「iPad」シリーズのラインアップは、iPad Pro、iPad Air、iPad(A16)、iPad miniとバリエーションが多く、使い方によっておすすめのモデルが異なります。初めてiPadを購入する場合や、久しぶりに買い替える場合には、どの機種にするべきか悩むことも多いでしょう。そこで、本記事では、iPadの現行のラインアップをおさらいし、各モデルの性能や機能を徹底比較。それぞれの選び方のポイントについて解説します。
iPadのApple Store(オンライン)におけるラインアップは、2025年12月時点で以下の6モデルが展開されています。
・13インチiPad Pro(M5):2025年10月発売、M5チップ搭載
・11インチiPad Pro(M5):2025年10月発売、M5チップ搭載
・13インチiPad Air(M3):2025年3月発売、M3チップ搭載
・11インチiPad Air(M3):2025年3月発売、M3チップ搭載
・iPad(A16):2025年3月発売、A16チップ搭載、11インチ
・iPad mini(A17 Pro):2024年10月発売、A17 Proチップ搭載、8.3インチ
ここからは、シリーズごとの概要を簡単に紹介します。
最上位モデルの「iPad Pro」には、イラスト制作や動画編集などの作業スペースを広く確保できる13インチモデルと、ある程度の作業領域を確保しつつ持ち運びも意識した11インチモデルの2サイズがあります。また、頭脳となるチップセットには、Macシリーズでおなじみの「M」シリーズの最新世代チップ「M5」を搭載しており、PCに劣らない処理性能の高さを誇ります。もちろん、Apple IntelligenceやAAAタイトルのゲームにも対応しています。
「iPad Pro」
「iPad Pro」よりも、少々安価に入手できる選択肢として「iPad Air」があります。こちらも13インチと11インチの2サイズを選択可能。チップセットは「M」シリーズを搭載しますが、「iPad Pro」よりも2世代分古い「M3」チップです。Apple IntelligenceやAAAタイトルのゲームに対応しています。
「iPad Air」
「iPad」は、現行のラインアップの中で最も安価な選択肢です。画面サイズは11インチの1種類のみ。チップセットは、「iPhone 15」や「iPhone 14 Pro/Pro Max」と同じナンバリングの「A16」を搭載。Apple Intelligenceには非対応です。
「iPad」
「iPad mini」は、8.3インチのコンパクトなモデルです。搭載するチップセットは、「iPhone 15 Pro」と同じ「A17 Pro」を搭載しており、上で紹介した「iPad(A16)」よりも高性能。Apple IntelligenceやAAAタイトルのゲームに対応しています。
「iPad mini」
2025年10月に発売された「13インチiPad Pro(M5)」は、現行ラインアップの最上位モデルです。13インチという画面サイズは、現行の「MacBook Air」の13.6インチと比べてひと回り小さいくらい。つまり、標準的なモバイルノートPCに近しい表示領域が確保できます。
「iPad Pro(M5)」シリーズ
「13インチiPad Pro(M5)」は、高いレベルでクリエイティブな作業を行う人におすすめです。たとえば、漫画やイラストを描く作業や、動画編集、CAD系アプリでの図面製作などが該当するでしょう。
ストレージは、256GB、512GB、1TB、2TBの4種類。なかでも、1TBと2TBを選択する場合には、ディスプレイのガラスに、写り込みを抑えつつ画質とコントラストを保てる「Nano-textureガラス」をオプションとして選択できます。たとえば、カメラで撮影した写真や動画を確認といった、プロフェッショナル向けのモニターとしても高いポテンシャルを秘めています。
「13インチiPad Pro(M5)」のApple Storeでの販売価格(以下同)は、218,800円〜(税込。以下同)。もし、トラックパッド付きキーボードの「13インチiPad Pro用Magic Keyboard」(59,800円)と、スタイラスペンの「Apple Pencil Pro」(21,800円)を揃えるならば、合計の予算として30万円以上を見積もっておく必要があります。
