ASUS JAPANは2021年1月27日、NVIDIAのノートパソコン向け最新GPU「GeForce RTX30シリーズ」を搭載したゲーミングノートを発表した。今回は「GeForce RTX3080」を搭載した「ROG Strix SCAR 17」と「GeForce RTX3070」を搭載する「TUF DASH F15」をひと足早く試すことができたので、そのレビューをお届けしたい。
ASUS JAPANの最新ゲーミングノートPCであるROG Strix SCAR 17(左)とTUF DASH F15(右)をレビュー
「ROG Strix SCAR」シリーズは、本気でゲームをプレイするコアゲーマー向けのハイスペックなゲーミングノート。最新のGPUとCPUを搭載するのが特徴だ。15インチモデルと17インチモデルがラインアップされているが、今回は17インチモデルを試した。
GeForce RTX3080と「Ryzen 9 5900HX」という最新のGPUとCPUを搭載するROG Strix SCAR 17(G733QS)。発売は2月中旬予定。価格はオープンで市場想定価格は229,818円(税別)
まずは外観をチェックしよう。ボディの一部がステルスパーツで、内部が透けて見えるなど、かなり凝ったデザインだ。ヒンジのカバーの一部は交換可能な「Armorキャップ」で、好みにカスタマイズできる。海外モデルではピンクなどがあるが、日本向けは透明パーツと金属パーツの2つが付属している。また、Armorキャップを取り外すと、「4FGC+M5」という数字と記号が記されている。これは「イースターエッグデザイン」で、ある意味が込められている。ここではその意味は書かないので、購入した人はぜひ調べてみてほしい。
キーボードの右上部は内部がうっすらと見えるユニークなデザイン
ヒンジの右側のカバーが交換できるArmorキャップ。金属、樹脂、透明の3つのパーツを付け替えられる
Armorキャップを外すと、「4FGC+M5」という数字と記号が表れる。これには、ある意味が込められている。底面にも数字と記号があるので、購入したらぜひ調べてみてほしい
天板にはレーザー彫刻機を使った鏡面加工が施されている。ROGのロゴはもちろん光る仕様で、左下のドットの部分をよく見るとROGのロゴや漢字などが浮かび上がる。表面には水をはじくナノコーティングが施してある。
ナノコーティングが施された天板。指紋は目立つが、ナノコーティングが施されているのでサッと汚れを拭き取れるのもうれしい
もうひとつの特徴がオプティカルメカニカルキーボード。ゲーミングキーボードの多くはメカニカルキーボードだが、ノートパソコンでは珍しい。さらに、光(オプティカル)スイッチを採用しているのもポイント。一般的な機械式スイッチは可動部が多く、金属接点で作動するのに対して、光スイッチは光で作動するので、バウンス遅延を抑えられるという。一瞬のキー操作が勝負をわける格闘ゲームやFPSでその効果を発揮するはずだ。
カチカチという打鍵音が気持ちいいオプティカルメカニカルキーボードを搭載。デスクトップ用のメカニカルキーボードを使っている感覚で入力できる。注意点は英語キーということ。ゲームはプレイしやすいが、文章作成など日常使いには慣れが必要かもしれない
ディスプレイは1920×1080(フルHD)の17.3型。リフレッシュレート300Hz、応答速度3msの超高速なディスプレイだ。ノートパソコンとしてはトップクラスのリフレッシュレートで、画面のなめらかさが重要なFPSゲームも快適に楽しめる。
リフレッシュレート300Hzの超高速ディスプレイ。フルHDの17.3型はフレームレートが重要なFPSや格闘ゲームに向いている
肝心のスペックだが、GPUはGeForce RTX30シリーズのノートパソコン向けの最上位であるGeForce RTX3080を搭載する。デスクトップ版と同じく、最新のAmpereアーキテクチャーを採用し、2倍のスループットを実現する第2世代RTコア、最大2倍のスループットを実現する第3世代Tensorコアを備える。特にレイトレーシング対応のタイトルでその性能を発揮してくれるはずだ。
GPUだけでなくCPUにも注目したい。AMDの「Zen 3アーキテクチャー」を採用したゲーミングノート向けCPU「Ryzen 9 5900HX」(オーバークロック済み)をいち早く採用。8コア16スレッドで、最大クロックは4.6GHzに達する。そのほか、メモリーは32GB(DDR4-3200)、ストレージは2TB SSD(PCI Express 3.0 x4接続)と非常にハイスペックなモデルだ。
