本連載は、文房具ライターのきだてたくが、「価格.comマガジン」の編集担当者に、便利な文房具をリモートで必死にプレゼンする様子を実況。もし紹介された製品の中で「欲しい」と思うものがあったら、それを編集担当者が実際に購入! ……という自腹買い企画です。
第27回は、「高機能な蛍光マーカー」をテーマに、3製品をプレゼン!
「価格.comマガジン」の編集担当・マキノ(左)に対し、文房具ライターのきだてたく(右)が、プレゼン!
今回は蛍光マーカーを紹介しようかなと思うんですけども
おっ、いいすね!
妙に前のめりですね。実は蛍光マーカーって語るのがなかなかに難しいジャンルなんで、ちょっと後回しにしていたんですけども
ん? どうして難しいんですか?
インクの貯蔵方式とか、チップの構造とか硬さ、インク色とか、語るべきところがかなりあって。ボールペンやシャーペンと比べても、パラメーターが多い気がするんですよね
なるほど、選ぶにしても考える要素が多いってことか
そう、1つひとつ語っているとキリがないんです。さらにここ10年ぐらいで、特殊機能を持った製品もあれこれ出ていますし。とか言って後に回している間に、この連載ももう第27回なんですが……
結構経ちましたね(笑)。でもタイムリーなことに、ちょうど蛍光マーカーが欲しいと思っていたところだったんですよ
ああ、それで前のめりだったんだ。しかし、何でまた?
うーん、僕、今までボーッと生きてきたんでしょうね……。紙の資料を読み込むときに、蛍光マーカーでハイライト入れていくと、やっぱりわかりやすいなーって先日改めて気づきまして
いや、それはむしろよく気づきましたよ。蛍光マーカーの便利さに死ぬまで気づかない人だっているんだから
紙の資料から情報を抽出するのに、ハイライトを入れるのってめちゃくちゃ重要なんですよね。なので、おすすめの蛍光マーカーを教えてください
わかりました。今回は、ちょっと前の製品だけどいまだにスゴい蛍光マーカーとか、最新の面白いヤツとか、いい感じの3製品を紹介しますよ
「ちょっと前の製品だけどいまだにスゴい」ってのが気になりますね
じゃあそこからいきましょうか。三菱鉛筆の「プロパス・ウインドウ クイックドライ」です
あっ、「プロパス・ウインドウ」! それは知っていますよ!
初期モデルが発売されたのが2000年ですから、もう23年前の製品ですね。だけど、これが僕の“オールタイム・ベスト”な蛍光マーカーなんですよ。ずーっとペンケースのレギュラーメンバーです
いまだにファンの多い「プロパス・ウインドウ」シリーズの速乾モデル(三菱鉛筆)
チップに透明の窓が付いていて、ペン先の当たっているところが見えるんですよね?
そうそう。蛍光マーカーのチップって、ボールペンとかよりはるかに太いので、ペン先周りが見えづらい。だから、本来の狙いよりラインが行き過ぎたり、引き足りなかったりしやすい
ありますね。わかる
透明窓があればチップの向こう側が丸見えなので、ラインをどこまで引けばいいのかが把握しやすい。過不足なくピタッと引ける蛍光マーカーって、ほかにないんですよね
チップの透明窓で文字の向こう側が見えるので、「ここでラインを止めたい」というポイントもよく見えます
発売からずいぶん経つのに、ほかにペン先が見える蛍光マーカーって出てないんですか
同じ三菱鉛筆の製品なら、一時期ちょっと出ていましたけど、今は「プロパス・ウインドウ」だけですね。で、そのバージョンアップ版とも言うべきなのが、2015年に発売されたこの「プロパス・ウインドウ クイックドライ」というわけです
「クイックドライ」ということは、速乾インクを積んでいるってことですか
そう。その名のとおり、「Q-Dry(クイックドライ)インク」という速乾インクを採用しているんですが、これめちゃくちゃ優秀なんです。いまだに「蛍光マーカー最強」と言える速乾性能なんですよ
いまだに!
