レビュー

まもなく発売の新型「シビックRS」に試乗!シフトチェンジを楽しめるMTスポーツカー

現行モデルで11代目になる、ホンダ「シビック」。2021年9月に発売された1.5リッター直噴ターボエンジン搭載モデルは、CVTだけでなく6速MTが継続してラインアップされたことに、色めき立ったファンも少なくなかった。

そして、およそ1年たらずの2022年8月には、ハイブリッドの「e:HEV」モデルが発売され、直後の9月にはFF車量産で世界最速をうたう「タイプR」も発売された。

「RS」は、クルマを思いどおりに操る喜びを気軽に体感でき、運転することで心がたかぶり、最新技術によって誰でも楽しく操れるMTスポーツを目指して開発された

「RS」は、クルマを思いどおりに操る喜びを気軽に体感でき、運転することで心がたかぶり、最新技術によって誰でも楽しく操れるMTスポーツを目指して開発された

その後、2024年初に開催された「東京オートサロン」では、「RS」のプロトタイプが初披露された。そして、2024年9月に予定されている「シビック」のマイナーチェンジによって、「RS」がいよいよ発売されることが明らかになったのだ。

筆者は発売に先立ち、ひと足早くクローズドコースで「RS」に先行試乗できたのでレビューしたい。なお、試乗の模様は、以下の動画でもお伝えしているので、ぜひご覧いただければ幸いだ。

マイナーチェンジでフロントフェイスがシャープに

まず、外観はマイナーチェンジによって「シビック」のフロントフェイスに変更が施された(「タイプR」を除く)。より端正でスポーティーな印象の「New Sokai Face」と呼ばれる新たな顔が採用されている。精悍さを際立たせるブレードバンパーや大きな開口部によって、走りのパフォーマンスが強調されたデザインだ。

「RS」は、標準モデルと比較してシルバーメッキのヘッドライトリングがブラックになるほか、ボディ同色のドアミラーがブラックスカルとなり、クロムメッキのサッシュ/ドアモールディンをハイグロスとするなどの差別化が図られている

「RS」は、標準モデルと比較してシルバーメッキのヘッドライトリングがブラックになるほか、ボディ同色のドアミラーがブラックスカルとなり、クロムメッキのサッシュ/ドアモールディンをハイグロスとするなどの差別化が図られている

リアまわりは、標準モデルではクロームのエキパイフィニッシャーやボディ同色のシャークフィンアンテナが、「RS」はブラック化されている。タイヤは標準モデルと同じく、同クラスとしては大きめな235/40R18サイズを装着。また、ホイールは「RS」ではブラックペイントになる

リアまわりは、標準モデルではクロームのエキパイフィニッシャーやボディ同色のシャークフィンアンテナが、「RS」はブラック化されている。タイヤは標準モデルと同じく、同クラスとしては大きめな235/40R18サイズを装着。また、ホイールは「RS」ではブラックペイントになる

「RS」の意味は「ロードセーリング」

「RS」を名乗ったクルマは、ホンダ以外のスポーティーなクルマにもいくつも存在するが、おそらく日本国内では、ホンダが最初かつ過去最多だと筆者は思っている。では「RS」の意味はと言うと、多くの人は「レーシングスポーツ」や「ロードスポーツ」をイメージするだろうし、他社ではまさにそのケースが多い。だが、ホンダの場合は「ロードセーリング」だ。そこには、あたかも水上を帆走するように、悠々と気持ちよくハイウェイを走るという思いが込められている。

「RS」の意味は、「レーシング」や「スポーツ」ではなく、あくまで「ロードセーリング」だ

「RS」の意味は、「レーシング」や「スポーツ」ではなく、あくまで「ロードセーリング」だ

初代「シビック」が現役だったころには、「シビック」のクラスは50ps程度のエンジン出力しかなく、高速道路を満足に走らせるのにも大変なことだった。そんな中で、高出力エンジンを積み、快適に高速巡行できたかつての「RS」は大いに受け入れられたのだ。以来、ホンダにとって「RS」は特別な存在となった。