その実力をチェックするために定番のベンチマークテストを実施した。比較用に同社の「ROG Zephyrus Duo 15」(2020年8月発売)の結果を併記しておく。同モデルはCore i9-10980HK、GeForce RTX 2080 Super with Max-Q design、32GBのメモリー(DDR4-3200)、2TB SSD(1TB×2 RAID 0)というモデルだ。ROG Zephyrus Duo 15についてはこちらの記事をチェックしてもらいたい。
ROG Strix SCAR 17は「ターボ」モードでベンチマークを実施。手動でオーバークロックすることもできるが、今回は実施していない
ROG Zephyrus Duo 15は非常にハイスペックだが、ROG Strix SCAR 17はさらにワンランク上を行く。CPU性能を測定するCINEBENCH R20はどちらも8コアだが、Ryzen 9 5900HX はCore i9-10980HKのスコアを大きく上回っている。3D Mark Professionalでは、リアルタイムのレイトレーシングの性能を測定するPort Royalの結果の高さに注目だ。
ASUSのゲーミングノートの特徴は、すぐれた冷却機能を備えること。他社ではなかなか真似のできない液体金属グリスを使用することで、最大16°の温度低下を実現。6本のヒートパイプがCPU、GPU、VRAMなど広い範囲をカバーし熱を濃縮して、ヒートシンクフィンへ送る。ファンには自動でほこりを外へ排出する「セルフクリーニング2.0」を搭載。「2.0」へアップデートされ、先代と比べて15%のエアフロー改善を実現しているという。
「ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ ベンチマーク」の結果。「最高品質」でも「非常に快適」という評価だった
バトルロイヤルゲーム「フォートナイト」のfps。シーンによってfpsは上下するが、最高画質に設定した場合でも120fps以上で動作した(左)。最高画質からひとつ設定を下げると200fps前後は出た。ROG Strix SCAR 17は、動作状況に応じて自動でCPU/GPUの動作周波数やファンの回転速度を制御する「ROG Boost」によって、最適なfpsでゲームを楽しめる。ROG Boostは、マザーボードメーカーならではのこだわりの7 Phase電源回路により安定した動作を実現しているのだ
外部インターフェイスは左側面と背面に搭載されている。右側にポート類がないので、マウスを動かすときにじゃまにならない。背面のUSB Type-Cポートは、最大100Wまで給電できるUSB Power Delivery対応
本体サイズは395(幅)×282.1(奥行)×23.4〜27.5(高さ)mm、重量は約2.75kg。大きくて重いが、据え置きでの利用がメインになるので、それほどサイズは気になることはないだろう。バッテリー駆動時間は約12.2時間と長め。30分で50%まで充電できる急速充電にも対応する。
TUF DASH F15はこれからゲームをはじめたい人や普段プレイしているゲームをもっと快適に楽しみたい人向けのモデルだ。コストパフォーマンスにすぐれており、ゲームはもちろん仕事や趣味など幅広い用途に使える。同社のゲーミングノートの主力モデルでもある。
15.6型のフルHDディスプレイを備えるTUF DASH F15。発売は2月上旬の予定。価格はオープンで、市場想定価格は199,818円(税別)
こちらもデザインから見ていこう。TUFシリーズは文字通り堅牢さがウリで、以前はタフを体現したような無骨なデザインだったが、新モデルはシンプルなデザインに変更されている。TUFのロゴデザインも変わり、いい意味でゲーミングノートっぽさが薄れている。それでもTUFシリーズの代名詞であるMIL-STD-810H規格に適合するミリタリーグレードの剛性はしっかりと確保されている。
カラーバリエーションは、「エクリプスグレー」と「ムーンライトホワイト」という2色が用意されている。写真はムーンライトホワイトで、一見するとゲーミングノートには見えないシンプルなデザイン
