって異なるので、お近くの販売店に問い合わせを!

こうしたクルマとしての基本設計の確かさ、雪道で重要となる性能をベースとしたうえで、50年以上の歴史を持つAWDシステムやそれを補う電子デバイス、運転支援システムなどがさらなる強みとなる。今回の雪上市場でも、それを再確認できたのでありました。

なお、スバル車のAWDシステムの詳細についてはこちらの記事をご参考ください。

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乗用車AWDの先駆者として定評のあるスバル。グレードやパワートレーンごとに、ユーザーの嗜好や駆動力に応じて多様性に富んだ駆動システムを展開してきました。
2022/02/09 07:01

この試乗の模様は動画でもご覧いただけます。

取材協力:株式会社SUBARU

マリオ高野
Writer
マリオ高野
1973年大阪生まれの自動車ライター。免許取得後に偶然買ったスバル車によりクルマの楽しさに目覚め、新車セールスマンや輸入車ディーラーでの車両回送員、自動車工場での期間工、自動車雑誌の編集部員などを経てフリーライターに。3台の愛車はいずれもスバルのMT車。
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芝崎 瞬(編集部)
Editor
芝崎 瞬(編集部)
自動車専門媒体からゴルフ専門メディアを経由し、価格.comマガジンへ。クルマは左ハンドルMTに限る! と思って乗り継いでいたが翻意して今は右AT。得意クラブは、強いて言えばミドルアイアン。
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