ここからは、BarraCuda 510 512GBモデル、FireCuda 510 2TBモデル、IronWolf 110
3.84TBモデルを使ったベンチマークレポートをお届けする。使用したベンチマークは、「CrystalDiskMark 6.0.2」と「AS SSD Benchmark 2.0.6821.417776」、「ATTO Disk Benchmark 4.01.0f1」だ。
なお、テスト環境の詳細は以下の通りとなる。SSDはテスト前にすべてセキュアイレースを実施し、システムドライブとは別のデータドライブとして接続している。ちなみに、今回のテストは室温24℃の部屋環境下においたバラック状態で実施している。マザーボード上の冷却ファンはリテールCPUクーラーのみだ。マザーボードのM.2スロットの配置上、CPUクーラーからのエアフローの影響が多少なりともあるが、実使用に近い環境ということで許容としている。
■検証環境
CPU:インテル「Core i5 8400」
マザーボード:ASRock「Z370 Pro4」
メモリー:G.Skill「F4-3200C14Q-32GFX」(8GB×2、DDR4-2667設定)
システムストレージ:crucial「MX300 CT525MX300SSD1」
OS:Windows 10 Pro 64bit(May 2019 Update適応済み)
BarraCuda 510
FireCuda 510
IronWolf 110
まずは「CrystalDiskMark 6.0.2」から見ていこう。テストサイズ1GiBの結果を見ると、シーケンシャル性能はおおむね公称スペック通りの速度が出ており、NVMe接続のBarraCuda 510とFireCuda 510のシーケンシャルリードは、最大32Gbps(4000MB/s)のNVMe接続の限界に迫る数値だ。
シーケンシャルライトについては、28GBのSLCキャッシュを備えたFireCuda 510のほうがやはり一枚上手で、3,000MB/s超という値をたたき出している。ただ、テストサイズ32GiBの結果を見てもらうとわかるが、SLCキャッシュ容量の28GBを超過すると、パフォーマンスがガクっと下がっているのがわかる。この辺りは、SLCキャッシュを備えた一般的なSSDと同様の傾向だ。
ランダムリード/ライト性能についても、実使用環境に近い4KiB Q32T1の値でFireCuda 510がBarraCuda 510を上回る値を示しており、この辺りは、さすがハイエンドSSDといったところ。とはいえ、BarraCuda 510も決して悪い値ではなく、通常の利用範囲において不満はほぼないだろう。
今回テストしたモデルで唯一のSATA接続であるIronWolf 110は、ピーク性能こそSATA接続の範囲内に収まっているのだが、テストサイズによる数値の変化が少なく、非常に安定しているのが好印象だ。
BarraCuda 510
FireCuda 510
IronWolf 110
次は「AS SSD Benchmark 2.0.6821.417776」の結果を見ていこう。こちらも、おおむね「CrystalDiskMark 6.0.2」と傾向は同じで、NVMe接続タイプはFireCuda 510>BarraCuda 510といった感じだ。
データ圧縮の変化によるパフォーマンスを計測するコンプレッションベンチマークは、NVMe接続タイプの2製品がリード/ライトともにやや波が激しい。ただ、全体的には公称値の7〜8割くらいのパフォーマンスは出ているので、問題はないだろう。IronWolf 110については、独自のデータ圧縮技術「DuraWrite」がしっかりと効果を発揮しているようで、圧縮率に関わらず、ほぼ一定のパフォーマンスが出ていた。
BarraCuda 510
FireCuda 510
IronWolf 110
続いて、「ATTO Disk Benchmark 4.01.0f1」の結果だ。こちらも、先に紹介した2つのベンチマーク結果と傾向は同じ。NVMe接続タイプはピーク性能がやや届いていないものの、64KB以降は公称スペックにかなり近いパフォーマンスが得られていることが確認できる。IronWolf 110もSATA 6Gb/sの限界に近い値で、なかなかのパフォーマンスといえる。
