レビュー

ブリヂストン「レグノ GR-XIII」を新旧比較! 快適性も運動性能も確実に進化した

ブリヂストンのフラッグシップタイヤ、レグノの新製品「GR-XIII」の試乗会が、同社のテストコースにて開催された。前回の発表会(以下の関連記事を参照)では、「GR-XIII」を装着したメルセデス・ベンツ「EQE」の後席試乗のみの印象であったが、今回はステアリングを握ることができた。

「GR-XIII」は、静粛性や乗り心地、走行性能といったタイヤに求められる基本性能を進化させたコンフォートタイヤだ。今回は、「GR-XIII」の静粛性や乗り心地、ドライ路面でのハンドリングについて、前モデルの「GR-XII」と比較試乗ができたのでお伝えしたい。

ブリヂストンのプレミアムコンフォートタイヤ「レグノ」ブランドの新製品である「GR-XIII」が2024年2月に発売された

ブリヂストンのプレミアムコンフォートタイヤ「レグノ」ブランドの新製品である「GR-XIII」が2024年2月に発売された

今回は、レクサス「ES300h」(上)とメルセデス・ベンツ「EQE」(下)の2車種へ、それぞれ「GR-XIII」と「GR-XII」を装着した計4台に試乗した。写真は、どちらも「GR-XIII」装着車

今回は、レクサス「ES300h」(上)とメルセデス・ベンツ「EQE」(下)の2車種へ、それぞれ「GR-XIII」と「GR-XII」を装着した計4台に試乗した。写真は、どちらも「GR-XIII」装着車

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2024/02/01 13:01

滑らかな乗り心地や静粛性の高さに驚く

まずは、乗り心地や静粛性の比較から。同テストで用意されたクルマは、「GR-XIII」と「GR-XII」を装着した、2台のレクサス「ES300h」(235/45R18)だ。テストコースには、荒れた路面やバンプ、連続した小さな段差など、さまざまな路面が用意されていた。たとえば、路面のざらつきに対する滑らかさや突起を越えたときのしなやかさ、そのような路面を走らせたときの静粛性などが確認できるように設定されたものになる。

最初に、前モデルの「GR-XII」装着車で走り出してみると、意外にもこれで十分な静粛性があると感じられた。いっぽう、連続する小さな段差などは若干ショックを拾い気味なことや、突起として用意されたコース上のロープを越えたときにも、コツンといったショックが感じられた。

「ES300h」はボディ剛性がやや低いこともあって、路面からのショックがドライバーに伝わりやすいことが想像できる。写真は「GR-XII」装着車

「ES300h」はボディ剛性がやや低いこともあって、路面からのショックがドライバーに伝わりやすいことが想像できる。写真は「GR-XII」装着車

そして、「GR-XIII」装着車へ乗り換えてみると、初めのひと転がりから、「ずいぶんと転がり抵抗が少ないな」という印象を抱いた。それはタイヤの軽さとともに、まるで昔のエコタイヤのように、スルスルと転がっていく感覚だ。そこから徐々にアクセルを踏んでいくと、抵抗感の少なさとともに滑らかさ、言い換えるとしっとりとした印象が伝わってきた。

ここまでであれば、エコタイヤを進化させたレベルのものととらえられそうだが、「GR-XIII」の実力の高さはここからだった。ステアリングを切ったときの追従性が、とても高いのだ。横方向の剛性、つまりタイヤのヨレやよじれ感が少なく、しっかりとした接地感を覚える。

「GR-XIII」を装着した「ES300h」のドライブフィールは、非常に滑らかな乗り心地ながら、ステアリングを切ったときのタイヤ剛性などはしっかりと感じられるものだった

「GR-XIII」を装着した「ES300h」のドライブフィールは、非常に滑らかな乗り心地ながら、ステアリングを切ったときのタイヤ剛性などはしっかりと感じられるものだった

エンジニアに確認したところ、単にゴムをやわらかくしたのではなく、タイヤのケース剛性(タイヤを輪切りにすると容器状(ケース状)になり、その剛性をさす)を上げるとともに、サイドウォールの剛性も上げたとのこと。結果として、接地性のアップを図ったとのことで、試乗するとそれがたしかに実現できていると感じられた。

そして、もうひとつ大きく向上したのが静粛性だ。今回は、乗り心地やハンドリングなどに意識を集中していたこともあり、「確かに、静粛性は上がったな」程度に感じていた。しかし、コース上の同一個所に設置されていたマイクで録音した音を聞いてみると、明らかにロードノイズが減っていたことが確認できた。

いっぽう、乗り心地に関しては大きく向上したと感じられた部分と、それほどは変わっていないと感じられた部分があった。

細かな路面の段差や、コース上にロープを蛇のようにうねうねと配した箇所があったが、それらを越えたときの印象は大きく異なった。まず、ショックの角が大きく取れていたこと。それから、小さな段差ではショックが明らかに減っていた。この理由は、前述した剛性アップとともに、タイヤの軽さも大きく効いているようだ。

「GR-XII」(上)と「GR-XIII」(下)を履いた「ES300h」で、ロープが設置された段差を通過すると、「GR-XIII」のほうが明らかにショックの角が取れており、衝撃が乗員へ伝わりにくかった

