ゲーミングPCと言えば、タワー型のデスクトップパソコンや、17型や15型クラスの大型のノートパソコンが主流だ。高性能なパーツを搭載するため、冷却性能が高く、スペースに余裕のある大きなボディが欠かせないのはわかるが、気軽にゲームをはじめたい人にとってはハードルが少々高い。気軽にゲームをはじめたいという注目してほしいのがデルの「ALIENWARE 13」だ。13.3型のディスプレイを搭載するコンパクトなゲーミングノートPCだが、モデルによってはVR(仮想現実)に対応する高性能なモデルだ。直販価格は141,980円(税別、送料込み)からと、ゲーミングノートPCとしては比較的お得なのもポイント。今回は有機ELディスプレイを搭載する最上位モデル「ALIENWARE 13 OLED VR」をレビューしたい。
13.3型の有機ELディスプレイを搭載するALIENWARE 13 OLED VR。直販価格は239,980円(税別、送料込み)
ALIENWARE 13 OLED VRは、13.3型の有機ELディスプレイを搭載するゲーミングノートPC。コンパクトなボディに、最新の「Core i7-7700HQ」と「GeForce GTX 1060」という高性能なパーツを搭載しているのが特徴だ。描画性能は、「GeForce GTX 960M」を搭載していた前モデルよりも最大5倍アップしているという。
最上位モデルである本モデルは、ノートパソコンとしては珍しい有機ELディスプレイを採用しているのもポイント。有機ELは液晶と違い、バックライトの光が漏れないため、いわゆる“黒浮き”がない。たとえば、夜景などは、黒が締まり、町の明かりもクリアに見える。暗いシーンの多いゲームもコントラスト豊かに再現できるのだ。赤や緑なども鮮やかな表示で、気になる明るさも公称400ニットと必要十分に感じられた。ゲームだけはでなく、写真や映像を見るのにも適している。また、視野角が広く、格闘ゲームなど複数人でゲームを楽しむときにもよさそうだ。ただし、グレア(光沢)タイプなので、映り込みは少々気になる。なお、有機ELで気になる焼き付きに関しては、「Tobii アイトラッキング」を使い、正面にユーザーがいないときに画面を積極的にオフにすることで対処している。
鮮やかで広視野角の有機ELディスプレイだが、FPSゲームをプレイする人に話を聞くと、FPSには向いていないという。その理由は、垂直リフレッシュレートが60Hzで、NVIDIAの「Fast Sync」が使えないため。FPSユーザーは、垂直リフレッシュレートが120Hzクラスのディスプレイを使うのが一般化しており、ノートパソコンとはいえ60Hzに戻るのは難しいのだという。画像処理が追い付かず、映像が歪んで見えたりやちらついて見えたりするテアリングを防ぐFast Syncも、本モデルではサポートされておらず、本気のFPSプレイには向いていないという。
2560×1440の13.3型有機ELディスプレイを搭載。黒が締って見えるので、夜景の写真も非常にキレイに表示される。ゲームだけでなく写真の編集や動画の視聴にも最適なディスプレイだ
実機を使って感じたのが視野角の広さ。グレアタイプで蛍光灯の光りが反射するときはあるが、斜めから見ても空の紫色のグラデーションがしっかりと確認できた
Tobii アイトラッキングにより、ユーザーが正面にいないときに画面をオフにすることで、焼き付きを防いでくれる
本体は「ALIENWARE」シリーズらしい、インパクトのあるデザインだ。天板にはイメージキャラクターのバッジが埋め込まれている。イルミネーションは控えめだが、キーボードとタッチパッドの色はカスタマイズ可能。天板のバッジ部分も光り、その色も調整できる。構造面では、ヒンジの位置を一番後ろではなく、少し手前に設けることで、冷却性能を高めている。後ろに吸排気口を設けることで、ユーザーに不快な熱を感じさせないようになっているのもポイント。本体サイズは330(幅)×269(奥行)×24(高さ)mm、重量は約2.6kg。一般的なモバイルノートと比べると、厚みがあって重いため持ち歩くのは苦労したが、ゲーミングノートPCと考えればコンパクトで軽量だ。
派手なデザインに目がいきがちだが、使い勝手がいいのも本モデルの特徴だ。キーボードは、キーストロークは実測2mm、キーピッチも実測1.8mmを確保。打鍵感も軽すぎず、重すぎず、絶妙な強さで、気持ちよくタイピングできる。タッチパッドの面積も広く、左右ボタンが独立しているクリックボタンも大きくて打ちやすい。普通のノートパソコンとして見た場合でも、キーボードとタッチパッドの完成度は高いと感じた。
基本的なデザインはほかのALIENWAREシリーズのノートパソコンと共通だ。エイリアンのバッジは光る仕様で、色のカスタマイズができる
