レビュー

レクサス「UX300h」1,400km試乗! 進化したハイブリッドは◎、実燃費はどうだった!?

2018年の発売からおよそ6年が経過した、レクサスのクロスオーバーSUV「UX」。発売以降も年々改良が施されている「UX」は、2024年1月の商品改良でハイブリッドシステムが刷新され、出力の向上などが図られた。そこで今回は、同車のハイブリッドモデル「UX300h」を、1,400kmほどの長距離試乗へと連れ出したのでレポートしたい。

レクサス「UX」のボディサイズは、全長4,495×全幅1,840×全高1,540mmと、コンパクトSUVとミドルサイズSUVの中間くらいに位置する。トヨタ車では、全長と全幅は「カローラクロス」(全長4,490×全幅1,825×全高1,620mm)に近い

レクサス「UX」のボディサイズは、全長4,495×全幅1,840×全高1,540mmと、コンパクトSUVとミドルサイズSUVの中間くらいに位置する。トヨタ車では、全長と全幅は「カローラクロス」(全長4,490×全幅1,825×全高1,620mm)に近い

ハイブリッドシステムを刷新して出力をアップ

2018年にデビューした「UX」は、80以上の国と地域において、累計で約34万台(2023年10月末時点)が販売されているグローバルモデルだ。さらに、電動車の販売比率が90%にいたるなど、レクサスの電動車普及も牽引してきた。

2024年1月には、走りと先進技術を中心とした商品改良が施されるとともに、ガソリンエンジン車が廃止されてハイブリッド車と電気自動車のみとなった。ハイブリッド車は、ハイブリッドシステムの出力をアップさせ、コックピットの機能性を向上させることによって、上質な運転フィールを実現しているという。ちなみに、ハイブリッド車のグレード名が、これまでの「UX250h」から「UX300h」へと変更されている。

ハイブリッドシステムは、高出力モーターとリチウムイオンバッテリーを組み合わせた新開発のものを採用。システム最高出力を184psから199psへと向上させつつ、AWDモデルはリヤモーターの出力も7psから41psへと大幅にアップさせている。また、省燃費性能も大きく向上している(今回試乗した「Version L AWD」グレードは21.6km/Lから25.0km/Lにアップ)。

「UX」は、商品改良によって車体の前後端の剛性をアップさせるとともに、ライントレースやフラットボディ制御を組み込むことによって、フロントタイヤの操舵感の高さや操縦安定性を向上させている

「UX」は、商品改良によって車体の前後端の剛性をアップさせるとともに、ライントレースやフラットボディ制御を組み込むことによって、フロントタイヤの操舵感の高さや操縦安定性を向上させている

レクサス車らしい高級感のあるインテリア

今回試乗したのは、最上級グレードのAWDモデル「UX300h version L E-Four」だ。まず、乗り込んで車内を見回すと、レクサス車らしく全体的に質感の高さが感じられる。また、細かな部分にまでしっかりと配慮されている印象だ。スイッチ類の触感はしっかりとしているし、パワーウィンドウのモーターなども静かかつスムーズで、高級感がともなうものだ。さらに、ドア下部はサイドシルまで巻き込むようになっていて、パンツやスカートの裾を汚さずに済むのも好印象だった。

ただし、基本設計は2018年から変わっていないので、内装には少々時代が感じられる箇所も一部見受けられる。たとえば、メーターナセルの両側にドライブモードの切り替えやトラクションコントロールのスイッチが配されていたり、さまざまな部品を集めて作ったような印象を受けるような、分割線が多く見えるパーツが一部に採用されていたりすることなどである。

「UX300h version L」のインパネ周り

「UX300h version L」のインパネ周り

メーターパネルの上部にある赤丸部分は、左がドライブモードセレクトスイッチで右がトラクションコントロールスイッチ

メーターパネルの上部にある赤丸部分は、左がドライブモードセレクトスイッチで右がトラクションコントロールスイッチ

そして、もうひとつインテリアで気になったのが、前席側のドアトリムと後席側のドアトリムで、それぞれ質感が異なっていたこと。前席は、比較的やわらかな触感で質感の高いものであったのに対して、後席は見た目こそ近いのだが硬質な素材だった。前後席でこのような差が付けられているのは、プレミアムモデルとして考えると少々残念に思える。

滑らかで力強い加速は好印象だが、エンジン音が少し気になる

アクセルペダルを踏み込むと、エンジンはかすかなショックとともに始動しながらも、とてもスムーズに加速していく。この滑らかな加速感は、ハイブリッドの制御がうまく行われている証左だろう。

高速道路を走っても、必要にして十分以上なパワーで、実に快適なクルージングが楽しめる。滑らかな路面であればロードノイズもそれほど気にならないし、平坦路で70km/h程度であればEV走行することもあった。

だが、ハイブリッド車でありながらアクセルの踏み込みとともに高まるエンジン音は、少々古さを感じてしまう。たとえば、高速道路の追い越しなどでアクセルペダルを踏み込むと、加速力は手に入るのだが、それ以上にエンジンが「ウィーン」と唸りながら回転を上げていくので、音だけを聞くとクルマが一生懸命走っているかのような印象を受けるのだ。

「UX300h」は、力強く滑らかな加速は好印象なのだが、踏み込んだ際のエンジン音のうなりが少々気になった

「UX300h」は、力強く滑らかな加速は好印象なのだが、踏み込んだ際のエンジン音のうなりが少々気になった

乗り心地は、大きなうねりなどを超える際の姿勢変化はうまく抑え込まれているのだが、バネ下が重い印象で結構バタつき、サスペンション自体も縮み側が少し渋く、路面の凸凹を拾っていた。

