連載
連載PDA博物館 携帯電話研究家・山根博士

“日本一携帯電話に詳しい男”山根博士が描くモバイルの未来予想図

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これまでの連載の中で「PDAとスマートフォンの違い」について考察してきたが、山根博士は「PDAとスマートフォン? 同じですよ。違いはSIMが入っているかどうかだけ」と断言。さらに「僕が興味を持つのは、SIMが入っているものだけ。ネットに接続されていなければ意味がない」と続ける。

成熟したスマートフォンの未来には何があるのか――そのヒントを探るこの連載、インタビュー第6回に登場するのは、所有している携帯電話が1500台、SIMが 500枚という携帯電話コレクターとしても知られているライターの山根康宏さん、別名・山根博士。“日本一携帯電話に詳しい男”が見るモバイルの未来とは?(※聞き手=PDA博物館初代館長 マイカ・井上真花)

山根康宏氏、またの名を「山根博士」。香港在住20年。最新端末情報から怪しいグッズ、海外で便利なサービスなど、世界のモバイル情報に造詣が深い携帯研究家。携帯電話(スマートフォン)のコレクターで、所有している携帯電話は1500台、SIMカードは500枚にのぼる

香港で「Psion(サイオン)」と出会う

――山根さんといえば携帯電話のイメージですが、PDAは使われていましたか?

はい、PDAは好きでしたよ。「リブレット」(東芝)、「ザウルス」(シャープ)、「カシオペア」(カシオ計算機)、「シグマリオン」(NTTドコモ)、「ラピュータ」(セイコーインスツルメンツ)あたりを使っていました。その中で一番印象的なデバイスは、キーボード付き端末の「Psion(サイオン)」ですね。

Psionと出会ったのは、駐在員として香港に赴任した1998年でした。

初めて見た時は、「こんなに美しいPDAがあるのか」と衝撃を受けました。当時のPsionは日本語が使えませんでしたが、僕にとってはたいした問題ではなかった。むしろ、日本語が使えないという逆境に燃えました(笑)。もし本が読みたければ、本を画像にして画像を表示すればいい。そんな風に工夫して使うのが、とても楽しかったんです。

携帯電話が好きになったのも、香港。当時、日本の携帯電話はどれもシルバーで正直、デザインはぱっとしませんでした。しかし、香港の携帯電話はとてもかっこよかったんです。最初に使ったエリクソンの携帯電話は、まるで北欧の家具のようなデザインでした。2台目に買ったノキア製はカバーが変えられるというもので、それが楽しくて、毎日カバーを変えていました。

そこで、香港の携帯電話事情を日本に伝えようと、「香港携帯情報局」というサイトを作りました。そして気が付けば、ノキアにハマり、海外ではスマートフォンが登場。それからは年間100台というペースで買い続け、現在は1500台の携帯電話を所有しています。

衝撃を受けたPsionとの出会いなど、当時の思い出を笑顔で語ってくれた山根氏

衝撃を受けたPsionとの出会いなど、当時の思い出を笑顔で語ってくれた山根氏

――香港では、そんなに気軽に携帯電話が変えられるんですか。

はい。今使っている携帯電話を下取りに出し、その差額で新しい携帯電話を買う。車を買い換える感覚で気軽に変えられます。

香港では、携帯電話の販売店の前に、端末を買い取る人が立っていて、箱やマニュアルがなくても、その場で買い取ってくれるんです。相場より少し安いんですが、その場で変えられるので面倒がなくていい。日本では、そんなに気軽に変えられませんよね。あと、日本では会社用とプライベート用の携帯電話を使い分けるのが一般的ですが、それも面倒ですよね。個人情報の漏えいを心配してのことだと思いますが、不自由だと感じました。

山根氏がPDAに求めたものとは

――PDAはどのように使っていたのですか。

最初からコミュニケーションツールとして使っていました。PDAは「パーソナル・デジタル・アシスタント」の略だと言いますが、僕はそれほど、個人情報を管理しようとは思わなかった。

そんなわけで、今もスマートフォンで個人情報を管理する習慣はありません。たとえば連絡先ですが、特に住所録に登録するようなことはなく、Gmailを使って「名前」と「090」で検索し、相手の電話番号を見つけます。アプリ自体もあまりインストールしていなくて、たいていはWebブラウザーで完結します。だから、HDD容量にはあまりこだわりません。その代わり、SIMは必須ですね。

PDAをコミュニケーションツールとして活用するには、通信機能が必要ですが、当時はSIMを挿せるPDAがありませんでした。そこで、通信機器と接続するため、いろいろと工夫してきました。たとえば、「OmniGo 700LX」(HP)には、ノキアの携帯電話「Nokia 2110」シリーズが合体できるので、どれがつながるのかを試したりね。

その経験から、通信機能に限らず、PDAは基本的に単体では完結しないものだと考えています。たとえば、サムスンのウェアラブル端末「Gear 2」はカメラ機能を搭載していて、オートフォーカス機能にも対応しており、結構きれいな写真が撮影できるんですよ。

