レビュー

発売されたばかりのマツダ「CX-80」に速攻試乗!乗り心地を「CX-60」と比べてみた

2024年10月10日、マツダのフラッグシップSUV「CX-80(シーエックスエイティ)」が販売開始された。今回は、発売されたばかりの「CX-80」のマイルドハイブリッドモデルとPHEVモデルの2台に試乗したので、その印象についてレポートしたい。

今回は、「CX-80」のマイルドハイブリッドとPHEVの2つのパワートレインに試乗した。写真は、試乗車の「PHEV Premium Sports」。「CX-80」の外観は、全体的にどっしりとしたスタンスとともに、サイドの面の抑揚が見事に描き出されていて、光の移ろいが感じられる美しいエクステリアだ

今回は、「CX-80」のマイルドハイブリッドとPHEVの2つのパワートレインに試乗した。写真は、試乗車の「PHEV Premium Sports」。「CX-80」の外観は、全体的にどっしりとしたスタンスとともに、サイドの面の抑揚が見事に描き出されていて、光の移ろいが感じられる美しいエクステリアだ

ちなみに、「CX-80」のグレードラインアップと価格については以下のとおりだ。

■マツダ「CX-80」のグレードラインアップと価格
★印は今回の試乗車
-3.3L 直6ディーゼルエンジン搭載車(SKYACTIV-D 3.3)-
XD:
(7人乗り)3,943,500円[2WD]/4,180,000円[4WD]
XD S Package:
(7人乗り)4,383,500円[2WD]/4,620,000円[4WD]
XD L Package:
(6人乗り)4,779,500円[2WD]/5,016,000円[4WD]
XD Exclusive Mode:
(7人乗り)5,071,000円[2WD]/5,307,500円[4WD]
(6人乗り)5,214,000円[2WD]/5,450,500円[4WD]
-マイルドハイブリッド車(e-SKYACTIV D 3.3)-
★XD-HYBRID Exclusive Sports:
(7人乗り)5,824,500円[4WD]
(6人乗り)5,967,500円[4WD]
XD-HYBRID Exclusive Modern:
(6人乗り)5,967,500円[4WD]
XD-HYBRID Premium Sports:
(6人乗り)6,325,000円[4WD]
XD-HYBRID Premium Modern:
(6人乗り)6,325,000円[4WD]
-プラグインハイブリッド車-
PHEV L Package:
(6人乗り)6,391,000円[4WD]
★PHEV Premium Sports:
(6人乗り)7,122,500円[4WD]
PHEV Premium Modern:
(6人乗り)7,122,500円[4WD]
※価格はすべて税込

「CX-60」とは異なる乗り心地に

まず、「CX-80」の試乗にあたって最大のポイントである乗り心地について注目してみよう。マツダには、3列シートの「CX-80」と同じプラットフォームを採用している2列シートの「CX-60」もラインアップされている。そして、「CX-80」と「CX-60」の2台はサスペンションの仕様が異なる。

上が「CX-80」で下が「CX-60」

上が「CX-80」で下が「CX-60」

「CX-80」は、「CX-60」よりもリアスプリングをやわらかい方向へと変更。さらに、ショックアブソーバー内のバンプストッパーを少し短いものにして内部のストローク量を伸ばし、リアスタビライザーは廃止された。これらの変更の結果、「CX-80」はリアの接地性を向上させるとともに、スタビライザーがないことから接地荷重の変動が穏やかになり、たとえば雪上などでのグリップ性能もアップしているそうだ。また、「CX-80」は「CX-60」よりも長距離のロングドライブなどが想定されることから、直進安定性の向上も図られている。

ここまで思い切った変更を実施したのは、ハンドリング重視の「CX-60」に対して、「CX-80」はクルマの性格が若干異なることと、「CX-8」並みのロール剛性が確保できたためという。さらに、「CX-80」の欧州仕様と日本仕様とで、作り分けができたこともある。欧州市場は走りが期待されていることから、ハイスピードにも対応できるセッティングとなっていることに対して、日本国内市場では「CX-8」の後継車と見られていたこともあったため、欧州仕様よりも少し穏やかなセッティングとされたのだ(ちなみに欧州では「CX-8」は投入されなかった)。

なお、今回試乗した「CX-80」のグレードと「CX-60」の同グレードで主要スペックを比較すると、ボディサイズや車重は異なるものの、エンジンやモーターの出力などは共通だ。だが、前述の足回りのほか、トランスミッションのセッティングなど細かなチューニングもかなり行われているようである。それらについては、次項の試乗にてレビューしていこう。

ロングツアラーとして快適な乗り心地

最初に試乗した「CX-80」のグレードは、マイルドハイブリッド車の「XD-HYBRID Exclusive Sports」だ。

「CX-80 XD-HYBRID Exclusive Sports」のエクステリア

「CX-80 XD-HYBRID Exclusive Sports」のエクステリア

まずは後席に座ってみたのだが、走り出した瞬間に乗り心地が「CX-60」に対して大きく改善されていることに驚いた(ちなみに、筆者は「CX-60」の長距離試乗も行っている。詳しくは、以下の記事を参照頂ければ幸いだ)。

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2024/09/12 15:00

特に、上下の動きがかなり抑制されており、かつ路面からのショックがうまく吸収されている印象だ。これこそが、前述のサスペンション変更による効果だろう。また、遮音性もかなり向上しており、前席と後席間の会話が「CX-60」よりもラクにできると感じられるほどであった。

さて、「CX-80」の運転席に座ってみると、バックミラーを見ない限り「CX-60」との違いは感じられない。そこで、エンジンをスタートさせて若干のディーゼル音を耳にしながらゆっくりとアクセルペダルを踏み込んでいくと、「CX-60」では若干ギクシャクしていたトランスミッションが、「CX-80」ではスムーズにつながるようになったことに気づいた。