2025年秋にリリースされた「iPadOS 26」では、iPad上でアプリウィンドウを自在に配置できる。従来以上にPCライクな使い方ができるようになった
いっぽう、ひと回りコンパクトな「11インチiPad Pro(M5)」は、イラスト制作や動画編集などハイパフォーマンスに活用したうえで、外出先への持ち運びも考慮したい場合におすすめです。
11インチモデルの重量は、Wi-Fiモデルで444g。13インチWi-Fiモデルの579gと比べて100g以上も軽いので、バッグに忍ばせやすく、ノートパソコンとの2台持ちにも適しています。
また、「iPad Pro」シリーズの背面カメラには、AR系のアプリにおける空間認識精度を高める「LiDARスキャナ」というセンサーや、書類をスキャンする際の精度を上げる「アダプティブTrue Toneフラッシュ」も搭載されており、背面カメラを活用できるシーンは広いです。
「11インチiPad Pro(M5)」の価格は168,800円〜。「11インチiPad Pro用Magic Keyboard」(49,800円)と「Apple Pencil Pro」(21,800円)を揃えるならば、約24万円〜です。「13インチiPad Pro(M5)が欲しいけれど、高すぎて買えない」「性能面は妥協したくないけれど、13インチの大きさは不要」と感じた場合の候補となるでしょう。
両サイズともに、カラーバリエーションは「スペースブラック」と「シルバー」の2色
最新モデルは、2025年10月に発売された「iPad Pro(M5)」。同機の注目すべきアップデートポイントは以下の3点です。
(1)チップセットとメモリー
(2)対応する通信規格
(3)充電速度
まず、搭載するチップセットが「M4」から「M5」に変わり、メモリーも強化されました。前世代モデルの「iPad Pro(M4)」でも十分に高性能でしたが、「iPad Pro(M5)」では、さらにメモリー帯域幅が120GB/sから153GB/sに増加していたり、小容量のモデルのRAMが8GBから12GBに上がっていたり(1TBモデル以上は従来と同じく16GB)と、処理性能に関わる仕様が堅実に向上しています。
続いて、対応する通信規格は、Wi-Fiが「Wi-Fi 6E」から「Wi-Fi 7」、Bluetoothも「Bluetooth 5.3」から「Bluetooth 6」へとアップデートしています。
そして、充電に関しては、高速充電への対応が明記されました。別売りの60Wアダプター、またはそれ以上の出力のアダプターを使った場合、13インチモデルで35分、11インチモデルでは30分で最大50%の充電が可能になりました。
「13インチiPad Air(M3)」は、13インチの大画面を備えていますが、一部の仕様は上位モデルのiPad Proよりも抑えられているため、より安価に購入できます。なるべく大画面モデルが欲しいけれど、「13インチiPad Pro(M5)」が予算的に厳しい人は、こちらを検討しましょう。
「iPad Air(M3)」シリーズのカラーバリエーションは、「ブルー」「パープル」「スターライト」「スペースグレイ」の4色
iPad Air(M3)シリーズは、チップセットに「M3」を搭載します。このチップは2023年秋モデルのMacシリーズなどに搭載されたもので、「iPad Pro」シリーズが備える最新の「M5」には劣るものの、十分に高性能です。たとえば、趣味でイラスト制作や動画作成などに挑戦したい、ノートPC代わりに持ち運びたい、ゲームを大画面で楽しみたい、といった使い方であれば、「iPad Air(M3)」シリーズで概ね問題ないでしょう。
iPad Air(M3)シリーズに搭載される「M3」チップは、メモリーの最適化を図る「Dynamic Caching」や、3D空間の精巧な描写を可能にする「ハードウェアアクセラレーテッドメッシュシェーディング」、3D空間の光のリッチな表現を可能にする「レイトレーシング」などをサポート。こうした特徴により、ゲームアプリをプレイする想定で購入した場合も、強力なグラフィック処理が期待できます。