ただ、小さなサイズの液晶で見てもよくわからないから、スマートフォンに転送して、大きな画面で確認する。このように、いくつかの端末をつなげて使うのが好きなんです。だから、スマートフォンに装着して使う拡張モジュール「MotoMods」(モトローラ)は、僕の感覚にとても合っているアイテムと言えますね。

サムスンのウェアラブル端末「Gear 2」。スマートウォッチとしての基本機能に加えて、カメラ機能も備えたモデルだ

――山根さんは普段、どのような端末を使っているのですか。

今日持っている端末をお見せしますね。メインの端末は「Galaxy Note8」ですが、それ以外はすべて、“1機種1機能主義”で使っています。

山根さんが当日携帯していた端末の数々。左上から順に「Mate 10 Pro」(ファーウェイ)、「Galaxy Note FE」(サムスン)、「ZenFone 4 Selfie Pro」(ASUS)、「Galaxy Note8(キーボードカバー装着済み)」(サムスン)。左下から「DMC-CM10」(パナソニック)、「iPhone 7」(アップル)、「Meitu M8」(メイツ)

たとえば、「iPhone 7」は動画録画専用で、「ZenFone 4 Selfie Pro」はライブストリーミング専用、「Meitu M8」はセルフィー専用、「Mate 10 Pro」は食事の写真と録音用として使っています。あと、「Galaxy Note FE」はこれから韓国に移動するので持ってきました。

――すごい数ですね……。

実はこれらのスマートフォンを持ち歩くため、僕が設計して、中国・深センの工場で専用インナーバックを作りました。当時は「博士と一緒にオフ会バッグ」という名前でしたが、今は「スマポーチ」という名前で、アスキーストアで販売されています。

収納できるスマートフォンの数は、外側に6台、内側に5台。そのほか、モバイルバッテリーやUSBメモリー、ポケットWi-Fiが入るスペースも設けています。最新モデルは、これよりもう少しサイズが大きくなって、大画面のスマートフォンやタブレットも収納できるようになっています。複数のスマートフォンを持ち歩く人にとっては、最高のインナーバックですよ。

初代「博士と一緒にオフ会バッグ」。山根氏が監修しており、細かいところまでよく作り込まれている

初代「博士と一緒にオフ会バッグ」。山根氏が監修しており、細かいところまでよく作り込まれている

山根氏が考える、理想のモバイルデバイス

――山根さんにとって、理想のモバイルデバイスとは。

まず、SIMが入ること。通信できなければダメです。それと、キーボードが付いていること。今の若い人はフリック入力でも問題ないのかもしれませんが、僕はキーボードでないと文章を書くのが難しい。そうでないと、思考の流れがさえぎられてしまいます。

同様の理由で、ペンもあったほうがいい。何を書こうかと考える時、ペンを持って落書きをしたり、くるくる回したりすることがよくあります。こういう動作がきっかけとなって、アイデアが浮かんだりするんです。

現在メインで使っているGalaxy Note8は、スリープ状態でSペンを取り出すと、液晶画面が手書きメモになる機能を搭載していて、そのまますぐにメモできる。とっさにアイデアをメモする時など、とても助かります。このように使えるのが、僕にとってはとても重要。だから、Galaxy Note8をメインで使っているんです。

山根氏がメインで使っているGalaxy Note8。本体からSペンを抜いた瞬間、手書きメモとして画面に書き込めるようになる

もう少し未来の話をしましょうか。

これからは、間違いなく音声入力が主流になります。日本ではすでに、「Amazon Echo」(アマゾン)や「Google Home」(グーグル)、「Clova WAVE」(LINE)などが発売されていますよね。アメリカでも普通に、アマゾンのAIアシスタント「Alexa」を使って、カフェのコーヒーを注文したりして、当たり前の存在になりつつあります。

「これからは、間違いなく音声入力が主流になる」と山根氏は説明する

「これからは、間違いなく音声入力が主流になる」と山根氏は説明する

日本でも、子どもたちが音声検索を使って、「YouTube」で動画を探すことも珍しくなくなってきました。現在は、指を使ってスマートフォンに入力していますが、そのうち音声で入力するのが当たり前になり、イヤホンで検索結果を聞いたり、メガネで見たりするようになるかもしれません。

僕が思い描く理想の未来は、テーブルや洋服、イヤホン、自動車など、身の周りのモノすべてがコネクテッド(連結)されていて、自分とコミュニケーションできる世界です。好きな場所で、自由に必要な情報が取り出せるような世界が現実になるのは、実はそう遠くないと思っています。

「すべてのモノがコネクテッド(連結)される世界」を理想の未来として語ってくれた、山根氏

「すべてのモノがコネクテッド(連結)される世界」の可能性を語ってくれた、山根氏

インタビューを終えて(井上真花)

まず、数に圧倒されました。「PDA博物館」が所蔵する端末数は約400台。これでも十分多いと思っていたのに、山根さん個人が所蔵する携帯電話の数は約1500台!さらに「場所、取りますよね。やっぱり箱は捨てたほうがいいのかなあ」とおっしゃる。箱も保存されているとは……いやいや、ホント恐れ入りました。

オフィスマイカ

オフィスマイカ

編集プロダクション。「美味しいもの」と「小さいもの」が大好物。 好奇心の赴くまま、良いモノを求めてどこまでも!(ただし、国内限定)

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