スマートフォン(スマホ)は、改めて言うまでもなく便利なツールです。スマホにはディスプレイやカメラといった基本的なハードウェアしか搭載されていませんが、アプリを追加することで、コミュニケーション、情報収集、写真撮影、娯楽、決済などなど、ユーザーの好みに合わせて機能をカスタマイズできるのが大きな魅力です。
「スマホがない生活など考えられない」くらい日常に浸透したスマホですが、ポケットにおさめて持ち運べるほど小さな機械であるために、故障や破損といったリスクに日常的にさらされています。
日頃からクラウドサービスを活用していれば、個人情報や写真といったデータの復旧は比較的簡単です。しかし、スマホの価格は10万円を超えることも珍しくありません。買い替えが必要なほど損傷してしまえば、金銭的なダメージは大きいのです。
こうしたリスクに備えるために是非加入しておきたいのが、スマホ向けの補償オプションです。大手キャリアはもちろんですが、通信コストが安いMVNO(仮想移動体通信事業者)を利用しているユーザーも、補償オプションを契約することが可能です。
ただ、MVNOの補償オプションは、使っているスマホをどこから入手したかによって、「自社販売の端末向け」と「持ち込み端末向け」の2つのタイプに分かれており、それぞれ補償内容が異なります。
自社販売の端末向けの補償オプションは、MVNOが自社の格安SIMとSIMフリースマホを組み合わせて販売する「格安スマホ」を購入した場合に契約できます。自分で購入したSIMフリースマホや、大手キャリアの中古スマホでは、後述する「持ち込み端末向け」の補償オプションを契約しなければなりません。
このタイプでは、基本的に端末が交換されます。故障や紛失の発生時にオプションの利用を申し込むと、故障機の回収と引き換えに交換機が送られます。修理を待つことなく正常な端末が手に入りますし、故障機の修理中や交換手続き中に使うための代替機を手配する必要もありません。
交換機が届くタイミングや故障機を発送する方法は、MVNOによって異なります。たとえばLINEモバイルの場合、専用の受付センターへ18時までに連絡すればその日のうちに交換機が発送されます。故障機は、交換機と一緒に届く返送キットを使って発送します。
LINEモバイルでは、18時までに申し込めば最短で翌日には交換機が手元に届きます(LINEモバイルのWebサイトより)
補償オプションの月額料金は一律500円(税別、表記のない限り以下同様)、交換時に生じるユーザーの負担金は1回目が4,000〜5,000円、2回目は8,000円(年2回まで)が相場。機種によって月額料金や負担金が異なるMVNOもあります。
気を付けたいのは、補償オプションに加入できるタイミングがMVNOによって異なる点です。例として、IIJmioモバイルサービスやmineoのように「端末を購入する時」に加入できるMVNOであれば、先に格安SIMだけを契約しておいて、後から格安スマホとして端末を購入するようなケースでも補償オプションに加入できます。
しかし、LINEモバイルのように「回線の新規契約時」しか加入できない場合は、初めて契約するときに格安スマホとして端末も購入しないと、自社販売の端末向けの補償オプションには加入することができません。
また、一部のMVNOではアップルの「iPhone」シリーズを販売するところもありますが、自社販売の端末向け補償オプションは対象外となることが多いため、後述する持ち込み端末向けの補償オプションを利用するか、ユーザーが独自にAppleCareに加入しなければなりません。
持ち込み端末向けの補償オプションは、前述のように、自分で購入したSIMフリースマホや、大手キャリアで使っていた中古スマホに格安SIMをセットして使う場合に加入できるオプションです。
このタイプでは、修理できる場合はスマホが修理され、修理できない場合には指定の機種と交換されます。修理の可否はMVNO側が判断するため、ユーザーが修理と交換のどちらにするかを選ぶことはできません。
補償オプションの月額料金は500円、修理費用の保証上限額は4万〜5万円が相場で、上限をオーバーした修理費用はユーザーが負担します。たとえばmineoの持ち込み端末向け補償オプションでは、修理費用の保証上限額が4万円(税込)なので、もしも修理に55,000円掛かった場合、差額の15,000円はユーザーが支払うことになります。
mineoの持ち込み端末向け補償オプションでは、税込4万円以下なら修理費用が無料です(mineoのWebサイトより)
修理ができず交換と診断された場合の交換費用は、1回目は4,000〜5,000円、2回目は8,000円が相場ですが、回数に関わらず一定額の場合もあります。利用できる回数は、大半のMVNOが年2回までとしています。
なお、市場に流通しているスマホ全般が対象となる持ち込み端末向けの補償オプションでは、交換できる機種があらかじめ決められています。偶然同じ機種を使っていたのでもない限り、ユーザーが使っていた故障機と同じ機種に交換することはできません。
また、補償オプションに加入できるタイミングにも注意が必要です。大半のMVNOでは、格安SIMの新規契約時にしか加入できないからです。すでに格安SIMを利用している人の多くは、一部のMVNOを除いて、持ち込み端末向け補償オプションに後から加入できないことになります。
