特別企画

「iPhone 12」と「iPhone 12 Pro」キャリア版とSIMフリー版どちらがお得?

アップルの「iPhone 12」

アップルの「iPhone 12」

2020年10月、アップルの最新スマートフォン「iPhone 12 mini」「iPhone 12」「iPhone 12 Pro」「iPhone 12 Pro Max」が発表されました。新型コロナウイルス感染症の影響で1か月ほど発表が遅れた今年のiPhoneシリーズは5Gに対応しており、磁力でアクセサリーを取り付けられる「MagSafe」や昨年の「iPhone 11」シリーズから一新されたデザインなど、注目度の高いモデルです。

4モデルのうち10月23日に「iPhone 12」「iPhone 12 Pro」の2モデルが発売されましたが、気になるのは各キャリアのキャリア版とSIMフリー版のどちらを購入するのがお得かというところ。そこで今回は2020年最新モデルのうち「iPhone 12」「iPhone 12 Pro」について、NTTドコモ、au、ソフトバンクのキャリア版を購入する場合と、大手キャリアから格安SIMに乗り換えてSIMフリー版を利用する場合のコストがどれくらいになるのかを比較してみました。

※記事中の価格は特に断りがない限り税別です。

iPhone 12とiPhone 12 Proの販売価格は?

まずはiPhone 12とiPhone 12 Proの販売価格を以下の表にまとめました。

キャリア版のiPhoneは、端末の返却を前提に分割払いの一部が免除されるサービス(ここでは「買い替え(返却)サービス」と呼びます)の適用を受けることができるため、サービスを利用せず全額支払う場合の支払額を「最後まで使う」、買い替え(返却)サービスを利用する場合の支払額を「2年で返却」または「2年で機種変更」として併記しています。

iPhone 12およびiPhone 12 Proの販売価格一覧

iPhone 12およびiPhone 12 Proの販売価格一覧

なお、NTTドコモ、au、ソフトバンクではMNP(携帯電話・PHS番号ポータビリティー)制度を利用して他社から乗り換えたり、対象機種をオンラインショップで購入したりした場合に本体価格を割り引くキャンペーンを展開しています。iPhone 12/12 Proの場合、NTTドコモでは「5G WELCOME割」として他社から5Gへの乗り換え時に20,000円(税込22,000円)、auは「au Online Shop お得割」として他社から乗り換え時にオンラインショップで購入すると20,000円(税込22,000円)、ソフトバンクは「web割」として他社から乗り換え時にオンラインショップで購入すると19,637円(税込21,600円)が割り引かれます。

次に、各キャリアの買い替え(返却)サービスの詳細を以下にまとめました。3社とも回線を契約していなくてもサービスを利用できますが、auとソフトバンクは返却に加えて指定機種への機種変更も必要となります。

iPhoneの本体価格のうちNTTドコモは最大3分の1、ソフトバンクは最大半分が免除されます。auは高額に設定されている最終回の支払分が免除される仕組みで、もしも返却せずに使い続ける場合は最終回支払分を24回に分割することが可能です(その場合の支払回数は合計47回)。返却時に端末が故障しているなどして査定条件を満たさなかった場合、20,000円(税別、NTTドコモ)または22,000円(不課税、auおよびソフトバンク)の支払いが必要になることがあります。

各キャリアの買い替え(返却)サービスとその条件

各キャリアの買い替え(返却)サービスとその条件

なお、iPhoneの販売価格や料金プラン・各サービスは10月23日時点での内容となります。

各キャリアの料金プランは?

コスト比較の前に、各キャリアの料金プランにおける月額料金をチェックしておきましょう。以下の表にNTTドコモ、au、ソフトバンクの5G対応機種向け料金プランと、SIMフリー版iPhoneと組み合わせる格安SIMの例として執筆時点でiPhone 12/12 Proの動作確認が済んでいた「IIJmioモバイルサービス」の料金プランをまとめました。

各キャリアの月額料金は通話定額オプションを利用しない前提として、auのみ2年契約をともなう価格としました。比較しやすくするために、初回契約時の期間限定割引、端末補償サービスなどのオプション料金、回線数に応じた割引サービス、固定通信サービスとのセット割引なども考慮していません。

IIJmioの「従量制プラン」は1GB単位で価格が変動(2GB以降は1GBごとに200円加算)するため、3GB〜19GBの範囲を省略しています。また、表には未記載ですが、IIJmioでは月額3,100円で20GB/月、あるいは月額5,000円で30GB/月を追加できる「大容量オプション」も提供しています。2つのオプションを同時に追加することも可能で、その場合のデータ利用量は最大で62GB/月(ファミリーシェアプランに追加)となります。

