“弾丸”試乗レポート
新パワートレインで走りに磨きをかけた欧州育ちのプレミアムコンパクト

3世代目に進化したメルセデス「スマート・フォーツー」の注目点は?

2015年10月28日より、第3世代となった新型「スマート・フォーツー(smart fortwo)」の発売が開始された。新世代スマートの特徴などを、モータージャーナリストである鈴木ケンイチ氏がレポートする。

3世代目に進化したメルセデスベンツの「スマート」。その2人乗りモデル「スマート・フォーツー」の背景や、試乗レポートをお届けしよう

欧州の都市部の過密問題に対する答えとして生まれたのがスマートの原点

メルセデスベンツが世に送るマイクロ・コンパクトカー「スマート(smart)」。その第3世代となる新世代モデルが、ついに日本に上陸した。2人乗りの「スマート・フォーツー(smart fortwo)」が2015年10月28日より、4人乗りの「スマート・フォーフォー(smart forfour)」が2016年1月頃から日本での発売が開始となる。今回は最初に投入されるスマート・フォーツーを中心にレポートしたいと思う。

スマートは、見た目のとおり「小さい」ことを売りにするクルマだ。ただし、日本の軽自動車とは出発点が異なる。日本の軽自動車は、「庶民のエントリーカー」がスタートだが、スマートは過密する交通問題解決のアイデアとして生まれた。日本と異なり、欧州では都市部の駐車は道端の縦列駐車が基本だ。パリなどの道端でギチギチに縦列駐車されたシーンをイメージしてほしい。そこで有効なのが、とことん全長を切り詰めた小さなクルマであったのだ。そうした欧州ならではの問題を解決するものとして、メルセデスベンツは1980年代からアイデアを温め、1994年に時計メーカーであるスウォッチ社と提携して「スウォッチ・メルセデス・アートカー・プロジェクト」をスタートさせる。これがスマートの元となり、初代スマートが1998年に誕生した。

そんなスマートは、日本市場にも2000年から導入されている。日本の軽自動車規格に合致させる「スマートK」を筆頭に、「ブラバス・バージョン」や「カブリオレ」、「ロードスター」といった多彩なモデルを投入したこともあり、これまで日本でも累計で約3万台が販売されてきた。軽自動車という強敵が存在する日本市場でも、スマートは一定のファンを獲得した実績がある。日本の軽自動車にはないプレミアム性やスマートならではの個性を見出すユーザーが日本には存在したのだ。

軽自動車と似た部分もあるが、ヨーロッパの都市問題に対する解答というのがスマートのコンセプト

軽自動車と似た部分もあるが、ヨーロッパの都市問題に対する解答というのがスマートのコンセプト

初代から一貫するスマートらしさはそのままで、高められたプレミアム度

第3世代となったスマート・フォーツーだが、初代からの特徴の多くは、そのまま継承されている。とことん全長を切り詰めたボディは「トリディオンセーフティセル」という堅牢な高強度スチール製の骨格構造となっており、万一の事故のときも乗員の生存空間を確保する。メルセデスベンツSクラスのような大型車との前面衝突テストにもすぐれた結果が得られているという。小さくても確かな安全性を持たせるのが初代から続くスマートの特徴だ。

そして、パワートレインは、車両の後部にあり、後輪を駆動する。つまりRRだ。これも初代からの伝統。エンジンは新開発された1リッター3気筒。最高出力52kW(71PS)、最大トルク91Nm。トランスミッションは従来のAMTから6速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)の「ツイナミック(twinamic)」に変更となった。アイドリングストップ機能を備えており、JC08モード燃費は21.9km/lだ。

トリディオンセーフティセルと名づけられたスチール製の頑丈なボディが、高い衝突安全性をもたらしている

トリディオンセーフティセルと名づけられたスチール製の頑丈なボディが、高い衝突安全性をもたらしている

衝突エネルギーの大きい大型車とのオフセット衝突でも、室内の形状は保たれる

衝突エネルギーの大きい大型車とのオフセット衝突でも、室内の形状は保たれる

新開発の1リッター3気筒エンジン。最高出力52kW(71PS)、最大トルク91Nmを発生し、JC08モードの燃費は21.9km/l

エクステリア・デザインは、従来のとおりトリディオンセーフティセルとボディパネルの2色遣い。ただしプロポーションは、これまでのワンモーションから、ボンネットを備えた1.5ボックスに変更された。デザインの細部に注目しても、ヘッドライトの眼力がアップしており、全体として押し出し感が強い。これまでのファニーなトイのイメージではなく、プレミアムカーという雰囲気がより濃厚になった。全長は2755mmしかないが、全幅は1665mmもあり、全高は立体駐車場にも入る1545mmになっている。短いけれど、幅が広いため、貧相な感じがしないのが特徴だろう。最小回転半径は量産モデルとして最小となる3.3mだ。
室内に乗り込んでみると、プレミアム度アップの印象はさらに強まる。ユニークでポップな凝ったインテリア・デザインは初代から続くスマートならではの魅力だ。このデザインが好きでスマートを選んだ! という人も多いだろう。その上で樹脂部分などの質感がアップ。さらに魅力が磨き込まれた。

ちなみにカーナビゲーションは、通常の7インチ画面のリアビューカメラ付きのポータブルナビ仕様のほかに、手持ちのスマホを固定するクレードルと、専用のアプリ「スマート・クロス コネクト」も用意されている。これでナビゲーションや車両情報、音楽が楽しめるので、「もうカーナビはスマートフォンで十分」と考えるユーザーに向けたユニークな提案だ。

