本連載は、文房具ライターのきだてたくが、「価格.comマガジン」の編集担当・マキノに、便利な文房具をリモートで必死にプレゼンする様子を実況。もし紹介された製品の中で「欲しい」と思うものがあったら、それをマキノは実際に購入!……という自腹買い企画です。
第8回は、「重心バランスに焦点を当てた筆記具」をテーマに、3製品をプレゼン!
「価格.comマガジン」の編集担当・マキノ(左)に対し、文房具ライターのきだてたく(右)が、プレゼン!
きだて 本連載って、いつもはマキノさんに文房具を自腹買いさせようと思って、プレゼンしているんですけど。今回は、紹介したいのが筆記具なんですよね……。マキノさん、もう書くものはコレ!って決めちゃっているじゃないですか。
マキノ そうですね。以前にきだてさんに教えてもらったゼブラ「ブレン」一択ですね。これは、本当にいいボールペンですよ。
きだて 気に入ってもらえるのはありがたいんだけど、ほかの物を紹介する甲斐がないんだよなぁ(笑)。なので今回は、マキノさんというよりは読者の皆さんに、「最新の筆記具トレンド、こんなスゴいことになっているよ」という紹介をしようかな、と。
マキノ それはそれで、気になりますね。
きだて 2021年後半、筆記具界隈でトレンドワードになっているのが、「重心バランス」なんです。
マキノ ほー。ボールペンの重心は低めがいい、みたいな話は以前に聞いたことがあるような。でも、そんなちょいちょい出てくる話題ではなかったですよね?
きだて 筆記具の重心バランスなんて、基本的には文房具マニアが気にするレベルの話でしたからね。あまり一般的な話題ではなかったはずです。
マキノ それが、急にトレンドワードになっちゃっているという。
きだて ホント、突然なんですけどね。今秋以降、各メーカーともに、重心バランスに焦点を当てた筆記具をガンガン投入してきています。
マキノ 何があったんでしょうね?
きだて ひとつ考えられるのは、コロナ禍で外出が減って、室内でゆっくり書き物をする機会が増えたんじゃないか、と。であれば、落ち着いて握りやすい筆記具が人気出るんじゃない?とメーカーが考えたんではないかな、と。
マキノ なるほど、そういうのはあるかもしれませんね。
きだて 最初に紹介するのが、この重心バランスブームの火付け役となってる、三菱鉛筆の「ユニボール ワン F」というゲルインクボールペンです。2021年9月発売。
軸色にトレンドの「くすみカラー」を取り入れた三菱鉛筆「ユニボール ワン F」。ボール径は0.38mmと0.5mm径をラインアップしています
マキノ 「ユニボール ワン」ってのは、聞いたことがあります。
きだて そう、「ユニボール ワン」は2020年に発売されて以降、めちゃくちゃ人気のボールペンです。特殊な顔料を使っていて、発色が非常にクッキリしているのが特徴ですね。なかでも黒は、おそらくボールペン史上最高にクッキリ、と言っても過言じゃないぐらい。
マキノ へぇー。で、「ユニボール ワン F」は、そのシリーズの新製品ってことですか?
きだて 「ユニボール ワン」は、132円とお安めのペンなんで、インクはスゴいんだけど、軸とかはやっぱりちょっとチープというか。なので、インクを入れたリフィル(芯)はそのまま、軸のクオリティを向上させたのが、330円の「ユニボール ワン F」というわけ。
特殊な顔料系ゲルインクは、くっきりと濃くて可読性が高い
マキノ なるほど、インクを替える必要はなかった、と。
きだて そういうこと。で、軸のデザインがスマートになってカッコよくなったし、重心バランスも向上して握りやすくなりました。
マキノ おっ、ここでいよいよ重心バランスの話が出てくるんですね。
重心バランスが整っているので、握ると安定したコントロールが得られます
きだて 筆記具は一般的に、低重心、つまりペン先側が重くなってるほうが書きやすいとされています。逆に、自分が握っている位置よりも高いところが重いと、先端がフラついて書きづらいし疲れやすい……って感覚はわかってもらえると思うんですが。
マキノ あー、はいはい。イメージはできます。
きだて ところが、じゃあペン先のほうを単に重くすればいいのかというと、そう単純でもないのが難しくて。先端だけが重いと、書くたびに重いのをブンブン振り回すことになるから、コントロールしづらい。
マキノ それはそれで、疲れちゃいそうだな。
きだて そこで、このペンは、グリップの中程まで金属製のオモリを埋め込んで、全体的にバランスを取りつつ、低重心化しているんです。
グリップを切断してみると、ここまで金属パーツが詰まっていました
マキノ 中はこんな感じなんだ!
