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映画「トップガン」続編もいいけど、日本の航空小説だって面白い!

重度の戦闘機好きがガチで面白いと唸った「F-15」がバリバリ活躍する航空小説&漫画5選


「戦闘機が登場する映画と言えば?」と聞かれて何を思い浮かべるだろうか? 恐らく100人中99人がこう答えるだろう、「トップガン(Top Gun)」と。実際にトップガンを観たことない人ですらそう答えるかもしれない。

「トップガン」は、トム・クルーズ主演、1986年公開のアメリカ海軍エリートパイロット養成機関を舞台にした航空アクション映画だ。確かにトップガンは面白い。ほぼ全編、アメリカ海軍協力のもと現用戦闘機を飛ばして撮影したというだけあり、米海軍の当時の主力戦闘機「F-14トムキャット」の空中戦の臨場感がハンパない。音楽もいい。あの「ドゥドゥドゥドゥンドゥンドゥン」という前奏が流れるだけで全身の血液が泡立つほど興奮する。それはわかっている。そして、その公開から32年後の今、その続編映画がどうやら制作中であるらしく、トップガンブームが再燃するかもしれないのだ。しかし、世間がトップガンで盛り上がりを見せそうな今、あえて私は言いたい。

戦闘機が登場するエンタメはトップガンだけではないですよ。

トップガンの抜群の面白さは百も承知だが、実は筆者は、小説や漫画などの読み物のほうが映画より好きなのだ。実写映画では再現できないことも描けるし、登場人物の顔や声を自分で好きに妄想できるからだ。よってここでは、トップガン続編の噂にあやかり、戦闘機オタクである筆者がどハマリした、日本の航空小説および漫画を、勝手に紹介する。

選考基準は筆者が個人的に面白い、読みやすいと思ったかどうかにプラスして、戦闘機とはどんなものなのか、航空自衛隊のパイロットはどんな生活をしているのかがわかるかどうか、戦闘機に関して無知でも読み進められるかどうかも、ポイントにしている。あくまでフィクション作品のみを取りそろえたが、これら小説を読むことで、日本の防衛事情を見る目が少しだけ変わってくるかもしれない。

・紹介する小説と漫画の一覧

1.「スクランブル-イーグルは泣いている-」夏見正隆・著
壮絶な空のバトルが特徴の航空アクション小説。日本の外交、軍事のあり方に警鐘をならすような振り切った設定は好みが分かれるかもしれないが、「日本はこのままで大丈夫か?」と考えさせられる。若いイケメンパイロットが多数登場する。

2.「全能兵器 AiCO」鳴海章・著
男らしいハードボイルドな戦闘機小説が読みたければまず鳴海章氏の航空機ものを読むべし。著者の小説は戦闘機同士の戦いがとにかくリアル。本作は人工知能 VS ベテランパイロットの一騎打ちが見どころ。

3.「天神」 小森陽一・著
天性のパイロット・坂上陸がファイターとして成長していく空自×青春小説。政治が絡んだ戦闘の描写は一切なく、恋愛要素もあり。このままドラマ化しても一般受けしそうなさわやかで引き込まれるストーリーで、戦闘機ファンだけでなく幅広い層におすすめしたい。

4.「ソラモリ」村上もとか・原作/千葉きよかず・漫画
「JIN-仁-」の村上もとか氏による戦闘機パイロットの成長物語。2018年連載開始で既刊1巻だが、戦闘機のパイロットにどうやったらなれるのか、航空学生(空自のパイロット養成学校)の生活とはどんなものなのかをわかりやすく描く。

5.「迎撃せよ」福田和代・著
新型ミサイルを搭載した「F-2」戦闘機を24時間以内に迎撃するという、日本国内で発生するテロを取り上げたタイムアタック系小説。飛行シーンの描写が少なめだが航空自衛隊の要撃任務についてがよくわかる。

1. 「スクランブル-イーグルは泣いている-」夏見正隆・著(徳間文庫・2008年9月)

あらすじ
平和憲法の制約により“軍隊”ではないわが自衛隊。その現場指揮官には、外敵から攻撃された場合に自分の判断で反撃をする権限は与えられていない。航空自衛隊スクランブル機も同じだ。空自F15は、領空侵犯機に対して警告射撃は出来ても、撃墜することは許されていないのだ。F15(イーグル)を駆る空自の青春群像ドラマ(作品紹介より)