最小回転半径は、現在国内で選ぶことのできる量産車で最小の3.3m! 狭い道路の入り組んだ都市部の住宅地で心強い

凝った内装は大きな魅力。軽自動車とは違う世界がある

凝った内装は大きな魅力。軽自動車とは違う世界がある

クレードルと専用のアプリを組み合わせて、手持ちのスマホをポータブルナビとして利用できる

クレードルと専用のアプリを組み合わせて、手持ちのスマホをポータブルナビとして利用できる

ラゲッジは容量260lを確保。テールゲートは上下の2分割

ラゲッジは容量260lを確保。テールゲートは上下の2分割

刷新されたパワートレインが走りの楽しさを高める

短い時間であったが、街中をスマート・フォーツーで走ることができた。その印象をここで報告したい。

もっとも気になるのは、AMTからDCTに変更されたトランスミッションの変速フィーリングだ。従来のAMTは、マニュアルトラスミッションをベースに変速操作を機械が行うというものであった。クラッチがひとつしかないため、加速時の変速では失速感(引き込み感というエンジニアもいる)が気になった。もちろん「気にならない」という人や「マニュアルミッション車として見ればいい」という意見もある。しかし、個人的にどうしても違和感がぬぐえなかったのだ。それがDCTに変わってどうなったのか? 

走り出しは、クリープがあった。ゆっくりと走りだし、シフトアップが起こると、「あっ、変速された!」というようにそのタイミングが分かりやすい。どんどん加速していくと、ポンポンとリズミカルにシフトアップしてゆく。シフトアップ時の失速感はない。変速タイミングがわかりにくい日本のATや、そもそもシフトチェンジのないCVTとはフィーリングは異なる。マニュアルミッションを駆使して走るような痛快さがあった。AMTからDCTへの変更は、大いに歓迎すべきものであった。

次に注目したのは、新たに採用された新型の3気筒エンジンだ。3気筒は振動面で不利だが、このDOHC直列3気筒ユニットはよくしつけられており、不快さはなかった。またアイドリングストップからの復帰のスピードも日本車とそん色ない。エンジンのパワー・フィーリングはトルクフルで車両重量940kgの車体をキビキビと走らせる。なかなかのできではないだろうか。ただし、燃料がハイオクのみというのがマイナス点だ。

ハンドリングはどうか? これは、まさしくRR! というものであった。加速時にはステアリングの手応えが軽くなり、逆に減速しながらのコーナーリングでは、ステアリングにしっかり感が戻ってくる。これがRRならではの特徴だ。また、押し出すような加速感もRRならでは。全体としては、硬質な手応えであり、ドライバーが操っているという実感がある。走らせていて楽しいと思えるもので、これは欧州のコンパクトカーに共通する印象であり、初代から続くスマートの魅力も、こうした走りにあった。そういう意味では、新型モデルはフィーリングのよいトランスミッションとトルクフルなエンジンを得たことで、走りの気持ちよさはさらに磨かれたと言っていいだろう。

リズミカルな加速フィールで、CVTが主流の軽自動車とは明らかに異なる好ましさがある

リズミカルな加速フィールで、CVTが主流の軽自動車とは明らかに異なる好ましさがある

コーナーリング時のハンドリングと加速感はRRレイアウトならでは。クルマを操る楽しさを存分に味わえる

コーナーリング時のハンドリングと加速感はRRレイアウトならでは。クルマを操る楽しさを存分に味わえる

MTをベースにした簡便なAMTから、デュアルクラッチのDCTに変更されたトランスミッション。これによりダイレクト感と途切れのない加速がもたらされた

販売は定期的に限定モデルをリリースする方式に

スマート・フォーツーの販売は、今回から限定モデルを定期的に発売するという方式がとられることになった。今回は、登場を記念した「スマート・フォーツー・エディション1」として、ラバオレンジ×ブラックの「ラバオレンジ」、ミッドナイトブルー×ホワイトの「ミッドナイト」の2モデルをそれぞれ220台限定での販売となる。装備の内容は同じだが、価格は「ラバオレンジ」が199万円で、「ミッドナイトブルー」が204万円と異なっている。

また、スマートの新型導入を記念して、東京の六本木にあるブランド発信拠点「メルセデスベンツ・コネクション」が、10月28日から11月25日まで「スマート・コネクション」となる。展示車だけでなく、スマートならではの最小回転半径3.3mを体験できるコーナーも用意されるほか、スマート関連グッズなども数多く取りそろえられている。スマートのファンであれば、ぜひとも覗きにゆくといいだろう。

最初の限定モデルとなるスマート・フォーツー・エディション1。ラバオレンジは199万円、限定数は220台

最初の限定モデルとなるスマート・フォーツー・エディション1。ラバオレンジは199万円、限定数は220台

もうひとつのバリエーションであるミッドナイトブルーは205万円。限定数は同じく220台

もうひとつのバリエーションであるミッドナイトブルーは205万円。限定数は同じく220台

2015年11月25日まで、六本木でスマート・コネクションが開催中

2015年11月25日まで、六本木でスマート・コネクションが開催中

鈴木ケンイチ

鈴木ケンイチ

新車のレビューからEVなどの最先端技術、開発者インタビュー、ユーザー取材まで幅広く行うAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

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