食のやりすぎ“推し”伝説

あれ、硬くないっ! 50周年「あずきバー」の「復刻版」が驚きの味だった

フードアナリストの独自視点で、知られざるフードや銘酒を深掘りする連載コラム「食のやりすぎ“推し”伝説」。第4回は、実は奥が深いロングセラーアイス、井村屋の「あずきバー」にまつわる“モノ語り”を紹介します。

最初に触れておきたいのが、2023年のアイス業界で大きなニュースとなった商品のひとつ、通称「シンカンセンスゴイカタイアイス」。正式名称は「スジャータ スーパープレミアムアイスクリーム」です。

こちらは、東海道新幹線が車内のワゴン販売を2023年10月31日で終了したことから、「てことは、あのワゴンの目玉製品だった『シンカンセンスゴイカタイアイス』も消えるのか!?」と注目されたのですが、結論としてはあくまでも車内販売が終了しただけ。ECショップを始め、自動販売機やほかの新幹線の一部でも「シンカンセンスゴイカタイアイス」は販売されています。

でも……、ちょっと待って! そう、「カタイアイス」と言えば、井村屋の「あずきバー」も見逃せません。しかも同製品は、2023年で発売50周年を迎え、さまざまな企画が展開されています。その筆頭が、「あずきバー 復刻版」の限定発売。

左が現行の「あずきバー」で、右が「あずきバー 復刻版」

左が現行の「あずきバー」で、右が「あずきバー 復刻版」

ということで、今回は「あずきバー」の歴史を振り返りつつ、現行品と復刻版の食べ比べを行います。

50年前は1本30円だった!

「あずきバー」は井村屋の祖業である和菓子の製造技術を生かした製品として、「ぜんざいを凍らせたようなアイスができないか?」という発想から1973年に誕生。その6年後、1979年にはまとめ買いに便利な「BOXあずきバー」が登場するなど、徐々に進化していきます。

左が「あずきバー 復刻版」で、右が初代「あずきバー」。1973年当時は30円でした

左が「あずきバー 復刻版」で、右が初代「あずきバー」。1973年当時は30円でした

たとえば、1983年には甘党向けに糖度を高め、きんつばを思わせる粒感を打ち出した「100円あずきバー」がデビューしました。その後1992年にはやわらかさを求める消費者の声に応えて「やわらかあずきバー」が発売。

やわらかさを打ち出した「あずきバー」の数々

やわらかさを打ち出した「あずきバー」の数々

やがて1997年に「あずき本舗」、2010年には「やわらか仕立てのあずきバー」と発売するのですが、「やわらかいから、『あずきバー』らしくない」とヒットはせず。ただ、これに懲りず、井村屋はやわらかい「あずきバー」の商品化に向けて研究は続けているとのこと。

なお、「BOXあずきバー」は1992年、すっきりとした後味にするため、上白糖からグラニュー糖に変更。1993年にはいっそうシンプルな原材料に見直すべく、前回から1年という短いスパンでリニューアルを実施しました。そして、3回目のリニューアルは2022年に行われ、氷温凍結製法を導入。食感が改良されてまろやかになり、この味が今に通じる味のベースとなっています。

そんな「あずきバー」ですが、実は2010年に海外への輸出を開始。2021年には「アジア圏には甘い豆を食べる食文化があるので受け入れられやすい」という考えから、マレーシア向けに「IMURAYA AZUKI BAR」など3種類を市場投入しました。今や日本を代表するグローバルアイスへと成長し、2022年にはシリーズ年間販売本数3億本を達成。

マレーシアの「IMURAYA AZUKI BAR」。「RED BEAN」「MATCHA」「MILK」の3種がラインアップ

マレーシアの「IMURAYA AZUKI BAR」。「RED BEAN」「MATCHA」「MILK」の3種がラインアップ

そして、2023年に50周年を迎え、「あずきバー」はシリーズとしてリニューアル。「あずきバー」の原材料のコーンスターチをあずきパウダーに変更することで、使用原料を減らし、「ミルク金時バー」は「あずきバー ミルク」に、「宇治金時バー」は「あずきバー 抹茶」へと製品名が変更され、それぞれ配合や原材料も刷新されました。

年間販売3億本という数字は、1秒間に約9.5本売れている計算になるのだとか

年間販売3億本という数字は、1秒間に約9.5本売れている計算になるのだとか

「復刻版」は甘みが豊かでやわらかく濃厚な味

先述したとおり、50年の歴史の中で味を数回リニューアルしてきた「あずきバー」。その過程の一端を体験できるのが「あずきバー 復刻版」です。現行品はすっきりとした味わいに仕上げるためにグラニュー糖を使用していますが、復刻版は当時の原料に合わせて上白糖を使用。コク深い甘さに仕上げられています。まずはそれぞれのスペックをチェックしてみました。