蛍光マーカーって太いチップからインクをたっぷり出すので、どうしても乾きづらいんですよね。なので、ラインを引いた直後にこすっちゃうと、スレ汚れができちゃう
なりがちですね。手も汚れるし
「Q-Dryインク」は同社従来品の3倍の速乾性能をうたっているんですが、実際、ラインを引いて1秒以内には乾いちゃうんです。これを使っていてスレ汚れが発生したこと、ほぼないですよ
ラインを引いたあとにこすった様子の比較。「Q-Dryインク」でスレ汚れはほぼ発生しません
本当にあっという間に乾くので、これに慣れちゃうと大変ですよ
大変って、どういうことですか?
使っているうちに「蛍光マーカーはインクがなかなか乾かない」という概念そのものを忘れちゃうの。だから、たまにほかの蛍光マーカーを使うと、うっかりこすって汚しちゃう率がすごく高くなる
そんなにかー。そう考えるとすごい性能ですよね
次は新しい蛍光マーカーを紹介しましょうか。コクヨが「KOKUYO ME(コクヨミー)」っていうブランドを展開しているの、ご存じですか?
知ってはいますけど。でも、蛍光マーカーのブランドでしたっけ?
いえ、蛍光マーカーに限らず、テープのりとかノートとかハサミとか、コクヨの既存製品をおしゃれカラーにしたブランドなんですよ。トレンドカラーを使うので、毎年新製品が出るんです。で、そのなかで2023年カラーの蛍光マーカーが「KOKUYO ME 2ウェイマーキングペン」として発売されています
トレンドカラーが反映されているKOKUYO MEシリーズから登場した「2ウェイマーキングペン」の2023年バージョン(コクヨ)
あら、おっしゃれー! 何ですか、このステキカラーは。蛍光ではないですよね
そうね、「マーキングペン」という言い方になりますね。マキノさんはまだ体感してないかもだけど、50代の弱ってきた目には蛍光カラーがキツく感じるときがあるんだよ
あー、はいはい、そうらしいですね。僕はまだ大丈夫ですけども
明るい色が目に飛び込んでくると、それだけでチカチカして疲れるんだ。目立たせるためにハイライトしているのに、逆に目を背けちゃう
逆効果なんだ(笑)
だけど「KOKUYO ME 2ウェイマーキングペン」のこの色は、すごい落ち着いてるでしょ。目も全然痛くならないですよ
うん、いい色ですね。グレーっぽい「ダスティオリーブ」なんか絶妙な雰囲気でいいな
蛍光カラーのようにチカチカせず、それでいてきちんと主張のある独特のカラー
たとえばExcelのセルの背景に色を付けるとき、別に蛍光的な明るい色じゃなくて、地味な落ち着いた色でも十分に目を引くでしょ? こういうのでいいんですよ
地の色に対して差を付けられれば十分なんですよね。文字のじゃまにならないぐらいの色のほうが、かえってありがたいというか
そう。あと2023年版の「KOKUYO ME 2ウェイマーキングペン」の色は彩度が低めなので、白い紙に色を載せると「目は引くけど文字は読みやすい」という、なかなか絶妙な感じなんだ
うん、なんかわかりますよ
2022年版はもう少しアッサリした色だったんですけど、2023年版はちょっとエネルギッシュ寄りというか、元気のいい雰囲気になりましたね
「2ウェイマーキングペン」って、太字と細字の2種類のペン先が付いているんですよね。今公式サイトを見たら、それぞれインクの色が異なるってあるんですけど、どういうこと?
同系色で統一されてはいるんですけど、細字のほうがちょっと濃い色になっています。薄めの色の太字は文章にラインを引くのに使えて、濃いめの色の細字は文字を書き込むのに使えるんだ
細字のペン先は、0.3mmの極細径を採用。ラインを引いた部分への注釈やコメントなども書き込みしやすいです
へー! じゃあ、1本の軸の中に2色のインクが入っているってことですか?
