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圏央道&高速道新料金のあわせ技で、首都圏近郊の渋滞が減ったカラクリとは?

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自動車に関係する気になるニュースや技術をわかりやすく解説する連載「3分でわかる自動車最新トレンド」。連載12回目の話題は、先日のゴールデンウイークで、首都圏の渋滞改善に大きな影響があったといわれる高速道路の新料金と圏央道だ。道路事情に詳しいモータージャーナリストの森口将之氏が解説する。

ネットワークを統合的に見直すことで、都心を流れるクルマがかなり減った。その理由としては、延伸された圏央道と、高速道路の新料金の組み合わせが大きいと言われている

首都高速道路料金の一部値上げは、首都圏周辺の高速道路との連携が目的

春は値上げの季節。自動車の分野に限っても、一昨年は消費税が5%から8%に引き上げられ、去年は軽自動車税が1.5倍になった。そして今年の春は、首都圏に限った話ではあるが、高速道路の料金が4月から改定され、一部が値上げとなった。

それまでは首都高速道路(以下、首都高速)と東名高速など周辺の高速道路が別々に料金を決めていたのに対し、この4月からは両者が連携した料金体系になったというのがその理由。実施前から料金所に看板などが出ていたので、首都圏の道を走ることが多いドライバーは知っていた人が多いだろう。

もともと首都高速は、東京都、神奈川県、埼玉県ごとの地区別料金を設定していた。それが距離別料金に移行したのは4年前のこと。その前は東京地区700円、神奈川地区600円、埼玉地区400円均一だったのが、ETC搭載車に限って500円/600円/700円/800円/900円の5段階になった。そのため、神奈川地区のみなとみらいから埼玉地区のさいたま新都心までが、1700円から900円になるなど、遠距離の料金が大幅に安くなった。

その後2014年には消費税の税率アップに伴い、首都高速の料金は510〜930円になるのだが、同じ年に首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の開通区間が増えると、問題が表面化した。

写真は首都高速の高速神奈川1号横羽線の「みなとみらい」出入り口。2012年に導入された距離別料金が、当初予想もしなかった問題を生み出した

同じ環状線でも“都心型”と “外周型”では機能が異なる

圏央道のような道路を環状線と呼ぶことは、多くの人が知っているだろう。その環状線は、大きく分けて2種類ある。“都心型”と“外周型”だ。都心型は首都高速で言えば都心環状線や中央環状線で、圏央道や東京外環自動車道(外環道)は外周型になる。似たような状況は鉄道にもあって、東京ではJR東日本の山手線が都心型、外環道とほぼ平行する武蔵野線が外周型に相当する。

両者は役割も違う。都心型は回遊、外周型は回避が目的だ。たとえばJR武蔵野線は、もともと東京を通過する貨物列車が都心を通らずに目的地に行けるように作られた。圏央道も同じで、東京をまたぐ移動や輸送を迂回させることで、都心の交通集中を防ぎ、環境悪化を食い止めることが目的になっている。

鉄道と道路という違いはあっても、JR山手線は “都心型”の環状線。機能は交通の回遊だ

鉄道と道路という違いはあっても、JR山手線は “都心型”の環状線。機能は交通の回遊だ

なのに、圏央道と東名高速や東北自動車道(以下、東北道)が接続されると、首都高速を通ったほうが料金が割安になることがわかった。4年前の距離別料金への移行時に、遠距離を大幅値下げしたことが原因かもしれない。その結果、物流のトラックが都心に流れ込み、渋滞が頻発するようになってしまった。これでは圏央道を作った意味が薄れてしまう。

圏央道が東名高速から東北道までつながったことで、混雑する都心を回避して目的地を目指せるようになった。だが、ルートによって料金が異なるため、都心を通る交通量が増加してしまうという問題が浮上した

新料金では、料金格差を解消し、交通を圏央道に誘導する

筆者の本音を言えば、物流業者も都市環境を考え、都心を避ける移動を心掛けてほしいところだが、残念ながら彼らの一部は安さを求め、都心経由を選んだ。今回はそれを是正するため、圏央道より内側について、首都高速の料金と周辺の高速道路の料金を同じ基準で考えることにしたのだ。

具体的には、ETC利用者には首都高速でも圏央道でも原則として1kmあたり36.6円という共通レートを導入した。同時に首都高速は最低料金300円、最高料金1,300円を決め、この範囲内で1kmごとに料金が小刻みに増えていく方式としている。ただし現金やクレジットカードでの支払いは従来どおり、最高料金が適用される。