「スクランブル」シリーズとして2019年4月現在11作品が発行されている人気シリーズ。シリーズ全般をひと言であらわすなら「理不尽」、これに尽きる。1作目のタイトルが「イーグルは泣いている」であるからして察しがつくかも知れないが、読んでるこっちが泣きたくなるほど、登場人物がひどい目にあう。そもそも、主人公のF-15のパイロットを目指すヤサ男、風谷修(おさむ)が、初恋の人の結婚式に出席する、というやるせない場面から物語は始まる。これだけでも気持ちがふさぐのだが、失恋を乗り越えるべく、夢だった戦闘機パイロットとして一人前になろう!と自分を奮い立たせるにもかかわらず、次から次へと災難が降りかかる。風谷だけでなく、登場人物の誰もかれもが(主に自衛隊関係者)「厄年ですか?」と言いたくなるほど、さんざんな目に遭う。

というのも、シリーズ通してのスタンスというかベースが、日本にはびこる自衛隊バッシング、政治家の腐敗、周辺諸国の反日感情などが歴然と存在することで成り立っており、そこに立ち向かう風谷ら自衛官や防衛関係者が徹底していじめられるのだ。いやもう、見ていられない。
辛くても先が気になって嫌でも読み進めてしまうのは中毒的魅力がある証拠だが、いくらなんでも永久に報われないとなると読むほうのメンタルもやられてくる。
が、安心してほしい。信じて、3作目の「復讐の戦闘機(フランカー)/下」まで、歯を食いしばって読んでほしい。一矢報いる瞬間がやってくる。この上なくスカッとする上、空自パイロットが空で生き生きと活躍するのが“超”爽快だ。

主人公の風谷は繊細で、初恋を未練がましく永久に引きずっているような情けない奴だが、彼のほかにかっこいいパイロットがたくさん登場する点や、女性パイロットが大活躍するのも本シリーズの魅力のひとつだろう。

2. 「全能兵器AiCO」鳴海章・著 (講談社 単行本/ 2016年6月・文庫本/2019年7月12日発売予定)

あらすじ
航空自衛隊のベテランパイロット郷谷良平は、日本初の国産ステルス戦闘機誕生を目指して開発されている先端技術実証機ATD-X(通称・心神)にからむあるプロジェクトに参加するため岐阜基地内の飛行開発実験団に呼ばれる。だが、そこからさらに連れて行かれた研究室で告げられた研究対象は「ステルスハンター」、ステルス機を狩る戦闘機であった。
時を同じくして、尖閣諸島付近で日本の民間機と中国の偵察機がそれぞれ原因不明の墜落事故を起こす。緊迫する東アジアの空で何があったのか──。
航空サスペンスで一世を風靡してきた著者だからこそ書ける、新時代の国際航空インテリジェンス小説(作品紹介より)

航空サスペンスの金字塔「ゼロ」シリーズを執筆した鳴海章氏の最新作。今回、本作を紹介するか、「ゼロ」シリーズを紹介するかかなり迷ったが、「ゼロ」シリーズの最初の発行は1993年(米ソ冷戦時代)であり、せっかくならリアルな航空事情を描いた最新作「全能兵器AiCO」がよかろうと判断。ただ「ゼロ」シリーズは今読んでも本当に面白いので、あわせてぜひ読んでほしい。

「全能兵器AiCO」は、国産ステルス戦闘機や人工知能、「F-35」戦闘機など、最新の航空事情が盛りだくさん。ベテランパイロットの郷谷ことTACネーム「チャンプ」が、人工知能「AiCO」を搭載する戦闘機の開発に借り出されるところから物語が始まるのだが……このAiCOがどうも、悪用されちゃいそう&人間超えちゃいそうなフラグ。さあどうする?という内容。ちなみにTACネームというのは、戦闘機のパイロットや管制官に付けられた公式のニックネームなようなもので、実際の空自隊員もそれで呼び合っている。
AiCOとチャンプの一騎打ちのシーンは、あたかも自分が戦闘機を操縦しているような気持ちになれる、空前絶後の迫力だ。