「GR-XII」(上)と「GR-XIII」(下)を履いた「ES300h」で、ロープが設置された段差を通過すると、「GR-XIII」のほうが明らかにショックの角が取れており、衝撃が乗員へ伝わりにくかった

また、近年住宅街などによくある、スピードを落とす役割のバンプも設置されていたのだが、それを越えた際の乗り心地については、それほど変わらない印象であった。このバンプは、大きな入力が一気に加わるので、もしかしたらタイヤよりもクルマのボディやサスペンションへの影響のほうが大きかったためかもしれないが……。

まるで氷上を走っているかのようなフラットさ

ここからは、もう1車種のメルセデス・ベンツ「EQE」に試乗した印象へと移ろう。「EQE」の車重は2,360kgと重いため、タイヤにはかなりの負担がかかる。

まず「EQE」で、スラロームや高速走行といった走行性能を試してみたところ、「GR-XII」でも低速から高速域まで過不足なく、というよりも十分に満足できる性能を備えていた。

しかし、「GR-XIII」に乗り換えてみると驚くほどの変化が感じられた。最も印象の差が大きかったのが、高速走行時の滑らかさだった。「GR-XII」では、多少の段差やざらついた路面などがある程度はっきりと感じられたのだが、「GR-XIII」ではまるできれいに磨き込まれた氷の上をスケーティングしているかのようにフラットで滑らかなのだ。

「GR-XIII」は、路面からのフィードバックがまったくないわけではなく、ステアリングなどを通して路面状況はわずかながら伝わってくるので、ステアリングを握っているときの安心感は損なわれていない

「GR-XIII」は、路面からのフィードバックがまったくないわけではなく、ステアリングなどを通して路面状況はわずかながら伝わってくるので、ステアリングを握っているときの安心感は損なわれていない

また、「ES300h」で感じた「GR-XIII」の静粛性の高さは「EQE」でも同様で、エンジン音のない電気自動車であることから、静かさをしっかりと確認できた。特に、高速域においては「GR-XII」よりも「GR-XIII」のほうが、風切り音まで顕著に聞き取れるほどだった。

次に、高速でのレーンチェンジやスラロームを試してみる。直線で120km/hまで加速し、緩いコーナーに進入する際のライントレース性は、「GR-XII」よりも「GR-XIII」のほうが明らかに高く、少ない修正舵でコーナーを抜けられる。そこから、同程度の速度でレーンチェンジを行っても、クルマの揺れやそのおさまりもよい。これなら、ドライバーだけでなく、同乗者も安心できるだろう。

いっぽう、少々気になったのが中低速の40km/h程度でのスラロームだ。その間隔は15mで13本をすり抜けるもので、かなりの勢いでステアリングを切ることになる。こちらは、「GR-XII」も「GR-XIII」のどちらも優秀で、一気に駆け抜けることができた。だが、よく観察すると「GR-XIII」のほうがステアリングを切ってからクルマが動くまでにわずかな遅れが生じていたのだが、この理由は「EQE」との相性もあるようだった。

「EQE」には、「リアホイールステア」が装備されている。約60km/h以下での走行時は、前輪と逆方向に後輪が切れることで、取り回しのしやすさや俊敏なコーナーリングを実現している(約60km/h以上では、前輪と同じ方向に後輪が切れる)。

今回のスラロームでは40km/hであったため、前輪と逆方向にリアホイールがステアする。通常であれば積極的に曲がろうとするのだが、リアの接地性が増した「GR-XIII」で走らせると、たとえ「EQE」がリアホイールをステアしたとしても、しっかりとリアタイヤが路面をとらえてしまうので、「GR-XII」よりもほんのわずかだが直進しようという力が勝ってしまった結果だと思われる。ただし、これは同時に同条件で乗り比べた結果として気づく程度のレベルであることを、付け加えておきたい。もう少し速度域は低かったのだが、「ES300h」で同様のテストを行った際には、この差には気付かなかったからだ。

今回はわずかな時間ではあったが、「レグノ」の特徴である静粛性や乗り心地面での進化を、「GR-XIII」で感じ取ることができた。そのうえで、ハンドリング面においても路面の追従性がより高められている。

ここで大きく貢献しているのが、軽量化だ。ケース剛性を上げたにもかかわらず、タイヤの内側の厚さを削ることに成功している。

左が「GR-XIII」、右が「GR-XII」で内側の厚さを比較。タイヤサイズにもよるが、「GR-XIII」は1kgほど軽量化できているとのこと

左が「GR-XIII」、右が「GR-XII」で内側の厚さを比較。タイヤサイズにもよるが、「GR-XIII」は1kgほど軽量化できているとのこと

つまり、バネ下の軽量化が施されたということなので、メリットは非常に大きいはずだ。結果として、軽やかさだけでなく、転がり抵抗の低減や燃費にも貢献することになるからだ。そして、あの滑らかな走りが特筆に値するものであることには間違いない。

(写真:ブリヂストン、内田俊一)

内田俊一
Writer
内田俊一
1966年生まれ。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も行いあらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。
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桜庭智之(編集部)
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桜庭智之(編集部)
自動車専門メディアで編集者として10年間勤務した後「価格.comマガジン」へ。これまで、国産を中心とした数百の新型車に試乗しており、自動車のほかカーナビやドラレコ、タイヤなどのカー用品関連も担当する。
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