本連載は、文房具ライターのきだてたくが、「価格.comマガジン」の編集担当・マキノに、便利な文房具をリモートで必死にプレゼンする様子を実況。もし紹介された製品の中で「欲しい」と思うものがあったら、それをマキノは実際に購入!……という自腹買い企画です。
第10回は、「優秀な多色ボールペン&多機能ボールペン」をテーマに、3製品をプレゼン!
「価格.comマガジン」の編集担当・マキノ(左)に対し、文房具ライターのきだてたく(右)が、プレゼン!
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きだて 以前の記事でも「2021年はボールペンが大豊作だった」という話はしたと思うんですが……。
マキノ はい、確かにそう聞きましたね。優秀なモデルがいっぱい発売されたんですよね。
きだて そうそう。ただ、単に豊作というだけでなくて、珍しいことに、多色や多機能(多色+シャープペンシル)ボールペンからも面白い製品がいろいろと発売されて。
マキノ ん? どういうことです?
きだて ボールペンと言えば、やはり業界的に花形なのは単色のボールペンなんですよ。対して、多色/多機能ボールペンはちょっと目立たない立場というか、あまり注目されていない。なので、多色まで豊作というのは、すごく珍しいことなんですね。
マキノ へー! でも、言われてみたら、話題になるのは単色のボールペンばっかりかも。
きだて でも、マキノさんの今のメイン筆記具は、ゼブラの「ブレン2+S」でしたよね。
マキノ そう、この連載の第1回で紹介してもらったヤツ。確かあの時も、多機能ボールペンを紹介するって話でした。
きだて あれから1年経たないうちに、またスゴいのが出ているわけですよ。
きだて まず、ゲルボールペンの多色タイプです。3色タイプの「ジュースアップ3」と、4色タイプの「ジュースアップ4」。
ファン待望の多色化を果たしたパイロット「ジュースアップ3」と「ジュースアップ4」。どちらも、ボール径は0.4mm
マキノ 「ジュースアップ」って聞いたことあるな。
きだて パイロットのゲルインクボールペンなんですが、これ、元々めちゃくちゃ人気が高いやつで。ペン先に、特殊な形状の「シナジーチップ」を搭載していて、すごく書きやすい。
マキノ 「シナジーチップ」……? あまりペン先がどうこうって考えたことないんですけど、優秀なんですか?
きだて 先端が細いパイプ状なので、小さな字がすごく書きやすい。それに加え、インクがたっぷり出るので、めっちゃサラサラと気持ちよく書ける。ゲルボールペンの中では、トップクラスに優秀だと思います。
細いペン先ながら、インクがたっぷりと出る独自の「シナジーチップ」を搭載
マキノ へー! それで今回は、その多色タイプが出たってことですね。
きだて そういうこと。単色タイプの「ジュースアップ」の人気を考えると、当然ながら、多色タイプを待っていたファンもかなり多かったんじゃないかな、と。
マキノ あれ? 今、きだてさんが持っているのが単色タイプですよね? さっきの3色タイプとほとんど同じ細さに見えたんですけども。
きだて うん。実は、3色タイプのほうが、0.2mmだけ太いんですけど、まぁ、ほぼ同じ太さと言っていいよね。パイロットは、以前からスリムな多色タイプを作るのが上手なんですが、それにしたって、これは細い。4色タイプでもそんなに変わらないし。
並べて比較しても、単色タイプと3色タイプの軸径は、ほぼ違いがわからないレベル。4色タイプも「ちょい太い……かな?」ぐらい
マキノ スゴいなー。ちゃんと中にリフィルは3本とか4本入ってるんですよね。
きだて そりゃ多色タイプだから入っていますよ(笑)。手帳に書き込む時って、黒だけじゃなくて、ほかの色も使いたいですよね。プライベートは青で書いたり、リスケしたものは赤で書いたり。
マキノ そうですね。多色タイプだと、“自分ルール”で書き方を決めて見やすく仕上げられますよね。
きだて だけど、軸が太い多色ボールペンは、手帳のペンホルダーに挿さらないことがあるんですよ。だから、軸が細い多色タイプはそれだけでも価値がある。
マキノ 軸が細いのって、見た目とか握り具合だけじゃなくて、そういうメリットもあるんだ。それでさらに書きやすいんだったら、言うことなしじゃないですか。
書きやすい、携帯しやすい、多色が使えると、基本的にはメリットだらけの優秀さです
きだて いやー、実は……、ひとつだけ欠点というか、注意するポイントがあって。さっき、「シナジーチップ」はインクがたっぷり出るって話をしたでしょ。多色タイプの細いリフィルだから、中のインクがあっという間になくなっちゃうんだよね。
マキノ あっ、そうか。言われてみたら、そうですよね。
きだて なので、がっつり使うつもりなら、替えの予備リフィルは持ち歩いたほうが安心。でも、このたっぷりインクのサラサラ書き味に1度慣れちゃうと、替えのリフィルぐらいしょうがないか、とも思っちゃう。ほんと、優秀です。
きだて 次は、油性ボールペンの多色タイプを紹介しましょう。おなじみ三菱鉛筆「ジェットストリーム」の3色タイプ「ジェットストリーム 新3色ボールペン」です。
ノック部分が特徴的な三菱鉛筆「ジェットストリーム 新3色ボールペン」
マキノ 「ジェットストリーム」って、今までにも多色タイプはラインアップされていましたよね?
