皆さま、こんにちは。今日は日本の最先端技術をご紹介したく、ある商品をお持ちいたしました。世界に誇れるメイドインジャパンをお見せいたします。ガンプラでおなじみのバンダイより「Figure-riseLABO ホシノ・フミナ」でございます。
最近のガンプラ界では有名な美少女キャラ、ホシノ・フミナさんのプラモデルです
「いやいやいや、ただの美少女フィギュアじゃないか! けしからん!」とお思いの皆さま、しばしお待ちを。確かに、ええ確かに見た目はただの美少女フィギュアです。フィギュアライズラボっていってますからね。でも実はこれ、完成品のフィギュアではありません。プラモデルなんです。そう、組み立て式の美少女プラモデルなんですよ! ちょっと何を言っているかわからないとページを閉じる前に、ぜひ最後までご覧ください。今回は衝撃の内部構造から、フェチの皆さまへ送るパーツ写真集、そして歴代フミナとの比較と内容盛りだくさんでお届けいたします。肌色成分多めのため、社内で閲覧中の方はご注意くださいませ。
今回の「Figure-riseLABO ホシノ・フミナ」のポイントはズバリ「肌」。無機質なプラモデルでいったいどうやって肌の質感を再現しているのでしょうか? まずは驚きのパーツ構成を見ていきましょう。
プラモデルなので、箱を開けるとガンプラ同様にランナーが7枚入っています。このランナーがもう次元を超えているのです。これから写真をお見せしますが、なんていうか、人体パーツがバラバラ……みたいな事件性を帯びたような見た目なので、苦手な方はご注意ください。
まずは顔部分です
1つのパーツに複数の色が入っている「レイヤードインジェクション」という技術が使われています。
※レイヤードインジェクションについてはこちらの記事で紹介しています。→プラモデルで美少女フィギュアを作る?! 最新技術に驚き!
今回のフミナの顔も、1枚のパーツに実に4色が使われております。他所ではマネのできない技術で、塗装なし、シールなしで瞳や顔を再現しています。
ここに同様の瞳パーツと、口パーツを組み合わせると
顔の完成です
これで塗装していないというのが信じられません。そして見てください、この血色! 頬の部分がうっすら赤みを帯びているのがわかりますか? これも塗装ではなく、肌の下のピンク色の層が透けることで自然なチークを表現しています。裏から見るとわかりやすいのですが、肌色の層の下にピンク色の層が配されているんです。
肌色のすぐ内側がピンク色なのがわかりますか?
あえて下層の色を透けさせることで、自然な血色を表現しているんです。こんな技術は見たことがありません! 詳しくはボディ部分でご説明しましょう。
ボディにも顔と同じ技術が使われています。体の構造に基づき、表面の肌色の層の厚みを調整することで、その下にあるピンク、オレンジの成形色を透過させて自然な陰影を表現しています。ボディの第2層は、顔のピンクよりも少しオレンジがかった成型色が特徴。
このように体の構造に合わせて、透過する部分の厚みを変えて成形されています
これが今までのフィギュアやプラモデルにはなかった最新技術です。腹筋や太もも、顔にこの技術を採用することで、自然な血色感やシャドウがついてより立体的、肉感的に見えるようになっています。そのため、各パーツは中身がぎっしりと詰まった感があり、重量もありますよ。ではその新技術を使ったパーツをご覧ください。
ボディと左脚のパーツです。えーなんていうか、いろんな意味で事件です
内部にレイヤードインジェクションの別色が入っています。顔部分よりもややオレンジがかった色合い
右脚パーツです。こちらも多層構造で作られたパーツです
瞳部分を除く、それ以外のパーツは通常のプラモデルと同様の単層のパーツで成形されています
なにやら大変な新技術が使われていることはわかりました。では実際にどのように見えるか、腹筋部分で観察していきましょう。ホシノ・フミナはなかなかの美しい腹筋の持ち主で、以前発売されたフィギュアライズの胸像シリーズでも腹筋をご披露しているのですが、それとも比較してみます。
「Figure-riseBust ホシノ・フミナ」の腹筋です。単層パーツなのですが、腹筋の陰影を再現できています
そして今回のフミナの腹筋。まずは白バックでご覧ください
続いて黒バックでライトを当てた場合の腹筋です
いかがでしょう? 最新技術の腹筋、すごいことになっていませんか? 一瞬人間の写真かと思ってしまうほどの肉感。白バックの自然光だけで見た場合は、腹筋の筋がうっすらと赤く見えているのがわかります。黒バックでライトを当てると、陰影部分がより際立ち、弾力さえ感じさせられます。プラモデルなのに血の通った肉体が再現できているというすごさ! それを塗装ではなく「透ける」ことで自然な色合いを表現している技術力の高さをわかっていただけましたでしょうか?
