コンビニでもよく見かけるようになった低糖質フード。これらはお米や小麦粉の代替として大豆やこんにゃくを用いるなどして、糖質を低く仕上げた食品のこと。お酒業界でも、糖質ゼロの缶チューハイやビール類の人気が高まっています。
自宅で味わう主食では、ごはん、パン、麺類といった穀物由来の食べ物がメインですが、なかでも糖質オフのラインアップが充実しているのが麺類。特にパスタが多く、身近な店でも買いやすいということに今回筆者は目を付けました。スーパーでも売っている商品のほか、ネット中心で展開されているタイプを加えたメジャーな6ブランドを集めて食べ比べます。
糖質オフの決め手は大豆だったりこんにゃくだったり。さまざまなヘルシーパスタをそろえました
比較のうえで着目するのは、第一に糖質とカロリー。なお、多くの商品が「一食あたり糖質○○g」という表記をしているのですが、気になったのが“サバ読み疑惑”です。というのも、通常のパスタは「一食100g」というのが定説。ところが、いくつかの低糖質パスタ商品は「一食80g」と表記しているのです。
「これは消費者を欺こうとしているのでは?」と思う部分もあったのですが、いろいろ見ていったところ早計でした。ある商品にわかりやすい解説がされていたのです。それは、今回取り上げている昭和産業「蒟蒻効果(グルコマンナン入りパスタ)」のパッケージ裏面。
パスタの「一食100g」「一食80g」というのは乾麺における重さ。低糖質パスタの多くは水を吸ってふくらむ量が多いので「茹で上がると同程度の重さになる」ということのようです
そのほか、本稿では各商品がどのような製法で糖質オフにしているかをチェック。また、続けるにあたって重要な味わいの参考になるように、「麺の太さ」「もちもち感」「ツルツル感」「コシの強さ」「1皿分の満足度」に関しては採点レビューします。
今回さまざまなスーパーを巡った中で、最も目にした低糖質パスタが「カーボフ」です。メーカーは「シーチキン」で有名な、はごろもフーズ。同社は「サラスパ」などパスタ商品も多彩で、そのひとつが「カーボフ」です。
「カーボフ」。2021年8月23日から配合を刷新し、パッケージともにリニューアルしました(黄緑色が旧モデル)
同ブランドでは、スパゲッティタイプのロングパスタを筆頭に、長さ半分のハーフパスタ、「ペンネ」や「フジッリ」といったショートパスタも展開しており、低糖質パスタ業界の中でも種類が豊富。しかも同ブランドのパスタソースもあり、ミートソースとカルボナーラが用意されています。
「カーボフ」は80g換算で糖質21.8g(炭水化物は58.2g)、217kcal
「カーボフ」は、パスタの定番素材であるデュラム小麦のセモリナ粉のほか、小麦たんぱくや米ぬかなどを使うことで糖質50%オフを実現。麺は1.4mmとやや細めで、これは定番のスパゲッティより2段階細い「フェデリーニ」に値します(1段階細いのは「スパゲッティーニ」、3段階細いのが冷製パスタでおなじみの「カペッリーニ」)。
パスタの直径は1.4mmと細めないっぽう、茹で時間は13分となかなかかかります。なお断面を見せやすくするため束にして撮影していますが、商品自体は束ねられていません
上記のミートソースを使うとこのような感じ。今回はそれぞれのパスタを乾麺80gの状態から茹でて盛り付けます
味わいに関しては、特に違和感のない一般的なフェデリーニのおいしさです。印象的なのはパツッとしたしなやかな食感で、麺の加水率は低め。とはいえボソッとした感じはなく、コシもしっかりしています。細さ的にももちもちよりプリプリを得意とするタイプなので、ドロッとしたソースよりも、水分量が多くサラッとしたソースのほうが合うでしょう。
このパスタでソースを作るときは、麺の茹で煮汁をやや多めに入れるとよりおいしく食べられるはず。スープパスタもおすすめです
油脂製品や小麦粉製品を得意とする昭和産業はパスタも手がけていて、糖質カットをウリにしている商品が「蒟蒻効果(グルコマンナン入りパスタ)」です。ロングパスタとマカロニの2種があり、ロングパスタは人気を受けて今秋大容量タイプが新発売されました。
80gあたり糖質48.7g(炭水化物は59.3g)、249kcal。写真最上と最下が定番の400g入り(80g×5束結束タイプ)で、中央が新しく加わった大容量タイプの640g入り(結束なし)
「蒟蒻効果(グルコマンナン入りパスタ)」は、こんにゃくの主成分として多く含まれる食物繊維の一種「グルコマンナン」を配合することで、糖質を25%カットしたいっぽう、1/2日分の食物繊維を獲得。デュラム小麦パスタに近い風味とプリプリとした食感、のど越しのよさが特徴で、2017年の発売以来、販売数が伸びているそうです。
直径は、茹で上がりで1.6mm相当とのこと(乾麺の状態における表記はなし)。ただ乾麺では細めに感じられ、前述の「カーボフ」の1.4mmと同等に見えます。茹で時間は12分