きだて もちろん出ています。なので、今回のは、製品名も「新3色ボールペン」なんですが……、どこが新かというと、このノック部分を見てください。
マキノ ん〜、普通に見えるんですけど……あれ? なんで多色タイプなのに、上にもノックが付いているんですか?
きだて そう! それ!!
単色タイプと同じ仕様のノックボタン(黒)+多色タイプのスライドノック(赤/青)という、これまでにない不思議な組み合わせ
きだて 多色タイプって、軸の側面にスライド式のノックが色の数だけ付いてるのが普通ですよね。なんだけど、この「新3色ボールペン」は、黒だけを単色タイプと同じノックボタンで出し入れするんですよ。
マキノ ははーん、なるほど、わかりましたよ。多色タイプとはいえ、どうせ基本的には黒を使うでしょ?みたいな。
きだて だって実際にそうじゃん。メインで使うのは黒でしょ。だから、黒ノックだけは使いやすいノックボタンがいい。
マキノ 言われてみたら、確かにそうですよね。
きだて 従来の多色タイプのスライドノックだと、いちいちノックの色を確認してから押さなきゃいけないでしょ。それが面倒くさい。このノックボタンなら、黒がノールック&1発で出せる。
当然、多用する黒が最速で書き出せるから、筆記効率はとても高いです
マキノ それは絶対に便利だわ。筆箱から取り出して書き出すまでのタイムが、確実に速そう。今までにこんな仕組みの多色ボールペンってありました?
きだて いやー、ないですよ。さらに面白いのが、黒のノックボタンと、赤・青スライドノックがちゃんと連動しているんです。たとえば、黒を出している状態で赤を出すと、ちゃんと黒が戻って赤が出る。当然、逆もしかり。
マキノ いや、そうじゃなきゃ使いづらいでしょ。
きだて もちろんそうなんだけど、単色用のノックボタンと、多色用のスライドノックって、動く機構がまったく別物なんですよ。だから、これを連動させるように作るのって、相当に面倒くさいはずなんだけど。
マキノ そうか、使う側からしたら当然だけど、作る側は大変なんだ。
きだて あと、もうひとつ。この「新3色ボールペン」の発売と同時に、ジェットストリーム多色用の黒リフィルとして「長持ちリフィル」というのが出ました。なんと、サイズは従来と同じなのに、インク容量が70%アップ!
チューブを薄くした新型の「長持ちリフィル」は、インク容量が従来の1.7倍!
マキノ えーっ! 70%アップって、ものすごい増えているじゃないですか。どういうやり方をしているんですか?
きだて リフィルのチューブを薄く作ることで、たっぷりインクを詰め込めるようになってるんですよ。
マキノ 黒が出しやすい軸に、たっぷり書ける黒インクリフィルって、最高の組み合わせだなー。
きだて ラストは、面白い機能を持った多色と多機能のボールペンを紹介。ぺんてる「Calme」の3色タイプと、2色+シャープの多機能タイプです。
マキノ 面白い機能ってのが気になるけど、何なんですか?
静音設計によって、ノック音が静かなぺんてる「Calme 3」と「Calme 2・S」
きだて 「Calme(カルム)」シリーズは、単色、多色、多機能とラインアップされているんですが、どれもノック機構に工夫があって、なんとノック音が従来モデルから66%カットという静音設計のボールペンなんですよ。
マキノ 英語で「Calm down」って言うと、「落ち着く」とか「静まる」って意味だから、そこから付いた名前なのかな。
きだて ほら、静かなオフィスで仕事している時、近くの席でボーッとしながらノックだけカチカチ鳴らしている人とか、いるでしょう。あれ、ウザくないですか(笑)。
マキノ あー、あれ、響くんですよね。確かにちょっと気になるかも。でも、ノック音ってどうやって静かにしているんですか?
