レビュー

待望のフォルダブルスマホ、サムスン「Galaxy Fold」レビュー

auの秋モデルとして2019年10月25日に発売が予定されている「Galaxy Fold SCV44」(サムスン)は、国内初の折りたたみ可能な有機ELディスプレイを備えたスマートフォンとして高い注目を集めている。その実機(製品版とはソフトウェアが異なる場合がある)を使ったレビューをお届けする。

注目のフォルダブルスマホ「Galaxy Fold」はauが独占販売!

「Galaxy Fold SCV44」は、2,152×1,536のQXGA+表示に対応する、折りたたみ可能な約7.3インチの有機ELディスプレイ「Infinity Flex Display」を備えたフォルダブル(折りたたみ)スマートフォンだ。フォルダブルスマートフォンとしてはすでには、11月に本国で発売される予定のファーウェイの「Mate X」や、すでにリリース済みのロヨル「FlexPai」などがあるが、国内で正規販売されるものとしては本機が初。取り扱いはauのみで、10月25日から販売が始まる。

サイズはクローズ時で、約62.8(幅)×160.9(高さ)×15.7(厚さ)mm、オープン時で約117.9(幅)×160.9(高さ)×6.9(厚さ)mm。重量は約276g。ボディを開くと約7.3インチの大画面が現れる。なお、NFCポートは搭載されているが、FeliCaポート、防水・防塵ボディ、フルセグ・ワンセグのテレビチューナーとった国内市場向けの機能は一切搭載されていない。

手にした実機は300gに迫る重量で、さすがに軽くはない。だが、クローズ時であればしっかり握って持ち運ぶことができ、携帯性は思ったよりも良好である。分厚いヒンジは、剛性感があり適度な硬さ開閉できる。開いた状態ではカメラ部分の突起を除けば完全にフラットになる。

300gのボディは重いのは確かだが、閉じた状態なら手の小さな筆者でもしっかり握ることができる。持ち運びやすさという点では、思ったよりも良好である

厚みのあるヒンジで、ボディはかなりガッシリとした印象。ボディの開閉はカチッとした感触があって好ましい

厚みのあるヒンジで、ボディはかなりガッシリとした印象。ボディの開閉はカチッとした感触があって好ましい

開いた状態だと、カメラ部分の出っ張りを除けばフラットになる。ヒンジが出っ張らないので、テーブルなどにも置きやすい

下面から見たところ。USB Type-Cポートを備えるが、ヘッドホン端子は搭載されない。この角度から見ると、肉厚のヒンジ構造がわかりやすい

側面に、指紋認証センサーおよび、電源とボリューム調整の各ボタンが配置されている。サムスン独自のAIアシスタント「Bixby」の呼び出しボタンは搭載されていない

気になる「Infinity Flex Display」だが、折り曲がる部分を軽く圧してみると感触がやわらかい。折り曲がらない部分も保護ガラスで覆われていないので、一般的なスマートフォンとは感触が少し異なる。画質や輝度、残像感などは筆者の私物である「Galaxy S9」と比較しても同等レベル。また、縦横比が近ごろ主流の縦長ディスプレイとは異なり正方形に近く、写真や文字などは約7インチという画面サイズ以上に大きく表示される。Webページはスマートフォン用のものが表示されるが、この縦横比と画面サイズなら、PC用ページのほうが見やすいかもしれない。また、電子書籍も、画面の横幅が生きるので大きく見やすく表示できる。タブレット的な迫力のある画面が手のひらに収まるというのは新鮮だ。

なお、クローズ時のボディ表面には1,680×720のHD+表示に対応する約4.6インチの有機ELディスプレイ「カバーディスプレイ」が備わる。「Infinity Flex Display」と見比べると小さく感じるが、サブディスプレイではなく通常のディスプレイとして利用可能。ただし、本機ではかなり小さく感じられるので、使用用途は限定されそうだ。

メインのディスプレイ「Infinity Flex Display」はさすがに広い。正方形にやや近い縦横比もタブレットに近いもの

ディスプレイの右上にはインカメラを収めるためのノッチが設けられている

ディスプレイの右上にはインカメラを収めるためのノッチが設けられている

ディスプレイの中央にはうっすらと折り目が入っている

ディスプレイの中央にはうっすらと折り目が入っている

ディスプレイは厚めのフレームで囲われている。これは発売前に指摘されていた、強度不足を受けた改良と思われる

クローズ時に表面となるカバーディスプレイでも、通常のスマートフォンとしてのフル機能を使うことができる

クローズ時に表面となるカバーディスプレイでも、通常のスマートフォンとしてのフル機能を使うことができる

メモリーは12GB、ストレージ 512GBという破格の大容量

本機に、採用されるSoC「Snapdragon 855」は、「Galaxy S10」や「Galaxy Note 10」と同じものだ。ただし、メモリーが12GBと大容量で、国内では最高峰のスペックを誇るゲーミングスマホ「BlackShark2」(BlackShark)と並ぶ。ストレージに至っては、512GBというAndroidスマホとしては破格の大容量だ、ただし増設用のmicroSDXCメモリーカードスロットは非搭載となる。もっともこれだけのストレージ容量があれば、あえてSDカードで容量を増設することは滅多になさそうだ。