「蒟蒻効果(グルコマンナン入りパスタ)」は水を含むことで膨張し、乾麺80gの茹で上がり重量が100g相当となるとのこと。「カーボフ」同様に80gでも十分な量に感じます
食感は、こんにゃく芋のプルッとしたニュアンスを含んでいるのか、みずみずしい弾力でおいしいです。プリッとしているといううたい文句も確かにその通りで、ライトかつ上品なタッチ。また、パスタの細さや表面のツルツル感は「カーボフ」と似ていますが、「蒟蒻効果(グルコマンナン入りパスタ)」のほうがより自然な食べごたえに感じました。
ちゅるんとしたのど越しが印象的。特にペペロンチーノやボンゴレビアンコなどのオイル系や、さっぱりした味付けのソース、パスタサラダやスープパスタにもよく合うと思います
「オーマイ」ブランドの名のもとに、乾麺や冷凍食品でさまざまなパスタ商品を展開しているニップン。同社の低糖質商品が「オーマイ 糖質50%オフパスタ」です。使用している素材のポイントは3つ。食物繊維の一種「難消化性でんぷん」で糖質をカットし、もちもち感の豊かな小麦粉で弾力をアップ、そして全粒粉を配合することで香り高く仕上げていることです。
80gで糖質25.7g(炭水化物は54g)、222kcal
パスタは比較的太めで、形が独特。なんと、四角い形状をしているのです。また、太めでありながらも茹で時間は7分と比較的短め。太くもちもちな食感と、時短の利便性を両立した低糖質パスタとなっています。となると、気になるのはそのお味。
直径は約2.0mmと太めでありながら、茹で時間は7分とスピーディー
パスタの表面がザラッとしてソースがからみやすい「ブロンズダイス」になっているのも特徴。なお前述の2商品はどちらもツルッとしてのど越しがいい「テフロンダイス」です
デュラムセモリナ粉のパスタとは違う感じがあるものの、パッケージに書いてある通りの十分なもちもち食感。若干の違和感は、コシにあるかもしれません。どこかやわらかめで、プツッとまでいかなくとも、パスタらしい弾力としては物足りない気も。とはいえ糖質オフでこの太さともちもち感、時短料理を実現させた開発力はすばらしい。生パスタ好きにはかなりおすすめな低糖質麺です。
クリーム系など、ドロッとしたソースがぴったり。食べごたえも十分です
お酢のリーディングカンパニーであるミツカングループが、2019年に新規事業として立ち上げたD2C(Direct to Consumerの略。公式オンラインによる直接販売)ブランドが「ZENB(ゼンブ)」です。
特徴は、原材料となる植物を可能な限り丸ごと使うこと。動物性原料は使わず、添加物に頼らない味作りで素材そのもののおいしさを生かすことをモットーとしています。野菜のスティックやペーストなど数種があり、なかでも人気なのが今回選んだ「ゼンブヌードル」。商品名に「ヌードル」とあるように、パスタに限らず味付け次第で多彩な麺料理を楽しめますが、本稿ではミートソースパスタとして味比べしました。
なぜかいくつかのスペックはアバウトで、1束80gあたり糖質38.5〜42.9g(炭水化物は49.8〜55.1g)。カロリーはブレがなく80gあたり261kcalです
原材料は黄えんどう豆100%で、この仕様によるロング麺は世界初なのだとか。食物繊維や植物性たんぱく質が豊富な黄えんどう豆をうす皮まで丸ごと使いつつ、独自の製法でほのかなうまみともちっとした食感を実現しています。
ザラッとした「ブロンズダイス」。直径の表記はありませんが、1.6〜1.7mmぐらいでしょうか。見た目は茶色がかっていますが、太さはスパゲッティに近いと思います。また、茹で時間が6分とスピーディーな点も魅力
麺同士がくっつきやすいのですが、このねっとりとした表面の感じからも、もちもち感が伝わってきます
茹でているときはかなり豆の香りがしましたが、食べてみるとそこまで強い風味ではありません。食感はもちもちかつコシもあって、かなりハイクオリティ。デメリットをあげるとすれば、パッケージ裏面にも書いてある、くっつきやすさかもしれません。あとは比較的に価格が高いところ(前述3品はスーパーで1袋240〜400gが税込250〜350円のところ、「ゼンブヌードル」は1袋320gで税込792円)。とはいえ、黄えんどう豆100%という素材のよさは魅力的です。
筆者のように中央にソースを乗せる手法の場合、かかっていない部分がくっつくので注意を。ソースはたっぷりかけて、一気にからめる盛り付けがベターです
地方の逸品として注目なのが、仙台の農協が商品開発した「仙大豆 ソイパスタ」。大豆は昔から仙台東部を中心にたくさん収穫されていた農作物でしたが、東日本大震災により、大豆生産者をはじめ多くの農家が被害に。その後改めて大豆作りを再開し、大豆は復興の象徴となったのです。
そんな仙大豆とは、宮城県発祥の高品質大豆「ミヤギシロメ」のこと。チップスやチョコクランチなど多彩な商品展開がされる中で、2015年にデビューしたのが「仙大豆 ソイパスタ」です。
80g換算で糖質17.8g(炭水化物は31g)、276kcal。スペック的には今回中で最も低糖質です
