PDA博物館
連載PDA博物館

「陣痛なう」のつぶやきがバズったワーママ、モバイルガジェットの魅力を語る

PDAとスマートフォンで共通しているのは、“いつも携帯できるサイズである”という点と、“必要な情報がすぐに取り出せる”という点。身につけて携帯できるから、時間や場所を選ばず、いつでも便利に使うことができる。

今回、連載PDA博物館に登場するのは、ママ業をこなしつつダブルワーカーとして活躍する、壽(ことぶき)かおりさん。アクティブに行動する彼女を長年支えてきたのは、PDAやスマートフォン、ウェアラブルデバイスだった。人を支えるモバイルデバイスとの上手な付き合い方や、その向こうにある人とのつながりについて、お話を聞いた。(※聞き手=PDA博物館初代館長 マイカ・井上真花)

シックス・アパート広報およびSix Apart ブログ編集長、Vivaldi ブラウザ広報と、一人三役をこなす多忙なワーママ、壽かおり氏。シックス・アパートの「オウンドメディア勉強会」も主催している。手に持っているのは、神田明神の「IT情報安全守護(ITお守り)」

MS-DOSばんざい!パソコン部で青春を過ごした中学・高校時代

――壽さんが最初に使ったデジタルガジェットは?

最初に使った端末は、父が買ったけれど持てあましていたワープロですね。ポエムや日記を書いては、フロッピーに保存していました。

パソコンを初めて使ったのは、中学2年生のときに入った「パソコン部」。当時学校にあったパソコンはまだMS-DOSで、先輩たちが真っ黒な画面にコマンドを打っているのを見て、「なんてかっこいいんだろう!」と。中学時代はひたすら部活でパソコンの使い方を学び、高校入学祝いとして、「98MULTi CanBe(マルチ キャンビー)」(NEC)を祖母に買ってもらいました。Windows 3.1とMS-DOSが使えましたが、部活で学んだ私としては、もちろんMS-DOS でパソコン通信ばかりしていました(笑)。

高校は女子校だったのですが、パソコン部を作り、部長に就任。クラブでは、十数人の部員と一緒にパソコン通信や雑誌で入手したフリーウェアを試したり、「こんなゲーム見つけたよ」と情報交換したりしながら、ワイワイ楽しんでいました。学校にインターネットが使えるパソコンが導入されたのを機に、独学でHTMLを学び、学校の公式ホームページ制作を手伝ったこともあります。思えば当時から、私は広報の仕事をしていたんですね(笑)。

大学入学時には「VAIO PCG-505」(ソニー)を入手。本体が薄くて、デザインがとてもかっこよかったんですよね。ミーハーな私はひとめ惚れしてローンで購入し、数年かけてバイト代で返済しました。モバイルガジェットも欲しかったのですが、学生なのでお金がなく、当時のひと昔前の端末を中古で購入するのがやっと。そのころ買ったのは、「モバイルギア」(NEC)や「ポケットポストペット」(NTTドコモ)などで、特に好きだったのはポケットポストペットです。当時、ポケットポストペットをWindows CE化して使うのが流行っていて、私もやりました。

壽氏が大学生時代に愛用していたという「ポケットポストペット」(画像提供元:NTTドコモ)

壽氏が大学生時代に愛用していたという「ポケットポストペット」(画像提供元:NTTドコモ)

Palmも好きで、「CLIE PEG-S500C」(ソニー)を購入。これは、スケジュール管理やお小遣い帳代わりとして使っていて、たまにPHSと接続してインターネットを見たりしていました。CLIEとPHSを一緒に持ち歩くためのカバーを自作し、その作り方を「CLIEのお部屋」というホームページに公開したのをきっかけに、Palmユーザーの方と知り合いに。オフ会にも数回参加し、いろんな人と知り合いになりました。

壽氏が「スケジュール管理やお小遣い帳代わりに使っていた」という「CLIE PEG-S500C」(画像提供元:PDA博物館)

「陣痛なう」で始まった出産の実況中継で、ネットの力を知る

Palmはその後もいくつか購入し、社会人になってよく使ったのは「CLIE PEG-NR70」。コツコツお金を貯めて購入し、箱を開けて電源を入れたとき、画面の大きさや明るさに感激して思わず泣きましたね(笑)。新卒で入ったトランスウエア社からOpera社に転職し、英語力が求められるようになったため、辞書ツールとして、あるいは英会話のメモとして活用しました。ですが、最もモバイルの威力を実感したのは仕事ではなく、出産でした。

――出産? どういうことでしょう。

2007年からTwitterを始めて、そのとき感じたのは「こういうのを待っていた!」ということ。思えば中学や高校のパソコン部もPalmのオフ会も、そこで通信やガジェットをネタに、みんなと盛り上がれることが一番楽しかった。「こんなの買ったんですよ」とか「こんなアプリ知ってる?」とか、そういう他愛ないことを楽しく話せる場所にいることが、私にとって一番大事だったのかもしれません。ソーシャルって、そういうことをいつでもオンラインでできる場所ですよね。水を得た魚のように、ハマりました。

2009年1月に出産のため入院したときも、いつものごとくガラケーのモバツイでTwitterを開いて「陣痛なう」とつぶやいたのですが、これが話題になり、どんどん拡散されていきました。いわゆる“バズった”原体験でした。

陣痛と次の陣痛の間に、苦しみながらも出産の状況をTwitterで生中継すると、知ってる人はもちろん、知らない人からもたくさんの応援のリプライをもらいました。そばには夫もいたけれど、夫の次に私を支えてくれたのは、タイムラインにいたみなさんからのエールです。みんな、なんていい人なんだろうと。このときの感動は、今も忘れられません。