「CX-60」は、トルコンレスの8速ATとエンジンとの協調がいまひとつなのか、変速時にショックをともなうことがままあったのだが、「CX-80」ではそれがまったく感じられなくなったのだ。これについては、高く評価したい点のひとつだ。

「CX-80」のマイルドハイブリッド車は、「CX-60」と比較して乗り心地やトランスミッションが改善されていることが感じられた。ハンドリングなどのバランスもとてもよい

「CX-80」のマイルドハイブリッド車は、「CX-60」と比較して乗り心地やトランスミッションが改善されていることが感じられた。ハンドリングなどのバランスもとてもよい

乗り心地に関しては、後席での印象と同様にバネ下に重さが感じられるような乗り心地はかなり減少して、ロングツアラーとして十分な快適性が備わっていると感じられた。さらに、この印象は一般道でも高速道路でも同じだった。「CX-60」を知っているだけに、「CX-80」の乗り心地は目覚ましい改良と言っていいだろう。

いっぽうで、ハンドリングが犠牲になっているかと言うとそうではない。たしかに穏やかな印象にはなっているものの、高速道路への進入などでよくある少しきつめのカーブなどでも、しっかりと安定した姿勢でコーナーリングできるので安心してアクセルペダルを踏める。さらに、ワインディングにおいても重心高が高い印象などはなく、タイヤがしっかりと路面をとらえ、かつスムーズなロールをともなうので、思った以上にハイペースで駆け抜けることができた。

PHEVはハイパワーで運転は楽しいが、足回りはかなり硬め

ここからは、プラグインハイブリッドの「PHEV Premium Sports」に乗り換えてみよう。2.5L直4ガソリンエンジンに高出力のモーターが組み合わされたハイブリッドシステムのため、力強い走りを楽しめる。特に、高回転まで一気に回るエンジンは、その音とともに快感ですらあり、積極的にドライビングを楽しみたくなるものだった。

ハイパワーで運転の楽しさを覚える「CX-80 PHEV Premium Sports」

ハイパワーで運転の楽しさを覚える「CX-80 PHEV Premium Sports」

PHEVの性格に合わせたものなのか、足回りの印象はかなり硬めで、こちらは「CX-60」の乗り心地に近いイメージだ。高速道路や一般道を走らせていると、もう少ししなやかさがほしくなる。特に、前述のマイルドハイブリッド車と比較すると違いは顕著で、高速道路での突き上げ感とフラットライドな印象が少々スポイルされているように感じられる。ボディ剛性はかなり高そうなので、もう少し積極的にサスペンションストロークを使うことで乗り心地はよくなり、かつハンドリングも現状のままで行けるのではないかと思える。

PHEVシステムについてはとてもよくできており、高速道路でも積極的にEV走行となるので、かなり燃費は稼げそうだ。回生ブレーキは少し強めで、アクセルペダルを戻すと結構強めのエンジンブレーキを掛けたような印象になる。ただし、これは慣れの問題で、慣れてしまえば気にならなくなりそうだ。静粛性も高く、走行中にエンジンが始動してもショックや変化などは、よく観察していない限りあまり感じられない。

いっぽう、市街地でEV走行をしていると、モーターなどの音が侵入してくるのが少々気になった点だ。これは、あえて発しているのかもしれないのだが、もう少し工夫が必要かもしれない。現状では、少々耳障りに感じられた。

「CX-80」と「CX-60」の乗り心地を比べた結果

今回は、「CX-80」の2つのパワートレインを試乗できたのが、「CX-60」からの進化代は目を見張るものがあり、その開発は相当な危機感を覚えながら行われたことが窺われる。特に、ネックとなっていた乗り心地とトランスミッションに関しては前述のとおり、少なくともマイルドハイブリッド車ではほぼ解決したと言えるだろう。また、エンジン音自体も少々チューニングされたのか、同エンジン特有のざらついた印象も無くなっていた。いっぽう、PHEVは車重が重くなったぶん乗り心地を含めて期待したのだが、マイルドハイブリッド車で感じられたようなしなやかさは少なく、ごつごつとした突き上げ感が強まってしまったのは少々残念なところだ。

さて、まとめになるが「CX-80」と「CX-60」では2列、3列シートの違いはあるとして、走りや乗り心地ではどちらを選ぶのがよいだろうか。筆者としては、現状では「CX-80」に軍配が上がる。それは、乗り心地やトランスミッションのショックの無さなどからだ。

では、「CX-80」の中では今回は2台しか試せなかったのだが、その中ではマイルドハイブリッド車が、クルマの性格に合っているように思われた。

「CX-80」のマイルドハイブリッド車は、「CX-60」も含めて試乗した中では最も快適でバランスのよいクルマに感じられた

「CX-80」のマイルドハイブリッド車は、「CX-60」も含めて試乗した中では最も快適でバランスのよいクルマに感じられた

同乗者との会話を楽しみながら、ドライバーは運転にも楽しみを見出せて、かつ快適な乗り心地も提供してくれるからだ。ただし、これはあくまでも“現状”である。「CX-60」も近い将来、「CX-80」で採用されたサスペンション周りやトランスミッションの改良が施されるに違いないからだ。そうなったときには、改めて乗車人数を含め、使用状況に応じた選択ができるようになるだろう。

(写真:内田俊一、内田千鶴子)

内田俊一
Writer
内田俊一
1966年生まれ。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も行いあらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。
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桜庭智之(編集部)
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桜庭智之(編集部)
自動車専門メディアで編集者として10年間勤務した後「価格.comマガジン」へ。これまで、国産を中心とした数百の新型車に試乗しており、自動車のほかカーナビやドラレコ、タイヤなどのカー用品関連も担当する。
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