レビュー

格安スマホ「Orbic FUN+ 4G」レビュー! 24,800円でミドル向けSoCを搭載

Orbic(オルビック)というブランドをご存じだろうか? スマートフォンやタブレットなどをラインアップする米国の新興ブランドで、米国以外では豪州でも製品を展開している。日本市場には2023年6月1日に参入を表明したばかりだ。

今回は、そんなOrbicの日本市場向け第1弾製品の中から、一般流通向け(いわゆるSIMフリー)の4Gスマートフォン「FUN+ 4G」を取り上げる。6月中の発売予定で、24,800円(税込)と安価なのが特徴だ。

競合が予想される2万円前後の一般流通向けスマートフォン3機種との違いに注目したレビューをお届けしよう。

「FUN+ 4G」は、近ごろ新製品が相次いで登場している価格重視のスマートフォン

「FUN+ 4G」は、近ごろ新製品が相次いで登場している価格重視のスマートフォン

IP54対応の防滴ボディを採用。サウンドなどの機能は抑え気味

まずは本機のボディ周りからチェックしていこう。

サイズは約73.6(幅)×161.8(高さ)×9.8(厚さ)mmで、重量は約192gと最新のスマートフォンとしては少し厚くて重い。その分、防塵・防滴等級は高く、あらゆる方向からの水しぶきに耐えられるIP54に対応している。同価格帯の競合製品だとIP52/IP53が多いので、スペック的には頭ひとつ抜け出ていると言える。

さらに、背面の指紋認証センサーは、面積を確保しやすい円形ということもあり、認証精度が比較的良好だったことも押さえておきたい。エントリーモデルでは指紋認証を非搭載にすることもあるが、本機ではそういったことはない。

ただし、使っていて気になった部分もある。それは背面の樹脂カバーだ。マット処理された表面は指紋や汚れが目立ちやすく、1週間ほどの検証期間中に多少の摩耗も見られた。低価格を追求したモデルなので致し方ないが、購入前に知っておきたい点だ。

防塵・防滴等級IP54に対応するボディ。背面は表面にマット加工が施されており、摩耗耐性はあまり高くない

防塵・防滴等級IP54に対応するボディ。背面は表面にマット加工が施されており、摩耗耐性はあまり高くない

ボディ周りの機能はかなり絞り込まれており、FeliCa非搭載でおサイフケータイには非対応。家電製品との連携で使うNFCにも対応していない。

サウンド機能を見ると、ヘッドホン端子は搭載するものの、スピーカーはモノラル(スペック表ではステレオと記載されている)で、サウンドエンハンサーのDolby Atmosにも対応していない。メーカーの異なるワイヤレスイヤホン・ヘッドホンを4機種ほど試したが、利用できるオーディオコーデックは標準仕様のSBCのみで、AAC、aptX系、LDACといった主要な高音質コーデックへの対応は確認できなかった。

ボディ下面にUSB Type-Cポートを配置する

ボディ下面にUSB Type-Cポートを配置する

ボディ上面にヘッドホン端子を配置する

ボディ上面にヘッドホン端子を配置する

AACに対応するワイヤレスイヤホン「Nothing Ear (stick)」と接続した際のコーデック。SBC以外は選択できない

AACに対応するワイヤレスイヤホン「Nothing Ear (stick)」と接続した際のコーデック。SBC以外は選択できない

以下に、同じ価格帯の競合製品とボディ周りの機能を比較してまとめた。

競合製品とボディの仕様や機能を比較

※価格は、2023年6月15日時点で判明しているメーカー市場想定価格または、価格.com最安価格

※価格は、2023年6月15日時点で判明しているメーカー市場想定価格または、価格.com最安価格

6.1インチディスプレイの表示はもうひとつ

本機は、1560×720のHD+表示対応の6.1インチ液晶ディスプレイを搭載している。

ディスプレイ上部に大きめの水滴型ノッチが設けられているうえ、ディスプレイの上下左右のベゼル幅も広く、ボディサイズからするとディスプレイは小さいと感じる。画質は、輝度が全般に低めで、コントラストもそれほど高くない。ドットピッチの低さによる表示の粗さも感じられる。

リフレッシュレートは60HzでHDRも非対応と、性能的には最小限のディスプレイと言えるだろう。表示が全般に淡く輝度も低めなため、目に疲れを感じやすかった。

水滴型ノッチのある液晶ディスプレイ。輝度もコントラストも低いため、見続けると目が疲れを感じやすいかもしれない

水滴型ノッチのある液晶ディスプレイ。輝度もコントラストも低いため、見続けると目が疲れを感じやすいかもしれない

写真ではわかりにくいが、ディスプレイのドットピッチが低いため、アイコンの発色はざらついている。また、文字のエッジはにじみが目立ち、ぼんやりとしている

写真ではわかりにくいが、ディスプレイのドットピッチが低いため、アイコンの発色はざらついている。また、文字のエッジはにじみが目立ち、ぼんやりとしている

競合製品とディスプレイの性能を比較

ホーム画面や設定画面、通知画面の操作は、Androidの標準に近くシンプルでクセが少ない。ただ、カスタマイズできる部分も少ない。アイコンの大きさや並べる数を変えたり、アプリの一覧画面において並べ替えやフォルダー分類をしたりといったことができず、インストールするアプリが増えると整理が少々面倒そうだ。

