近年、非常に嫌われている紙巻きタバコが出す煙とニオイ。「アイコス」などの加熱式タバコでさえ蒸気は出るし、低減されているがニオイもある。どちらも多かれ少なかれ、周囲に迷惑をかけてしまう可能性があるのだ。その点、今回紹介する「スヌース(嗅ぎタバコ、無煙タバコ)」という種類のタバコは、タバコ葉入りの小さな袋を口に含むだけである。燃やさず、加熱もしないので煙も蒸気も臭気もなく、ニコチン摂取が可能なのだ。なので、タバコが長時間吸えない移動中や長い会議の最中でもニコチン補給が可能になり、喫煙者にとっては非常に便利。今回は、そんなスヌースの人気銘柄を実際に試しながらその魅力を解説したい。
※ご利用にあたっては、後述する健康リスクなどをご考慮のうえ、注意・マナーを守ってご使用ください。
日本でも比較的入手しやすい、スヌースの人気銘柄5種。写真左上から時計回りに、「アル・カポネ・バニラ」(スウェーデン Råå S AB社)、「ゼロスタイル・スヌース・レギュラー」、「ゼロスタイル・スヌース・ミント」(JT)、「オン・ベリー」、「オン・ミント」(スウェーデン Råå S AB社)。すべて20袋入り
スヌースは、18世紀のスウェーデンで生まれた嗅ぎタバコの1種。粉砕したタバコ葉が入った小さな袋を口に入れ、ニコチンを口腔内で吸収する。ちなみに、粉砕したタバコ葉を鼻から吸い込む「スナッフ」というものもあるが、あまり日本では普及していない。ほかにも、煙の出ない「噛みタバコ」というものもあるが、これは海外の野球選手がよく使用するもので、ガムのように噛んで唾液を吐き出すタイプだ。日常的に使用するのはやはり難しく、日本では普及していない。
JTが発売している「ゼロスタイル・スヌース・レギュラー」(ニコチン量非公開)。平たい樹脂製の容器に入っており、中にはタバコ葉の詰まった小袋が20個入っている。ほかの製品も同じだが、小袋にはマスクに使用される不織布を採用しているようだ。そう簡単には破れない
ハサミで袋を切り開いてみると、細かく粉砕されたタバコ葉が入っている
スヌースの使い方は、上唇と歯茎の間に挟んで放置。以上だ。上唇と歯茎の間に挟むことで出てくる唾液によってタバコ葉からニコチンが染み出し、それを飲み込むことで胃からニコチンを吸収することとなる。もちろん、燃やさないのでタールはほぼ含まれていない。ただ、その効き目はゆっくり。実感としては4、5分くらいすると何となく吸った気になる程度だ。
「ゼロスタイル・スヌース・レギュラー」を試してみる。1袋を取り出して……
口の中、上唇と歯茎の間に挟むように入れる
「ゼロスタイル・スヌース・レギュラー」の容器の裏には使用方法が書いてある。1袋で15〜30分使用可能
ちなみに、ニコチンの吸収速度は紙巻きタバコの煙が1番早く、肺に到達して1秒もかからずに満足感を与える。その次が加熱式タバコで採用されている蒸気。これは1分くらいのラグがあるようだ。
スヌースの場合、吸った感を得るまでに3分以上はかかるので、喫煙感というよりは染み渡っていくという印象。しかも、タバコを吸った感覚がまるでない。確かに「ゼロスタイル・スヌース・レギュラー」が歯茎に接触すると、ピリピリとしたニコチン特有の辛味が来るが、あとはロースト感と甘味料由来の甘みとともに生のタバコ葉のえぐみのある味を感じるのみ。そして、口の中が軽くヌルッとする。
そうした不思議な味が抜けたら、終了だ。吸い殻を吐き出す。あまりおいしいものではないというのが正直なところだ。紙巻きタバコに比べるとニコチンの吸収速度が遅いので、調子に乗って次から次へと口に入れると、過剰摂取になりクラクラしてしまうので、摂取頻度は考えたほうがいいだろう。
「ゼロスタイル・スヌース・レギュラー」はケースの裏が吸い殻入れになっているので、吸い殻はそこに捨てる。ガムのように、ティッシュなどの紙にくるんでゴミ箱に入れても問題ない