現行の「あずきバー」は、1本のサイズ65mLに対し、110kcal、炭水化物25.0g、食塩相当量0.1g。原材料は、砂糖、小豆、水あめ、食塩です

現行の「あずきバー」は、1本のサイズ65mLに対し、110kcal、炭水化物25.0g、食塩相当量0.1g。原材料は、砂糖、小豆、水あめ、食塩です

砂糖、小豆、水あめ、塩というシンプルな素材が、「あずきバー」が硬い理由。これにより空気の含有量が少なく、乳原料を使用しないことであの硬さになるのです。

「あずきバー 復刻版」はやや大きく、1本75mLで167kcal、炭水化物38.1g、食塩相当量0.2g。原材料は、砂糖、小豆、水あめ、食塩のほか、コーンスターチが使われています

「あずきバー 復刻版」はやや大きく、1本75mLで167kcal、炭水化物38.1g、食塩相当量0.2g。原材料は、砂糖、小豆、水あめ、食塩のほか、コーンスターチが使われています

現行品と復刻版のスペック的な違いはいくつか見られますが、後者が原材料にコーンスターチを使っているのはひとつのポイントと言えるでしょう。なお、コーンスターチはトウモロコシを原料とするでん粉のことです。

ということで、ここからは実際に食べて比較。現行の「あずきバー」からチェックしました。

現行品「あずきバー」の味わいを改めてチェック!

おなじみの「あずきバー」。甘さは控えめで、少々の塩味が絶妙。その分、小豆の旨味が引き立ち、飽きないおいしさです

おなじみの「あずきバー」。甘さは控えめで、少々の塩味が絶妙。その分、小豆の旨味が引き立ち、飽きないおいしさです

ひと口で「はいはい、これこれ!」と納得の食感と味。ブランドならではのソリッド感で、ガコッと離れて噛めばシャクシャクと。次第に口の中で“シュンワリ”溶けていく様は、「あずきバー」ならではと言えるでしょう。

改めて「あずきバー」を真剣に食べてみると、アイスとしてはかなり独特な食感であることがわかります

改めて「あずきバー」を真剣に食べてみると、アイスとしてはかなり独特な食感であることがわかります

「あずきバー 復刻版」の味わいをチェック!

そして次は「あずきバー 復刻版」。初代「あずきバー」の原料や配合、パッケージデザインを再現した商品に仕上がっています。

現行品に比べて上部が角張った「あずきバー 復刻版」。10mL分デカいのも違いのひとつです

現行品に比べて上部が角張った「あずきバー 復刻版」。10mL分デカいのも違いのひとつです

ひと口目の感想は、「むしろ新しい味!」という印象。食感は現行品よりほくほくしており、口溶けもやや早め。そして甘みが豊かで、全体的に濃厚なおいしさです。

プレミアム版と言っちゃってよさそうなリッチテイスト。こっちのほうが現行品より好きという人もいるはず

プレミアム版と言っちゃってよさそうなリッチテイスト。こっちのほうが現行品より好きという人もいるはず

同社のプレスリリースによると、当時の原料に合わせて上白糖を使用し、糖度と甘味度も当時と同じ配合にすることで、現行品よりもコク深くて甘く、濃厚かつやわらかい食感に仕上げたとのこと。うんうん、そのとおりですよ、この味は!

【まとめ】「復刻版」→「復活版」にすれば通年イケそうなクオリティー

こうして並べると、サイズや形のほか、色も少しだけ違うことがわかります

こうして並べると、サイズや形のほか、色も少しだけ違うことがわかります

総評としては、現行の「あずきバー」は安定のおいしさ。復刻版と比べると、硬く甘さ控えめの味は洗練されたイメージです。そして「あずきバー 復刻版」は、限定ではなく「あずきバー “復活版”」として通年販売してもウケそうなクオリティーのリッチな味わいが印象的でした。2024年は新たな歩みを始める「あずきバー」ですが、どう攻めていくのか注目です!

中山秀明
Writer
中山秀明
グルメ、ファッション、カルチャー、ライフスタイルを得意とする編集プロダクションを経て独立し、フードアナリストの資格を取得。内食・外食のトレンドやカルチャーに詳しく、深掘りレビューやインタビューなどを得意とし、さまざまな雑誌やウェブメディアをメインに、編集と撮影を伴う取材執筆を行っている。酒類や調理家電、タバコ関連にも強い。時折、テレビ番組や大手企業サイトに食の有識者として企画協力することも。
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牧野裕幸(編集部)
Editor
牧野裕幸(編集部)
アイテム情報誌「GetNavi」や映像エンタメ情報誌「DVD&Blu-rayでーた」(当時)の編集者を経て「価格.comマガジン」へ。スティック&ロボット掃除機、コーヒーメーカー、扇風機、電動歯ブラシ、電気ケトルなどの白物家電のほか、AV機器や加熱式タバコを担当しています。LOVE, LINKIN PARK.
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