基本的な操作はGoogle「Pixel」シリーズなどのAndroidの標準に比較的近い

基本的な操作はGoogle「Pixel」シリーズなどのAndroidの標準に比較的近い

「Snapdragon 680」搭載でエントリー機としては性能に余裕がある

本機の特徴として押さえておきたいのが、エントリーモデルとしては悪くない基本性能だ。

SoCは、2021年末に登場したミドルレンジ向けの「Snapdragon 680」で、これに4GBのメモリーと64GBのストレージ、1TBまで対応するmicroSDXCメモリーカードスロットを組み合わせている。OSはAndroid 12だ(2023年6月15日時点では、本機のOSのバージョンアップポリシーははっきりしていない)。

定番のベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク」のバージョン9.xでの結果は216959(内訳、CPU:74430、GPU:38208、MEM:44214、UX:60107)。同じSoCを搭載する「Redmi Note 11」のスコアは247150(内訳、CPU:83811、GPU:38281、MEM:65190、UX:59868)なので、比べるとスコアは伸び悩んでいる。

この理由は、本機がストレージに安価だが低速のeMMCを使っているのに対して、「Redmi Note 11」は高速なUFS 2.2を使っていることが影響していると思われる。メモリーの性能を示すサブスコア「MEM」の差が大きいことからも、そう判断して間違いないだろう。

競合製品のスコアを見ると、MediaTek社のエントリー向けSoC「Helio G85」を採用する「Redmi 12C」は218406(内訳、CPU:66464、GPU:39910、MEM:49078、UX:62954)で、本機とほぼ同レベル。「moto g13」は検証を行っていないが、「Redmi 12C」と同じ「Helio G85」を採用しているので、「Redmi 12C」のスコアが参考となるだろう。

「AnTuTuベンチマーク」のバージョン9.xの結果。左から「Orbic FUN+ 4G」「Redmi 12C」「Redmi Note 11」。比較のため、ここではあえてバージョン9.xで揃えている。ストレージにUFS 2.2を採用した「Redmi Note 11」のスコアが高い

「AnTuTuベンチマーク」のバージョン9.xの結果。左から「Orbic FUN+ 4G」「Redmi 12C」「Redmi Note 11」。比較のため、ここではあえてバージョン9.xで揃えている。ストレージにUFS 2.2を採用した「Redmi Note 11」のスコアが高い

参考として、「AnTuTuベンチマーク」の最新バージョン10.xの結果も掲載する。スコアは299646(内訳、CPU:109018、GPU:49190、MEM:74285、UX:67153)だった。なお、バージョン9.xと10.xは調査内容が異なり比較できないので注意したい

参考として、「AnTuTuベンチマーク」の最新バージョン10.xの結果も掲載する。スコアは299646(内訳、CPU:109018、GPU:49190、MEM:74285、UX:67153)だった。なお、バージョン9.xと10.xは調査内容が異なり比較できないので注意したい

実際に本機を使ってみたところ、レスポンスはエントリー機としては悪くないほうだと感じた。負荷の軽いパズルゲームなら問題なく動くし、SNSの利用などでももたつきはそれほど気にならないはずだ。本機が想定するサブ機を用途にするなら十分だろう。

4Gプラチナバンドや緊急速報メールに対応。バッテリーは4000mAh

続いて通信機能とバッテリー性能を見てみよう。

本機は、eSIMには対応していないものの、2基のnanoSIMカードスロットを備えており、2個の電話番号を併用できるDSDVに対応している。4Gの対応周波数帯は、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル各社で使用するプラチナバンドやコアバンドをカバー。日本市場初参入ながら緊急速報メールに対応しているのは、メーカーの真剣さがうかがえる。

緊急速報メールにも対応。災害発生時の情報収集も可能だ

緊急速報メールにも対応。災害発生時の情報収集も可能だ

内蔵のバッテリーは4000mAhでエントリーモデルとしては十分な容量。同梱される10Wの充電器を使った場合、手元の時計でフル充電に2時間30分ほどかかった。USB Type-Cの標準となる15Wの給電や急速充電には対応していないので、充電性能はそれなりと言ったところだ。