そう。中綿式といって、圧縮した脱脂綿みたいなのにインクを吸わせた状態で軸に詰めておく方式なんですが、「2ウェイマーキングペン」は軸内に仕切りを設けていて、別々のインクが入っています
細字で濃く書けるなら、ボールペンを別で用意する必要もなくなるなー。ぜんぶいい色だし、4色セットで欲しいかな
さて、今回最大の問題児というか、インパクト最強の蛍光マーカーを最後に紹介しておきますよ
また気になる言い方をするなぁ
エポックケミカル「ゴツ盛りインクの蛍光ペン」です
「ゴツ盛りインク」……ネーミングの迫力がまず強いな
名前だけで製品コンセプトが9割ぐらい理解できる「ゴツ盛りインクの蛍光ペン」(エポックケミカル)
こちらは直液式と言いまして、綿に吸わせるんじゃなくて、液体のインクを直接に軸に詰める方式なんです。ぶっとい透明軸に、インクがたっぷたぷに入っているのが見えますよね
えええ……こんな量のインクが入っているマーカーって見たことないですよ
うん、僕も見たことないです
極太軸には液体インクが驚くほどたっぷり。こんな蛍光マーカーはほかにありません
一般的な直液式マーカーペンの6倍のインク量だそうで
あー、それは間違いなく「ゴツ盛りインク」ですね
このインク量こそが最大にして唯一の特徴です。普通の蛍光マーカーはインクが切れるまでに約80mのラインが引けるんですが、これは約570mまで書ける。メーカーは「高尾山(標高599m/※)ぐらい書けます」とアピールしていますね
高尾山!(笑)
※:東京都八王子市に属する、標高599mの山。多彩な登山コースが用意されているうえ、最寄り駅の京王線・高尾山口駅は新宿駅から最短47分でアクセスでき、“都心から日帰りでハイキングや登山を楽しめる山”として知られています
中綿式と比べて直液式のメリットというと、まずインク残量が目で見えるってところ。蛍光マーカーって書いているうちに気づくとチップが乾いてカッスカスになってるじゃないですか
はいはい、ありますね
直液式は残りインクが見えているので、そろそろ交換かな? というタイミングが一目瞭然です。僕は書こうとして紙の上でカスーッてなる手触りが大嫌いなんで、これはすごく大事
というか、これだけインクが入っていたら、当分はカスーッてならないでしょ
あと、直液式はバルブを通してチップにインクを供給できるんです。なので、ちょっとチップが乾いてきたかな? と思ったら、チップを紙に当ててグッ、グッと何度か押し込めば、インクがビッシャビシャに出てきます
多少ラインを引いたぐらいでは、インクが減った気が全然しません
ちなみに、これって1本のお値段はおいくらぐらいなんですか?
実売価格だと、今(2023年7月時点)は370円ちょっとかな。一般的な直液式のマーカーペンが100円から200円の間ぐらいなので、インク量6倍に対して価格は2〜3倍って感じ
なるほど、コスパはすごく高いですね
あと、蛍光マーカーって、固いキャップを無理して開けようとすると、勢いづいてインクが手に付くことがあるじゃないですか
マーカー系の“あるある”ですよね
「ゴツ盛りインクの蛍光ペン」はキャップに工夫があって、軽く反時計回りにひねってやるだけで、簡単にスッと開きます。これはなかなかよく考えられた仕組みですよ
軽くひねるだけで、キャップが浮き上がるように開きます。外れないキャップにイライラすることなく、快適です
インク量一点突破かと思ったら、意外と繊細な工夫があった!
巨漢のコワモテおじさんが実は野良猫を拾って育てていた、みたいな話ですかね
いやー……今回は気になっていたジャンルだけに、特にいいですね。どれも使ってみたい気がする
まぁ、マキノさんはこれから蛍光マーカーをちゃんと使っていこうって段階だからね。全部買って、自分に合った蛍光マーカーを探すところから始めるのがいいかもよ
うーん、それはそうかも。「プロパス・ウインドウ クイックドライ」の機能性はすごいし、「KOKUYO ME 2ウェイマーキングペン」は色がおしゃれだし
「ゴツ盛りインクの蛍光ペン」は野良猫を拾って育てているギャップがあるしね
そのたとえ、本当に合っています!?(笑)
いやでも、「ゴツ盛りインク」の暴力的なビシャビシャ感も味わってほしいんだー。楽しいですよー! コスパも最高だし
うーん、楽しそうなのはわかる。ちょっと考えます
マキノ、やっちゃいました……。間違えて、2022年版の「KOKUYO ME 2ウェイマーキングペン」を買っちゃいました……ま、いっか! 太字はソフトカラーのピンク、グリーン、イエロー、グレーで、細字は各色にグレーを混ぜた色合い。どの色もやさしい色で、最初はちょっと薄いかなという印象でしたが、マーキングした資料を後から見直してみると、色付けしたポイントや補足メモはしっかり目に入ってきました。でも、目にやさしくチカチカしない! とりあえずピンクを一軍に追加。次の取材が楽しみです