NVMe接続タイプのSSDは高速なアクセス速度が魅力だが、そのいっぽうで気になるのが“発熱”だ。PCにとって発熱は切っても切れない問題だが、大切なデータを格納するデバイスだからこそ、より一層注意したいところ。
そこで最後は、NVMe接続タイプのBarraCuda 510とFireCuda 510の発熱具合をチェックしてみた。今回は、断続したデータの読み書きを再現するため、「HD Tune Pro 5.75」のFile Benchmark(テストデータサイズ150GB)を実行。実行直後からベンチマーク終了後3分の温度変化を「HWiNFO 64」でモニタリングしてみた。結果は以下の通りだ。
BarraCuda 510
FireCuda 510
BarraCuda 510とFireCuda 510ともに、温度がピークに達したのはベンチマーク終盤で、ピーク温度は50℃を記録した。ただ、グラフを見てもらうとわかるが、ピーク温度が同じ50℃でも、BarraCuda 510が瞬間的に50℃を記録したのに対し、FireCuda 510はピーク時の温度がやや長めに続いている。ベンチマーク終了後も、BarraCuda 510がすぐに温度が下がり始めているのに、FireCuda 510はやや緩やかな温度変化だ。
FireCuda 510よりもBarraCuda 510のほうが瞬間的にピーク温度に達してすぐに温度が下がり始めているのは、おそらくNANDが片面実装のため、熱の発散がスムーズに行われたためだろう。とはいえ、FireCuda 510も、あの性能でピークを50℃に抑えているのは立派だ。元々性能が高いので、読み書きにかかる時間も短くなっているし、最近はヒートシンク付きのマザーボードも多くなっているので、このくらいの発熱具合であれば、ひと昔前のNVMe SSD比べれば十分扱いやすいだろう。
今回、スタンダードNVMe SSDのBarraCuda 510、ゲーミング向けハイエンドNVMe SSDのFireCuda 510、NAS向けSATA SSDのIronWolf 110という3つの最新SSDを一斉にテストしてみた。
BarraCuda 510は、ピークのライト性能こそFireCuda 510に及ばないものの、そのほかのパフォーマンスはFireCuda 510に肉薄。ボリュームゾーンの500GBモデルのTBWは、1万円前後で手に入れられる最近のNVMe SSDに比べると頭一つ飛び出ているし、発熱が少ない点も◎だ。片面実装や容量ラインアップから薄型ノートPCや小型PC向けに思われるが、メインマシンのシステムドライブ用SSDとしても十分使えそうだ。
FireCuda 510は、容量ラインアップやアクセス性能の高さから、ゲーミング用のデータを格納するゲーム専用SSDが利用シーンの一つとして考えられるが、ほかにも高いTBWを生かし、4K/8K映像などの大容量データを扱うクリエイティブ向けなんかにも積極的に使えそう。BarraCuda 510に比べると多少値が張るが、アクセス性能や耐久性といったトータルパフォーマンスを考えると、決して高くはない。1〜2TBクラスのハイエンドNVMe SSDの導入を検討している人にとって、間違いなく有力な選択肢になるはずだ。
IronWolf 110は、安定したパフォーマンスと高耐久・高信頼性から、まさにNAS向けといったモデル。単純にNASに組み込むのはもちろんだが、階層化キャッシング対応NASのキャッシュ用SSDとして組み込むのもよさそうだし、シーケンシャルリード/ライトが6Gb/sのSATA接続の限界近くの値が出ているので、今なら10GbE対応のNASと組み合わせてオールフラッシュアレイ(AFA)のNASを構築するというのもアリだろう。さすがに今回使用した3.84TBモデルは高価だが、幅広い容量ラインアップが用意されているので、ぜひ自分の利用用途にあったモデルを選んでほしい。
【関連リンク】
FireCuda 510製品ページ
BarraCuda 510製品ページ
IronWolf110製品ページ