顔は頬の部分の層が薄くなっており、自然にチークが入ったような赤みの差した頬になっています。上から塗ったのではなく、透過して見えているというのがすごいですよね
それでは組み立ての様子をご覧いただきましょう。パーツ自体は多くないので、簡単に組み上がります。気を付けていただきたいのは、ボディ部分などレイヤードインジェクションが使われているパーツです。あくまでもプラモデルなので、ガンプラ同様、パーツをランナーから切り離す際は、ゲートの跡がどうしても出てしまいます。素材もガンプラ同様のPS(ポリスチレン)なので、ヤスリで処理してあげましょう。筆者はガンプラを作る際には、スポンジ形態のヤスリを400番、600番、800番、1000番と4種類を順番に使って処理しているのですが、今回は肌ということでより細かい目の2000番、4000番も使って処理しました。
では、まず左脚部分をランナーから切り離します
すると、ふくらはぎ部分には赤いゲート跡が結構目立つ感じで残ります
同様に右脚もゲート跡が残ります。これをヤスリがけして目立たなくしていきます
ここからちょっと生々しい写真が続きますが……左脚に水着パーツをつけて、その後に右脚をつけて脚部分を完成させます。
すると、先ほど赤く見えたゲート跡が、ちょうど両脚の交差部分で見えなくなりました。ですので、赤い部分はそこまで完璧に処理しなくても見栄えとしては問題なさそうです
右脚部分はヤスリがけをしてツルツルにしました
水着パーツにはグロスインジェクションという技術が使われています。パーツを成形する金型の表面を極限まで滑らかに仕上げることで、ツヤツヤの光沢感を表現。もちろん塗装ではありません。そのまま組み立てるだけで、プラモデルなのにエナメルのような質感を持った感じになりますよ。
自然光でもツヤツヤに見える水着パーツ。黒い部分は映り込みするくらいツヤツヤです
最後に両腕と顔パーツを組み込み、土台となる水しぶきパーツをつければ完成。両腕にはレイヤードインジェクションが使われていないのですが、腕の筋肉の質感や脇部分、指先など細部にこだわった作りですよ。
最後に、顔パーツに髪の毛パーツをはめて頭部分を組み立てます。
あとは両腕と台座をつければ完成
ガンプラとの大きさ比較です。左から1/144RG、フミナ、1/100MG。全長約27cmのフミナはマスターグレードよりかなり大きいサイズです
組み上がってしまうと、どう見てもただのフィギュア。「あれ? 今まで俺、プラモデル作ってたんじゃなかったっけ?」という不思議な感覚に……。ただ通常のガンプラなどとは異なり、可動がないので、固定ポーズオンリーになってしまいます。フィギュアライズバストでは首の可動はあったのですが、今回のホシノ・フミナはまったく可動しません。
それではお待たせしました。フィギュアライズラボのホシノ・フミナをいろんな角度から見ていきましょう。
まずは白バック+自然光バージョンでぐるっと見ていきます
続いては黒バック+ライトのバージョンです
続いてはパーツごとにアップにしてみましょう。
こだわり部分をご堪能ください。まずはヒップ編です。プラモデルでこんなヒップが見られる日が来るとは! 太ももの血色のよさも新技術によるたまものです
バスト編です。水着パーツの光沢はもちろん、シワにまでこだわった造形がたまりません
マニアックにいきましょう。ポニーテールをうしろから
脇部分からのウエストのひねりに注目。実際は硬いのですが、肌に弾力があるんじゃないかと勘違いしそうなほど肉感的です
レイヤードインジェクションなしでも、腕の筋肉の造形はとても美しいです
台座につなぐ脚の動きもきれいです。指にはちゃんと爪も描かれています
歯と口内にはちゃんと段差があります
筆者が個人的に一番好きなパーツはここ。なんといっても、腰からヒップ、そして太ももにかけてのラインが最高ですね。