きだて これによって、一般的な握り位置でピタッと重心が合うように設計されています。正しく握ったら、手にピタッと吸い付くように安定するんですよ。この感覚、ちょっと感動するよ。
マキノ うわー、そんなの聞いたら、めっちゃ握ってみたくなるじゃないですか!
きだて 長時間の筆記でも疲れにくいし、ペン先のコントロール性も抜群で。重心バランス、重要だなーと実感できますね。
★より詳しいレビュー記事はこちら!★
「重心」が実は重要! 色濃いボールペン「ユニボール ワン」が驚くほど持ちやすくなった
https://kakakumag.com/houseware/?id=17613
きだて 次は、シャープペンシルなんですけども、パイロットの「ドクターグリップ CL プレイバランス」という製品です。
マキノ この流れですから、当然、重心バランスがよいシャープなんですよね。
最適なバランスは、自分で決める! パイロット「ドクターグリップ CL プレイバランス」
きだて バランスがよいというか、その辺りを自分で調整できる機能が搭載されています。
マキノ 自分でバランス取るんだ!?
きだて ドクターグリップと言えば、このシリコン製の太いグリップが特徴ですが、ここが二重構造になっていまして。
マキノ ホントだ、なんか下に透けて見えていますね。
外グリップを外すと、内側にバランス調整用のパーツが並んでいます。これを組み合わせて、握りやすくカスタマイズ
きだて 従来のシリコングリップの内側には、パーツが3つ並んでいます。で、ズッシリとした金属パーツと、軽いシリコンパーツの2種類を組み合わせて配置することで、重心を調整するという仕組み。
マキノ ちなみにこれって、きだてさんがカスタムした状態?
きだて そうそう。シャープペンシルは重心が低すぎないほうが好みなので、いちばん下がシリコンで、2番目と3番目に金属パーツを選びました。全体的にズッシリ感で安定させつつ、ちょっと重心を高くしてみました。
マキノ あれ、さっきまでの「低重心がよい」って話はどこ行った?
きだて 重心の位置って、ペンの筆記角度に影響するんですよ。低重心だと、ペンの下のほうを握ることになるので、紙に対して立ち気味になる。重心が上がると、握るところも高くなるので、わりと寝かせ筆記になりやすい。
低重心(左)と高重心(右)で握る位置は変わります。それにしたがい、紙に対しての角度もこれだけ差が出ます
マキノ そうか、重心によって、握った時の角度も変わるんですね。
きだて で、シャープペンシルは、ボールペンよりもやや寝かせ気味にしたほうが書きやすいと思うんですよ。あくまでも個人的な好みですけど。なので、それに合わせたバランスを選んだというわけ。
マキノ じゃあ、好み次第では、金属3つとか、シリコン3つとかの並びでもいいんですよね。
きだて パーツは、各3つ付いてるので、もちろん思うように並べちゃってOKです。
マキノ この組み合わせって、何パターンあるんだ……?
きだて えーと、「金属3」と「シリコン3」、あと「金属2×シリコン1」が3パターン、「金属1×シリコン2」が3パターンだから、合計8パターンかな。それぞれ、握ってみると違いがわかりますよ。
パーツのセレクトによって、重心だけでなく、全体重量も大きく変わるので、どれが自分ベストか模索するのが楽しいです
マキノ その中から、自分の好みの重心バランスを探すの、大変そうな気が……。
きだて それもまた、楽しいんですけどね。まずは、自分が普段どういう角度でシャープペンシルを握っているのかを思い返して、そこにマッチするバランスを探っていくと、見つけやすいかも。
きだて 最後は、かなり特殊な筆記具なんですけど、管理職やグループリーダーが部下に指示出しするのに最適化されたサインペンです。
デイレクションワーカー向けの高級サインペン「フィラーレ ディレクション」(ゼブラ)
マキノ ん? 何かスゴい用途が限定された感じで、しかもサインペン? これが?