なお、iPhone 12シリーズは5Gに対応していることから、キャリア版を購入する場合は5G契約が必要とされています。いっぽう格安SIMで5Gサービスを提供しているのはごく一部に限られており、大半の格安SIMではiPhone 12シリーズと組み合わせる場合でも4Gサービスで利用することになります。

NTTドコモ、au、ソフトバンク、IIJmioの料金プラン一覧

NTTドコモ、au、ソフトバンク、IIJmioの料金プラン一覧

返却するまで利用する場合のコストを比較

それでは、大手キャリアのiPhoneを返却するまで(約2年間)利用する場合のコストを比較してみましょう。

以下の表に、NTTドコモ版、au版、ソフトバンク版、SIMフリー版のiPhone 12とiPhone 12 Proをそれぞれ約2年間利用した場合の合計コストと毎月のコストをまとめました。各キャリアとも新規契約/機種変更/契約変更にともなう手数料や、他社から乗り換えた場合の割引などは考慮していません。

NTTドコモとソフトバンクは24か月分の合計コストと月額料金を試算しました。auの「かえトクプログラム」は前述のように高額に設定されている24回目の支払いが免除される仕組みであるため、auのみ23か月分の合計コストと月額料金を試算しています。

また、SIMフリー版はNTTドコモとソフトバンクに合わせて毎月のコストに本体価格を24等分した金額を加算した場合と、au版に合わせて毎月のコストに本体価格を23等分した金額を加算した場合の2通りを試算しました。

NTTドコモ版、ソフトバンク版のiPhone 12を返却するまで利用する場合のコストと比較

NTTドコモ版、ソフトバンク版のiPhone 12を返却するまで利用する場合のコストと比較

au版のiPhone 12を返却するまで利用する場合のコストと比較

au版のiPhone 12を返却するまで利用する場合のコストと比較

NTTドコモ版、ソフトバンク版のiPhone 12 Proを返却するまで利用する場合のコストと比較

NTTドコモ版、ソフトバンク版のiPhone 12 Proを返却するまで利用する場合のコストと比較

au版のiPhone 12 Proを返却するまで利用する場合のコストと比較

au版のiPhone 12 Proを返却するまで利用する場合のコストと比較

価格が最も安いiPhone 12 64GBモデルで通信量が1GB/月以下だった場合のキャリア版の毎月のコストは、NTTドコモ版が5,710円、au版が5,171円、ソフトバンク版が6,080円となります。NTTドコモ版はau版やソフトバンク版よりも本体価格が1万円ほど高く、auの「ピタットプラン5G」はソフトバンクの「ミニフィットプラン」よりも月額で1,000円安いことから、キャリア版の毎月のコストはau版が最も安くなっています。

こうしたキャリア版に対し、IIJmioと組み合わせたSIMフリー版の毎月のコストは3GB/月でも5,175円または5,330円となっています。データ利用量が小容量の場合、同程度の月額料金でもSIMフリー版と格安SIMの組み合わせのほうがより多く通信できることがわかります。

また、価格が最も高いiPhone 12 Pro 512GBで通信量が1GB/月以下だった場合の毎月のコストは、NTTドコモ版が7,430円、au版が6,535円、ソフトバンク版が7,389円、SIMフリー版が7,005円または7,258円です。このように、データ利用量が小容量でも本体価格が高いモデルの場合、一部のキャリア版のほうがお得なこともあります。

いっぽう、iPhone 12 64GBモデルで7GB/月以上通信する場合の毎月のコストは、NTTドコモ版が10,210円(5Gギガホ)、au版が10,671円(データMAX 5G)、ソフトバンク版が10,580円(メリハリプラン)となります。

IIJmioと組み合わせたSIMフリー版の場合は中容量の選択肢も多いため、12GB/月までなら6,835円または6,990円(ファミリーシェアプラン)で済みますし、IIJmioの「大容量オプション」を追加すれば23GB/月までで8,275円または8,430円(ミニマムスタートプラン+データオプション20GB)、33GB/月までなら10,175円または10,330円(ミニマムスタートプラン+データオプション30GB)で利用することが可能です。

ただし、36GB/月までの場合は10,795円または10,950円(ライトスタートプラン+データオプション30GB)となるため、これ以上のデータ利用量の範囲についてはキャリア版のほうがお得です。

