登場から5年が経ち、広く認知されるようになった「格安スマホ」。格安スマホとは、大手キャリアのネットワークを借りて通信サービスを提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)が、自社の格安SIMとSIMフリースマホを組み合わせて販売する商品のことを指します。
SIMフリースマホは(ネットワークに対応さえしていれば)どのキャリアでも利用することが可能です。たとえば海外への出張や旅行の際に現地のプリペイドSIMを購入し、国内で使っているSIMカードと入れ替えれば、現地のネットワークで通信できるようになります。
また、2枚のSIMカードで同時に電話を待ち受けられる「DSDS(デュアルSIM・デュアルスタンバイ)」に対応する機種であれば、格安SIMを2回線契約して併用するような使い方も可能です。多くの格安スマホは最初からSIMフリーなので、SIMロックを解除しなくてもこうしたメリットが得られます。
いっぽう、大手キャリアの「サブブランド」として知られる「ワイモバイル」「UQ mobile」や、BIGLOBEの「BIGLOBEモバイル」が販売するスマホの一部には、SIMロックがかけられています。ワイモバイルでは「Android One」シリーズや「iPhone」シリーズなど、UQ mobileやBIGLOBEモバイルではiPhoneシリーズにSIMロックがかかっています。
SIMロックがかかっていても、購入したキャリアのみで使うのであれば、特に不自由なことはありません。しかし、別のキャリアに乗り換えても同じ端末を使い続けたかったり、海外旅行時に現地のSIMを使ったりするには、大手キャリアのスマホと同じようにSIMロックを解除する必要があります。
今回は、筆者がプライベートで購入したUQ mobile版「iPhone 7」のSIMロックを実際に解除してみました。大手キャリアにおけるSIMロック解除の手続きとの違いや、UQ mobileならではの注意点はあるのでしょうか。
最初にSIMロック解除の手続方法と条件を確認してみましょう。以下の内容は、UQコミュニケーションズがWebサイトに掲載している「SIMロック解除のお手続き」を参考にしています。
UQ mobileのSIMロック解除手続きは、オンライン窓口の「my UQ mobile」か、電話窓口の「UQお客様センター」から申し込めます。my UQ mobileから申し込んだ場合は無料ですが、UQお客様センターから依頼すると3,240円の手数料が発生します。
ただし、auをはじめとした大手キャリアではショップ店頭でのSIMロック解除も可能ですが、UQ mobileでは専売店のUQスポットを含め、店頭ではSIMロックの解除ができません。
SIMロックが解除できるのはiPhoneを購入した当日から101日目以降ですが、過去に別の端末でSIMロックを解除したことがある場合、直近の解除日から101日目以降であれば、iPhoneを購入したその日のうちにSIMロックを解除することも可能です。
たとえば、UQ mobileが2017年に発売した「iPhone SE」や「iPhone 6s」を購入してSIMロックを解除したことのある人がiPhone 7に機種変更した場合、機種変更前のiPhoneでSIMロックを解除した日から100日以上経っていれば、iPhone 7のSIMロックはすぐにでも解除できることになります。
なお、UQ mobileを解約した場合でも、解約日から100日以内であれば、my UQ mobileもしくは電話窓口を通してSIMロックを解除できます。こうした解除できるタイミングに関する条件は、UQ mobileもauなどの大手キャリアとほぼ同じです。
今回は、UQ mobileのサポートページで公開されているSIMロック解除の手順を参考にしつつ、手数料がかからないmy UQ mobileからのSIMロック解除を実際に行ってみました。
最初に、Webブラウザーからmy UQ mobileにログインします。ここではiPhone 7の標準Webブラウザー「Safari」を用いましたが、PCなどのWebブラウザーからでもアクセスできます。
iPhoneやPCなどのWebブラウザーからmy UQ mobileにログインします
ログイン後は「ご契約内容」→「契約回線情報一覧」の順に進み、SIMロックを解除したいiPhoneを契約している回線の「詳細へ」を選択します。
「契約回線情報一覧」に示された回線の「詳細へ」をタップします
契約中の料金プランやオプションサービス、契約日などを示した「契約情報」が表示されるので、画面を一番下までスクロールして「SIMロック解除」を選択します。
「契約情報」が表示されるので、画面を下までスクロールします
最後のメニューにある「SIMロック解除」をタップします
「SIMロック解除」を選ぶと、参照中の回線におけるSIMロックの状況を示した「SIMロック状況紹介」が表示されます。
「IMEI」の項目には、iPhone 7に割り当てられている固有の番号が表示されます。解除を申し込んでいないので、「SIMロック状態」は「未解除」となっています。その下に示された「解除時注意事項」に同意の上で、「ロックを解除する」を選択します。
注意事項を確認・同意した上で「ロックを解除する」をタップします
「SIMロック解除確認」として直前の画面と同じ内容が示されるので、再度目を通した上で「実行する」をタップしましょう。「SIMロック解除を受け付けました」と表示されれば、SIMロック解除の申し込み手続きは終了です。