また、動画製作に関しては、「M3」チップに内蔵されるメディアエンジン(動画編集時などに使う専用回路)が、H.264やHEVC、AV1といった幅広い映像コーデック(圧縮方式)に対応。さらに、iPad Air(M3)は、大容量の1TBストレージが選択できるので、動画を編集する用途でも、よほどの頻度でなければ選択肢に入るでしょう。
iPad Air(M3)用Magic Keyboardには、新たにファンクションキー列が追加された
「iPad Air(M3)」は、上位モデルの「iPad Pro(M5)」に比べて、リフレッシュレートとサウンドに、大きな差があります。
まず、「iPad Air(M3)」は、120Hz駆動のリフレッシュレートに対応していません。そのため、ゲームのプレイ中や、ブラウザーを素早くスクロールさせた際に、滑らかに表示されないことがあります。また、画面にApple Pencilを素早く走らせた際に、先行するペン先と、画面に表示される筆跡の間にギャップが生じがち。ノート取りやイラスト描画に問題はないですが、心地よさには差があります。
次にオーディオに関して。「iPad Pro(M5)」シリーズは「4つのスピーカーオーディオ」と「4つのスタジオ品質のマイク」を備えています。対する「iPad Air(M3)」では「ステレオスピーカー(横向き)」と「2つのマイク」へとスペックダウン。そのため、内蔵スピーカーを使っての映画視聴やゲームプレイは、上位モデルよりも臨場感が劣ることを理解しておきましょう。
大画面の「13インチiPad Air(M3)」の価格は128,800円〜。「13インチiPad Air(M3)用Magic Keyboard」(49,800円)と「Apple Pencil Pro」を合わせて購入する場合は、合計で約20万円〜が目安になります。
コンパクトサイズの「11インチiPad Air(M3)」の価格は98,800円〜。「11インチiPad Air(M3)用Magic Keyboard」(46,800円)と「Apple Pencil Pro」を合わせても167,400円なので、価格のハードルも下がることでしょう。
とにかく予算を抑えたいなら、「iPad(A16)」です。最安の選択肢ながらも、11インチの画面と、ホームボタンを備えない新世代型のデザインを採用しており、外観に安っぽさはありません。充電端子も、しっかりUSB Type-Cポートに変わっています。
「iPad(A16)」
「iPad(A16)」は、本体のみで58,800円〜という手ごろな価格です。また、本世代ではストレージの最小構成が従来の64GBから128GBへとアップしています。長期での使用を踏まえても、OSアップデートなどの処理が行いやすくなり、いっそうコストパフォーマンスの高い選択肢になりました。
ただし、搭載するチップセットは「A16」チップなので、「Apple Intelligence」やAAAタイトルのゲームなどには非対応です。動画編集のためのメディアエンジンも備えていません。
また、そのほかのスペックについても、「iPad Pro」や「iPad Air」と比べると見劣りします。ディスプレイの色域は、P3ではなくsRGBですし、画面輝度が最大500nitしかありません。
周辺機器にも差があります。たとえば「iPad(A16)」で使える純正キーボードアクセサリーは、「Magic Keyboard」ではなく、機能の限られた「Magic Keyboard Folio」ですし、使えるスタイラスペンは「Apple Pencil Pro」ではなく、「Apple Pencil(USB-C)」や「Apple Pencil(第1世代)」などに限られます。
とはいえ、想定用途がWebブラウジングや動画閲覧など軽めの用途であれば、「iPad(A16)」で困ることはほとんどないでしょう。また、電子書籍ビューワーとして使ったり、子どもに持たせたりする端末として用意するうえでも、コストを抑えられます。
繰り返しになりますが、「iPad(A16)」の価格は58,800円〜。「Magic Keyboard Folio」(42,800円)と「Apple Pencil(USB-C)」(13,800円)を合わせた場合でも合計115,400円〜で揃えられます。
カラーバリエーションは、「ブルー」「ピンク」「イエロー」「シルバー」の4色展開です。