なお、スペック上の連続通話時間は最長で14時間(840分)で、連続待ち受け時間は240時間。待ち受け状態がほとんどのサブ機として使うなら1週間に1回程度の充電ペースで済むだろう。

標準カメラとマクロカメラの組み合わせ

本機のカメラは、約1600万画素の広角カメラと約200万画素のマクロカメラの組み合わせだ。広角カメラはHDR撮影や背景をぼかすポートレート撮影機能を備える。AIシーン認識機能や顔認識機能も搭載しており、必要な機能はきちんと押さえられている。

ただし、本機のカメラは、光量のある日中で撮影してもクセが現れることがあり、エントリー機でも侮れないカメラ性能を備えるものがある競合製品と比べると、きれいな写真を撮るにはカメラの特性を熟知するなど撮影者側のノウハウが必要そうだ。また、AIシーン認識とHDR撮影を併用できないので、ユーザーが設定を切り替える必要もあるなど、カメラ任せにしない工夫が必要かもしれない。

メインカメラは、広角カメラとマクロカメラのデュアルカメラ

メインカメラは、広角カメラとマクロカメラのデュアルカメラ

晴れた日中の屋外を撮影。青空や樹木を見ると、鮮やかさをさほど強調しておらず、むしろ淡白なほうだ。また、構図の中央以外は画質の荒れが目立ち、解像感も低下する(撮影写真:8MB)

晴れた日中の屋外を撮影。青空や樹木を見ると、鮮やかさをさほど強調しておらず、むしろ淡白なほうだ。また、構図の中央以外は画質の荒れが目立ち、解像感も低下する
(撮影写真:16MB)

アンスリウムを撮影。肉眼の印象ではもっと深い赤だったが、こちらも色の再現性はあまり高くなく、淡白な仕上がり

アンスリウムを撮影。肉眼の印象ではもっと深い赤だったが、こちらも色の再現性はあまり高くなく、淡白な仕上がり
(撮影写真:8MB)

間接照明のホールを撮影。左のAIシーン認識を使って撮影した写真は全体的に暗く、天井の白飛びしている面積が広い。いっぽう、右のHDRを使った写真ではうまく補正されている

間接照明のホールを撮影。左のAIシーン認識を使って撮影した写真は全体的に暗く、天井の白飛びしている面積が広い。いっぽう、右のHDRを使った写真ではうまく補正されている
撮影写真:左側16MB右側16MB

明るめの夜景を撮影。左のAIシーン認識を使った写真は、かなり暗い仕上がりで黒つぶれが目立つ。いっぽう右のHDRを使った写真は、格段に鮮明になるが、露光時間と処理に時間がかかる。なお、白く舗装された地面を見るとアンバーの色かぶりが見られる(撮影写真:左側8MB、右側16MB)

明るめの夜景を撮影。左のAIシーン認識を使った写真は、かなり暗い仕上がりで黒つぶれが目立つ。いっぽう右のHDRを使った写真は、格段に鮮明になるが、露光時間と処理に時間がかかる。なお、白く舗装された地面を見るとアンバーの色かぶりが見られる
(撮影写真:左側8MB右側16MB

バックアップ用として選びやすい端末。今後の展開に期待したい

スマートフォンの値上がりはまだまだ続いている。近ごろは、半導体の高騰や円安の影響がミドルレンジ機にも及んでおり、結果的に、今回紹介した「FUN+ 4G」のような、1万円台〜2万円台前半のエントリーモデルの人気が高まっている。

この価格帯のモデルは、スペックにメリハリがあることを理解したうえで選びたい。得意なこととそうでないことが比較的はっきりと分けられているので、自分の使い方にフィットするかどうかを購入前にしっかりと把握しておこう。

その観点で本機を見ると、エントリーモデルとしては高性能な防塵・防滴性能を備えていることと、ミドルレンジ向けSoCの採用によってまずまずのレスポンスを実現していることがストロングポイント。気になるのはディスプレイで、文字表示が少し粗く、コントラスト・輝度ももうひとつ。人によっては目の疲れを感じやすいかもしれない。

加えて、本機は、新規参入の海外メーカー製ということも頭に入れておきたい。2023年6月時点ではサポート体制が未知数で、当然、国内での利用者もほとんどいない。このあたりは初心者が使う場合に気がかりな点だ。

こうした点をまとめると、本機は、ある程度スマートフォンに慣れている人がサブ機として選ぶのが適当と言える。緊急速報メールに対応し、待ち受け主体なら1週間程度のバッテリー持ちも期待できるなど、サブ機として扱いやすい特徴を備えている。

Orbicは、本機の経験を生かしてさらなる製品展開を考えていることだろう。価格重視のモデルが中心になりそうだが、今後どういった製品が登場するのか楽しみだ。

田中 巧(編集部)

田中 巧(編集部)

FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。

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