最後まで使う場合のランニングコストを比較

次に、キャリア版のiPhoneを返却せずに使い続ける場合のコストを比べてみましょう。期間は大手キャリアの分割払い回数(NTTドコモは36回、auは47回、ソフトバンクは48回)に合わせています。

●NTTドコモ版とSIMフリー版を比較

最初にNTTドコモ版とSIMフリー版のiPhone 12とiPhone 12 Proをそれぞれ3年間利用し続ける場合のコストを試算してみました。SIMフリー版の毎月のコストには本体価格を36等分した金額を分割払い相当の価格として加えています。

NTTドコモ版とSIMフリー版のiPhone 12のコスト

NTTドコモ版とSIMフリー版のiPhone 12のコスト

NTTドコモ版とSIMフリー版のiPhone 12 Proのコスト

NTTドコモ版とSIMフリー版のiPhone 12 Proのコスト

本体価格が最も安いiPhone 12の64GBモデルで通信量が3GB/月までの小容量プランにおける毎月のコストは、NTTドコモ版が6,710円(5Gギガライト)、SIMフリー版が3,983円(ミニマムスタートプラン)で、SIMフリー版のほうが毎月2,727円お得です。3年間の合計コストにおける差額は10万円に迫る98,160円となっています。

大容量プランの場合、NTTドコモ版の毎月のコストは10,210円(5Gギガホ)で、SIMフリー版で42GB/月まで利用する場合の10,643円(ファミリーシェアプラン+データオプション30GB)とほぼ同額となります。

本体価格が最も高いiPhone 12 Pro 512GBモデルも同様で、通信量が3GB/月の小容量における毎月のコストはNTTドコモ版が8,430円(5Gギガライト)、SIMフリー版が5,483円(ミニマムスタートプラン)、3年間の差額は106,080円となります。大容量における毎月のコストはNTTドコモ版が11,930円(5Gギガホ)で、SIMフリー版で42GB/月まで利用する場合の12,143円(ファミリーシェアプラン+データオプション30GB)とほぼ同額です。

●au版とSIMフリー版を比較

続いてau版とSIMフリー版のiPhone 12とiPhone 12 Proをそれぞれ4年間利用し続ける場合のコストを試算してみました。au版は23回目までの分割払い額と24回目を24分割した際の分割払い額が異なるため、双方を記載しています。また、SIMフリー版の毎月のコストには本体価格を47等分した金額を分割払い相当の価格として加えています。

au版とSIMフリー版のiPhone 12のコスト

au版とSIMフリー版のiPhone 12のコスト

au版とSIMフリー版のiPhone 12 Proのコスト

au版とSIMフリー版のiPhone 12 Proのコスト

本体価格が最も安いiPhone 12の64GBモデルで3〜4GB/月程度通信する場合の小容量プランにおける毎月のコストは、au版が6,671円(ピタットプラン 5Gで4GB/月まで、24回目以降は4,798円)、SIMフリー版が3,426円(ミニマムスタートプラン)または4,046円(ライトスタートプラン)です。4年間の合計コストにおける差額は114,448円〜143,588円となります。

大容量プランの場合、データ利用量が使い放題なau版の毎月のコストは10,671円(データMAX 5G、24回目以降は10,298円)で、SIMフリー版で42GB/月まで利用する場合の10,086円(ファミリーシェアプラン+データオプション30GB)に近い価格となります。

本体価格が最も高いiPhone 12 Pro 512GBモデルで3〜4GB/月程度通信する場合の小容量における毎月のコストは、au版が8,035円(ピタットプラン 5Gで4GB/月まで、24回目以降は7,444円)、SIMフリー版が4,574円(ミニマムスタートプラン)または5,194円(ライトスタートプラン)です。大容量における毎月のコストはau版が12,035円(データMAX 5G、24回目以降は11,444円)で、SIMフリー版で42GB/月まで利用する場合の11,234円(ファミリーシェアプラン+データオプション30GB)に近い価格です。

●ソフトバンク版とSIMフリー版を比較

最後に、ソフトバンク版とSIMフリー版のiPhone 12とiPhone 12 Proをそれぞれ4年間利用し続ける場合のコストを試算しました。SIMフリー版の毎月のコストには本体価格を48等分した金額を分割払い相当の価格として加えています。