実際の処理性能を定番のベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク(バージョン8.0.1-OB)」で調べてみたところ、総合スコアは405,619(内訳:CPU:134,709、GPU:132,457、UX:56,323、RAM:82,130)となっている。同じSoCを搭載するGoogle「Pixel 4」のスコアが387,757(CPU:117,026、GPU:164,109、UX:51,237、MEM:55,385)なのと比較すると、RAMの性能が飛び抜けて高い。サブスコアを見ると、ストレージがより高速なUSF3.0であることが効いているようだ。いっぽうで、ディスプレイの解像度が高いことが影響しているのだろう、GPUのスコアはやや分が悪い。ただ描画のもたつきはPixel 4と並べて比べても、明らかな違いを感じ取ることができなかった。体感速度では、現状最速のSnapdragon 855搭載機として満足できるレベルで、特にメモリーが大容量なため、大型のアプリをいくつか起動したままにしても、タスクの切り替えが速かった。(製品版とソフトウェアが異なるため数値は参考値として参照のこと。)

AnTuTuベンチマーク(Ver.8.0.1-OB)を使ったベンチマークテスト結果。左が本機のスコアで、右が「Pixel 4」のスコアだ。トータルスコアでは本機のほうが高く、特にUFS 3.0を採用したことでMEMのスコアが高い。いっぽうで、GPUのスコアは少し不利となった

合計6基のカメラを搭載

本機は、メインカメラ3基のトリプルカメラを採用するほか、折りたたみディスプレイのある内側のインカメラにデュアルカメラを、さらに外側のカバーディスプレイに備わるアウトカメラ1基の合計6基のカメラを搭載する。トリプルカメラのスペックを見ると「Galaxy S10」に近い。フロントカメラは約1,000万画素と、約800万画素のRGB深度カメラという組み合わせだ。もうひとつのアウトカメラは、外側の「カバーディスプレイ」を使った場合の自撮りや顔認証に使う。

メインカメラは焦点距離13mm超広角、26mmの標準、52mmの望遠という焦点距離の異なる3台のカメラを搭載する

メインカメラは焦点距離13mm超広角、26mmの標準、52mmの望遠という焦点距離の異なる3台のカメラを搭載する

インカメラは、約1,000万画素と、約800万画素のRGB深度センサーのデュアルカメラ。顔認証にも使われるが、認証速度と精度が筆者の使っている「Galaxy S9」と比較して大きく向上していた

カバーディスプレイのある面にも、アウトカメラが搭載されている。これは、自撮りに加えて顔認証などに使うためのもの

以下に、メインカメラを使った静止画の作例を掲載する。なお、初期設定のまま、カメラ任せのオートモードで撮影を行っている。

超広角カメラで撮影

操作画面上では標準カメラに対して0.5倍と表示されるが、35mm換算の焦点距離で13mmというかなりの超広角となっている。

35mm換算で26mmの焦点距離。標準カメラという位置づけで、カメラを起動した場合にはまずこの焦点距離が選択される

操作画面上では標準カメラに対して2倍と表示される。35mm換算の焦点距離は52mmで、サムスン「Galaxy S10」やソニーモバイル「Xperia 1」と同じ焦点距離となる

未来をいち早く手にするという魅力

最後に本機の価格だが、245,520円という端末価格(税込み)は、スマートフォンとしては異例なほど高価だ。しかも、10月末まで受け付けている「アップグレードプログラムDX」の対象外なので、端末価格の全額をユーザーが負担することになる。そのうえ、auの端末補償サービス「故障紛失サポート」も本機に限っては月額1,190円と、通常のスマートフォンよりも4割ほど高い。取り扱う店舗も「au Online Shop」、全国13か所のKDDIおよび沖縄セルラー直営店、サムスンの運営する「Galaxy Harajuku」に加えて、大手家電量販店の旗艦店レベルの店舗に限られている。auとしても本機を数多く売る気はないようだ。

筆者も使ってみるまでは、フォルダブルスマートフォンの魅力には半信半疑なところがあった。だが、使ってみると、今までのスマートフォンにはない使い勝手や魅力があると感じた。2020年に商用サービスの始まる5G時代になりさらにコンテンツの品質が向上すれば、本機のようなさらなる大画面が要望されるというのもうなずける。価格が高いこともあり、万人におすすめできる製品ではないが、新しもの好きのガジェットファンなら間違いなく満足できるだろう。ちなみに、街中で本機を使っていた際の視線の集まり方は、今までのAndroidスマートフォンのレビューでは体験したことのないものだった。技術革新が進み、フォルダブルスマートフォンが安価に入手できる未来が待ち遠しい。

なお、夜景を中心とした作例、様々なアプリを表示させた場合の挙動、バッテリー持ちなどのさらなる使い勝手は、近日中にこちらのページでお届けする予定だ。

田中 巧(編集部)

田中 巧(編集部)

FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。

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