下のレイヤーから透けて見える赤い部分のメリハリがきいていて、特にヒップから太ももにかけての赤みがかった質感が最高です。右太ももの裏側中心部分だけ赤みがかっていて、外は白いという色合いがまた秀逸で、これをプラモデルで再現するという、執念にも似た変態技術を感じます。
思えば2016年1月にいいモノ調査隊にて、ガンプラ「HGBF 1/144 すーぱーふみな」を紹介させていただいて以来、第2弾の「HGBF 1/144 すーぱーふみなアクシズエンジェルVer.」第3弾の「HGBF 1/144 ういにんぐふみな」と、過去3回にわたってガンプラベースのホシノ・フミナを紹介させていただきました。ガンダム界のニューヒロインとしての脚光、もしくは新企画に投入されるチャレンジャーとしての役割を果たしているフミナですが、今回のキットはまさに業界を激震させる技術革命になっています。では、そんな歴代フミナの変遷をたどっていきましょう。
歴代フミナオールスターです。正確には今回のフミナはガンプラシリーズではないのですが、初代があったからこそ今回のキット誕生につながったと確信しています
初代(左)と2代目(右)。顔の造形は同じ。シールと塗装で瞳を表現できます。やはり顔がイマイチな感じでしたが、ガンプラと美少女の融合を果たした意欲的作品の幕開けでした
3代目は顔の造形が一新され、シールによる瞳もきれいに表現できています。今回のキットに近い表情になっていました。しかし、比べると人間らしさが全然違うことがわかります
いいモノ調査隊では未紹介でしたが「Figure-riseBust ホシノ・フミナ」は、アニメのフミナに一番近い印象で、レイヤードインジェクションを使った顔は、今回のキットにつながる商品でした。それでもやはり、今回のフミナは段違いで表現力が増していることがわかりますね
こうして並べて見てみると、今回のフミナの完成度がどれだけ高いかがよくわかります。初代、美少女ガンプラから始まったフミナが少しずつ、確実に人間らしく進化してきたことに感動すら覚えますね。
さて、このフミナは水着で、かつ土台が水辺になっているので……欲望を我慢できませんでした。霧吹きで水をかけてみました。するとなんということでしょう。よりリアルな肌感が生まれてしまいました。
特に下半身は見事! なんというか……生々しさが増します。これはぜひ実際にやってみてもらいたいです
先ほど革新的な技術と書きましたが、現在発売されているスケールフィギュアという商品は、1/6もしくは1/7スケールのものが多く、PVC(ポリ塩化ビニル)素材のものがほとんどで、価格も1万〜2万円前後と高価なものになっています。今回のキットは純粋にプラモデルということもあり、価格を5,940円(税込み)と抑えることができるだけでなく、また最新技術を使って肌の質感を作り上げるなど、従来のフィギュアにはなかった楽しみ方ができるようになっています。これは今後のフィギュア界にも大きな影響を与えそうですね。
ただ問題もあります。今回のフミナは初回出荷数などの影響で、発売後即完売という状況が続いています。ネット通販でも予約時点での完売がほとんどで、現在購入できても通常より高価な値段で取り引きされています。ここらへんは、今後のメーカーの対応に期待したいところですね。
フィギュアライズラボはシリーズ化されるようで、第2弾は髪の毛などグラデーションにこだわった初音ミクが発売されるとのこと。こちらも期待ですね! ガンプラから生まれた技術がこのような進化を遂げ、さまざまな楽しみ方ができるのは実にいいことだと思います。
技術がすごいんだよ! という建前も手に入りますし、フィギュアじゃないよ、プラモデルなんだよ! という事実を盾に、堂々と部屋に飾ってみてはいかがでしょう?
やはり海をバックに飾りたいですね
「月刊PCエンジン」誌で編集ライターデビュー。「64DREAM」誌デスクを経て前職はXbox 広報のゲーム漬け人生。猫とガンプラとaqoursが存在理由のホビー担当。