いっぽう、クルマの性能が飛躍的に進歩した現代では、大半のクルマがハイウェイにおいて十分なポテンシャルを備えているものの、より気持ちよく走りたいという思いは不変である。その思いに応えるためのホンダの回答が、最新技術をまとった今回の「RS」だ。

MTを操る喜びや楽しさを追求

「RS」は、操る喜びをさらに磨き上げ、走る楽しさを最大化するため、各部に手が加えられている。

まず、アクセルを踏んだとおりに気持ちよく反応するレスポンスと、エンジンサウンドを実現するため「軽量フライホイール」が採用されている。加えて、その価値をより味わえるように、「スポーツモード」が新たに設定された。

また、MTを操る醍醐味を追求し、誰でもスパッと決まるプロドライバーのようなシフトチェンジが可能となるように、「レブマッチシステム」を採用。

操安性能は、軽快感や一体感を覚えるようなステアリングフィールとともに、タイヤが路面にしっかりと追従する接地感を実現するため、専用のサスペンションとステアリングシステムを採用。さらに、フロントブレーキの大径化とともに、コントロール性を向上すべく特性が見直されている。

軽量フライホイールによってシフトやクラッチ操作がスムーズに

前述の改良によって、走りは一変した。筆者は、3年前に初めて現行「シビック」のMTモデルへ乗ったときに、「もう少し、こうだったらよいのに」など、気になったことがいくつかあったのだ。その後も、乗る機会があるたびに同じことを思っていたのだが、今回の「RS」では、気になっていたことがほぼ解消されていたというのが率直な印象だ。

これまで、MTモデルで最も気になっていたのが、アクセルオフ時のエンジン回転落ちが遅いことだった。

だが、「RS」では軽量フライホイールとエンジン制御の進化により、回転が下がる方向では50%、回転が上がる方向では30%もレスポンスを向上させており、エンジン回転の落ち方が自然な感覚になっている。

具体的には、これまではアクセルを戻してクラッチを踏んでもエンジン回転が落ちにかったので、どのタイミングでシフトアップしてよいのか迷っていた。だが、「RS」はほどよく回転が下がるので、テンポよくシフトアップできるようになった。

また、これまではエンジンブレーキがかかっているのに減速感が小さく、シフトダウンでクラッチを踏んでヒール・アンド・トゥをしたときにも、エンジン回転が上がりにくく下がりにくかったのが、ストレスなくスムーズにシフトダウンできるようになった。

今や貴重なHパターンのシフトノブと3ペダル。ペダルは、アクセルやブレーキとともに、半クラッチの感覚もつかみやすく、扱いやすい。ちなみに、「レブマッチシステム」は「タイプR」に搭載した技術が採用されている

今や貴重なHパターンのシフトノブと3ペダル。ペダルは、アクセルやブレーキとともに、半クラッチの感覚もつかみやすく、扱いやすい。ちなみに、「レブマッチシステム」は「タイプR」に搭載した技術が採用されている

さらに、アクセルオフだけでなく加速のフィーリングも、「RS」のほうがずっとよい。「本当にフライホイールだけでこんなに変わるのか」と思ってしまうほどだ。5,000rpm以上回した際の、少しガサツだった印象がなくなり、スムーズに吹け上がるようになった。

「レブマッチシステム」も、違和感はない。もっと本気で攻めれば、さらに上を求めたくなる気もするのだが、一般的なシチュエーションであれば「レブマッチシステム」はMTをイージーに楽しめる、心強い味方になってくれるだろう。

サスペンションは、車高を5mm下げ、スプリングとスタビライザーを強化してロール剛性を11%高めるとともに、液封だったフロントコンプライアンスブッシュをソリッドラバー化したほか、ダンパーの容量を拡大して微低速域から応答性の向上を図った。電動パワステについても、トーションバーレートが60%高められている。