「iPad mini(A17 Pro)」は、画面サイズが8.3インチのコンパクトなiPad。小型のポーチやバッグにも収まる携帯性が魅力です。ボディの厚さは6.3mmで、人によっては片手で扱えるでしょう。また、価格は78,800円〜で、先述の「iPad(A16)」より少し高めに設定されています。
「iPad mini(A17 Pro)」
周辺機器に関しては、「Apple Pencil Pro」に対応しており、端末の側面にペンを固定してのワイヤレス充電が可能です。手書き中心のビジネス手帳ライクな使い方もよいでしょう。
重量は293 g(Wi-Fiモデル)と軽く、長時間持っていても疲れにくいです。電子コミックやストリーミング動画用のビューワーとして、あるいは「Apple Arcade」で遊ぶためのゲーミング機にも、適しています。
また、「A17 Pro」チップを搭載し、Apple IntelligenceやAAAタイトルのゲームプレイも可能。対応するコントローラーをつなげれば、ポータブルゲーム機のように使えますね。
ただし、「iPad mini(A17 Pro)」は、現行のラインアップの中で唯一、Smart Connector(スマートコネクタ)端子を備えていません。Smart Connectorは、キーボードなどアクセサリーの接続に用いられる端子であり、これに対応した周辺機器はペアリング操作や充電管理などが不要になります。
つまり、Smart Connector対応のキーボードアクセサリーを利用できないので、ノートPC代わりとしての使い方には不向きです。ちなみに、Bluetoothで接続するワイヤレスキーボードや、Type-C経由の有線キーボードなどには対応しているので、キーボードを接続できないわけではありません。
最後に、購入時に選択することになる仕様について補足しておきます。
Apple Storeの“ストレージ”選択画面
容量(ストレージ)とは、その端末にどのくらいの量のデータが保存できるのかを示す値です。容量が大きくなるほど端末は高価になるので、想定用途に適したバランスのよい容量を選びたいところです。
たとえば、「iPad Pro」シリーズの2モデルは256GB、512GB、1TB(=1000GB)、2TB(=2000GB)の4種類を選択できますが、もし積極的に映像制作などを行う想定ならば1TB以上のモデルを選ぶのがおすすめです。ただし、その場合の価格は11インチモデルでも272,800円〜となり、最小構成の168,800円と比べてかなり高額になります。
いっぽう、「iPad」と「iPad mini」は、ストレージの最小構成が128GBと少なめです。価格を抑えられるメリットはありますが、OSのメジャーアップデートなどの際には容量を整理する必要に迫られるので、外付けのSSDやクラウドストレージなど、外部ストレージを活用する前提で頭に入れておきましょう。もし、データ整理の頻度を下げたいのであれば、容量の大きい256GBモデルをおすすめします。
Apple Storeの“モバイル通信ネットワーク接続”選択画面
「Wi-Fi + Cellularモデル」は、スマホのように通信プランを契約することで、iPad単体でモバイル通信ができます。いっぽうの「Wi-Fiモデル」は、通信プランの契約ができず、Wi-Fiとの接続のみで使用するモデルです。
「11インチiPad Air(M3)」の場合、「Wi-Fi + Cellularモデル」は124,800円〜ですが、「Wi-Fiモデル」は98,800円〜のため、26,000円もの価格差があります。
どちらにするべきかは、Wi-Fi環境がない外出先で使用したいかどうかによります。
もし、「外出先で編集した動画を、その場で動画投稿サービスにアップロードしたい」「さまざまな場所で、iPadをノートPCのように使って、メールチェックをしたい」「旅行をしながら、iPadを持ち歩いて地図表示や情報検索をしたい」といった、出先での使用を想定するのであれば、単体でモバイル通信を利用できる「Wi-Fi + Cellularモデル」ほうが圧倒的に便利です。
こうした「容量」や「Wi-Fi + Cellular」といった仕様は、購入したあとに増設で対応することはできません。初期費用はかかりますが、後悔しないように、少し背伸びするくらいの組み合わせで注文しておくと安心です。