今は生身の人間が戦闘機を操縦するのが主流だが、パイロットの命をさらして戦闘機を操縦するよりも、「死」の概念がないメカが代わりになるほうが理にかなっているという考えのもと、AiCOを開発する元空自パイロット「サトリ」。それに対して「ハートのない飛行機なんざガラクタだ」と苦言するチャンプ。どっちが正しいのだろう……。

また、本作は、サスペンス要素を含んだストーリー展開も引き込まれポイントのひとつ。最後まで読んで「そうだったのか!」とからくりがわかるのが面白く、1巻で終わってしまうのが残念で仕方ない。が、安心してほしい。本作に登場する「チャンプ」がかつて憧れた伝説のパイロット「カゲロウ」が活躍する別の物語「マルス・ブルー」(講談社文庫・2012年1月)も、まったく別のストーリーではあるが、似た世界観を味わえる。

ちなみに、著者の作品はいずれも空戦の様子が生々しくリアルなのが特徴で、特に「ゼロ」シリーズでは、戦闘機が撃墜されるシーンも具体的に描かれる。撃たれた戦闘機のパイロットがどうやって死んでいくのか、淡々とはぐらかすことなく描いており、「戦闘機=速い、かっこいい」というだけでない現実を見せつけられる。

3.「天神」 小森陽一・著(集英社文庫・2013年3月)

あらすじ
絶対にファイター・パイロットになるんだ―。親子三代での戦闘機乗りを目指す航空学生出身の坂上陸と、防衛大学卒業後、国を守りたいという強い思いから航空自衛隊に入ったエリートの高岡速(はやり)。立場も考え方もまるで違う二人の青年の人生が交差するとき、心揺さぶられる熱いドラマが生まれる!戦闘機に乗ることに憧れを抱き、夢に向かって突き進む若者たちを描いた壮大な“空”の物語(作品紹介より)

最初に紹介した2作品とはうって変わって、かなりライトな気持ちで読めるシリーズで、航空自衛隊で「F-15」戦闘機パイロットを目指す若者・坂上陸の物語。陸という名は、陸の母が「この子だけは空に飛び立たないでほしい」という願いを込めて強引に付けた名前だが、代々受け継ぐパイロットの“血”には抗えず、結局、陸も戦闘機乗りを目指す。ここで紹介する「天神」に加えて、「音速の鷲」「イーグルネスト」「ブルズ・アイ」「風招きの空士 天神外伝」の5冊完結のシリーズだ。

空自の若手戦闘機パイロットの生活を自然に描いており、専門用語は少なめ。戦争のにおいや現実の政治情勢を挟むことがないので、世界観は私たちの感じる日常にとても近い。そのためとてもリラックスした気持ちで読めるのが本書のおすすめポイントのひとつだろう。
たとえば、よくある「生と死の狭間で戦う兵士達の魂の叫びがウンタラ…」というような男臭い熱さがなく、恋愛要素もちりばめられている。とはいえ、空自の訓練の厳しさや、訓練中の事故の描写はリアルでハラハラする。登場する戦闘機や部隊、装備の配備場所などは実在なので、航空祭などで戦闘機の部隊マークなどを見たときに「あの鷲のマークは石川県の小松基地から来たのね」など、ちょっとした空自事情がわかるのも面白い。

本書の何よりのおすすめポイントは、ストーリーが文句なしに面白い点。陸が父と疎遠になった13年前のとある事故の謎とその真相には惹きつけられるし、登場人物のキャラクターもいい。学問はまるでダメだが、空に上がった途端に天性の才能を発揮する陸の憎めないキャラ、それと正反対に、自分に厳しく努力家の優等生・高岡速(はやり)は正当派のかっこよさ。続編の「音速の鷲」「イーグルネスト」では、冷血・孤高の凄腕パイロット浜名零児が登場し、陸とのライバル対決も描かれる。天才的なひらめきで戦術を打ち出す陸と、ピカイチの操縦技術で陸に襲いかかる零児の対決は、筆者のどハマリポイントである。なお、本作は漫画版も出ているので、小説が苦手な人は漫画から入ってもいいだろう。