きだて 単色タイプと多機能タイプのノック音って、スライドノックが戻る時に軸後端にカチン!と突き当たる音なんですよ。つまり、戻って当たる時の衝撃をやわらげてやればいいので、中にクッション材を内蔵しています。
軸後端に内蔵したクッション材が、ノックが戻る時の衝撃を吸収。ノック音を66%カットします
マキノ はー、そういう理屈なんですか。なんか、ランニングシューズの話を聞いているみたいですけども。それで、ちゃんと静かになるんですか?
きだて ちょっとノックし比べてみましょうか。こっちが普通の多色タイプで……、こっちが「Calme」。
マキノ あはははは、ホントだー(笑)! まったくの無音というわけではないけれど、でもかなりささやかな音ですね。「カッチン!」 ではなくて、「コッ…」みたいな。
きだて ね、まさにそんな感じ。
マキノ なんかボールペンが、とても遠慮がちに音を出している感じ。
きだて 実のところ、メーカー的には、もうちょっと静かに作ることもできたそうなんですけど、完全に音がないとクリック感もなくなってしまい、使う側が気持ち悪く感じちゃうらしくて。なので、わざと静音性は66%カットに留めているそうです。
新リフィルで書き味も大幅に向上。これは書きやすい!
マキノ そういうもんなんですか〜。でも、言われてみればそうかもしれないですね。音がないと、何か変な感じというか。でも「Calme」のこの音って、人の耳に入っても不快感が少ない音ですよね。
きだて あと、インクはぺんてるの低粘度油性インク「ビクーニャ」の多色用リフィルを搭載しているんですが、これも実は、「Calme」発売と同時にリニューアルしています。
マキノ 「ジェットストリーム」だけじゃなくて、こっちも!
きだて これまでの「ビクーニャ」リフィルって、超低粘度の油性インクがたっぷり出るので、ヌルヌルし過ぎて書きづらさを感じる人も多かったんですよ。それがリニューアルによって、インクフローが最適化されたことで、ジャストな書き味に調整されました。
皮シボ風の加工を施したロンググリップは、摩擦力が強く、安定して握れるのもポイント
マキノ おっ、いいじゃないですか。じゃあ、かなり書きやすいんですね。
きだて ペン先にインクが溜まるボテ汚れも大幅に減ったし、静かなだけじゃなくて、書きやすいペンとしてもおすすめできます。グリップも握りやすいし。
★「Calme」の詳細なレビューはこちら!
ノック音が超静か! 周囲に迷惑をかけないボールペン「カルム」は書き心地も抜群だった
https://kakakumag.com/houseware/?id=17955
マキノ わー、今回もまた気になるモデルばかりで、全部使ってみたいな。
きだて いいですね、全部いきますか。
マキノ いっちゃうかなー。「Calme」の静かさと新しいヌルヌル感は気になるし、「ジェットストリーム 新3色ボールペン」と「ジュースアップ多色」は普通に使いやすそうですもんね。
きだて どれも大体500円〜600円ってところで、多色/多機能タイプとしては、お値段も普通ですね。これぐらいなら、試しに全部買っちゃってもいいと思うよ。
マキノ うーん、3本いっちゃおうかなー。ちょっと考えます。
どれも気になり過ぎて、結局3本すべてを自腹買い! 「ジュースアップ3」は、0.4mmなのにサラサラ書けるのはもちろん、3色タイプなのにこの軸の細さには驚くばかり。「ジェットストリーム 新3色ボールペン」は、黒が使いやすく、書き味の安定感もさすがのひと言。「Calme 2・S」は、スライドノックを戻す時の音が低くて静かめなのが好印象。書き味も問題なかったです。印象としては、配送伝票や手帳に書き込む時は「ジュースアップ3」、メモをサクサク取りたい時は「ジェットストリーム 新3色ボールペン」、公共の場で書き物をする時は「Calme 2・S」という感じ。とはいえ、取材に行く時、どれを持っていくか悩む〜!
最新機能系から雑貨系おもちゃ文具まで、何でも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は大手文房具店の企画広報として企業ノベルティの提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。