ディスプレイは1920×1080(フルHD)の15.6型。240Hz/3msという高リフレッシュレートでAdaptive Syncもサポートしており、快適にゲームを楽しめる。sRGB100%の広色域でクリエイティブな用途にも適している。キーボードはゲームでよく利用するWASDキーがステルス仕様。ROG Strix SCAR 17はゲームに特化するために英語キーだが、TUF DASH F15は日本語キーを備える。
ROG Strix SCAR 17の300Hzには劣るが、240Hzの高リフレッシュレートで、FPSをプレイする人に適している。TUFシリーズで240Hzのディスプレイを搭載するのは初だ。ノングレアで映り込みも少ない
オーソドックスな日本語キーで、ゲーム以外にも使いやすい。パームレストも広く、快適にゲームをプレイできる
WASDキーは透明なキーキャップ。全体的にシンプルなデザインだが、ここだけはゲーミングノートらしい仕掛けとなっている
スペックを見ていこう。CPUはインテルが1月に発表したばかりの「Core i7-11370H」を搭載。「Tiger Lake H35」という開発コード名で呼ばれていたTDP(熱設計電力)35W
のゲーミングノート向けCPUだ。4コア8スレッドで、動作周波数は標準3.3GHz、最大4.8GHz。GPUはGeForce RTX3070で、1440pのウルトラ設定のゲームを90fpsでプレイできるという性能だ。「GeForce RTX2070」と比べると1.5倍の性能を実現しているという。そのほか、メモリーは16GB(DDR4-3200)、ストレージは1TB SSD(PCI express 3.0 x4接続)というスペックだ。
こちらも定番のベンチマークテストを実施。比較用に同社の「ROG Strix SCAR 15」(2020年7月発売)の結果を併記しておく。同モデルはCore i9-10980HK、GeForce RTX 2070 Super with Max-Q design、32GBのメモリー(DDR4-3200)、2TB SSD(1TB×2 RAID 0)というモデルだ。ROG Strix SCAR 15についてはこちらの記事をチェックしてもらいたい。
どちらも「ターボ」モードでベンチマークを実施
比較対象がTUFシリーズよりワンランク上のROG Strix SCARシリーズということで、スコア的に負けている部分はあるが、発売時の価格差が10万円ほどあることを考えると、TUF DASH F15のコストパフォーマンスの高さが光る。リアルタイムのレイトレーシングの性能を測定する3D Mark ProfessionalのPort RoyalはTUF DASH F15のほうが上だ。TUF DASH F15は液体金属グリスを採用していないが、4か所排気や12Vファンなど充実した冷却機能を備える。
「ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ ベンチマーク」の結果。GeForce RTX3080を搭載するROG Strix SCAR 17よりもスコアは低いが、「最高品質」でも「非常に快適」という評価だった
本体サイズは360(幅)×252(奥行)×19.9〜20.9(高さ)mm、重量は約2.1kg。バッテリー駆動時間は約12.6時間と長めなので、LANパーティーなど友達の家に持って行ってゲームをするといった使い方にも向いている。
外部インターフェイスは抜き差ししやすい両サイドに配置されている
おうち時間の増加でPCゲームをはじめる人も増えているだろう。ゲーミングノート選びのポイントは、遊びたいゲームの推奨環境よりもワンランク上のモデルを選ぶこと。もちろん、推奨環境でもプレイできるが最新のゲームだと、思ったようなクオリティで遊ぶことができない。特にレイトレーシング対応の最新ゲームを楽しみたいという人は、最新のGPUを搭載したモデルを選んだほうがいいだろう。
その点、今回紹介したASUSのゲーミングノートは最新のGPUとCPUを搭載しており、最新のゲームを最高画質で楽しめるだろう。どちらも高リフレッシュレートのディスプレイを搭載しているので、FPSをプレイする人にもピッタリだ。スペックに縛られずに、どんなゲームもサクサクと楽しみたいという人はROG Strix SCAR 17を、これからゲームを楽しみたいという人は高コスパなTUF DASH F15をチェックしてもらいたい。
パソコン関連を担当する双子の兄。守備範囲の広さ(浅いけど)が長所。最近、鉄道の魅力にハマりつつあります。