きだて ゼブラの「フィラーレ ディレクション」という、ツイスト式のサインペンです。立場的に上のほうの人が使うので、見た目も高級感ある金属軸で。
マキノ 確かに、高級感はありますね。見た目からはサインペンっぽさがまったく感じられませんけど。
きだて そうですね。サインペンって基本的にインクが乾きやすいので、密閉力の高いキャップ式が基本。ところがゼブラは、空気中の湿気を自ら吸収して乾燥を防ぐ「モイストキープインク」というサインペン用の特殊インクを持っているので、ツイスト式でも作れるんです。
マキノ インクが自分で湿気を吸収するって、スゴいな……。
きだて 元々は、ノック式サインペン「クリッカート」用に作られたインクなんですよ。
マキノ で、これは重心バランスがどうなっているんですか?
きだて かなり高重心で、普通に握るとめちゃくちゃ書きづらい。
マキノ ダメじゃん!
きだて 普通に握ると、ですよ。なので、重心バランスに合わせて握ると、こうなります。
重心的に握りやすい位置がここ。常識的に考えるとかなりの高重心
マキノ 軸のかなり上側をつまむ感じですね。特殊だな。
きだて たとえば会議中、資料に「こういう方針で仕事進めて」って指示書きを入れることってありますよね。
マキノ はいはい、ありますね。わかります。
きだて そういう場合、チマチマした小さい字で書くと目立たないし、指示がわかりづらいでしょ。なので、まずサインペンの太いクッキリした線がよい。さらに、ペンの上のほうを握ると、ペン先の可動域が広がるので、大きい字が書きやすいんですよ。
ペン先が大きく動くので、サラサラッと大きな字が書きやすい
マキノ おおー! 指示出しに最適って、そういうことか! 使い方に寄せて、わざと重心を高くしてあるのって、面白いですね
きだて あともうひとつ、クリップと中央のリングはシルバーを採用しているんですが、先端だけゴールドになっているの、わかりますか。
マキノ ホントだ。なんか、ちょっと違和感あるデザインですね。
きだて これにも、理由があるんですよ。WEB会議なんかで、資料のポイントをペンで指し示して話をすること、あるでしょ。その時に、先端の金色がめっちゃ目立つんですよ。つまり、指示棒代わりに使いやすい。
資料のポイントを指し示すのに、先端のゴールドがキラッと目立ちます
マキノ 本当に指示出し専用に作られているんだ! ニッチと言っていいのかわかんないけど、このこだわり方はスゴいな。
きだて ちなみに、専用の交換リフィルは黒と赤があるんですけど、実は先ほども言ったノック式の「クリッカート」とリフィルサイズが共通なんですよ。なので、「クリッカート」の36色からもインクが選んで使えます。
マキノ 指示出し用と考えると赤が売れそうですけど、いろんな色が使えるのはうれしいですね。何かスゴい興味出てきた。
マキノ うわー、今回のは、3製品ともちゃんと実際に触ってみたかったなー!
きだて ホントそれな。重心バランスって、握ってみないと判断しづらいから、伝えるのも難しいんだ。どれか買ってみたいようなの、ありました?
マキノ 「ユニボール ワン F」は確実に使ってみたいすね。
きだて マキノさん愛用の「ブレン」も低重心化されたペンではあるんですけど、たぶん「ユニボール ワン F」のほうが、握った時のバランスにもっと驚くと思うよ。
マキノ マジかー。自分の手にピタッとハマる感じを試してみてぇー。
きだて それ以外だと、どう?
マキノ 「フィラーレ ディレクション」も気にはなるんですよ。でも、今のところ使う機会があまりなさそうだしな〜、値も少々張るしな〜。
きだて でもね、ひとつの用途に特化した金属軸のサインペンっていう面白さは、体験してみてほしいんだよな。
マキノ うーん、どうしよう。欲しくなってきたなー。考えます。
今回は、どうしても「重心バランス」を自分の手で感じてみたくて、三菱鉛筆「ユニボール ワン F」の「0.38mm 消炭」と「0.5mm 葉雫」を自腹買い! 持った瞬間、手にピタッとハマるのが快感でした。なんだか、昔からずっと使い続けているボールペンのように、手になじみやす〜い。重量を計測してみたら、14gと一般的なボールペンよりも数g軽いだけなんですが、持ち比べてみると、やはりズシッと適度な重さが実感できました。そして、やはり「ユニボール ワン」シリーズ独特のインクの濃さが最高。白い紙にパキッと映える文字が書けます。この新体験、手帳や手書きメモを利用している人は、ぜひ味わってみてください!(マキノ)
最新機能系から雑貨系おもちゃ文具まで、何でも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は大手文房具店の企画広報として企業ノベルティの提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。