タイヤは、ダンロップ「SP SPORT MAXX 050」(225/50R18)が装着されていた

タイヤは、ダンロップ「SP SPORT MAXX 050」(225/50R18)が装着されていた

ステアフィールは、改良前と比較するととてもスムーズになった。ハンドル操作と車両の動きに滑らかさがともなっており、「プレミアムなクルマに乗っている」という印象をドライバーに与えてくれる。さらに、路面からのフィードバックも適切で安心感を覚えるものだった。

ボディサイズが掴みやすいので知らない道も安心して走れる

市街地を走行していて気づいたのは、ボディサイズの掴みやすさだ。全長4,495×全幅1,840×全高1,540mmと比較的コンパクトなサイズなので、街中でも気は使うことはそれほどない。

さらに、左右のフロントフェンダーが若干盛り上がっていることもあって、車幅がつかみやすい。これは、知らない土地を運転する際にとても安心できるものだった。

「UX」は、サイドミラーがドアにマウントされているので、右前方の死角が少なく見やすいことも高く評価できる

「UX」は、サイドミラーがドアにマウントされているので、右前方の死角が少なく見やすいことも高く評価できる

少々気になったのが、近年のトヨタ車などに多く採用されている運転サポートシステム「PDA(プロアクティブドライビングアシスト)」だ。同システムは、運転の状況に応じてリスクの先読みをするという制御機能のこと。たとえば、前走車に追いつきアクセルペダルから力を抜くと、通常であればエンジンブレーキで減速する。しかし、「PDA」の場合はブレーキ操作も介入して減速を支援してくれる。これは、ドライバーの意思と制御が一致していればとても便利な機能なのだが、そうでないと少々煩わしく感じてしまう。

実際に試してみると、前車がブレーキランプを点灯させずに軽く減速し始めたとき、こちらは一瞬近づくことになる。そして、アクセルペダルを緩めると「PDA」が介入してしまい、ストップランプの点灯とともに強めのブレーキングが開始されてしまうのだ。

前車との車間距離を取って追突を防ぐというのはわかるのだが、前車と相応の距離を取らないと「PDA」がひんぱんに介入してブレーキングするため、混んでいる道路などでは不便に感じてしまった。

直進安定性はそれほど高くない

今回、AWDモデルということで直進安定性に期待していたのだが、実際に高速道路を走るとそれほど高くはなく、常に修正舵が必要だった。「ACC(アクティブクルーズコントロール)」で走行していると、「LKA(レーンキープアシスト)」によって車線内でピンポン状態になりがちなのも、直進安定性がいまひとつと感じられた点だ。

「UX」の直進安定性は決して低くはないのだが、AWDモデルということや昨今のライバルに近いクルマなどと比較するとそれほど高くは感じられなかった

「UX」の直進安定性は決して低くはないのだが、AWDモデルということや昨今のライバルに近いクルマなどと比較するとそれほど高くは感じられなかった

もうひとつ「LKA」で気になったのが、工事などで対面通行などになった場所で、古い車線を拾って強引にハンドルが戻される場合があること。パイロンなどと接触するのではないかと、ヒヤッとすることがあった。もちろん、そのようなシーンでは「ACC」は解除しているのだが、それでも「LKA」は作動しているので、クルマ側で車線逸脱を検知してしまう。このあたりは、もう少し制御の熟成が必要と思われた。

また「ACC」で、前走車がいなくなってから設定速度まで回復するのにかなりの時間がかかってしまうことも気になった。もちろん、いきなり加速をしてしまうのも考えものだが、「UX」の場合は「あれ、加速しているのかな?」と疑いたくなるレベルなので、これももう少し交通の流れなどを考慮したセッティングにしてほしい。

試乗時の燃費はもうひと押しだが・・・・・・

今回、燃費も計ってみたところ、以下のような結果となった。

市街地:19.7km/L(23.1km/L)
郊外路:22.0km/L(27.7km/L)
高速道路:17.7km/L(25.4km/L)
( )はWLTCモード値

高速道路でWLTCモード燃費とかなり差がついたのは、東北道の120km/h制限区間を走ったからと思われる。なぜなら、メーターの瞬間燃費計で100km/hを超えると、燃費が明らかに悪化する傾向にあったからだ。

また、郊外路においてはEV走行を積極的に使用したのだが、アップダウンが多いところもあったので、エンジンが積極的に稼働した結果と思われる。状況を踏まえると、WLTCモード燃費はかなりよい数値なので、今回計測した燃費は下限値に近いと考えてもらったほうがよいだろう。

まとめ

さて、今回「UX300h」を1400kmほど走らせた総合的な印象は、同セグメントにおいてきわめて上質なクルマだということ。いっぽうで前述のとおり、設計年度の古さも少々感じられた。2023年末の改良によって、ハイブリッドシステムが刷新されてボディ剛性がアップ、静粛性も向上するなど、その魅力は大きく増している。

だが、たとえばエンジン音のうなりなど、いくつかの改善点が残されていることも目立った。それらが改良されれば、絶妙なボディサイズによる取り回しのよさなども含めて、“上質なクロスオーバーSUV”と言っても過言ではない実力の持ち主と言えそうである。

(写真:内田俊一、レクサス)

内田俊一
Writer
内田俊一
1966年生まれ。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も行いあらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。
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桜庭智之(編集部)
Editor
桜庭智之(編集部)
自動車専門メディアで編集者として10年間勤務した後「価格.comマガジン」へ。これまで、国産を中心とした数百の新型車に試乗しており、自動車のほかカーナビやドラレコ、タイヤなどのカー用品関連も担当する。
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