素早く細かなキー操作が必要なタイトルのために、キーボードにもこだわっている。キーストロークは実測2mm、キーピッチは実測1.8mm。強めにタイピングしてもたわむことはない
キーボードのイルミネーションは、4つのゾーンで色を変えられる
「ALIENWARE Command Center」でキーボードなどのイルミネーションを管理できる。電源管理ツールやパフォーマンスを監視するツールなども備える
内蔵スピーカーの音は不満のないレベルだが、ヘッドホンを使えばバーチャルサラウンドで、より立体感のある音を楽しめる。画像は音質調整ツールの「ALIENWARE SOUND CENTER」
サウンドトラッカーも備える
外部インターフェイスは、USB 3.0のType-AとType-CポートやThunderbolt 3ポートなど、豊富な端子を備える。映像出力はHDMI 2.0とMini DisplayPort1.2の2系統を搭載。別売の外付けグラフィック「ALIENWARE Graphics Amplifier」を接続するための専用端子も背面に備える。コンパクトなボディだが外部インターフェイスは数、種類ともに充実している。
左側面にUSB 3.0 Type-Aと音声入力、音声出力(どちらも3.5mm)を搭載する
右側面には、USB 3.0 Type-CとUSB 3.0 Type-A
背面に有線LAN、Mini DisplayPort1.2、HDMI2.0、Thunderbolt 3、ALIENWARE Graphics Amplifier接続用ポート、電源端子を備える
ACアダプターは定格180W出力。さすがに大きくて重い
最後にスペックをチェックしていきたい。CPUに4コア8スレッドのCore i7-7700HQ(2.80GHz、最大3.80GHz)を、GPUにVRもサポートするGeForce GTX 1060(6GB GDDR5)を搭載する。メモリーはPC4-17000 DDR4 SDRAM 8GB×2、ストレージは512GBのSSD(NVMe M.2接続、レビュー機材は東芝の「THNSN5512GPUK」だった)。ストレージは個体によって差があるので参考までに。
GeForce GTX 1060は、ミドルレンジ向けのGPUだが、「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド ベンチマーク」や「ファンタシースターオンライン2」といった国内タイトルは、最高画質でも楽しめる。海外タイトルも「オーバーウォッチ」や「グランド・セフト・オート5」などは、推奨スペックを満たしている。最新ゲームを最高画質で楽しむのは難しいかもしれないが、解像度や画質を落とせば、多くのゲームを楽しめるはずだ。
今回試したALIENWARE 13 OLED VRのハードウェア情報(「HWiNFO64」で調べたもの)
定番のFuturemark「3DMark」(一部)の結果。DirectX11とフルHD環境での性能を測る「Fire Strike」(右上)のスコアは9577と上々の結果だ
パソコンの総合性能を測定するFuturemark「PCMark 8 Professional」(Home accelerated)の結果。ゲーム以外の用途でも快適に使える性能だ
「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド ベンチマーク」は、2560×1440の最高品質でも「とても快適」という評価だった
「ファンタシースターオンライン2」の公式ベンチマークでも「快適に動作すると思われます」という結果を得られた
「Oculus Rift」が動作するかどうかを調べられる公式ツールでチェックしてみたところ、必要な性能は満たしていた
ALIENWARE 13 OLED VRは、有機ELによる高画質な映像でゲームを楽しめる、コンパクトなゲーミングノートPCだ。GeForce GTX 1060を搭載しており、国内の主要なタイトルは問題なく楽しめそうだ。より快適さを求めるなら、デスクトップパソコンのほうが適しているが、入り口のモデルとしては悪くない選択肢ではないだろうか。ゲームだけでなく、写真や動画の編集など、クリエイティブな用途もこなせるはずだ。
ただし、約25万円の有機ELディスプレイを搭載するALIENWARE 13 OLED VRは予算に余裕がある人向けだ。エントリー向けの「スタンダード」と「プレミアム」は、価格は安いが画面の解像度が1366×768となる。価格と性能のバランスを考えると、フルHD(1920×1080)の「 プラチナ」(直販価格は税別172,980円、送料込み)が最有力になるだろう。