4.「ソラモリ」村上もとか・原作/千葉きよかず・漫画(集英社・2019年1月)

あらすじ
伊吹守人の夢は航空自衛隊の戦闘機パイロットになること。高校卒業とともに空自の航空学生となった守人は、同じ目標を抱く仲間とともに日本一ストイックな学生生活に身を投じる。“空の防人”をめざす空自パイロット青春譚! (作品紹介より)

戦闘機パイロットについて1からわかる空自・戦闘機入門作品。将来戦闘機のパイロットになりたいと思っている人や、戦闘機のパイロットってどんな訓練をしているのか知りたい、という人が最初に読んだらいいのではないかと思う。なお、まだ1巻しか発行されておらず、詳細のストーリーはこれからだ。
主人公の伊吹守人(いぶきもりと)が夢に見る戦闘機が、2019年に日本に配備されたての最新戦闘機「F-35ライトニングU」であるなど、超ナウな空自パイロット事情がわかるのではないだろうか。筆者の世代は、世界最強戦闘機といえば「F-15イーグル」なので、世代を感じる……。

守人はパイロットになるため、高校卒業後に航空学生(航空自衛隊のパイロット養成制度)になる。通称「航学」と呼ばれる同制度は、パイロットへの最短コースと言われている。が、その課程がかなり厳しいらしい。超体育会系だ。だが、一見理不尽に思われるゴリゴリ体育会系な教育方針も、ちゃんと理由があったりするのでなるほどと思う。パイロットになるのも本当に大変そうだ。

5.「迎撃せよ」福田和代・著 (角川文庫・2013年11月)

あらすじ
明日夜24時、日本の主要都市にミサイルを撃ち込む―。官邸に送りつけられた犯行予告動画。猶予は30時間。緊迫が高まるなか、航空自衛隊岐阜基地から、XASM‐3ミサイル4発を搭載した戦闘機F‐2が盗まれた。府中基地、ミサイル防衛に携わる航空自衛官・安濃将文は戦慄した。かつての上司が一連のテロに関わっているのか? 日本を、家族を、自分たちの手で守れるか? 決死の攻防に、一人の自衛官が立ち向かう! (作品紹介より)

最後に紹介するのは、戦闘機パイロットではなく、戦闘機に搭載されたミサイルに対抗する要撃任務につく自衛官に焦点を当てた物語。2009年、北朝鮮の「飛翔体」発射実験が発表され、万が一に備え、ミサイルを迎え撃つべく、地対空ミサイルシステム「パトリオットミサイル」(通称、PAC-3)が市ヶ谷に設置されたことを記憶している人も多いのではないだろうか。著者は、駐屯地のPAC-3と、そのかたわらに立つ緊張した顔の自衛官、それを携帯電話で撮影する民間人、という構図に興味を抱き、構想を思いついたという。

残念ながら本書は戦闘機がバリバリ活躍するストーリーではないため、本記事の主旨とは若干ズレるのだが、空での戦いのほかに最後の砦として地上で要撃任務につく自衛官もいて、地上が舞台の“日本の空の防衛”にも触れておきたいと思ったため、紹介することにしたのだ。

本書では、某国のスパイが日本でひそかに暗躍している様を描くが、それはマスコミには明かされず、いっさい公にはならない。「ミサイルに備えて念のため外出を控えて……」とテレビのニュースでは流れても、本気で心配する人は少なく、興味を持たない。本書は、それに対して、「日本人もっと危機感持とうぜ!」という偏った短絡的なメッセージを投げかけるものではないが、(筆者を含め)日本人はやはりどこか、母国が戦火にさらされることに対して具体的なイメージがなく、他人事だ。その状態こそが平和なのだが、万が一、もしかしたら……というレベルで「防衛」という概念について考えてみてもいいのかなと思える小説だ。
全体的に暗めの話だが、24時間後に迫る危機というタイムアタック的な要素が加わり、ハラハラしながら一気に読める。

鈴木 ゆり子(編集部)

鈴木 ゆり子(編集部)

旅行(主に中華圏)、ペット、お酒が大好きな編集部員。飲みの席で盛り上げるのが得意ですがたまに記憶をなくします。

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