3分でわかる自動車最新トレンド

中古車遍歴14台の経験に裏打ちされた実践的な中古車選びのコツ

自動車に関係する気になるニュースや技術をわかりやすく解説する新連載「3分でわかる自動車最新トレンド」。連載9回目は中古車選びのポイントに迫ってみよう。新生活が落ち着き「やはりクルマが必要だ」と思うことも多いこの季節、中古車選びのノウハウを、モータージャーナリストの森口将之氏が伝授する。

未経験者には敷居の高い中古車選びの実践的なコツを解説しよう

未経験者には敷居の高い中古車選びの実践的なコツを解説しよう

まず自分の要望が中古車に合致するかを再考しよう

これまで所有したクルマに占める中古車比率はどのぐらいだろうか。このコラムを書く前に計算してみたら、17台中14台なので、8割を超えていた。筆者はモータージャーナリストとしては屈指の?中古車好きかもしれない。

なぜ中古車が多かったのか。単純にお金がなかったので新車に手が届かなかったこともあるけれど、若い頃からヨーロッパの旧車に興味があり、一時期それらをメインに扱う専門誌の編集部に身を置いていたので、中古車に対する怖さがなかったことも大きいのかもしれない。

付け加えれば、所有した中古車はフランス車とイタリア車で占められている。信頼性が高いイメージとはお世辞にもいえない、そうしたラテン系中古車ばかりを選ぶとは、リスクを恐れぬ冒険家だと思うかもしれないけれど、筆者だってリスクが大きかったら手は出さない。中古車ばかり乗り続けているのは、内情を理解すれば、メリットも多いからである。

すべてが最上の品質で提供される新車と比べると、中古車の品質は千差万別。購入後にトラブルに悩まされ、多額の出費を被る可能性もある。安定した銀行預金と、市場に翻弄される株式投資の違いに通じるかもしれない。それは筆者も認める。

また最近のクルマは、安全性能や環境性能が飛躍的に高まっている。昔はリッター10kmを超えればよいと思った燃費は、いまや20kmを超えないと驚かなくなってしまったし、運転支援システムの発達でドライブが楽になってもいる。技術の新しさを重視する人は、新車にしたほうがよい。

さらに新車は、自分好みのボディカラーやインテリアの仕立て、装備が選べる。中古車でそれを目指そうとしたら、かなりの時間が掛かるし、見つからないことも多い。自分だけの1台を望む人にも、新車のほうがはるかに現実的だ。

中古車はよく売れる車のよく売れるカラーやモデルが潤沢。こだわりのモデルが見つかるかは運次第という面もある

クルマの価値や性能に加えて、需給バランスが大きな影響を与える中古車価格

では中古車の魅力は何か? 最大の魅力はやはり安さだ。しかも新車の価格がボディサイズや排気量、車格や装備など物理的な要因で決められているのに対し、中古車の相場は人気も関係する。新車時はA車のほうがB車より高価だったのに、中古車の相場では逆転することもある。

グレードやボディカラーなどの人気も相場に反映される。それらをすべて頭に入れておくのは大変だが、逆に買いたいクルマが不人気車という場合(筆者はこのパターンが多い)、中古車は魅力的な存在になるのだ。

ただ注意してほしいのは、安いのは車両価格だけだということ。購入後の維持費は新車と同等になる。整備代や部品代は新車でも中古車でも同じなのだから当然だ。加えて中古車は部品の交換時期が早めに訪れるので、場合によっては新車以上になることは心得ておくべきだろう。

地域によっても相場は違う。最近は地方より東京のほうが相場は安いらしい。地方では日々の生活にクルマが必要となるからだ。現在はインターネットで全国の在庫情報が一瞬で分かるから、交通費を掛けてでも割安な個体を見つけることができる。どこで買っても価格はほぼ同じという新車とは違う。

価格.comでも調べられる中古車情報。これを使えば全国一の底値買いも夢ではない

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中古車の販売店は、ディーラー系と独立系に分けられる。ディーラー系は、そのブランドの車種を数多く揃えており、安心感も高い。いっぽうの独立系は、さまざまな車種を一度に見ることができるという長所がある。

輸入車のディーラー系で多く目にするのが認定中古車だ。BMWが始めた制度で、通常よりも販売前の整備を入念に行っており、保証が手厚くなっているなど、安心できる内容となっている。価格は高めだが信頼性も高いので、中古車ビギナーに適している。

BMWが始めた認定中古車制度。メーカーの強みを活かし、整備レベルが高く保証も手厚い。ただし価格も高め

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いっぽうの独立系では、スポーツカーやSUVだけを扱う専門店も目立つ。こうしたお店は、特定の車種について豊富な経験を持っているので、ほしい車種が該当するのであれば、安心度が高い。

新古車という言葉を聞いたことがある人もいるだろう。ナンバープレートは付いているがほとんど走っていない車両のことで、正式には登録(軽自動車の倍は届出)済未使用車と呼ばれる。

クルマはナンバーを付けた瞬間に新車から中古車になるので価値が下がると判断されており、価格は新車より安い。登録時に支払う自動車重量税も不要。なのに、走行距離や程度は新車に限りなく近いので、お買い得だ。