このパスタは麺線がまっすぐでないので、うまく束ねることができません。また、なかなかデリケートで折れやすいのも玉にキズ。扱う際にはやさしく触れましょう。麺の形状は角切りの平打ちタイプで、「オーマイ 糖質50%オフパスタ」を少し細くしたような印象。パッケージの説明書きによると約3倍にふくらむそうで、膨張率が気になります。
表面は「ブロンズダイス」。直径の表記はありませんが、1.8mm程度でしょうか。「ゼンブヌードル」同様、豆が原料だからか、茶色がかっていてます。また、茹で時間は5分と今回中最もスピーディー
茶色で角切りの麺は、どこかそばを思わせるルックス。豆100%のパスタとはいえ、「ゼンブヌードル」とはかなり違います
こちらは「ゼンブヌードル」より大豆の風味が強めですが、パスタ同士はくっつきにくくなっています。その分もちっとした張りは控えめで、「仙大豆 ソイパスタ」のほうはムニュッとした独特の弾力に感じます。この風味や食感は、中華食材の「干豆腐」のニュアンス。3倍まではふくらまない気がしますが食べごたえもなかなかあり、乱切り的な麺のバラツキ感もユニーク。あとは、もう少し価格が手頃ならうれしいです(300g入りで税込1,080円)。
やさしいうまみも特徴的。納豆パスタだったり、仙台味噌を使ったり、和風の味付けがよく合う低糖質パスタだと思います
最後は本稿の中で最も新しく、話題性も高そうな商品。ハウス食品(ハウス食品グループ本社)の「大豆がパスタになりました」です。こちらは2021年1月に数量限定で発売されたものが好評を受けて販路拡大。「LOHACO」と一部量販店で同年9月15日から発売されています。
1商品に100gのパスタが2袋入っています。スペックは80g換算で糖質31.6g(炭水化物は35.9g)、262kcal
大きな魅力は、半生タイプになっていること。生地に粉砕した大豆粉を50%採用することで低糖質を実現し、いっぽうで自然なもっちり感を出すためにタピオカと同じでんぷんを加えています。また、ハウス食品独自の特許技術「大豆ほんのり製法」で、大豆特有のクセを抑えているそうです。
表面はおそらく「ブロンズダイス」。幅は筆者の実寸で約3mmと太め、形は平べったく断面が楕円形の「リングイネ」です。茹で時間は5〜7分推奨で、今回は中間の6分で調理しました
調理法も特徴的で、パスタは鍋の湯が沸騰する前の水の状態から茹でることを推奨(沸騰してから5〜7分)。これによってパスタに一層弾力が生まれ、表面もなめらかになるのだとか。従って調理してみると、半生麺ということもあってきわめてハイクオリティな仕上がりに。
80g分を調理。大豆の香りも気にならず、茹で汁も黄色っぽくなりませんでした
味わってみると、食べた瞬間にわかる圧倒的なもちもち食感。のど越しもなめらかで、モサッとした感じは皆無です。コシもあり、半生タイプの魅力を感じられつつも違和感のないおいしさ。ちなみに参考小売価格は1袋200g入りで598円(税別)ですが、半生タイプだと考えれば高すぎるとは思いません。
全体的にハイレベルですが、やはりもちもち感は今回ダントツのおいしさ。とろみのあるソースや、濃厚な味付けによく合うパスタだと思います
最後に、今回食べ比べた6商品の糖質とカロリーをまとめてみましょう。
一般的なパスタは乾麺100g換算、低糖質パスタ6商品はすべて80g換算(茹で上がりが従来のパスタ100gと同程度の重さになるため)
総評としては「値段が張るものは、素材のよさやスペック、味の贅沢感も比例して高い」というところです。ただ、6種類のどれも同じ味のものはなく、好みや目的に応じて千差万別だと思いました。それぞれの特性を記しましたので、こちらも参考にしてください。
・低糖質No.1:「仙大豆 ソイパスタ」
・低カロリーNo.1:「カーボフ」
・ツルシコのウマさNo.1:「蒟蒻効果(グルコマンナン入りパスタ)」
・安早ウマイNo.1:「オーマイ 糖質50%オフパスタ」
・乾麺でリッチなウマさNo.1:「ゼンブヌードル」
・半生麺でリッチなウマさNo.1:「大豆がパスタになりました」
「大豆がパスタになりました」の販路拡大や「カーボフ」が今秋リニューアルしたように、その他のメーカーのおいしい進化にも期待大です
これだけの種類を食べ比べたのは初めてでしたが、数年前に比べて低糖質パスタの種類も増え、全体的なおいしさも底上げされていると実感しました。特にもちもちの弾力やツルツルさ、コシの強さといった、自然な食感は格段にアップしたと思います。低糖質なフードを求めている人にとって、炭水化物の多い穀物類は気になるカテゴリーでしょう。ヘルシーなパスタを選ぶ際は、ぜひ本稿をチェックしてみてください。
食の分野に詳しいライター兼フードアナリスト。雑誌とWebメディアを中心に編集と撮影をともなう取材執筆を行うほか、TVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。