「SIMロック解除確認」の画面。直前の「SIMロック状況紹介」とほぼ同じ内容なので一瞬とまどいますが、再度目を通してから「実行する」をタップ
「SIMロック解除を受け付けました」と表示されれば、SIMロック解除の申し込みは完了です
この時点ではSIMロックを解除するための申し込みが終わっただけなので、まだiPhoneのSIMロックは解除されていません。解除を終えるには、以下2つのうちどちらかの手順を踏む必要があります。
・別のキャリアのSIMカードをセットしてiPhoneをアクティベーションする
・iPhoneをバックアップしてからすべてのデータを消去し、作成したバックアップから復元する
今回はひとつ目の「別のキャリアのSIMカードでアクティベーション」を選びました。使ったのは、NTTドコモのネットワークを利用する「mineo(Dプラン)」のSIMカードです。
iPhoneは電源が入ったままでもSIMカードを入れ替えられますが、今回は念のために電源をオフにしました。iPhone 7の購入時に付属してきたピンなどを使ってSIMトレイを取り出し、UQ mobileとmineoのSIMカードを入れ替えたら、トレイを再びiPhoneにセットします。
iPhone 7のSIMトレイを取り出してSIMカードを入れ替えたら、トレイをiPhone 7に戻します
電源をオンにして画面のロックを解除すると、iPhone 7のアクティベーションが実行されます。「iPhoneを探す」を有効化している場合、「アクティベーションロック」というiPhoneを保護する機能によってApple IDでのサインインを求められるので、IDとパスワードを入力して「次へ」をタップします。
なお、アクティベーションを実行するにはiPhoneをインターネットに接続しなければなりませんが、後述する構成プロファイルをインストールするまではモバイルネットワークが利用できないので、Wi-Fiで通信できる環境が必須です。
iPhone 7の電源を入れてロックを解除するとアクティベーションが始まります
「アクティベーションロック」機能がサインインを求めてきた場合は、Apple IDとパスワードを入力します
iPhone 7のホーム画面が表示されるところまで進んだら、mineoのサポートページを参考にして、Dプラン用の構成プロファイルをインストールします。
mineo(Dプラン)用の構成プロファイルをWi-Fi経由でダウンロードしたところ。「インストール」をタップすると、iPhone 7に構成プロファイルがインストールされます
構成プロファイルがインストールできたら、Wi-Fiをオフにしてみましょう。WebブラウザーやSNSアプリなどを開いてネットワークにつながっていることが確認できれば、SIMロックの解除手続きはすべて終了です。
モバイルデータ通信で価格.comマガジンにアクセスしたところ。アンテナピクトの隣にはNTTドコモのネットワークにつながっていることを示す「docomo」と表示されています
実際にUQ mobile版iPhone 7のSIMロックを解除してみましたが、基本的な手順は大手キャリアでiPhoneのSIMロックを解除する場合と変わりませんでした。
一番の相違点は、SIMロック解除の申し込み方法です。大手キャリアやワイモバイルでは「店舗」もしくは「オンライン」で申し込めますが(ドコモのみ「電話」でも申し込み可能)、UQ mobileは「オンライン」もしくは「電話」での申し込みとなっていて、大手のように店舗でSIMロックの解除を依頼することができません。
オンラインでの申し込み操作に不安があったり、SIMロックの解除に関して気になっていることを質問したいと思ったりしている人は、3,240円の手数料がかかってしまいますが、オペレーターに相談できる電話窓口から申し込むのがいいでしょう。
また、これはUQ mobile版のiPhoneに限ったことではありませんが、別のキャリアのSIMカードが手元にない状態でSIMロック解除の手続きを完了するには、iPhoneのデータ消去とバックアップからの復元を実行しなければなりません。
iPhoneのバックアップには、Wi-Fi経由の「iCloudバックアップ」と、PC/MacにインストールしたiTunesを使う「iTunesバックアップ」の2種類があります。しかし、Wi-Fi経由でインターネットにアクセスできる固定通信サービスやPCがない家庭では、どちらも利用できません。iPhoneのSIMロックを解除するためだけにこれらをそろえるというのも、現実的ではないでしょう。
iPhoneの復元を回避する手段としては、国内で購入・使用できるプリペイドSIMを「別のキャリアのSIM」として利用し、SIMロック解除後のiPhoneでアクティベーションを実行する方法があります。プリペイドSIMには1,000円台から購入できる商品もあるので、金銭的な負担も最小限に抑えられます。
もっとも、格安SIMやプリペイドSIMをセットした状態でアクティベーションを実行したり、構成プロファイルをインストールしたりするには、いずれにしてもWi-Fi環境が必須です。公衆無線LANが利用できる場所を探すか、家族や友達のスマホで一時的にテザリングをさせてもらうなどして、Wi-Fi経由の通信を確保することになるでしょう。
ほかのキャリアのSIMカードやバックアップからの復元を必要とせずにiPhoneでもSIMロックの解除を完了できるようになったり、AndroidのようにAPN情報を手動で入力できるようになったりすれば、今よりもっと便利になるのに……と、改めて実感させられました。