Twitterで「陣痛なう」とつぶやいたのが“バズった”原体験と、壽氏は振り返る

Twitterで「陣痛なう」とつぶやいたのが“バズった”原体験と、壽氏は振り返る

そのあと育児が始まりましたが、子育て中って孤独なんですよね。子どもとふたりっきりの世界にいると、ふと気分が落ち込みそうにもなるのですが、夜中に授乳しながらTwitterを見ると、私と同じように授乳や夜泣きで起きているママさんたちのつぶやきがある。それを読むだけで、なんとなく励まされるんです。みんな、がんばっているんだなぁと。

出産時に見知らぬ人から励まされるのも、夜間授乳のママ友と交流できるのも、手元にTwitterが見られるモバイルガジェットがあるからこそ、できたこと。やっぱりモバイルってすごいなあと思いました。

子育て中のママを救う「スマートホーム」に期待

――スマートフォンは、「iPhone」を使っているんですね。

はい。「iPhone 3GS」(アップル)以降、ずっとiPhoneを使っています。昔はPalmをPHSにつなげてインターネットにアクセスしていましたが、iPhoneならこれ1台でOK。PDA時代に苦労してやっていたことを、エレガントにできる端末ですよね。すごいことだと思いますし、不満はないんですが、iPhoneにドキドキするかというとそうでもなくて。今は、ウェアラブルデバイスに興味津々です。

――ウェアラブルだと、どういうものを使っているのですか。

最初は、「Fuelband」(NIKE)を活動量計として使っていました。カラフルなドットが、格好よかったんですよね。次に買ったのは、スマートウォッチ「Pebble Time」(Pebble)。スマートフォンからの通知がPebble Timeで確認できるようになり、保育園からの大事な電話にすぐに気がつくようになったのは大きいです。

会議中、スマートフォンが手元にないときも、Pebble Timeで通知の内容が確認できれば、その内容によって会議を中座するべきか、あとで連絡すれば問題ないか判断できます。ワーママにとって保育園からの連絡という緊急事態があっても、Pebble Timeがあればすぐ対応できるというのは、私にとって、とても大きな革命でした。

壽氏が所有するスマートウォッチ(画像左から「Pebble Time」と「TicWatch 2」)。TicWatch2は画面が大きく、ちょっとしたニュースが読めるのが便利

現在は、クラウドファンディングで手に入れた「TicWatch 2」(Mobvoi)という、Android Wear(Wear OS by Google)を搭載するスマートウォッチを愛用しています。メールやSNS、メッセージなども通知されるので、手元にiPhoneがなくてもすぐに気づけます。私にとっては、ネットとの距離が縮まったという印象。スマートフォンと違って、常に腕に装着しているので、自分自身が常にオンラインにいられる安心感があります。

――ほかに気に入っているものがあれば教えてください。

子育てを始めてからは、撮影にも興味を持ちました。育休中は、娘の動画を撮るためにポケットビデオカムの「Vado-HD」(クリエイティブメディア)というポケットビデオカメラを買いました。まだあまり日本に情報がなかったので、子どもが寝ている暇な時間を利用して活用TIPSをまとめた専用のWikiも作りましたね。

現在9歳になった娘もガジェット好きに育っていて、iPad や知り合いにもらったソニーのアクションカムで撮影した動画の編集にハマっています。いとこへの誕生日おめでとう動画メッセージとしてぬいぐるみ劇の動画を作っていたので、私がYouTube限定公開にアップロードして、いとこ家族と共有しました。

ほかに興味があるのは、「スマートホーム」。寝室の壁に 「Google Home」(Google)を取り付けて、目覚ましアラームやニュース再生などに利用しています。さらに、スマートリモコンと組み合わせての照明・テレビ・エアコンのオン/オフ操作は、寝かしつけのときにとても便利です。娘に添い寝をしたまま、小さな声で「OK Google、エアコン消して」や「OK Google、明かりを消して」といえば、代わりに操作してくれます。動く必要がないので、眠りかけた娘を起こさずにすみ、便利です。

壽家で使っている「Google Home」。寝室の壁に取り付け、寝かしつけの際、照明やテレビ、エアコンのオン/オフに活躍している

「スマートホーム」には、とても未来を感じています。今がちょうど黎明期で、次から次へと、できることが増えていくのが楽しいですね。

シックス・アパートでは、「SAWS(Six Apart Working Style)」という基本的に出社しないワークスタイルなので、自宅の仕事スペースには「Amazon Echo」(Amazon)を置いて、ラジオや音楽再生、リマインダーなどに活用しています。スマートホーム好き社員が何人かいるので、スマートスピーカーと「Raspberry Pi」に接続した気温センサーを連携した活用アイデアについてなど、情報交換をしています。

振り返ってみると、新しいテクノロジーをネタにみんなでワイワイするのが大好きなのは、中学生の頃から、まったく変わっていませんね(笑)。黎明期の技術だからこその多少の不便さも楽しみつつ、これからもワクワクするガジェットを試し、その感想をみんなと共有していきたいです。

インタビューを終えて(井上真花)

Twitterを始めてすぐに壽さんを知り、高い情報収集力と女性ならではのデジタルセンスに惹かれ、フォローしました。例の「陣痛なう」というつぶやきも、リアルタイムに目撃。「ついにこんな時代に!」と衝撃を受けたこと、今も覚えています。あのときは、彼女のことが気になって気になって、夜中もずっとTwitterを見ていたっけ。そんなお嬢さんも、今や9歳。お母さんのDNAを色濃く受け継いでいるようで、今後が楽しみです。

オフィスマイカ

オフィスマイカ

編集プロダクション。「美味しいもの」と「小さいもの」が大好物。 好奇心の赴くまま、良いモノを求めてどこまでも!(ただし、国内限定)

関連記事
「価格.comマガジン」プレゼントマンデー
ページトップへ戻る