ソフトバンク版とSIMフリー版のiPhone 12のコスト

ソフトバンク版とSIMフリー版のiPhone 12のコスト

ソフトバンク版とSIMフリー版のiPhone 12 Proのコスト

ソフトバンク版とSIMフリー版のiPhone 12 Proのコスト

【修正履歴】初出時に「ソフトバンク版とSIMフリー版のiPhone 12 Proのコスト」の表に別の表が入っておりました。お詫びして訂正します。[2020年12月2日 18:40]

本体価格が最も安いiPhone 12の64GBモデルで通信量が2GB/月までの小容量プランにおける毎月のコストは、ソフトバンク版が8,080円(ミニフィットプラン)、SIMフリー版が3,188円(従量制プラン)で、SIMフリー版のほうが毎月4,892円お得です。4年間の合計コストにおける差額は234,840円に達します。

いっぽう大容量プランの場合、ソフトバンク版の毎月のコストは10,580円(メリハリプランで50GB/月まで)で、SIMフリー版で42GB/月まで利用する場合の10,048円(ファミリーシェアプラン+データオプション30GB)に近い価格です。ソフトバンクのメリハリプランは50GB/月であることに加えてYouTubeやTwitterといった動画配信サービスやSNSの通信が無料になるゼロレーティング機能も備えているため、ソフトバンク版のiPhone 12は大容量プランで利用するのがお得と言えます。

本体価格が最も高いiPhone 12 Pro 512GBモデルも同様で、通信量が2GB/月の小容量における毎月のコストはソフトバンク版が9,389円(ミニフィットプラン)、SIMフリー版が4,313円(従量制プラン)で、4年間の差額は243,677円です。大容量における毎月のコストはソフトバンク版が11,889円(メリハリプランで50GB/月まで)で、SIMフリー版で42GB/月まで利用する場合の11,173円(ファミリーシェアプラン+データオプション30GB)に近い価格となります。

まとめ:現実的な「2年で機種変更」のキーポイントは「家族の人数」

2019年に成立した改正電気通信事業法によって「分離プラン」の導入が義務化されたことで、スマートフォンの本体価格に対する大幅な割引は見られなくなりました。

代わりに大手キャリアは、分割払い残金の一部を免除する買い替え(返却)サービスを導入しています。ユーザーは2年間使ったスマートフォンを大手キャリアに返却することで、最大で本体価格の3分の1〜半額を支払わずに済みます。

auとソフトバンクでは機種変更も免除の条件となりますが、2年ごとにiPhoneを買い換えるパターンを長年続けてきたユーザーからすれば、本体価格が10万円を超えるようになったiPhoneを使い続ける上で、買い替え(返却)サービスは現実的な選択肢と言えるでしょう。

買い替え(返却)サービスの利用を前提としたキャリア版のiPhoneと、格安SIMと組み合わせるSIMフリー版iPhoneのコスト比較をざっくりまとめると、「本体価格が安いモデルでデータ利用量が小容量ならSIMフリー版と格安SIMの組み合わせがお得」ですが、「データ利用量が大容量の場合はキャリア版のほうがお得」と言えます。

今回格安SIMの例として選んだIIJmioの場合、おおむね33GB/月(ミニマムスタートプラン+データオプション30GB)〜36GB/月(ライトスタートプラン+データオプション30GB)がキャリア版に対してお得かどうかの境目となります。大手キャリアの5G向け料金プランはauの「データMAX 5G」が使い放題、NTTドコモの「5Gギガホ」も現在キャンペーンで使い放題(本来は100GB/月)となっているため、大容量を求めるのであればキャリア版を選ぶのがよいでしょう。

また、大手キャリアは家族割も充実しています。4人以上で同じキャリアを契約している場合の回線ごとの割引額はNTTドコモが1,000円、auが1,000円または2,020円(料金プランにより異なる)、ソフトバンクが2,000円(ミニフィットプランは割引の対象外)となっており、特に大容量や使い放題のプランで割引額が大きくなるのが魅力です。

いっぽう、iPhoneを2年以上使い続けるのであれば、SIMフリー版を格安SIMで利用するのがお得な場合もあります。アップルが提供するショッピングローンはタイミング次第で分割金利手数料が無料になりますし、下取りサービスの「Apple Trade In」を利用することも可能です。ランニングコストを抑えたい人はSIMフリー版と格安SIMの組み合わせも検討してみるといいかもしれません。

松村武宏

松村武宏

信州佐久からモバイル情報を発信するフリーライターであり2児の父。気になった格安SIMは自分で契約せずにはいられません。上京した日のお昼ごはんは8割くらいカレーです。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
プレゼント
価格.comマガジン プレゼントマンデー
SPECIAL
ページトップへ戻る