さらに、補償を受けるには、事前に端末固有の「IMEI」と呼ばれる製造番号を登録しておかなければならないMVNOもあります。IMEIは「設定」から確認したり、スマホの電話アプリで「*#06#」と入力したりすると確認できます。
ASUSの「ZenFone 5」におけるIMEIの表示例(「設定」から「システム」→「端末情報」→「端末の状態」→「IMEI情報」の順にタップ)
もしもMVNOの契約を「自社販売の端末向け補償」と「持ち込み端末向け補償」の内容で選ぶなら、前者……つまり、格安スマホ向けの補償のほうが何かと便利です。
自社販売の端末に対する補償では交換対応が基本なので、修理に時間をかけずに短期間で正常な端末が手に入ります。また、持ち込み端末向けの補償では交換機が限定されていますが、自社販売の端末向けの補償では故障機と同じ機種と交換できる可能性が高いのもメリットです。
ただし、大手キャリアから乗り換えるような場合でも、今まで使ってきたスマホをあきらめて新しく端末を購入しなければなりません。「スマホの故障や破損が心配」という人で、端末を乗り換えられるという人は、格安スマホの購入を検討してみてはいかがでしょうか。
なお、MVNOが提供する自社販売の端末向け補償と持ち込み端末向け補償は、いずれも「故障した端末」がないと補償を受けられません。端末を紛失したり、盗まれたりしたときには補償を受けられないことに注意しましょう。
最後に、主なMVNOとサブブランドで提供されている補償オプションの内容をまとめてチェックしてみましょう。対象としたのは、価格.comマガジンで毎月通信速度を調査しているMVNOを含む以下の11社です。
1.ワイモバイル
2.UQ mobile
3.BIGLOBEモバイル
4.OCN モバイル ONE
5.楽天モバイル
6.mineo
7.IIJmio(みおふぉん)
8.イオンモバイル
9.DMM mobile
10.LINEモバイル
11.nuroモバイル
MVNO 11社の補償オプション比較表(大きな拡大図はこちら)
自社販売の端末向け補償オプションでは、ソフトバンクのサブブランドであるワイモバイルに注目です。
同社の「故障安心パックプラス」は月額料金が690円と少々割高ですが、自然故障の場合は修理費用が無料です。スマホの外側だけを交換する「外装交換」は最大1,500円、水濡れや全損の場合は5,000円(外装交換をともなう場合は6,500円)で修理が可能です(ただし、一部機種の修理・外装交換には非対応)。
また、ワイモバイルの補償オプションはスマホの盗難や紛失に対応しているのも特徴です。盗難・紛失の場合には、同じ機種(指定機種の場合もあり)を会員価格で購入することが可能です。
一般的なMVNOのでは、楽天モバイルが2018年11月にリニューアルしたばかりの補償オプション「スマホ修理・新機種交換保証」に注目です。
このオプションでは、自社販売の端末向けに提供されるものとしては珍しく、修理にも対応しています。修理費用の保証上限額は24,000円(税込)とされていますが、仮に上限額を超えた場合には、メーカー再生品と無料で交換されます。修理と判断された場合の費用は、実質的に無料です。
また、修理ができないと診断された場合には、楽天モバイルが販売する端末を販売価格の2割の負担で購入できます。修理の受付はWebサイトだけでなく、一部の楽天モバイルショップで対応してもらえるのも便利なポイントです。
持ち込み端末向けの補償オプションでは、修理時の保証上限額が無制限となっているイオンモバイルの「イオンモバイル持ちこみ保証」が特徴的です。ユーザーが進んで修理を選ぶことはできませんが、交換が不要な範囲の破損や故障であれば、追加費用を掛けずに修理できるのがメリットです。
なお、イオンモバイルはMVNOでは貴重な実店舗を構えており、全国200店舗以上のイオン店頭でアフターサポートを受けられます。店頭サポートを重視する人は、イオンモバイルを検討してみるといいでしょう。
持ち込み端末向けの補償オプションではもう1つ、mineoの「持込み端末安心保証サービス」にも注目です。修理時の保証上限額や交換時の負担額は一般的ですが、回線の新規契約時だけでなく、いつでも加入できるのが大きな特徴となっています。
たとえば、大手キャリアで使ってきたスマホを持って乗り換えたときに、「壊れたら買い換えればいい」と思って補償オプションに加入しなかったとしたら、大半のMVNOではもう補償オプションには加入できません。
しかしmineoであれば、新規契約後でも補償オプションに加入できるので、次にSIMフリースマホを購入したタイミングで加入すればいいのです。
ただし、持込み端末安心保証サービスでは、加入日から30日間が免責期間となります。この間にスマホが故障や破損をすると、補償を受けることはできません。
また、補償を受けられる期間にも「対象端末が発売された日から6年後の年末まで」という制限があります。例として、2018年の9月に発売されたスマホの場合、補償を受けられるのは2024年12月末までとなります。
6年以上前に登場したスマホは補償を受けられないことになるので、事前にmineoが公開している補償対象端末のリストを確認しておきましょう。