攻め込んでも思った通りのラインをトレースして走れる

せっかくのクローズドコースなので、スキール音の鳴らない範囲でそれなりに攻め気味に走ってみたのだが、フットワークに関しても、ハンドリングや乗り心地、ステアリングフィール、ブレーキフィールのすべてが向上していた。

コーナーリングでは、ロールが減るだけでなくステアリングの切り始めから遅れなく応答し、イメージしたラインをより正確にトレースしていけるようになった。ステアリング自体の手応えも増して、タイヤが路面にどのように接しているのかが掴みやすい。思ったとおりに動いてくれて安心感もあるおかげで、あまりに気持ちよく走れるせいか、知らず知らずのうちにペースが上がってしまう。

ロール剛性が11%向上するとともに、操舵応答性とダイレクト感が向上。軽快で一体感のあるハンドリングと旋回フィールを実現している

ロール剛性が11%向上するとともに、操舵応答性とダイレクト感が向上。軽快で一体感のあるハンドリングと旋回フィールを実現している

変更内容からすると、乗り心地が硬くなっているのではと懸念していたのが、実際に乗り比べた限りでは、「RS」のほうがバタつきも突き上げも小さく、フラット感があって好印象だった。実際に公道を走るまではなんとも言えないが、おそらく一般道でも大きく変わることはなさそうだ。

ブレーキも、フロントディスクローターの有効径が6%、熱容量が14%、ブレーキパッドの面積と熱容量が17%それぞれ向上したことで、キャパシティが増している感覚が伝わってくる。さらに、踏力設定が最適化されて、初期に唐突に減速するのではなく、踏力でリニアに減速具合をコントロールできるようになっている。

「タイプR」との違いは

執筆時点では受注が再開されていない、「タイプR」と比べてどうなのかが気になる方もおられるかもしれないが、「タイプR」が身上とするのは絶対的なパフォーマンスだ。

サーキットをメインステージに、限界性能が高く、いかに速いラップタイムを達成できることが正義の「タイプR」に対して、「RS」はストリートで最高のパフォーマンスを発揮するように作り込まれている。開発関係者によると、ざっくり150km/h以上の領域では「タイプR」のほうが、150km/h以下では「RS」のほうがすぐれているというニュアンスだった。

11 代目シビックのMTモデルの比率は、10代目では概ね3〜4割で推移していたのだが、11代目の直近では6割近くと、実に倍近くになっている状況だという。

また、ミドルクラスの乗用車全般でも、ここしばらくMT車の市場はゆるやかに拡大傾向になっているという事実もある。そこへ、今回の「RS」のように魅力的なモデルが加わるとなれば、「シビック」ファンはもとより、多くの人から目が向けられることになるのは間違いないだろう。

執筆時点ではまだ明らかにされていない、価格がどうなのかも大いに気になるところだが、第一印象は上々だったことを強調しておくとともに、いずれ公道で乗れる機会を楽しみにしたいと思う。

ホンダアクセスの「フロントバンパーガーニッシュ」、「ロアグリルガーニッシュ」を装着した車両

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東京オートサロンの展示車の反響を受け、ホンダアクセス独自の「実効空力」技術を投入して開発した「テールゲートスポイラー ウイングタイプ」を装着した車両

東京オートサロンの展示車の反響を受け、ホンダアクセス独自の「実効空力」技術を投入して開発した「テールゲートスポイラー ウイングタイプ」を装着した車両

(写真:島村栄二)

岡本幸一郎
Writer
岡本幸一郎
1968年生まれ。都内大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の編集に携わったのち独立。走り系を中心に軽自動車から高級輸入車までカテゴリーを問わず幅広く網羅する。プライベートではこれまで25台の愛車を乗り継ぐ。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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桜庭智之(編集部)
Editor
桜庭智之(編集部)
自動車専門メディアで編集者として10年間勤務した後「価格.comマガジン」へ。これまで、国産を中心とした数百の新型車に試乗しており、自動車のほかカーナビやドラレコ、タイヤなどのカー用品関連も担当する。
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