レビュー

5代目となる新型「スイフト」は、燃費も走りも乗り心地も満足度高し!

世界戦略車としてスズキの屋台骨を支える「スイフト」が、5世代目を迎えた。モデルチェンジにおけるポイントとして、印象に残るデザイン、進化した走行性能と乗り心地、新開発のパワートレインと空力性能の追求によるすぐれた燃費性能、最新の運転支援装備、使い勝手のよいパッケージングと装備という5つの特徴を掲げている。

ラウンド形状を用いたスタイリング

外見は「スイフト」らしいアイキャッチを残しつつも雰囲気がだいぶ変わって、クルマ全体を包み込むラウンド形状を用いたスタイリングとなった。躍動感や前進感をイメージさせる従来型とは印象がずいぶん異なる。それは従来型ではピラーに収められていたリアドアノブが復活したことにも象徴される。

また、バックドアサイドスポイラーの採用やホイールなど各部の形状の最適化により、従来比で空気抵抗を約4.6%も低減し、クラストップレベルの空力性能を実現したという。

ラウンドしたショルダーやボンネットと張り出したフェンダーとの対比で、よりワイドに見える。ピアノブラック調の光沢が与えられたフロントグリルは、見る角度や光の当たり方によって立体感が増す

ラウンドしたショルダーやボンネットと張り出したフェンダーとの対比で、よりワイドに見える。ピアノブラック調の光沢が与えられたフロントグリルは、見る角度や光の当たり方によって立体感が増す

より空気をスムーズに流す形状としたフロントバンパーや、床下やリアタイヤ前の流れを整流するサイドアンダースポイラーなどにより空力性能を向上

より空気をスムーズに流す形状としたフロントバンパーや、床下やリアタイヤ前の流れを整流するサイドアンダースポイラーなどにより空力性能を向上

従来比で全長が15mm伸びて3,860mmとなった以外、1,695mmの全幅と1,500mmの全高は不変で、一般的な立体駐車場に余裕をもって収まる

従来比で全長が15mm伸びて3,860mmとなった以外、1,695mmの全幅と1,500mmの全高は不変で、一般的な立体駐車場に余裕をもって収まる

台形フォルムにより安定感のあるたたずまいを見せている。車幅いっぱいに配されたLEDリアコンビネーションランプが点灯時にワイド感を強調する

台形フォルムにより安定感のあるたたずまいを見せている。車幅いっぱいに配されたLEDリアコンビネーションランプが点灯時にワイド感を強調する

最小回転半径は4.8mと取り回しにもすぐれる。ルーフエンドスポイラーはハイブリッド車に標準装備

最小回転半径は4.8mと取り回しにもすぐれる。ルーフエンドスポイラーはハイブリッド車に標準装備

ボディカラーは写真の新色「クールイエローメタリック」や「フロンティアブルーパールメタリック」など全9色、13パターンが選べる。かつては選択肢が少ない印象のあったスイフトだが、いまやそんなこともない。

充実した運転支援装備

インテリアは、「スイフト」というときわめてシンプルで黒基調というイメージが強かったところ、新型はクルマとの一体感を表現すべくインパネとドアトリムをつなげてドライバーを囲むように立体的な形状とするとともに、明るめの色を組み合わせたことで、これまでとは雰囲気が一変している。

必要な情報をわかりやすく表示したメーターはシンプルで視認性にすぐれる。センターには、新たにメーカーオプションで設定された「スズキコネクト」に対応する、全方位モニター付きメモリーナビが配されていた。

センター側を8度、運転席側を3度、ドライバー側に傾けるとともに、オーディオまわりのハンドリーチの短縮を図っている。最上級の「HYBRID MZ」にはシルバーのステッチとガーニッシュを配した本革巻きステアリングホイールとパドルシフトが標準装備

センター側を8度、運転席側を3度、ドライバー側に傾けるとともに、オーディオまわりのハンドリーチの短縮を図っている。最上級の「HYBRID MZ」にはシルバーのステッチとガーニッシュを配した本革巻きステアリングホイールとパドルシフトが標準装備

装備面では、「スズキ セーフティ サポート」の衝突回避支援ブレーキが、単眼カメラ+ミリ波レーダー方式の「デュアルセンサーブレーキサポートII」をいちはやく採用した。これにより画角や検知エリアが拡大し、自転車や自動二輪車の検知に対応したほか、交差点での車両との衝突回避支援など、より充実した機能を備えた。最上級の「HYBRID MZ」には電動パーキングブレーキが採用され、停止保持機能が加わったのも歓迎だ。

車内の寸法は従来比で同値か5mmの誤差の範囲にとどまる。リアドアノブの復活とともに、リアサイドウィンドウに仕切りが入り全開できるようになったのも新旧の違い。ラゲッジは広くはないが、かつてのように狭くて不便することはなさそうだ。

従来型に比べて開口地上高が低く、開口部の天地が高くなったおかげでより荷物の積み下ろしがしやすくなった。荷室幅は15mm増の1,155mmで、675mmの奥行きは不変

従来型に比べて開口地上高が低く、開口部の天地が高くなったおかげでより荷物の積み下ろしがしやすくなった。荷室幅は15mm増の1,155mmで、675mmの奥行きは不変