もうひとつの注目したいポイントはワンオーナーカー。新車で買った人が売却したばかりのクルマを指す。前オーナーは高額を支払って新車を購入したので、大切に扱っている可能性が高い。逆に2オーナー目以降は、安く買えることから、整備にお金を掛けていない個体を見ることもある。

ほしいクルマが明確なら、SUVに強い、特定車種専門、軽自動車専門など、定専門の販売店も当たってみたい

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中古車の中には、現状渡しというスタイルもある。実は新車だけでなく中古車も、作られている。前の人が売却したクルマの不具合を直し、ボディやインテリアをきれいにして、店頭に並べている。現状渡しはそれをせず、仕入れた状態で売ることだ。

中古車を見極める目を持った人以外には、この現状渡しはあまりオススメできない。ボディやインテリアのヤレは、購入時は我慢できてもしだいに気になってくるものだし、メカニズムは近い将来メインテナンスで多大な出費が必要となるかもしれない。不安に思う人は控えたほうがよいだろう。

販売車両には、フロントウインドーの内側に、価格を大きな数字で記したプライスボードを掲げてあることが多い。ここには年式や走行距離、車検の残り期間、整備記録簿の有無なども書いてあるのでチェックは必須だ。

プライスボードには、車検の残りや整備記録簿の有無なども記載されている、価格以外も要チェックだ

プライスボードには、車検の残りや整備記録簿の有無なども記載されている、価格以外も要チェックだ

年式は新しいほうがよいけれど、家電製品などと同じように、年によってバージョンアップの度合いが異なることは頭に入れておいてほしい。モデルチェンジ以外でも技術や装備が大きく変わることがあるので、信頼性に問題がなければ、新しい技術や装備が入った年の車種を選んだほうがよいだろう。

車検の残りは長いほうがよい。もちろんその分販売価格も高めになる。車検整備付きと書かれている車両は、販売時に車検を取得するので残りは2年となる。車検切れの車両も販売店に相談すれば、金額を上乗せすることで車検整備付きの状態で渡してくれることが多い。

距離については、短ければ短いほどよいとは断言できない。トラブル続きで長期間動けず、距離が伸びなかった可能性もあるからだ。年式相応に距離を重ねているクルマのほうが、見た目はともかく中身は元気なことが多い。

これ以外に、前のオーナーがどの程度点検整備に出していたかでも、コンディションは変わってくる。とにかく中古車は、数字の大小や装備の多少だけで優劣を付けられる世界ではない。データも重要だけれど、買う人の直感と経験も重視される。このあたりに不安を抱いている人もいるようだ。

ただ今のクルマは昔と比べて信頼性や耐久性が飛躍的に向上しており、安心して長く乗れるようになった。また、過去に事故などを起こして車体の重要部分の修復を行ったかどうかを、「修復歴有/無」と正直に表示する販売店も増えてきた。昔に比べればハードルは下がっていると思っている。

試乗を拒む店は要警戒。細部でわかるボディのゆがみ、異音などをチェック

筆者が中古車選びで大事だと考えていることが3つある。違うお店で、複数の車両を、試乗してみることだ。これにより、欲しい中古車の平均レベルが把握でき、良し悪しの判断がしやすくなる。試乗を拒まれるようなお店は、筆者の場合は購入対象から外すことにしている。

販売店で買いたい車両に対面したら、はやる気持ちを抑えて、まずは左右でパネルの隙間が違っていないか、タイヤが妙な減り方をしていないか、ドアやリアゲートの開け閉めはスムーズかなどをチェック。いずれも修理となると多額の費用が発生する。車内に入ったら、ライト、メーター、シート、ウインドー、エアコン、オーディオなどの作動を確かめておきたい。

試乗中は、ヘンな音がしないか、動きがスムーズか、まっすぐ走るか、クルマと自分の相性に違和感はないかなど、自分のセンサーを働かせ、チェックしてほしい。クルマにくわしい人に同行してもらうのもよいだろう。自分がそのクルマと数年間付き合えるかという最終判断は、ここでの体験によるものだから、大事な瞬間だ。

価格も大事だが、試乗して自分との相性が合う“しっくりくる”ことも大事だ

価格も大事だが、試乗して自分との相性が合う“しっくりくる”ことも大事だ

判断力がモノを言う中古車選び。失敗から学ぶ教訓も貴重な経験

このように中古車は、気になるクルマを探しはじめてから、試乗して決断を下すまで、やるべきことがいくつもある。それを面倒だと感じる人もいるだろうし、思いどおりの結果が得られないことだってある。昔のクルマ好きはそれを「授業料」と呼んでいた。人生経験のひとつと考えていたのだ。

人生はいつも思いどおりにはならない。失敗や苦労もある。それはカーライフも同じ。経験を積むことでクルマ選びの目が養われれば、逆にお得な中古車を手にできる日が来るだろう。何かにつけてリスクを避けたがる今の日本人にこそ体験してほしい世界だと、個人的には思っている。

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森口将之
Writer
森口将之
1962年東京都生まれ。自動車業界のみならず、国内外の交通事情や都市計画を取材しメディアを通して紹介。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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田中 巧(編集部)
Editor
田中 巧(編集部)
通信を中心にしたIT系を主に担当。Androidを中心にしたスマートデバイスおよび、モバイルバッテリーを含む周辺機器には特に注力している。
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