海外では、ニコチンが強く、日本人が使うと歯茎に激痛が走るほど刺激の強い製品も多いようだが、日本でおもに流通しているものはニコチン量が弱く、ピリつきも少ない。ここでは、日本で大きめのタバコ店に行けば入手可能な人気銘柄を試してみたい。
リトルシガー(小型葉巻)のブランドとして人気の、「アル・カポネ」によるスヌース。バニラ感はタバコ葉特有のクセを消すために添加されているらしく、そんなに強くは感じない。ただし、ニコチン含有量は3mgと多め。吸収の仕方が違うとはいえ、紙巻きタバコ「マールボロ」のニコチン含有量が1mgということを考えれば、かなりガツンと来ると思ったほうがいい。
ただ、全体的に味の仕上がりはよいので、軽いピリピリ感が歯茎に来るものの、不快感はない。かなり早めにクラっと来るので、使いすぎに注意しよう。普段からニコチン量0.8mg以上のきつめのタバコを好む人に向いている。
「アル・カポネ・バニラ」。ニコチン含有量は3mg
ニコチンのピリピリ感とミントのヒリヒリ感が合わさって、「ゼロスタイル・スヌース・レギュラー」よりも強めの刺激を感じる「ゼロスタイル・スヌース・ミント」。ただミント感の分、だいぶ味はよく感じる。タバコ葉特有のクセのある味も、ミントと合わさることでメンソールタバコに少し似た印象になり、タバコ感が増す。
クセを感じにくい、メンソールタイプの「ゼロスタイル・スヌース・ミント」。ニコチン含有量は非公開
「オン」はタバコの味と香りをゼロにしようとしている、クセのなさが人気のブランドだ。ケースを開けた時に海外のお菓子のようなベリー風味が漂う。しかし、甘い香りとポップなルックスだというのに、実際に使用してみるとニコチンの辛味がかなり強烈で驚く。
ただ、本当にタバコ感がないのが不思議。それでいてじわじわとニコチン感がやってくる。筆者的にはこれが1番使用しやすいと感じた。いざという時のために持っておきたいのはこれだ。ちなみに「オン」シリーズには、もっと刺激の弱いニコチン1mgタイプもある。
ミントタブレットのようなパッケージの「オン・ベリー」。ニコチン感を減らしたためか、粉末色も白っぽい。ニコチン含有量は3mg
これもニコチン感を感じないタイプだが、そこに強力なミントが加わることによって、今回のラインアップでは最強刺激だと感じた。歯茎が脈打つ感じがするくらいの強刺激だった。歯茎にトラブルを抱えている人には、決しておすすめできない。
「オン・ミント」。ニコチン含有量は3mg
スヌースのメリットはもちろん、火を使うことなく、煙も蒸気もなしにニコチン補給が可能なことだ。したがって、禁煙場所でも使用可能である。長時間のフライトや、退屈で長い会議などでニコチン切れを起こしてしまっても、スヌースならいつでもどこでもこっそり補給できるのだ。
デメリットは、やはり吸った感がないこと。ニコチンを摂取したというよりも、タバコを吸わなくても平気になるという感覚のほうが近いだろう。もちろん、健康リスクもある。通常のタバコ製品に記載されている警告文が「肺がん」に関するものなのに対し、スヌースに記載されている警告文は、直接口内に入れるところから「口腔がん」に関するものだ。また、歯周病など歯茎トラブルを抱えている人にとっては、炎症を悪化させる可能性もあるので、使用は避けたほうがよい(というか、痛くて使えない)。さらに、胃でのニコチン吸収となるので、胃が弱い人も気をつけたほうがいいだろう。
メリットもデメリットもあるスヌースだが、タバコが吸えない状況が長時間続く場合の緊急手段として、ポケットにひとつ忍ばせておけばスモーカーとしては心強い。健康リスクなどを考慮のうえ、マナーを守って使用すれば、非常に有効なアイテムだと思う。
元「月刊歌謡曲(ゲッカヨ)」編集長。今はめおと編集ユニット「ゲッカヨ編集室」として活動。家電や雑貨など使って楽しい商品のレビューに命がけ!