キビキビして心地よいハンドリング

基本骨格は「ハーテクト」と呼ぶプラットフォームを従来型から継承しつつ、ボディの高張力鋼板の使用範囲の拡大や構造用接着剤の採用により剛性を高めるとともに、バッフル材の追加やボディ結合部へ減衰接着材の塗布などにより静粛性を高めている。

海外向けの「スイフト」では5ナンバー枠をややオーバーしているところ、日本向けのみ5ナンバー枠に収まるようにトレッドを狭めて作り分けられているのは従来型と同じ。ただし、ナロートレッドで十分な操縦安定性を確保するために足まわりが強化されたせいか、従来型は少なからず乗り心地に硬さを感じたところ、新型は路面によっては多少の跳ねが見受けられる状況もあるものの、あまり硬さを感じない仕上がりとなっている。

ハイブリッド車のシート表皮は立体的な三角形柄のメランジグレー&ブラックのファブリックとなり、大半のモデルにアームレストが備わる。ヘッドレストの高さと厚みが従来型よりも約10mm増した

ハイブリッド車のシート表皮は立体的な三角形柄のメランジグレー&ブラックのファブリックとなり、大半のモデルにアームレストが備わる。ヘッドレストの高さと厚みが従来型よりも約10mm増した

小さな舵角でよく曲がるキビキビとした一体感のあるハンドリングも走っていて気持ちがよい。加えて、従来型の初期型ではやや気になった直進安定性の甘さも改善されている。

排気量が1.2リッターのエンジンにマイルドハイブリッドとCVTの組み合わせというパワートレインの構成は変わらないが、4気筒から3気筒になり、CVTは新開発のものにと、パワーユニットと変速機がまるごと換装された。

新開発の「Z12E」型エンジンは、高速燃焼化と高圧縮比化と異常燃焼の抑制により、高効率化。トルコンに低剛性化したダンパーを採用したCVTは、エンジンからの回転変動を効果的に吸収。これにモーター機能付き発電機「ISG」とリチウムイオンバッテリーを組み合わせたマイルドハイブリッドシステムを採用

新開発の「Z12E」型エンジンは、高速燃焼化と高圧縮比化と異常燃焼の抑制により、高効率化。トルコンに低剛性化したダンパーを採用したCVTは、エンジンからの回転変動を効果的に吸収。これにモーター機能付き発電機「ISG」とリチウムイオンバッテリーを組み合わせたマイルドハイブリッドシステムを採用

3気筒エンジンの音は好みの分かれるところだろうが、静粛性が高められたおかげであまり気になることはない。パワートレインだけでなくタイヤや風切り音など車外から侵入する音もよく抑えられている。

大画面にわかりやすく表示されるエネルギーフローや、メーターパネルにまもなくエンジンが再始動する旨が表示されるなど、マイルドハイブリッドによる電動感をより味わえるような配慮も見られる。

トルクが増した「ISG」の効果で、アイドリングストップからの再始動での音や振動も小さく、発進や再加速でよりトルクを上乗せしてくれる感覚もあり、システムを最大限に活用して極力エンジンをかけないように制御していることも伝わってくる。

ハイブリッド車の2WDのCVTで、WLTCモード燃費24.5km/Lを達成。新開発の衝突被害軽減ブレーキや充実した運転支援機能を搭載

ハイブリッド車の2WDのCVTで、WLTCモード燃費24.5km/Lを達成。新開発の衝突被害軽減ブレーキや充実した運転支援機能を搭載

ハイブリッド車には空力性能を意識し形状を最適化した、リムからセンターまでが長く印象に残るデザインの16インチアルミホイールを標準装備。「HYBRID MZ」では切削加工&ブラック塗装が施されている。タイヤサイズは185/55R16

ハイブリッド車には空力性能を意識し形状を最適化した、リムからセンターまでが長く印象に残るデザインの16インチアルミホイールを標準装備。「HYBRID MZ」では切削加工&ブラック塗装が施されている。タイヤサイズは185/55R16

低剛性ダンパーを用いたというCVTにより、振動や衝撃もうまく抑えられている。完成度の高いCVTとともに、スイフトスポーツでなくても5速MTが選べるのも「スイフト」のポイントのひとつだ。チューニングを見直したというブレーキも、効きのよさを損なうことなく扱いやすさが向上している。

「日常の移動を遊びに変える」というこのクルマのコンセプトのとおり、乗れば乗るほど、全体的にブラッシュアップされて洗練度が高まった印象とともに、意のままに操れる走り楽しさを味わうことができた。ターゲットとしているというZ世代のひとりでも多くの人に、ぜひその感覚を味わってほしい。

この試乗の模様は動画でもご覧いただけます。

写真:島村栄二

岡本幸一郎
Writer
岡本幸一郎
1968年生まれ。都内大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の編集に携わったのち独立。走り系を中心に軽自動車から高級輸入車までカテゴリーを問わず幅広く網羅する。プライベートではこれまで25台の愛車を乗り継ぐ。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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芝崎 瞬(編集部)
Editor
芝崎 瞬(編集部)
自動車専門媒体からゴルフ専門メディアを経由し、価格.comマガジンへ。クルマは左ハンドルMTに限る! と思って乗り継いでいたが翻意して今は右AT。得意クラブは、強いて言えばミドルアイアン。
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