ETCを使った場合の新しい首都高速の料金は最低料金300円、最高料金1,300円を決め、この範囲内で1kmごとに料金が小刻みに増えていく

さらに、首都高速のほうが距離が短い場合は、どのルートを走っても同一料金としたのに対し、圏央道のほうが短い場合は圏央道、首都高速それぞれの距離に基づいた料金とした。つまり首都圏のどの区間でも、圏央道と首都高速の料金が同じになるか、圏央道のほうが安くなった。

いくつか具体例をあげると、東名高速の厚木から東北道の岩槻まで圏央道経由で走った場合、これまでの4,160円から首都高速経由と同じ3,040円となる。また中央道の八王子から東北道の久喜までは、首都高速経由の3,240円を圏央道経由の2,640円が下回る。

新しい高速道路料金では、同一発着同一料金が徹底される。たとえば厚木〜岩槻間なら、どのルートを使っても3,040円、八王子〜久喜間の場合、首都高速経由で3,240円、圏央道経由なら2,640円になり、都心回避として機能する

では、首都高速に限定するとどうなるか。こちらは最低510円、最高930円だったそれまでと比べて、安くなった区間も、高くなった区間もある。距離で見ると、15kmより短ければ従来より安くなるが、25km以上では逆に高くなる。ちなみに従来、2輪車や軽自動車は普通車と同じ料金だったが、4月からは東名高速などと同じように、やや安い料金体系が適用される。

たしかに首都高速で25km以上の距離を日常的に走る人から見れば、値上げだと映るだろう。現に高くなったという不満の書き込みが、インターネット上にも見られた。でもそれは、東京オリンピックやパラリンピックの競技場やエンブレムのような炎上騒動には至らず、散発的な意見にとどまった。このように、世論が比較的冷静だったことには、理由がいくつか考えられる。

ひとつは首都圏限定の話題であるうえに、値上げとなるのは首都高速の長い距離を走るドライバーだけで、短い距離しか使わない人、2輪車や軽自動車の利用者、首都高速と周辺の高速道路をまたいで使う人にとっては、多くが従来より値下げになるからだ。

この点については首都高速も、ただ上限料金のアップだけを説明するのではなく、首都圏全体で料金を見直したという理由をしっかり説明したほうが、より多くの理解を得られたのではないかと思っている。

中央環状線の全線開通など、渋滞の緩和に役立つ大規模な投資も料金値上げの理由のひとつ

それに首都高速は、最近になって路線の延伸を積極的に行っている。ここ10年間に限って見ても、中央環状線が2007年に4号新宿線の西新宿から5号池袋線の熊野町までの間、3年後に西新宿から3号渋谷線の大橋までの間、そして昨年は大橋から湾岸線大井までの間が次々に開通し、全通を果たした。

この区間は“山手トンネル”の名称でおなじみの長いトンネル区間。実際に走ったことがある人なら、相応の建設費用がかかっていることは想像できるだろう。高速道路の料金はこうした建設費用の支払いにもあてられているわけで、一部が値上げになるのはしかたがないと考えている。

しかも最新情報によれば、料金改定の結果はよい方向に出ている。国土交通省が4月の交通量を調べたデータによると、東京都心を通過する自動車の台数は料金改定前と比べて11%も減少しており、渋滞で余計にかかった時間も9%短くなったという。いっぽうで、圏央道の利用台数は1日あたり5〜8%増えたとのことだ。

写真は首都高速の都心環状線の江戸橋出入口付近。都市部の慢性的な渋滞は、新料金実施移行かなり緩和されている

理想は首都圏の一極集中の改善だが、圏央道への交通回避は現実的な問題解決策

世界の大都市の環境が悪化していることは、北京におけるPM2.5のニュース、パリのディーゼル車乗り入れ禁止発表などを見ればわかる。放っておけば東京も似たような状況になるかもしれない。

日本の人口が減少に転じている中で、東京の人口は増え続けるという、いわゆる一極集中が続いている。東京都内で自動車を所有する人は減っているそうだが、そこに人が住んでいる以上、物流のためのトラックは走り続けるわけであり、こうした車両は人口に比例して増えていく。

本来は一極集中こそ早急に解決していかなければいけない問題であるけれど、それと並行して、東京に用事のないクルマは東京に入らずに移動してもらうことも大切だ。圏央道や外環道はそのための対策であり、作った以上は積極的に活用してもらうべきである。

圏央道と首都高速を比較して、どっちの料金の決め方が正しいかを議論するような種類の話ではない。首都圏全体を眺めて、その中でクルマをどう走らせるのがもっとも効率的かを考えた結果なのだ。自宅の目の前の有料道路の料金が高いか安いかを気にするのではなく、広い目で道路政策全般を見てほしい。

森口将之

森口将之

1962年東京都生まれ。自動車業界のみならず、国内外の交通事情や都市計画を取材しメディアを通して紹介。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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2017.3.22 更新
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